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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2025年7月スタートのテレビドラマ『19番目のカルテ』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
私たちは、患者として医師や医療スタッフの優しさに最終的に何を求めているのか。
もちろん寄り添った上で治してくれる医者ならそれが一番いい。
けれども寄り添わずに治してくれる医者、寄り添ってくれるけど治してくれない医者ならどちらがいいだろう。
さらに言うなら、寄り添いという目に見えないものに『患者のわたし』は何を求めているのだろう。
『19番目のカルテ』(TBS系)を見ていると、当たり前に思っていることが因数分解されていく不思議な感覚にとらわれる。
特に今回の5話、主人公の徳重晃(松本潤)と心臓外科医の茶屋坂心(ファーストサマーウイカ)の長い問診は、人生の中にある『やまい』について考えさせられた。

医療現場における19番目の診療科、総合診療科は特定の臓器や疾患に限らず、包括的な診断を行う。
とある地方都市の総合病院・魚虎総合病院に総合診療科が新設され、総合診療医の徳重がやってくる。
最初は他の専門医たちに敬遠されていた徳重だが、整形外科から総合診療科に転科した滝野みずき(小芝風花)をはじめ徐々に理解者が増え、他科との連携もとれるようになっていく。
だが、外科部長の東郷陸郎(池田成志)は、コストパフォーマンスの低い総合診療科の存在に疑問を持ち続けていた。

今回のメインは、優秀な心臓外科医の茶屋坂心。
茶屋坂はその明晰さで、徳重の総合診療医としての問診は何もかもテクニックであり、本当の優しさではないと看破する。

実母の手術のあと、メンタルのバランスを崩した茶屋坂を徳重が問診する恒例のシーンは、これまでの数々の問診の中でもとりわけ緊張感に満ちていた。
印象的なのは、すべての感情を奥底にしまったような、徳重演じる松本潤の表情だ。

これまでも問診中の徳重の表情は、微笑でも悲しげでもない、さりとて無表情というのも違う。絶妙に曖昧なのである。
今回、小手先のテクニックだと思われれば逆に傷ついてしまう茶屋坂を前に、徳重の表情はさらに抑制されている。
その抑制が、鏡のように問診の相手の感情を映し出す。まさに松本潤の受けの演技の真骨頂だろう。

本当に面倒くさいと思うなら、タバコは母親の前では隠しておいて、いないところで存分に吸えばいい。わざわざ吸うところを見せつけて、厳格な母親を傷つけたかったのだと思う。
うるさく言われなくなったことをラッキーだとうそぶく娘の声は、予想外に見捨てられた痛みが滲んでいた。

それでもタバコを燻らせる茶屋坂、ファーストサマーウイカは憂いを煙のようにまとわせていて、とても美しかった。
大河ドラマ『光る君へ』(NHK)で演じた清少納言の時も今回も、知性に裏打ちされたエキセントリックな女にファーストサマーウイカの演技は見事にハマっている。

今回の茶屋坂のように、幼い頃に親の過度なしつけや教育虐待で深く傷ついて、成人しても癒えない傷を抱いたまま、いつしか老いて弱った親を目前に途方に暮れる。
決して希有な話ではない。悲しいことにどこでも、時には親から子に連鎖して起こることだ。
そして大人になってから、自身が親の禁止や否定の言葉で形作られたことに気づいて呆然とする。

そんなふうに、自分の空虚さに立ち止まってしまった大人たちにとっても、今回の徳重の「あなたとわたし。その間に心は生まれると、僕は思っています」という言葉は羅針盤になるだろう。
たとえ自分の内面が今はからっぽだとしても、誰かとの関わりの中で心は生まれていく。そして他者との関わりの中で、自分の存在が他者の心を作る。
喜びも悲しみも、人の中で育まれていくものだと。

4話は、徳重が屋上に来たことに気づいて見つめていたが、5話の最後に、外科医の東郷康二郎(新田真剣佑)が自ら徳重の元に歩み寄って話しかけていた。
そして、これまでなら受け取らなかっただろう、患者から貰ったというお菓子を徳重から受け取る。
これもまた、他者との関わりで心が形作られていくということを見せてくれる良いシーンだった。

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[文・構成/grape編集部]
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