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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2025年4月スタートのテレビドラマ『キャスター』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
主人公・進藤壮一(阿部寛)が、同世代の同僚、山井和之(音尾琢真)に問いかける。
あなたは、親父さんと疎遠になったことをいいことに、見て見ぬふりをしてきたんじゃないんですか。

物語の中のワンシーンだというのに、自分に問われたかのように、どきっとした。
おそらく、進藤、山井ともにドラマの上では50歳前後。いわゆるロスジェネ世代だろう。
戦後生まれの親世代が高度成長期に築き上げたこの国の繁栄を受け継いだものの、自分達がいざ社会に出ようとする時にはバブルが崩壊し、思うような就職もままならなかった世代。
若者として親世代の功罪を問う前に、ただ普通に生きることに必死にならざるをえなかった世代である。
そんな人生を生きて大人になった息子を、入学前の幼児のように愛おしむ認知症の父親と、その父が生きてきた道をほぼ何も知らないままの息子は、哀しい合わせ鏡のようだった。

視聴率低下に悩むニュース番組『ニュースゲート』に呼ばれたのは、型破りなキャスター・進藤。
人と群れない進藤は、取材の過程で問題を起こしながらも、数々のスクープを勝ち取っていく。
そんな進藤に振り回されつつ、総合演出の崎久保華(永野芽郁)、新米ADの本橋悠介(道枝駿佑)らニュースゲートのスタッフたちは、反発や協力を経て自分なりの報道を目指すのだった。

8話から物語はいよいよ最終章に入る。
前回の臓器移植の倫理を問うエピソードも見応えがあったが、最終章はさながら映画のようなスピード感と濃密さだ。
舞台は原子力関係の施設が数多くある村、そして発端はキャンプのたき火から起きた山火事。燃えさかるその山は、およそ40年前に自衛隊の輸送機が墜落した山だった。
原子力関係施設、地元に富をもたらす大企業、その企業との繋がりで強大な権力を持つ政治家、世襲の二代目議員、そして国防。
この国が昭和から令和の今まで先送りにしてきた問題や、封印されてきた事件をこれでもかと網羅して描いている。
そして、父を自死で失った息子と、父の認知症で対話を失った息子が、それぞれに「自分の父はどのような人生を生きたのか」を求めて事件を追う。

大人になった息子が改めて父の過去や人生を問うという構図は、日曜劇場のいわゆる十八番である。
『とんび』『テセウスの船』『ラストマンー全盲の捜査官ー』『VIVANT』と枚挙に暇がない。
今作も、きっとそれら名作の列に加わるはずだ。
8話で、もっとも印象に残ったシーンは、火事から無事に生還した父親・和雄(山本學)に山井がすがりついて泣くシーンだった。


山本學と音尾琢真という、いぶし銀をいぶしまくりの名脇役2人による、認知症の父と働き盛りの息子の抱擁は、深みも凄味もテレビドラマとしてのエンタテインメントの枠を遙かに超えていた。
音尾琢真はいつも演技の痕跡すら残さない。常にそこに人物として『居る』。
善良な男にも、小ずるい人間にも、タフな専門職にも、面白みのない凡人にもなる。
そんな役者の中の役者のような男がロスジェネ世代そのもののように、頑張って生きてきたけれども、今になって自らの生きざまに迷う姿はリアルだった。
同世代である自分のことのように、生々しかった。

これまではつきまとってくる崎久保を突き放したり、揺さぶりをかけてきた進藤が、今回の原子力関係施設に絡む取材では「ありがとう。あとは俺ひとりでやるから」と告げた。
その言葉が示唆する危険に、身が引き締まるような思いがする。

そして一つだけ、序盤からどうも腑に落ちない疑問がある。
黒豹のように慎重に、常に味方すら騙してスクープを掴み取ってきた進藤が、果たして「撮れ」といわんばかりの場所、カーテンも閉めない窓際で政治家から無防備に金を受け取るだろうか。
布石か、それとも失念か。
どちらだとしても、告発者が本橋だというのは物語として最高に面白いと思う。
当然、次の日曜日の夜が待ち遠しくてじりじりしている。
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[文・構成/grape編集部]
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