待ちに待った休日がやってくると、仕事を忘れて自宅でくつろいだり、家族で出かけたりする人も多いでしょう。
しかし、そんな時に会社やクライアントから電話やメールの連絡が入ると、一瞬で仕事モードに引き戻されてしまい、せっかくの休日が台無しになってしまいます。
「緊急かもしれないから…」と考えて対応した結果、思っていた以上に時間を取られてしまうケースも少なくありません。
社労士「対応する義務はありません」
そもそも休日に来た仕事の連絡に、対応する必要はあるのでしょうか。
大阪府茨木市で社会保険労務士法人こころ社労士事務所を運営する香川昌彦さんに、話を聞いてみました。
――休日に仕事の連絡があった場合、対応しなければならないのでしょうか。
原則として、休日にかかってきた電話やメールに労働者が対応する法的な義務はありません。会社には、労働者に休日や有給休暇を自由に利用させる義務があるためです。
たとえ上司からの連絡であっても、基本的には「休日明けに対応します」と伝えて問題ありません。
休日は、心と身体をリフレッシュさせるための大切な時間です。無理をして仕事に対応する必要はないのです。
――対応した場合は手当はもらえますか。
会社の指示によって電話やメールの対応や資料作成を行った場合は、たとえ5分や10分であっても『労働時間』とみなされます。
労働時間にあたる以上、会社はその時間に対して賃金(時間外手当など)を支払う義務があります。
さらにいえば、休日対応があたり前になっていれば、そもそも休日として認められず、出勤日として扱わないといけない場合もあります。
「休日に少しだけだから」と遠慮してサービス残業扱いにするのは、従業員の立場からすればもったいないことですね。

※写真はイメージ
――もし休日に仕事の連絡に対応してしまった場合、どうすればいいのでしょうか。
もし休日に仕事の連絡へ対応してしまった場合は、対応した事実をきちんと残しておくことが大切ですね。
まずは「いつ、誰から、どんな内容の連絡があり、何分間対応したか」を簡単にメモしておきましょう。後から勤務時間や手当を申請する際に役立ちます。
また、普段から上司や同僚と「緊急時以外の休日の連絡は控える」といったルールを共有しておくことも重要です。
あらかじめ話し合っておけば、不要な連絡が減り、安心して休みを過ごせるようになりますよ。
お互いを思いやる気持ちが大切
この問題は、ルールで解決するだけでなく、働く人同士の思いやりも欠かせないのかもしれません。
SNS上には、休日にもかかわらず「トラブル対応の電話が鳴りやまなかった」と心が休まらなかった人の声や、「電話に出ないのは困ると上司に叱られた」という人の投稿も見られます。

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もちろん、時には緊急のトラブルやどうしても対応せざるを得ない状況があるのは仕方のないことです。
それでも、休日に連絡をする側が「相手の大切な時間を奪っていないか」と考え、連絡を受ける側も「本当に緊急の際には協力する」といった気遣いができれば、もっと働きやすい環境につながるでしょう。
しっかり休むことも、大切な仕事の1つ。

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表社会保険労務士
大阪府茨木市を拠点に、就業規則の整備や評価制度の構築、障害者雇用や同一労働同一賃金への対応などを通じて、労使がともに豊かになる職場づくりを力強くサポート。
ネットニュース監修や講演実績も豊富でありながら、SNSでは「#ラーメン社労士」として情報発信を行い、親しみやすさも兼ね備えた専門家として信頼を得ている。
[文・構成・取材/grape編集部]