レバーを押すだけで、手軽に火をつけられるライター。キャンプや停電時などにも役立ちますが、喫煙者以外にとってはなじみが少ないものではないでしょうか。

2025年9月下旬現在、加熱式タバコの流通で、喫煙者でもライターを手にする人が減る中、Xではとあるライターが話題を呼んでいます。

ユニークなデザインが目を引き、なんと、非喫煙者からも「普段はタバコを吸わないけれど欲しい」という声が相次ぎました。

多くの人の心をときめかせたライターが…こちらです!

ライターに油性ペンでイラストを描いて… 完成品に「タバコを吸わなくても欲しい!」
かわいいライターの写真(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

描かれているのは、素朴でなんとも愛らしいデザインの猫やアヒル。

それぞれ、サツマイモを手にしたり、赤トンボを眺めたりしており、どこか秋らしさを感じるイラストですよね。

シャボン玉を飛ばしていたり、紙風船で遊んだりするシーンには懐かしさを覚える人もいるのではないでしょうか。

筆者が調べたところ、メルヘンチックなデザインのライターは、東京都江戸川区にある『岡島たばこ店』で作られているものと判明。

気になった筆者が同店にうかがい、取材を行いました!

ライターにイラストを描く際に使う道具が?

SNSで話題となったライターを制作しているのは、同店3代目の岡島弘枝さん。

祖母と父親から店を受け継ぎ、たった1人で店を切り盛りしています。取材中には、岡島さんと世間話を楽しむ常連客の姿も多く見られました。

JR小岩駅近くに構える店のたたずまいからは、70年間の長い歴史が感じられますね。

ライターに油性ペンでイラストを描いて… 完成品に「タバコを吸わなくても欲しい!」
タバコ店の写真(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

岡島さんはもともと、子供の頃から絵を描くことが好きだったといい、「学校ではよくノートの片隅に落書きをしていました」と笑います。

岡島さんが小さなライターにイラストを描くために、なんの道具を使っているかというと…。

ライターに油性ペンでイラストを描いて… 完成品に「タバコを吸わなくても欲しい!」
油性マーカーとライターの写真(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

『極細』タイプの油性マーカー!

しかも、小さなライターに直接描いているといいます。

てっきり「大きな画用紙に描いた絵を印刷したシールを貼りつけているのでは」と予想していた筆者は驚きました。

すべて手描きということを知って「すごいですね…」とうなる筆者を前に、「暇つぶしの落書きですよ」と笑う岡島さん。特別に、制作の工程まで見せてくれました。

繊細なイラストを描き終えるまでの工程に驚き!

膝上に置いたボードにライターを乗せて、イラストを描いていきます。

ライターに油性ペンでイラストを描いて… 完成品に「タバコを吸わなくても欲しい!」
ライターにイラストを描く女性の写真(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

イラストボードは木製で、友人である一級建築士が手作りした『特注品』。

ボードの上部には、イラストを描き終えたライターを置けるくぼみが設けられており、デザインの『被り』がないかを確認しやすいそうです。

拡大鏡をのぞきながら、イラストを描き進めていきます。

ライターに油性ペンでイラストを描いて… 完成品に「タバコを吸わなくても欲しい!」
ライターにイラストを描く女性の写真(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

海や雲といった風景は、マーカーで色をつけた部分に、アルコール消毒液を含んだ綿棒を押し当ててにじませることで表現。

ライターに油性ペンでイラストを描いて… 完成品に「タバコを吸わなくても欲しい!」
ライターの写真(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

最後に保護フィルムを貼れば、完成です。なんと、わずか5分程度で仕上がりました!

ライターに油性ペンでイラストを描いて… 完成品に「タバコを吸わなくても欲しい!」
かわいいイラストがあしらわれたライターの写真(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

老舗のタバコ店主が明かした『手作りライター』への思いが…



かわいらしいライターを制作する店主が、取材で明かした思いとは?

接客の合間に制作を続けているという岡島さん。かわいらしいライターを作り始めた経緯や、イラストのこだわりを聞くと、このように答えてくれました。

仕入れたライターの真っ白な表面にさびしさを感じて「何か描いちゃえ」と思い立ったのがきっかけです。

大好きな猫を中心に、犬やアヒルといった動物や女の子なども題材にしますね。

常連さんのリクエストに応じたイラストを描くこともあります。

ポイントは、日常で誰もが経験しているような懐かしい場面を描くこと。季節感も意識していますね。

大笑いするのではなく、ふっと気が抜けちゃうような心温まる絵を描きたいと思っています

これまでに2000個近くのライターを制作していますが、同じデザインのものはありません。すべて『世界で1つのライター』なので、愛着を持って使ってほしいですね。

制作を始めてからおよそ1年後。卸し先のタバコ店で購入された160円のライターの投稿が拡散され、一気に日の目を浴びました。

「急に『バズった』のでびっくりです」と苦笑する岡島さん。ちなみに『岡島たばこ店』での販売価格は100円だそうですよ。

ライターに油性ペンでイラストを描いて… 完成品に「タバコを吸わなくても欲しい!」
ライターの写真(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

また、岡島さんは、Xの投稿を見て同店に訪れた若者とのエピソードも明かしてくれました。

私の仕事が大変だった時、「これから頑張らないと」という思いを込めて、猫と新芽のイラストを描きました。

そのイラストのライターを店頭に並べていると、若い子が「これから私も新しいことを始めるので、買っていきます」と購入してくれました

ライターのイラストで思いが通じ合えたことが嬉しかったですね。

かわいいデザインのライターで、若者とのつながりができたことは、店を長く続けていく上でも意義深いはず。

岡島さんは「昔から店を手伝う中で、休日でも店を営む両親の大変さが身に染みて分かりました。両親が守ってきた店を、私も可能な限り、守り続けたいですね」と語ります。

実用品の域を超え、人と人、人と店とをつなぐ『架け橋』となっている手作りライター。

これからも多くの人の手に渡り、心を温め続けていくことでしょう!

【店舗情報】

住所:東京都江戸川区西小岩1丁目27-29

営業時間:午前10時半~午後8時半(火・金曜日は午後1時から、都合により営業時間が変わる場合もあり)

定休日:日曜日

※喫煙所併設

X:@okajima_tobacco

[文・構成・取材/grape編集部]

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