SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、イラストレーターの渡辺裕子(@satohi11)さん。
2025年7月スタートのテレビドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)の見どころを連載していきます。
渡辺裕子さんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
人気弁護士の原田幸太郎(阿部サダヲ)は、50歳で電撃結婚したネルラ(松たか子)とのしあわせな結婚を満喫していたが、彼女の衝撃的な過去を知り、激しく動揺する。
15年前に彼女の婚約者・布勢夕人(玉置玲央)が転落死した事件の再捜査が始まり、第一発見者のネルラが疑われているという。
こんな大事な話を、なぜネルラは自分に話していないのか。ネルラは人を殺したのか。

ネルラにも、ネルラの家族にも聞けない疑問をひとりで抱えて悩み、幸太郎は夜も眠れない。
そんな寝不足な朝、コメンテーターとして出演中のワイドショー『ニュースホープ』でピンチヒッターを頼まれ、司会をひきうけることになった幸太郎。
イヤイヤながらだったはずが見事に司会をこなして視聴者に大反響、SNSではトレンド一位となり、ますます有名人になってしまう。

しかし、司会で忙しい間は考えないでいられたネルラへの疑惑がどうしても消えず、思い余った幸太郎は弁護士仲間の臼井(小松和重)に状況を打ち明け、事件についての調査を依頼する。
巨大なハサミを手に、幸太郎のはねた髪の毛を切ろうと待ち構えているネルラはやはり『変』だが、彼女の家族・鈴木家の人々も、どこか『変』だ。

父・寛(段田安則)は大企業の創業者。
弟・レオ(板垣李光人)は街でスカウトされるほどの美貌を持ち、アイドルの衣装デザイナーで、実は休学中の東大生。
ネルラは、以前は一流の絵画修復家だった。
どうしてこの一家は、こんなに非凡なのだろう。

亡くなったネルラとレオの母にも、何か特別な才能があったのだろうか。
そこまで考えて気がついたけれど、ネルラの母の名前を、この一家が口にしたことがあったか思い出せない。
位牌の戒名しかまだ見ていないような気がする。
そして、部屋のどこにも母の写真はない。お土産をお供えし手を合わせて大切にしている彼らの仏さまは、本当に死んだ母なのだろうか。
さらに、もうひとつある位牌が誰のものなのか、誰も幸太郎に話そうとしない。とても、『変』だ。

今回、鈴木家が幾度か口にした気になるキーワードが『舞鶴』。
父と叔父が関西弁で、「舞鶴でも夏はよくコチを食べたよね」「隣のノンちゃんの家のから揚げが…」などと盛り上がっているが、自分だけが知らない話をされている幸太郎の居心地の悪さに同情してしまう。
あの2人はもしかして、その疎外感を幸太郎に味合わせたくてしゃべっているのかもしれない。
そして2人だけになると、テレビに出ている幸太郎を見ながら「ネルラにはこの男が必要だよ」とつぶやく。
不本意ながら使わないといけない部品について語るように。

一方、ネルラとレオもテレビに出ている幸太郎を見ながら舞鶴について語る。
「今年は幸太郎さんも一緒に舞鶴、行ってもらおうかなと思ってるんだ」と言うネルラに、すっと表情を曇らせて「俺はまだ信用してないけどね」とこたえるレオ。

鈴木家にとっての舞鶴は、信用できる人間しか呼ばない、家族の秘密が隠されている場所なのだろうか。
臼井弁護士から15年前の事件の詳細を報告され、今日こそネルラに聞こうと帰宅した幸太郎に、ネルラが「幸太郎さん、私を人殺しだと思ってる?」と自ら語り始める。

絵が描けなくなった布勢に心中を迫られ、突き飛ばされて頭を打った後から記憶がない。
布勢に再会してしまった自分のせいだと思い、自分に罰をあたえようと修復の仕事を辞め、望みを捨てて生きてきた。

だけど幸太郎に会って、しあわせを求めてしまったのが間違いだったと涙を浮かべるネルラの肩を「間違いじゃないよ」と抱き寄せる幸太郎。
けれど彼には笑顔がなく、目の前に迫る何かにおびえているように見える。

15年前、ネルラは布勢の女性問題で口論になったと供述していた。幸太郎への告白と、心中の理由が異なっている。
どちらかで彼女は嘘をついていることになるけれど、それを知りながら、幸太郎はこれからもネルラを支えていけるんだろうか。

事件現場は、布勢にアトリエとして貸していた、鈴木家の所有する倉庫。
だとしたら鈴木家の人々は自由に出入りもできただろう。
ネルラが気を失ったあとに、鈴木家の誰かがアトリエに来たのだとしたら。
もしかしてそれが、鈴木家の秘密なんだろうか。

鈴木家だけが暮らすマンションは、外界と隔てられた彼らの城。
そこへ入り込んできた幸太郎は、週に一度の食事会には入れてもらえるけれど、日本酒が欲しいのにビールを注がれてしまうような、気持ちが通じ合わない部外者。
そんな幸太郎も、いつか『変』な鈴木家の一員として彼らの秘密を共有するのか。
彼らの『舞鶴』へ連れて行ってもらえるのか。
それとも、ネルラと2人であの鈴木家だけの城から出ていくことになるのか。
あるいは『しあわせな結婚』を手放して、ひとりに戻るのか。
そして15年前は学生だったと思われる黒川刑事(杉野遥亮)はなぜこの事件にこだわるのか。彼もかなり『変』で『謎』だ。

『しあわせな結婚』第3話あらすじ
幸太郎は、ネルラから15年前に起きた布勢夕人の転落死事件について聞かされる。
黒川刑事の執念により再捜査が始まったことで、ネルラは「幸太郎さんに出会ってしまってから、もう一度生き直したいと思うようになったの」「でも、わたしが将来に希望を持った途端、15年前のことがまた襲いかかってきて、わたしから幸太郎さんを奪っていく。しあわせを奪っていく」「しあわせになりたいなんて、望んだことが間違いだったの」と絶望。

幸太郎は、そんなネルラを守り抜く決意を固めるが、ひそかに事件の調査を頼んでいた弁護士仲間で大学時代の同級生である臼井の報告で、ネルラにとって不利な当時の状況を思い知ることに…。
さらに、本来真実を追求し、公益を守るために法律を運用するはずの法律家が生き方を変えられるのかと、ネルラに問い詰められ、自分の気持ちが揺らいでいることを自覚し始める。
そんな中、幸太郎は、ネルラ、レオ、考、寛とともに鈴木家恒例の温泉旅行に参加することになる。その夜、寛に呼び出された幸太郎は、ネルラの生い立ちを聞き、「どうかネルラを守り通してやってくれ」と懇願される。

家族旅行や週に一度の食事会に参加し、幸太郎が家族の一員として少しずつ鈴木家になじんでいく中、ウエディングフォトを撮影することになった2人。しかし、その撮影中にネルラが突然倒れてしまい…!?
次第に秘密が明らかになる中、ネルラに襲いかかる悲劇。はたして、夫は妻の秘密も愛せるのか。

『しあわせな結婚』出演の阿部サダヲ・松たか子の取材会も
grapeでは、阿部さんと松さんが出席した取材会の様子も公開しています。
お互いの好きなところを聞かれた松さんは、なんて答えたのでしょうか…。また松さんの回答に対する阿部さんの反応も必見です。
松さんと阿部さんの回答は、こちらの記事からご覧ください。
さらに、脚本家の大石静さんも交えた取材会の記事では、大石さんから見た2人の芝居についても語られています。
ドラマと一緒に、お楽しみください!
[文・構成/grape編集部]
渡辺裕子SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。
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