いかに仲のいい家族同士でも、共同生活をしていると、時にはトラブルが発生することもあるでしょう。
妻が「お昼ご飯、何がいい?」と夫に尋ねた際、妻の負担を少しでも減らそうと、夫が「簡単なものでいいよ」と返すのは『夫婦あるある』の1つ。
しかし、この言葉にモヤモヤしてしまう人は少なくないようです。

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SNSでも「簡単なものなら自分で作ってほしい」「簡単なものを作る間に何をしてくれるの?」といった、不満や怒りの声がたびたび話題になります。
よかれと思ったひと言が、なぜ相手をイラッとさせてしまうのでしょうか。
そこには、夫婦間の、ちょっぴり切ないコミュニケーションのすれ違いが隠されていました。
専門家「それは思いやりという名の丸投げです」
なぜ、夫の『優しいひと言』が、妻の心をざわつかせるのでしょうか。
大阪府高槻市で、夫婦関係修復カウンセリング専門の行政書士事務所を運営する木下雅子さんに、話を聞いてみました。
――なぜ「簡単なものでいい」という言葉は、妻をイラつかせるのでしょうか?
夫側にまったく悪気がないのが、この問題の一番難しいところです。夫は「作る手間が簡単なものでいいよ」という、妻を気遣う気持ちで言っています。
しかし、妻にとって料理で大変なのは、実は『作ること』以上に『献立を考えること』や『後片付け』なのです。
妻は、冷蔵庫の中身を思い出し、栄養バランスを考え、家族の好みも考慮して献立を考えます。
また、どんなに簡単な料理であっても、食器洗いなどの片付けは必要です。
この献立を考える思考のプロセスと、後片付けも含めて、夫は『簡単なもの』という言葉で、妻に丸投げしてしまっているのです。

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――夫としては、よかれと思って言っているだけだと思うのですが…。
そうなんです。夫は本当に、妻の負担を軽くしたいという優しさから言っています。
ただ、その『優しさ』の表現方法が、妻の求めるものと少しズレてしまっているのが、この問題の核心です。
ここで夫を『分かってくれない人』と悪者にしてしまうと、関係はこじれる一方でしょう。
大切なのは、妻側も『分かってくれるだろう』という期待を一度手放し、自分の気持ちを言葉にして伝えることです。
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、実は『簡単』って言われるのが一番悩んじゃうんだ」などと正直に打ち明けてみましょう。
悪気がないからこそ、夫は「そうだったのか!」と素直に受け止め、次から行動を変えてくれるかもしれません。
大切なのは『2人で考える』こと
この問題は、どちらかが悪いわけではありません。
お互いを思いやる気持ちが、ほんの少しだけすれ違ってしまっているだけなのです。
では、どうすれば、お互いが笑顔になれるのでしょうか。
例えば、夫は「簡単なもので」の代わりに「パスタか、うどんはどう?」と具体的な選択肢を示したり、「ありがとう。片付けは自分がやるよ」と感謝を伝えたりしてみてはどうでしょうか。
そして妻も、一人でモヤモヤを抱え込まずに「一緒に考えてくれると助かるな」と、素直な気持ちを伝えてみるのもいいでしょう。

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夫婦といえども、言葉にしないと伝わらない気持ちがあるのは当たり前です。
大切なのは、どちらか一方が我慢するのではなく、お互いが歩み寄って、2人だけの『心地よい答え』を見つけていくことなのかもしれませんね。
[文・取材/ことのは 構成/grape編集部]

行政書士、心理カウンセラー。
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、顧客を支えている。
HP⇒木下雅子行政書士事務所