映像は無音ですが(音声付きの映像が初めて実用化されたのは1927年のこと)、サイレント映画に見られるような説明字幕が入ります(隠喩が多用され、具体的な情報はあまり出てきませんが)。
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映像の最初は、屋外の五右衛門風呂に入っている幼児とお母さんでしょうか。お風呂が嫌いなのか、泣き出してしまいます。
「父親が働いていようがどうあれ、小さい娘たちは働きます。彼女たちの仕事は簡単なことではない」という字幕が入り、手遊び歌をしている5人の女の子が映ります。全員が赤ちゃんをおんぶしています。子沢山の時代、弟・妹の世話をするのが当たり前だったんですね。
続いては、お母さんが子供をひょいと抱き上げ、一本帯の「おんぶひも」で結びつける手本を見せてくれます。
日傘をさして、赤ちゃんをおんぶしているこの女性は、じっとカメラを見つめています。
「世のお父さんたちへ:赤ちゃんが好むステップとはこうやるのです。
こちらは神社でお参りをする少女たち。字幕によると、将来無事にお母さんになれるようにとお祈りしているのだそう。
場面はすぐ切り替わって、露店の様子のようです。「◯◯やき」と書いてあるようですが、ちょうど権利表記に重なって見えません。ここまで洋装の人は誰も映っていません。
屋台を担いだ男性がやって来ます。車輪が付いてないので大変そうです。風鈴売りのようですね。あっという間に子供たちが寄ってきます。
映像の1:20頃からは、意図がよく分かりませんが犬が登場します。まずはピエロのフリルのようなものを巻いた犬。
次にぬいぐるみの犬が映ると、その隣に本物の犬がフェードインで登場。すでにこんな技術ができたのですね。
そして突如現れるオナガドリ(顔のあたりに権利表記が入って見えにくいのが残念ですが)。1923年(大正12年)に国の天然記念物に指定されているので、それのからみかもしれません。
人で賑わう通りが映ります。左端に「すき焼」という看板が見える他は、場所を特定できるようなものは見えません。
お祭りの開催中なのでしょうか、舞台が設置されています。舞台では月琴と太鼓の伴奏で、お尻にお面を載せて脚を腕のように見せる芸などが催されています。ハードそうです。
撮影隊はここで通学中という女学生たちに出会います。立ち止まり(前列の子たちは日傘を閉じて)、お辞儀します。字幕によると、「さんざんな日常で失っていた自尊心を、お辞儀されたことで取り戻せた」ということを述べています。
ここからは、この小学生ぐらいに見える女の子二人を中心に映像は進んでいきます。
「穴の開いたストッキングを履いていくことはおすすめできない。靴を玄関先で脱ぐということを考慮しなければならない」という字幕が入ります。
日本文化を紹介する映像には大体取り上げられる、室内で履物を脱ぐ習慣についてです。女の子二人はふすまを開け、履物を脱いで入っていきます。
お師匠さんでしょうか、丁寧にご挨拶。早速、踊りのお稽古が始まります。
お稽古の休み時間に撮影隊が外に出ると、チェスをしている学生たちを発見とのこと。見えにくいですが、駒の配置から軍人将棋でしょうか。
「静」の将棋の後に彼らが目にしたのは、激しすぎるほどの「遊動円木」の光景でした。「遊動円木」とは、見たとおりの丸太の両端を鎖などでぶら下げたもので、平衡感覚を養うための遊具です。
この上を落ちないように歩くのが正しい使い方らしいですが、こんな使い方もされていました。
再び女の子たちのもとに戻ると、食事の時間のようです。お膳にお辞儀しているのが、撮影隊には不思議に映ったようです。
女中さんが付きっきりで、ご飯をよそいでくれ、その後も見守っています。字幕は完璧なチームワークだと驚嘆しています。撮影のため、後半は食べる振りもしています。
タバコをプカプカふかすお師匠さん(?)から、一日の総評をもらっているところでしょうか。
その間に寝床が整えられ、女中さんたちに寝室に連れていかれ、寝間着に着替えさせられ、お布団を掛けてもらいます。お稽古に専念するため、それ以外のことはすべてやってもらっているのでしょうか。
わずか5分40秒ほどでしたが、次々と場面が変わっていくので、当時の日常生活をいろいろと垣間見ることができ、とても貴重な映像でした。引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。
(服部淳@編集ライター、脚本家)
【動画】「Japanese Life, 1920's」