フジテレビほかで放送・Netflix、Prime Videoほかで最速配信中のTVアニメ『TO BE HERO X』は、"ヒーローの信頼が数値化される世界"を舞台に、多彩なヒーローたちが己の正義と信念をかけて戦うbilibiliとアニプレックスによる完全オリジナルアニメーション作品。ユニークなビジュアルと重厚なテーマを兼ね備えた注目作だ。

本作で、天才的な頭脳と強さを併せ持つ孤高のヒーロー・クイーンを演じているのが花澤香菜。可愛さと鋭さ、静けさと熱さというギャップを抱えたクイーンのキャラクターに、どのように息を吹き込んでいったのか。収録現場でのエピソードや、現代社会にも通じる"信頼の数値化"というテーマへの考察、そして「自分にとってのヒーロー像」まで、花澤が今作を通して感じたことを、じっくりと語ってもらった。

花澤香菜、アニメ『TO BE HERO X』で演じた孤高のヒーローに重ねた思い 「ギャップを演じるのが楽しかった」
TVアニメ『TO BE HERO X』でクイーンを演じる花澤香菜
TVアニメ『TO BE HERO X』でクイーンを演じる花澤香菜

――『TO BE HERO X』の企画や物語を最初に聞いたときの率直な印象を教えてください

「日中合作ということで、まずは『国境を越えるような作品に関われるんだ!』というワクワクがありました。それだけで嬉しかったですし、ヒーローごとにキャラクターの雰囲気やアニメのテイストが違うというのも聞いていたので、完成したときに一つの作品としてどうまとまっているのか、すごく楽しみでした。最初の段階では、『ヒーローがいっぱい出てくる』ということぐらいしか知らなくて(笑)。台本を読んでいくうちに少しずつ世界観が明らかになっていって、それもまた面白かったです」

――本作では、「信頼」が可視化され、"信頼値"という数値で示されるという設定が非常にユニークですよね

「すごく斬新だなと思いました。信頼って、普段はすごく曖昧なものじゃないですか。でも、それが数値化されることで、ある意味で公平に見えるようになったり、逆に怖く感じたり。たとえば順位が下がったら、それを気にして自分の行動が変わっちゃうとか、みんなにいい顔しなきゃとか」

――現実でも、SNSのフォロワー数など、信頼が数値化されている場面はありますよね

「そうなんです。SNSでも、フォロワー数が多いから信頼されている、という見られ方をすることがあると思うので、この設定はすごく現代的で、リアリティがあると思いました。忖度なしで信頼を数値で見られるなら、ある意味わかりやすい。

でも、実際はそんなに単純じゃないんだろうなという怖さもありますね」

花澤香菜、アニメ『TO BE HERO X』で演じた孤高のヒーローに重ねた思い 「ギャップを演じるのが楽しかった」
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜

――花澤さんが演じるクイーンも、そんなシビアな世界でヒーローとして生きる人物です

「クイーンは、小さい頃から天才と言われていて、すでに自分の中に『世界をどう変えていきたいか』という信念を持っている女性なんです。ただ、人との関わりが少なかったからこその危うさもあって。最初は本当に孤高の存在というか、近寄りがたい印象があったと思います。でも、ラッキーシアンちゃんや他のヒーローと出会うことで、彼女の中にある"しなやかさ"が見えてくる。そういった変化を通して、どんどん魅力的になっていくキャラクターだなと思いました」

――演じていて、クイーンと重なる部分や共感できるところはありましたか?

「最初は全然違うタイプだな、と思っていました(笑)。でも、あるシーンでちょっとデレっとなるところは『あっ、そこはわかる!』って(笑)。あと、彼女ってなんでも自分で決めて抱え込むタイプなんです。実は、私も人に相談せずに、自分で勝手に決めちゃうことが多いので、そういうところは似ているのかなと思いました」

――クイーンは"強さ"と"可愛さ"のギャップもすごく魅力ですよね

「そうなんです。普段は人との距離をすごく意識しているのに、親しい人や小動物系になると一気に心の壁が崩れる(笑)。そのギャップは演じていてすごく楽しかったですし、『ここで一気にテンション変えよう!』と、自分の中でも意識してました」

花澤香菜、アニメ『TO BE HERO X』で演じた孤高のヒーローに重ねた思い 「ギャップを演じるのが楽しかった」
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜

――アフレコの現場は、どんな雰囲気だったんでしょうか?

