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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2025年7月スタートのテレビドラマ『19番目のカルテ』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

「別に一人で野垂れ死んでもいいんだし」と、酒の席で投げやりな言葉を聞く。

人との付き合いに疲れ果てて愚痴る知人の言葉に、「『野垂れ死に』って私たちが想像してるよりずっと辛いし残酷だと思うよ」と言いかけて言わない。

若い頃には想像さえしなかった、自分はどんなふうに死ぬのだろうという問いの輪郭が中年になって少しずつ見え隠れする。

検査の数値のここが悪いからこの病気かな、身内がこの病気で亡くなったからその可能性あるなというふうに。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

日々の狭間に憂鬱で投げやりなその問いかけを抱えながら、『19番目のカルテ』(TBS系)の6話を見た。

死を想うということは生を想うことだと、小さなともしびのように思った。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

とある地方都市の総合病院、魚虎総合病院に総合診療科が新設されて、一人の総合診療医が院長の肝いり人事でやってくる。

飄々としたその男、徳重晃(松本潤)は、当初は他の同僚専門医から敬遠されていたが、治療とコミュニケーションを通じて理解者を増やしつつある。

そして徳重の問診に心酔した整形外科医の滝野みずき(小芝風花)は、総合診療科に転科して『なんでも治せる医師』を目指して奮闘中だ。

その滝野に、徳重は終末期医療を希望する余命僅かの半田辰(石橋蓮司)の主治医を託すことを決めた。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

小芝風花の魅力を余すことなく堪能出来る6話だった。

これまでのキャリアでコメディから時代劇まで幅広い役柄をものにしてきた小芝風花だが、彼女が醸しだす魅力の一つは、風が吹き抜けるようなからりとした誠実さだ。

テレビドラマ『トクサツガガガ』(NHK)の叶、テレビドラマ『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)のミナレ、大河ドラマ『べらぼう』(NHK)の花魁・瀬川。どの役柄でも小芝風花の筋を通す真っ直ぐさが心地良い。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

小芝は綺麗事を美しいままに、しかし決して薄っぺらい絵にせずに、見る者の心の奥に届けることが出来る希有な俳優である。

それは大輪に咲くヒロインとしての重要な資質であることは言うまでもない。

その資質が、終末期医療に正面から挑み傷つきながらも成長する医師という、ある意味きれいすぎるほどのエビソードをしっかりと着地させたのである。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

今回のエピソードで印象に残ったのは、若い医師が直面する最初の看取りに対して、周囲の医師たちが静かに、だが深い思いやりをもって見守る様子だった。

普段は憎まれ口しか言わない同期の鹿山(清水尋也)も、無口な精神科医の天白(矢部太郎)も、滝野を案じている。

ストレスのかかる内科医は早々に辞めて美容外科医になると口癖のように言う鹿山だが、滝野との会話を見るにつけ、それは当面ないだろうなと思う。

坪田文の脚本は回が進む都度、人物像が立体的にそして深みを増していく。

滝野の患者に対する強い共感力と一途さを知るからこそ、同僚たちは初めての看取りで彼女が立ち直れないほどの傷を負うのではないかと案じている。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

裏を返せば、彼ら同僚の医師たちにとっても、患者の看取りは深い痛みであるということだ。

今回のエピソードに見え隠れしていた、医師たちのプロとしての自制と苦悩が強く心に残った。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

半田の人生に寄り添えば寄り添うほど医師の立場で苦しむ滝野に、徳重は患者の人生を船の旅に例えて諭す。

医師とは患者と同じ船に乗り合わせた存在だという言葉に、なるほどと思う。

乗り合わせただけだから、船の行き先や旅の終わりを医師が左右することはない。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

ただ、その船の旅が少しでも居心地のいいものであるように、笑顔で過ごせるように整えることは出来る。

この例えは患者としての自分が最終的に医療に何を求めるかも示唆されているようで、この先も人生の折に触れ思い出す言葉だと思った。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

今回のラスト、半田の臨終を見届け、主治医の滝野は「お世話になりました」と静かに頭を下げ、滝野に付き添った徳重は「ありがとうございました」と感謝の言葉を半田に捧げる。

徳重のその言葉は、未熟な弟子に看取りを寛容に委ねてくれた半田への深い感謝と尊敬のこもったものだろう。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

そしてまだ早すぎるように見えた、滝野に終末期医療を担当させる判断は、自分の翼で守ってやれるうちに教え子を苦しい試練に送り出そうとする徳重の『師』としての想いだったのだと思う。

その想いを、幾つもの家を建て、何人もの大工を育ててきた偉大な棟梁が汲んだことに胸が熱くなる。

そして次週は徳重の師・赤池(田中泯)と徳重自身のエピソードとなる。果たして、どんな師弟のやりとりが見られるだろうか。

若手医師に終末期医療を担当させる判断をした理由を考える 『19番目のカルテ』第6話
『19番目のカルテ』場面写真

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[文/かな 構成/grape編集部]

かな

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