吉行淳之介の小説を実写化した「星と月は天の穴」が、12月19日(金)に公開される。
妻に捨てられた⼩説家の矢添克二(綾野剛)は独身のまま40代を迎える。
荒井晴彦が脚本と監督を務めた本作は、ほぼ原作通りにシナリオ化。全編モノクロで、作品の舞台となった1960年代当時の雰囲気を色濃く残している。今回は主演の綾野と田中にインタビューを実施。作品の魅力をたっぷりと語ってもらった。
――世の中にさまざまな映画があるなか、本作は「荒井晴彦」というジャンルだったと思います。綾野さんは荒井監督と映画「花腐し」でもタッグを組まれましたが、前作とで何か違いはありましたか?
綾野「大きく分けると前作は『現代劇的』で本作は『芸術的』。前作はムードをしっかり作り、台詞も情緒的でお芝居的な要素が必要だったと思うんです。ですが、本作はより言葉の力が強くて豊潤なので、完成されていました。
その完成されたものを、自分が変えたくなかったので、余分なものをなくしていく必要がありました。斜めに伝えようとせず、あるがまま、台詞通りにやっていく。前回とは違ってゆらぎなしにやる。
――田中さんは荒井さんの脚本作品3作目の出演です。今回、"荒井監督"と対峙することになって、どんな心境でしたか?
田中「監督としては初めてだったので緊張していたんですけど、『前作タッグを組まれている剛くんについていけば大丈夫だ』という安心感がありました。
荒井さんのお書きになる台詞って色気があるんです。台詞を言うだけで色が生まれて、映画の香りがしてくる。読むと『荒井さんの書く台詞を言いたい』という衝動が生まれるんです。次に監督なさるときは絶対に出たいと思っていたので、こんなに早く巡ってくるとは思いませんでしたし、『荒井晴彦』というジャンルの一部になれて嬉しかったです」
――本作の物語やキャラクターについて、どんなことを受け取りましたか?改めて、演じる際に意識したことを教えてください
綾野「脚本を読ませていただいたときに、なんて美しくて滑稽でもあり誠実なんだろうと思いました。この言葉の渦を浴びられるのが本当に幸せで。
矢添の行動、感情、表情、考えていることがすべて台詞で描かれていたので、(演じる際に)なるべく表情化しない、肉体化しないことに努めました。彼の周りにいる千枝⼦さんや他の女性陣の台詞が豊かな分、その豊かさを邪魔しないようどれだけ抑制できるのか。台詞を編むためだけの拡声器として矢添は存在するので、ややラジオボイスのようなあり方を意識しました。
ただ、千枝⼦さんに対しては漏れてしまう『張りきれない虚勢』みたいなものが存在していたので、どこか距離の近さを感じられるような『人間味』だけは残しています。
――チャレンジングな作品だったのでしょうか
綾野「『チャレンジ』というのはきっと正しくて、今は時代も変わり、あらゆる作品が世の中に出てきています。いろいろな表現を楽しむのがエンタメだと思うのですが、そのなかで、まさにこの作品は『珍味』と言っても過言ではない作品だなと」
田中「珍味っていい表現だね~」
綾野「(笑)。なかなかこの珍味を作らせてもらうのも大変ですし、見ていただくまでの道のりや制作していく過程でもすごく時間がかかるものです。そうしたことに特段のありがたみを感じていました」
――田中さんが演じる千枝子について、どんな印象を受けたのか教えてください
田中「千枝⼦って心の中は純粋で、少女のような部分がある人だと思うんです。自分の役割をまっとうしながらも、心の中にある『純粋な自分』が出てきてしまうことがあり、そこに戸惑いを感じている。でも、自分の職業と向き合ってふと冷静になる...と行ったり来たりしている女性だと思いました」
――彼女の内面とも向き合っていったんですね
田中「そうですね。向き合って、深く掘り下げていきました。台本をいただいてから自分の体の中に千枝⼦が住んでいる状態になったので、一緒に暮らしながら作品に入っていきました」
――俳優として対峙してみてのお互いの印象を教えてください
綾野「本当に素晴らしいです。以前、ご一緒したことがありますが、毎回芯の強さを感じるんです。今回も矢添でどう生き抜こうか。拡声器になりきるからこその役者的迷いがあるなか、道を照らして示してくださいました」
田中「え~。
綾野「麗奈さんがいることで、矢添の心音が聞こえ始めた感覚があったんです。麗奈さんから出てくる感情表現、役に対しての誠実さや積み重ねてこられた結晶はもちろん、経験だけではない『現場で生まれるもの』を信じていらっしゃるところなど、表現が適切ではないのかもしれませんが、麗奈さんとのお芝居がただただ楽しかったんです。結局、僕が心地よくされていました」
――特にどんなところでその感情に至ったのでしょうか?