「ほかのキャストさんと一緒に録れることが多かったので、ありがたかったです。ラッキーシアンや他のヒーローとも掛け合いできましたし。特に、あるキャラクターとの戦いのシーンでは長尺で体力を使いました(笑)。

しかも映像が完成してないから、『今飛び蹴りしてます』とか『ここで壁に当たります』みたいなものを秒単位で合わせないといけなくて。でも、お相手の方の戦闘芝居が本当にすごくて。叫んでも全然声が枯れないし、演技もキレキレで。『うわ、負けていられないな』と、私も気合い入りました」

――共演者の中で、特に気になったヒーローは?

「うーん、やっぱり黙殺ですかね。中村(悠一)さんが演じられていますが、私のキャラと直接絡まないので、『どうなってるんだろう?』とすごく気になります(笑)。あと、宮野(真守)さん演じるXも印象が強いです。現場では一緒に録れなかったのですが、舞台挨拶では『俺、1位だし!』みたいなオーラを出していて(笑)。あの存在感はさすがです!」

花澤香菜、アニメ『TO BE HERO X』で演じた孤高のヒーローに重ねた思い 「ギャップを演じるのが楽しかった」
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜

――音楽面でもかなり印象的な作品ですよね。クイーン編の楽曲「Queen of the stars」はいかがでしたか?

「本当に素敵でした!女性ボーカルの曲で、すごくクイーンの心情に寄り添っている感じがして。しなやかさもあるけど、芯のある強さもあって、彼女にぴったりだなと思います。あの曲を聴いていると、クイーンが一人で戦いながらも、どこかで人に支えられている感じが伝わってきます」

――花澤さんは実生活において、ヒーローのような存在はいますか?

「私にとってのヒーローは...おばあちゃんですね(笑)。とにかく明るくて、エネルギッシュなんです。

パジャマにスパンコールを縫い付けちゃうくらいで、『地味なのはイヤ!』って。朝の犬の散歩も、チャチャっと歌いながら踊るようなテンションで行っちゃうんです。この前一緒にランチ行ったときも、昼から焼肉でカルビを食べていて、『80代でこれはすごいな』って(笑)」

――めちゃくちゃパワフルですね!

「そうなんです(笑)。私が少し落ち込んでいたときに『ポテンシャルはあるのよ』と真顔で言ってくれたんです。その言葉が頭から離れなくて、最近ジンギスカンを食べに行ったときに『私にもポテンシャルあるし!』って調子に乗ってたくさん食べたら、翌日ぐったりして(笑)。私はまだヒーローにはなれないな、と思いました(笑)」

花澤香菜、アニメ『TO BE HERO X』で演じた孤高のヒーローに重ねた思い 「ギャップを演じるのが楽しかった」
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜

――逆に花澤さんご自身が、「誰かにとってのヒーローかもしれない」と感じたことはありますか?

「私自身というより、作品を通してキャラクターが誰かの背中を押せていたら嬉しいなと思います。以前、いじめに立ち向かう役を演じたことがあって、『その作品を観て、子どもが元気になりました』というお手紙をいただいたんです。そのときは、本当にやっていてよかったと思いましたね。キャラクターが持つ力ってすごいんだな、と改めて学ばせてもらった気がします」

――では最後に声優として「信頼されている」と感じる瞬間を教えてください

「最近だと、最終回だけ出てきて意味深なことを言って去っていくみたいな役を任せていただくことが多くて(笑)。あれって、信頼なのか試されているのかわからないですが、ここは任せようと思っていただけているのかなって。黒幕や二重人格のキャラクターなど昔の自分では想像していなかったような役もいただくようになって...。そういうことがあると、信頼値が上がったかな?と、少し嬉しくなります」

花澤香菜、アニメ『TO BE HERO X』で演じた孤高のヒーローに重ねた思い 「ギャップを演じるのが楽しかった」
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜
TVアニメ『TO BE HERO X』花澤香菜

取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI

作品情報

TVアニメ『TO BE HERO X』
放送:フジテレビほか、毎週日曜朝9:30~
配信:Netflix、Prime Videoほかで毎週月曜12:00~最速配信中
声の出演者:宮野真守、花澤香菜、内山昂輝、中村悠一、松岡禎丞、佐倉綾音、水瀬いのり、山寺宏一、島﨑信長、花江夏樹ほか

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