第75期王座戦五番勝負は挑戦者の伊藤匠叡王が藤井聡太王座を3勝2敗で破り、二冠目を奪取した。タイトル防衛からの二冠奪取は、いよいよ超一流棋士の仲間入りである。
タイトルを取れる棋士はほんの一握りだが、複数冠を同時に保持するとなるとさらに難易度が上がる。現役棋士は2025年10月1日時点で174人いるが、タイトルを獲得した棋士は29人。そして二冠を達成した棋士となると12人とさらに少ない。なお、永世称号資格を獲得している棋士は現役では6人いるが、当然ながら全員が二冠を達成している。まだタイトルを取り始めたばかりの伊藤を含めても5割が届いているため、永世称号に届くかの目安の一つにはなりそうだ。
ちなみに三冠達成者は6人で、永世称号資格保持者では佐藤康光九段が達成しておらず、代わりに豊島将之九段が入ってくる。
伊藤は23歳で二冠を達成。もちろん同学年の藤井は史上最年少で達成しているが、2番目の記録は羽生善治九段。伊藤は羽生に次ぐ歴代でも3番目の若さとなった。なお、藤井、伊藤が出てくるまでは羽生の次は中原誠十六世名人。史上最強クラスの棋士が並ぶ中に割って入ったこととなる。
⒞囲碁・将棋チャンネル
二冠にまつわる記録で不思議なものとして、渡辺明九段は2つ目のタイトルを取る前に、永世称号の資格を得た。通常は防衛を重ねられるほど安定した実力があれば、他のタイトルにも挑戦して奪取をしそうなものだが、渡辺は竜王奪取から5連覇で初代永世竜王になるまでの間、タイトル挑戦はわずかに1回でそれも失敗に終わった。複数冠よりも永世称号資格を先に得る珍記録は、タイトル数そのものが少なかった黎明期以降はなく今後も出てくる可能性は低そうだ。なお、渡辺はその後に三冠を達成している。
二冠達成者で同学年に当たるのは羽生と森内、藤井と伊藤の組み合わせのみだ。もちろんどちらもタイトル戦でも多く顔を合わせており、最大のライバルの証明でもある。森内は三冠にまで伸ばし、羽生に先んじて永世名人の資格を得たが、伊藤は果たしてどうなるだろうか。
2025年最後のタイトル戦となった竜王戦七番勝負は藤井が防衛を果たして永世竜王資格を得た。現状は藤井が六冠、伊藤が二冠で、二強時代の幕開けと言える。2026年は伊藤がさらに巻き返して三冠目を奪取するか、もしくは藤井が押し返すか、はたまた第3のタイトルホルダーが現れるか。藤井一強にストップを掛ける棋士が現れ、さらに混戦となるか。来年も激しい戦いが続くことになりそうだ。
文=渡部壮大
放送情報
ALSOK杯 第75期 王将戦 二次予選 伊藤 匠叡王 vs 広瀬章人九段
放送日時:2025年12月27日(土)18:00~
放送チャンネル:囲碁・将棋チャンネル (スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

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