綾野「僕が(千枝⼦に向けて)長々としゃべるシーンがあるのですが、説明台詞を受けるってすごく難易度が高いんです。ですが、こちらが喋りたくなるムードを切らさず作り続けてくださるんです」
田中「あれは長い台詞で大変そうだった」
綾野「僕自身がノーストレスで、何回やっても『間違えることはないな』って感じられたのは、麗奈さんの出力はもちろんのこと、受けのお芝居の賜物です。麗奈さんのお芝居を感じて勉強になりました。本当に楽しそうに聞いてくれるんですよ」
田中「(笑)」
綾野「なぜ自分が喋れているのか理解できましたし、麗奈さんの合いの手があるからこそ、そのシーンが成立しているなと思いました。目の前で麗奈さんの芝居を浴びることができて幸せでした」
――あの空気感を作り出すには受け手も重要になるのですね
綾野「ただただ受けるふりもできるのですが、そこに見えないし聞こえない相槌があって僕に届いている。僕に伝わっている以上、映像にも残るはずです。それがあるからこそ、あのシーンがものすごく好きですし、この作品の象徴のひとつであるとも感じています。『圧倒的生命力感』って言うんですかね。一生敵わないであろうものをあの1シーンで見せていただきました。素晴らしいなと」
田中「嬉しい~!」
――田中さんは俳優としての綾野さんと対峙してみてどんな印象を受けましたか?
田中「共演経験のある剛くんは自分の中で年下のイメージがあったのですが、矢添と千枝子との関係性だと逆になるんです。
綾野「そこまで感じ取ってくださってすごく嬉しいです」
田中「すべてが背中から漂っていて『これは大丈夫だ』って思いました(笑)。だからこそ、千枝子の無邪気さも出していけたと思うんですよね」
――確かに、矢添といる千枝子には無邪気さを感じます
綾野「千枝子さんに足で顔を蹴られるシーンがあるんですけど、あれは麗奈さんの即興なんです」
――そうだったんですか!
田中「そうなんです(笑)」
――矢添が千枝子を娼館の外に誘うシーンですね。喜んだ彼女がハイソックスを上げて、ベッドの隣に座る矢添の顔をちょんと蹴る一幕です
綾野「長回しのシーンの最後だったんですが、顔を蹴られたとき『最高』と思いました」
(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会
(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会
取材・文=浜瀬将樹 撮影=MISUMI
【綾野剛】
スタイリスト=佐々木悠介 ヘアメイク=石邑麻由
【田中麗奈】
スタイリスト=岩田麻希 ヘアメイク=ナライユミ
公開情報
映画「星と月は天の穴」<R-18指定映画>
12月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
原作:吉行淳之介
監督・脚本:荒井晴彦
出演:綾野剛 咲耶 岬あかり 吉岡睦雄 MINAMO 原一男/柄本佑/宮下順子 田中麗奈
製作・配給 ハピネットファントム・スタジオ
(C) 2025「星と月は天の穴」製作委員会

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