【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】
本連載では、国内外問わず通用するマーケティング施策を取り上げ、インバウンド対策にも役立つヒントをお届けします。
マーケティングを効果的に進めるには、まず顧客を深く理解し、そのニーズを正確に把握することが欠かせません。
デモグラフィックデータとは、年齢、性別、居住地域、家族構成、年収、職業、学歴といった、顧客の基本的な属性を示す人口統計学的な情報のことです。
これらのデータは、顧客の「誰が」に焦点を当て、ターゲット層の特徴を明確にし、自社の商品やサービスに適したプロモーション戦略を立てる上で非常に役立ちます。
本記事では、デモグラフィックの基本的な概要から、その重要性、そして具体的なデータの活用方法や効果的な収集方法までを詳しく解説します。
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- デモグラフィックとは?
- なぜデモグラフィックが重要なのか?
- デモグラフィックとサイコグラフィックの違い
- デモグラフィックデータの具体的な活用方法
- 商品やサービスを利用している顧客層を把握する
- ターゲット層がどこにいるのか確認する
- 適切なターゲットに向けて販売しているか確認する
- デモグラフィックデータを効果的に収集する5つの方法
- アンケートを実施する
- WebサイトやSNSアナリティクスを解析する
- 顧客データベースを分析する
- 公的統計データを活用する
- パネル調査で長期的なデータを集める
- デモグラフィックでターゲット選定を成功させよう
目次
デモグラフィックとは?
デモグラフィックとは、人口統計学に基づいた顧客の属性情報を指すマーケティング用語です。主に以下の要素が含まれます。
- 年齢:20代、30代、40代など
- 性別:男性、女性、その他
- 居住地域:都心部、郊外、地方、特定の都道府県など
- 家族構成:未婚、既婚、子どもの有無、同居家族の人数など
- 年収:高所得者層、中間層、若年層の平均年収など
- 職業:会社員、公務員、自営業、学生、主婦など
- 学歴:高卒、大卒、大学院卒など
これらのデータは「デモグラフィック変数」とも呼ばれ、顧客の価値観やライフスタイルを間接的に把握する手がかりとなります。例えば、年齢や年収が異なれば、購買力や消費行動に差が出ることは想像に難くありません。
マーケティング戦略の初期段階である顧客分析において、自社の商品やサービスの見込み客(ターゲット)を特定し、絞り込む際に非常に役立つ要素です。
なぜデモグラフィックが重要なのか?
デモグラフィックの重要性は、顧客の利用状況を客観的に把握できる点にあります。デモグラフィックデータを詳細に分析することで、以下のような具体的なメリットが得られます。
- 購入・利用顧客の明確化:どのような顧客が、どの商品やサービスを購入・利用しているのかを具体的に把握できます
- ターゲット層のズレの発見と修正:当初の想定とは異なる顧客層が商品・サービスを購入・利用しているといった「ターゲットのズレ」を発見できることがあります。これにより、戦略の立て直しや、新たなターゲットの発掘、ひいては新商品開発への示唆を得られます
- プロモーション戦略の最適化:ターゲット層が明確になることで、広告の配信先や媒体、メッセージ内容を最適化し、より効率的かつ効果的なマーケティング活動が可能になります
- 市場理解の深化:顧客のデモグラフィック情報を集めることで、自社が参入している市場全体の構造やトレンドをより深く理解することにもつながります
デモグラフィックデータは、マーケティング戦略の「土台」となる情報であり、顧客行動の理解と効果的な施策立案に不可欠です。
デモグラフィックとサイコグラフィックの違い
デモグラフィックとよく比較される概念にサイコグラフィックがあります。この二つの違いを理解することが、より深い顧客理解につながります。
- デモグラフィック:顧客の表面的な属性(年齢、性別、居住地、年収など)を指します。「誰が」にあたる情報です
