夏になると、花火大会やお祭りなど、普段は何も行われていない場所で、にぎやかなイベントが開催されます。
何千何万という人が一堂に会した際、発生しがちなのがトイレの数が足りないという事態。
近隣のコンビニエンスストア(以下、コンビニ)などに「トイレを貸してほしい」と駆け込む人も多くいるようです。
『トイレだけ』は、法的にアウト?
結果として、トイレだけを利用する人が多発することに怒りを覚える投稿が、SNS上で議論を呼ぶなど、大きなイベントのたびに話題になる、この問題。
では、コンビニでトイレを借りて何も購入しなかった場合、法的に問題はあるのでしょうか。
大阪府大阪市で、まこと法律事務所を運営する北村真一弁護士にうかがいました。
――コンビニでトイレだけを利用するのは、法的に問題はないのでしょうか?
すぐに違法となるケースは少ないでしょう。ただし、注意が必要なケースもあるといいます。
コンビニによっては『ご自由にお使いください』とトイレを開放している場合もありますが、コンビニのトイレは、本来『お客様のため』に用意されています。
そのため、初めから商品を買う気がなく、トイレだけを目的に入店した場合、店舗側の意思に反すると判断されれば『建造物侵入罪』にあたる可能性がゼロではありません。
とはいえ、「急にお腹が痛くなってどうしても…」というような緊急の場合は『緊急避難』として扱われ、罪に問われないケースがほとんどでしょう。

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――コンビニ側は「貸せません」と断ってもいいのでしょうか?
コンビニ側に、トイレを貸す法的な義務はありません。『施設管理権』という権利があるため、店舗は誰にどの施設を使わせるかを決められます。
実際、防犯や清掃の負担などを理由に、トイレの貸し出しを中止している店舗もありますよね。
つまり、コンビニのトイレはあくまでお店の好意で貸してもらっているものです。
大切なのは、法律よりも『思いやり』
結局のところ、この問題は法律で割り切れるものではなく、私たち一人ひとりの『思いやり』が大切なのかもしれません。
SNS上では、コンビニで働く人の投稿も見られ「トイレだけ利用の人は『お客様』ではない」「店員側は別に何も思っていない」と意見が分かれているようでした。
いずれにせよ、トイレを借りられるのは、店側の善意があってこそ。そのことを忘れずにいたいですね。

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緊急時はもちろん仕方がありませんが、もし心に余裕があるのなら、感謝の気持ちを込めて何か1つ商品を手にとってみましょう。
そんな小さな心遣いが、お互いを気持ちよくさせてくれるのではないでしょうか。
誰もが利用する場所だからこそ、思いやりの輪が広がると素敵ですね。

まこと法律事務所 代表弁護士。
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。
猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。
[文・構成・取材/grape編集部]