池松壮亮と菅田将暉のダブル主演で、此元和津也の人気漫画を実写化したのが、映画「セトウツミ」だ。
高校2年生の内海(池松)と瀬戸(菅田)は、放課後にいつも河原でダラダラと話をしながら一緒に過ごしている。
放課後の河原の階段で内海と瀬戸が話しているシーンを中心に構成された本作。派手な事件などは起こらず、高校生2人の日常をそのまま切り取ったかのような作品の中で、内海と瀬戸が繰り広げるシニカルかつユーモラスな会話劇が見どころだ。頭は良いが根暗で捻くれている内海と、お調子者でおしゃべりな瀬戸が交わすテンポの良い関西弁の掛け合いはくすくすと笑えるものばかり。特に瀬戸の話に的確に打ち返される内海のツッコミなどは、まさに"痒い所に手が届く"という感じで、他愛ない会話にも関わらず実に痛快だ。そして、そんな自然な会話の中から、内海と瀬戸、そして周囲の人間との関係性が垣間見えてくる過程も面白い。何気ない日常でありながら、その中で描かれている高校生ならではの青春や悩み、人間関係の機微には共感させられることもあり、映画の世界に引き込まれていく。
■池松壮亮と菅田将暉、絶妙なテンポの掛け合いで作り上げられた世界観

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 (C)2016 映画「セトウツミ」製作委員会
そんな本作で、高校生の内海と瀬戸を、池松と菅田が関西弁で好演。彼らの織りなす会話はこの上なく自然体で、リアルな日常会話を覗き見しているようだ。しかし、主に"ただ河原で座って話しているだけ"のシーンで構成される75分間が成立するのは、ナチュラルな掛け合いの中に組み込まれた池松と菅田の演技の妙というほかない。
会話劇ではやり取りのテンポや間合い、セリフのトーン、そしてそれらによって作り出されるリアリティが大事になってくるが、彼らはその相性が抜群。どちらかが早くとも遅くとも違和感が生じてしまうが、すべての瞬間においてテンポのズレがなく、絶妙なのだ。
内海を演じる池松は、"受け"の芝居が素晴らしい。瀬戸を演じる菅田の言葉を受け止め、時に受け流したり、時には踏み込んだり、ツッコミを入れたり...と、表情や間合いを駆使した緩急のある演技に引き込まれる。

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 (C)2016 映画「セトウツミ」製作委員会
そして、池松の受けの芝居に対して、次々と言葉を投げかけていく菅田も見事。お調子者だが素直な等身大の高校生・瀬戸が、好きな子の話でテンションが上がったり、そうかと思えば深刻に思い悩んだりする姿を豊かな感情表現で演じた。
同じセリフや台本であっても、演じるものが違えばテンポも違い、作り出される世界観も変わってくる。自然体だからこそ緻密に作りこまれていなければならない原作の世界観を、池松と菅田が絶妙な空気感で生み出している。実力派俳優2人が作り出した「セトウツミ」の世界観を、ぜひ楽しんでほしい。
文=HOMINIS編集部
放送情報【スカパー!】
セトウツミ
放送日時:2025年6月8日(日)19:30~、6月20日(金)11:30~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます