ドライブ中は、窓から見える景色も楽しみの1つ。特に自然豊かな地域では、美しい木々が私たちの目に安らぎを与えてくれます。
しかし、その美しい自然が、時として思わぬトラブルの原因になることもあるようです。
SNS上では、「一方通行の標識が、木の葉に隠れてまったく見えなかった」といったドライバーたちの悲痛な叫びが、たびたび話題になります。
よかれと思って植えられたはずの街路樹が、交通違反や事故のきっかけになってしまうなんて、なんともやりきれない話です。
標識は、見えなければ意味がありません
もし、標識が見えなかったことが原因で取り締まりを受けてしまった場合、その違反は成立してしまうのでしょうか。
大阪府大阪市で、まこと法律事務所を運営する北村真一弁護士にうかがいました。
――街路樹などで標識が見えなかった場合でも、違反になってしまうのでしょうか。
大前提として、道路標識は『ドライバーが、その手前で十分に内容を認識できる状態』で設置、管理されていなければなりません。
もし、木の枝や葉、あるいは汚れなどによって標識の内容が隠され、ドライバーから見て、その存在や意味を到底読み取れないような状態であった場合、標識としての効力が認められず、取り締まりは無効だと判断される可能性はあります。

※写真はイメージ
――「見えなかった」と主張すれば、違反は取り消されるのでしょうか。
残念ながら、そう簡単ではありません。『見えなかった』という事実を、客観的な証拠をもって証明しなければならないからです。
例えば『木の葉に隠れて、標識の大部分が見えなくなっている状態』と、『枝が少しだけかかっているが、注意すれば内容は読み取れる状態』とでは、大きく意味合いが変わってきます。
もし、取り締まりを受けてしまったら、警察官に「街路樹で標識が見えなかった」という事実を伝え、スマートフォンのカメラなどで、現場の状況を撮影しておきましょう。
感情的に反論するのではなく、客観的な証拠をもとに、後日、警察署で違反の取り消しを求めるのが賢明です。
私たちの『気づき』が、事故を防ぐ
この問題は、個人の違反が取り消されるかどうかだけでなく、地域の交通安全全体に関わる話でもあります。
もし、あなたが普段通る道で、標識が見えにくくなっている場所を見つけたら、道路を管理する自治体の担当部署や、警察の相談窓口(#9110)に連絡してみるのも、社会貢献の1つといえるかもしれません。

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あなたのその1本の電話が、誰かのうっかり違反や、未来の交通事故を防ぐきっかけになる。そう考えると、日々の運転の中での『気づき』が、とても大切なものに思えてきますね。
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[文・取材/ことのは 構成/grape編集部]

まこと法律事務所 代表弁護士。
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。
猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。
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