- サイコグラフィック: 顧客の心理的な属性や内面的な要素を指します。具体的には、性格、価値観、ライフスタイル、興味・関心、趣味、習慣、行動パターンなどが含まれます。「なぜ」購入するのか、その背景にある動機や心理を解き明かす情報です
デモグラフィックデータだけでは「30代男性会社員」といった大まかなターゲット像しか描けません。しかし、これに「外交的でアウトドア派、健康志向で新しいガジェットに興味がある」といったサイコグラフィックデータを組み合わせることで、ターゲットがより具体的に、立体的に見えてきます。
例えば、以下のように両方のデータを組み合わせることで、ターゲットのニーズや行動をより正確に予測し、効率的なマーケティング施策を展開できるようになります。
- デモグラフィック:30代男性、都市部在住、年収500万円、独身会社員
- サイコグラフィック:休日はキャンプや登山に出かけることが多く、最新のスマートフォンやスマートウォッチに関心が高い。SNSでの情報収集を好み、体験重視の消費傾向がある
デモグラフィックデータの具体的な活用方法
デモグラフィックデータをどの場面で活用できるか説明します。デモグラフィックデータを収集・分析してターゲットの購買意欲に直結させ、自社の業績向上につなげる方法です。
商品やサービスを利用している顧客層を把握する
デモグラフィック分析は、「どのような人が自社の商品やサービスを利用しているのか」を把握するうえで非常に役立つ手法です。
たとえば自社商品(デオドラントスプレー)のターゲットを以下のように設定したとします。
- 年齢:30代
- 性別:男性
- 居住地域:都市部
- 職業:会社員
- 年収:400万前後
- 学歴:大卒
- 家族:独身
この条件に合う人は、通勤や仕事で電車を使う機会が多く、また友人や同僚との会食に出かける場面も多いと考えられます。そうした場面で不快感を与えないよう「無臭タイプ」の商品を開発したとしましょう。
しかし実際に購入者の属性をデモグラフィックデータで分析してみると、意外な事実が見えてきました。
このように、デモグラフィックを活用することで、現実の顧客層を客観的に把握でき、ターゲット設定や商品戦略の見直しに活かすことができます。
ターゲット層がどこにいるのか確認する
デモグラフィックを活用することで、ターゲットとなる顧客が「どこにいるのか」「どのような場所に集まっているのか」を具体的に把握することができます。
顧客の属性によって、行動パターンやよく利用する場所は大きく異なるためです。
たとえば、30代の独身男性であれば、通勤途中に立ち寄る駅近くのカフェやレストラン、またはフィットネスジムなどが行動エリアとして考えられます。一方、50代・60代の既婚男性の場合、休日は自宅やその周辺で過ごすことが多く、生活圏も異なります。
こうした違いに応じて、広告の出し方や媒体選びも変える必要があります。30代独身男性には、InstagramやX(Twitter)といったSNS広告や、通勤中に目にする電車広告が有効でしょう。
対して、50代・60代の既婚男性には、新聞広告、テレビCM、YouTubeといったメディアが親和性が高いと考えられます。
このように、デモグラフィック分析を取り入れることで、ターゲットがどこにいるかを把握しやすくなり、効率的かつ効果的なマーケティング活動につながるのです。
適切なターゲットに向けて販売しているか確認する
デモグラフィックデータを活用することで、自社の商品やサービスが本当に適切なターゲット層に向けて提供されているかを確認することができます。マーケティングの方向性がずれていないかを見直す上でも重要な指標です。
たとえば、比較的高価格帯の商品を「30代・独身・年収200万円の男性」に向けて販売している場合、そのターゲットが本当に購入する余裕があるのかを検証する必要があります。
年収400万・既婚男性や年収800万・50代既婚男性とでは、価格に対する感じ方や購買判断の基準も異なるため、ターゲット設定によって販売結果に大きな差が出てくる可能性があります。
もし年収200万円の顧客層に対して高額商品を売り続けているとすれば、思ったような売上が見込めないのも不思議ではありません。
デモグラフィックは、価格帯とターゲット層がマッチしているかを見直す上でも、非常に有効な分析手段です。
デモグラフィックデータを効果的に収集する5つの方法
