タレント前田健さんが44歳の若さで急死されました。
発表された死因は虚血性心疾患。
突然死を招く危険をはらむ心疾患と、普段からの予防法について取り上げます。

「虚血性心疾患」ってどんな病気?

心臓の筋肉(心筋)に血液を送っている動脈(冠動脈)の内側が狭くなったり塞がったりすることで、心筋が酸素不足になり、心臓の機能が低下することでおこる心臓病のこと。冠動脈疾患ともいい、狭心症と心筋梗塞がある。原因で最も多いのは冠動脈の動脈硬化で、冠動脈の一時的なけいれんによってもおこる。高コレステロール血症、高血圧、喫煙が三大危険因子とされる。

虚血性心疾患 – 健康用語 gooヘルスケア

原因で最も多い動脈硬化ってどんな病気?

体のすみずみまで酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を果たしているのが動脈です。この動脈が年齢とともに老化し、弾力性が失われて硬くなったり、動脈内にさまざまな物質が沈着して血管が狭くなり、血液の流れが滞る状態を動脈硬化といいます。
動脈硬化は、(1)粥状(じゅくじょう)硬化、(2)細動脈(さいどうみゃく)硬化、(3)中膜(ちゅうまく)硬化の3種類に分類されます。動脈は内膜、中膜、外膜の三層からなっていますが、(1)は太い、または中等度の太さの動脈の内膜に、(3)は中膜に主に変化が起きます。一方、(2)は末梢の細い動脈が硬化するものです。臨床的に問題になるのは(1)と(2)です。

動脈硬化の原因は?

臨床的に最も重要である粥状硬化は、大動脈、脳動脈、冠動脈など比較的太い動脈に起こる硬化で、動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなる粥腫(じゅくしゅ)(アテローム)ができ、次第に肥厚することで動脈の内腔が狭くなります(図26)。
粥腫が破れると血栓がつくられ、動脈は完全にふさがります。
細動脈硬化は、脳や腎臓のなかの細い動脈が硬化して血液が滞る動脈硬化です。高血圧が長く続いて引き起こされます。

動脈硬化 – 健康用語 gooヘルスケア

日本では心臓病で亡くなる人はがんに次いで2番目に多く、なかでも多いのが虚血性心疾患です。
虚血性心疾患の最大の原因である動脈硬化は加齢とともに進むため、虚血性心疾患は中高年に多く見られます。しかし最近では、若くても動脈硬化を起こしている人が増えており、そのため若い人にも心筋梗塞などの虚血性心疾患が増えているのです。

改善や予防の方法は?

●食事は肉より魚を多く
若い人は肉料理を好む人が多く、魚料理は少なくなりがちですが、魚介類を多くとる人は心筋梗塞などの虚血性心疾患を起こすリスクが低いことがわかっています。
特に青背の魚(いわし、さんま、さば、ぶりなど)に多く含まれる不飽和脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化を予防する働きがあります。

一方、肉類や卵、リノール酸(植物油)などに多く含まれる不飽和脂肪酸アラキドン酸は、とり過ぎると動脈硬化やアレルギー性疾患などを引き起こすといわれます。健康な人の血液中の脂肪酸濃度を比較した研究では、アラキドン酸に対するEPAの割合が若年者ではきわめて低く、若年者の食生活が魚より肉に偏りがちであることが明らかでした。
肉・植物油は控えめに、魚を多めにして、動脈硬化・心筋梗塞を防ぎましょう。

●運動不足を解消、普段の生活でできるだけ体を動かそう
若い人に「運動不足」が増えていることも、動脈硬化・心筋梗塞の若年化の原因と考えられます。
運動不足は肥満をもたらし、肥満は動脈硬化の進行を早めます。
ウオーキングなどの有酸素運動を中心に、軽い筋力トレーニングを行いましょう。有酸素運動を続けると中性脂肪が減って善玉コレステロールが増え、心肺機能を高めることもできます。筋トレで筋肉量を維持し、筋肉での消費エネルギーを促すことも大切です。
ウオーキングや筋トレに限らず、家事などでまめに体を使ったり、駅や職場でなるべく階段を使うなど、普段の生活のなかで体をよく動かすようにしましょう。

●家族のためにも禁煙を
たばこはHDLコレステロールを減らしてLDLコレステロールの酸化を促し、血管壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。家族に受動喫煙させないためにも禁煙しましょう。

●ストレスを回避、または解消しよう
過剰なストレスは血管を収縮させて血圧を上げ、LDLコレステロールの酸化を促し、動脈硬化を悪化させます。また、ストレスによって冠動脈がけいれんを起こし、心筋梗塞を起こすことがあります。

若年化する動脈硬化、心筋梗塞を予防する– 健康コラム gooヘルスケア

今は動脈硬化が進行していなくても、動脈硬化を進めやすい体質や生活習慣を持つ人は注意して心がけましょう。
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