もし痴漢被害に遭ってしまったら、あなたはどんな対応をするでしょうか。
大声で助けを呼ぶのが理想的ですが、恐怖と驚きから、行動に移せる人はなかなかいないでしょう。
同様に、痴漢行為を目撃した人が「痴漢されていませんか?」と声をかけるのも、勇気のいることです。
警視庁の防犯アプリ『デジポリス』
そういった事態で役立つのが、警視庁が2016年3月に公開した、防犯アプリ『デジポリス』。2025年5月13日時点で、ダウンロード数は約87万件に上っています。
東京都内の犯罪発生情報のほか、特殊詐欺の手口などの防犯情報も掲載されており、被害に遭わないための対策に役立てられるのだとか。
また防犯ブザーや『痴漢撃退機能』も搭載されているため、被害に遭いそうになった場合に活用すれば、状況を周りに知らせることができるでしょう。
そんな市民の味方ともいえる『デジポリス』には、2022年以降、通知機能などが新たに追加されました。
『痴漢撃退機能』には、以前より「痴漢です助けてください」という表示が備わっていましたが、それに加え「ちかんされていませんか?」という画面が設けられています。

『痴漢撃退機能』の画面
新機能について、警視庁に聞いてみた
2022年4月に4つの機能が追加され、2023年4月には防犯情報の項目が増設された、『デジポリス』。新機能を追加した経緯について、grapeは、警視庁に話をうかがいました。
――『痴漢撃退機能』の「ちかんされていませんか?」の表示は、どういった経緯で追加されたのでしょうか。
「被害者側からアクションを起こすのは難しいのでは」という職員の意見を受けて、目撃した第三者が助ける方法はないかと検討を重ね、2022年4月に、「ちかんされていませんか?」と大きく文字の入った画面を追加しました。
「頭が混乱して、冷静に助けを求められない場合もある」「誰かが助けてくれたという事実が、被害者の早期回復につながるのでは」といった声や、「痴漢らしき行為を目撃した際、スマートフォンに『大丈夫ですか?』と打ち込み、被害者に見せたことがある」というエピソードも参考にしています。
――同じく2022年4月に追加された『エリア通知機能』『見守りパトロール機能』『ココ通知機能』は、どのような機能でしょうか。
『エリア通知機能』は、客引きやぼったくり被害多発場所、チケットの不正転売が予想されるイベント会場、声かけの事案などが発生したエリアに、アプリ利用者が入ると、 注意喚起や防犯情報を通知する機能です。
『見守りパトロール機能』は、防犯ボランティアの方々により効率的かつ効果的な自主防犯活動を行っていただくために追加しました。地域の犯罪発生状況が地図上に表示されるため、実施場所や時間の選定の参考にすることができるほか、活動履歴を保存することもできます。
『ココ通知機能』は、端末の位置情報機能を利用し、簡単に場所を送受信できる機能で、親子間での利用を想定しています。子供の犯罪被害防止のために追加しました。
――防犯情報の項目に『#BAN闇バイト』『住まいの防犯対策』 が追加されましたが、取り入れた経緯をお聞かせください。
2023年4月、高収入をうたって犯罪に加担させる『闇バイト』が社会問題となる中で、 若者が関わらないよう、危険性を見抜くポイントなどについて解説した資料や動画を掲載しました。それが『#BAN闇バイト』の項目です。
また同時期に、『闇バイト』による侵入強盗事案が連続発生したことを受け、住宅の防犯対策を集約した項目『住まいの防犯対策』も新設しました。

『#BAN闇バイト』の項目
――実際に『デジポリス』を使って犯罪を未然に防げたというエピソードはありますか。
電車内で痴漢に遭った被害者が、周囲の乗客に「痴漢です助けてください」という画面を見せ、これに応じた他の乗客と協力して犯人を検挙した事案がありました。
また、自分の居住地域に特殊詐欺の電話が入っていたという情報を見た利用者が、実際にかかってきた詐欺の電話を看破して、被害が未然に防げたという事例もあります。
社会問題をふまえ、利用者の声も取り入れて、よりいっそう機能が充実した『デジポリス』。
犯罪に巻き込まれないために、防犯ツールとして活用してみてはいかがでしょうか。
声を出しづらい状況でも、『デジポリス』と周囲の人が、助けてくれるかもしれません。
『デジポリス』は警視庁のウェブサイトからダウンロードページに飛ぶことができますよ。
[文・構成/grape編集部]