デモグラフィックデータの収集は主に5つの方法があります。ターゲット層を明確にするという目的に沿って収集します。アンケートを実施する
アンケートの実施は、デモグラフィックデータ収集で最も一般的に使われる方法の一つです。購入した顧客や見込み客から直接情報を集めます。
具体的な方法
- オンラインアンケート:メールマガジンや公式LINE、公式サイトを通じて、プレゼント付きのアンケートを実施する
- オフラインアンケート:セミナーやイベントの参加者にアンケートの記入をお願いする。時間に余裕があり詳細な情報を得たいときは、対面での直接のやりとりが効果的です
アンケートを通じて顧客の属性情報を得ることで、自社商品・サービスを継続して購入・利用する可能性のある顧客層を増やし、方向性の異なる顧客層への無駄なアプローチを避けることにつながります。
WebサイトやSNSアナリティクスを解析する
自社のWebサイトやSNSを運用している場合、アクセス解析ツールを活用して、訪問者やフォロワーの年齢、性別、居住地域などのデモグラフィック情報を把握することができます。
活用ツールとできること
- Google Analytics:Webサイトを訪れたユーザーの属性や行動傾向を確認でき、どのような層にサイトが支持されているのかが明らかになります。これにより、ターゲット層に合わせたコンテンツの改善や広告の最適化が可能になります
- SNSアナリティクス(Instagram、X(旧Twitter)、YouTubeなど): 各SNSに備わるアナリティクス機能で、フォロワーの属性データ(どの年齢層に人気があるか、どの地域からアクセスが多いか、性別の分布はどうかなど)を閲覧できます。これにより、投稿内容や広告配信の方針をより戦略的に設計できます
WebサイトやSNSの分析は、顧客の傾向を視覚的に把握しやすく、リアルタイムで改善につなげやすい点が大きなメリットです。
顧客データベースを分析する
企業が保有するCRM(顧客関係管理)や会員管理システムには、顧客の氏名、年齢、性別、購入履歴、登録された住所などの基本情報が蓄積されています。
これらのデータを分析することで、実際の購買層やリピート率の高い顧客層を特定できます。定期的な分析により、顧客の動向やトレンドの変化を把握し、マーケティング施策の改善に役立てることが可能です。
公的統計データを活用する
政府や自治体が提供する公的統計データも、デモグラフィック情報の収集に非常に役立ちます。
主な情報源
- 総務省統計局「e-Stat」: 国勢調査や人口動態統計などのデータを入手できます
- 各地方自治体の統計資料: 地域ごとの人口構成や世帯数、年齢分布などを把握するのに有効です
これらのデータは、エリアマーケティングや新規出店の計画、特定の地域におけるターゲット層の規模を把握する際に活用できます。
パネル調査で長期的なデータを集める
パネル調査とは、対象者を固定(パネル化)して、定期的・継続的におこなう調査です。つまり、同じ顧客に対して同じ質問を長期的に実施することで、時間の経過に伴う変化を捉えることができます。
パネル調査のメリット
- 対象者の変化を時系列で把握できる:例えば、年齢が上がることによる購買行動の変化などを追跡できます
- 効率的なデータ収集:同じ対象者から継続的にデータを取得できるため、都度新たな対象者を探す手間が省けます。
- 質的にも濃いデータ:長期的な関係性の中で、より詳細で深いインサイトが得られることがあります
ただし、パネルの維持にはコストがかかる場合がある点も考慮が必要です。
デモグラフィックでターゲット選定を成功させよう
デモグラフィックデータは、自社の利益を最大化させるマーケティング戦略の基礎であり、極めて重要な要素です。
飲食店や小売業など、実際に店舗に足を運んでもらう場合は特に顧客の心を掴むことが収益につながります。また、ターゲットが明確になれば、広告や販売促進などの戦略も効率的に打ち出せるようになります。
デモグラフィックデータを正しく活用することで、顧客獲得に繋がる有益な情報を入手し、ビジネスの成長を加速させることができるでしょう。
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