「エル・カズネ」と聞いてわかる人は少なくとも、映画「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」で聖杯の隠された遺跡と聞けば、ピンと来る人も多いだろう。
ヨルダンの首都アンマンから車で3時間程度に位置する「ペトラ遺跡」には、映画の中で一瞬にして我々を虜にしたあの美しい景色がある。
ペトラ遺跡はとにかく広い。著名な遺跡を見学するだけでもかなりの時間を要し、1日では到底時間が足りず周りきれない。それでも観光用に公開されているのは遺跡全体の約1%と言うから驚きだ。
実はペトラ遺跡の入場料は世界一高いと言われている(1日50DJ,日本円で約8,750円)。遺跡に入る前はその値段の高さに驚いたが、遺跡に入って納得。価格以上の素晴らしい景色とロマンがそこにはあった。



遺跡内の道中には、まだ発掘中の遺跡も多々点在する。形を成した美しい遺跡を見るのも楽しいが、これから形を成す遺跡を見るのも夢がある。発掘中の遺跡を見る機会はなかなか無いため、個人的にはかなりエキサイトした。
「エル・カズネ」を楽しみにしていたペトラ遺跡だったが、道中全てが楽しめる遺跡であり、数多く訪れた遺跡の中でも1位2位を争う素晴らしさである。

だだっ広い道を約1km歩いていくと、いよいよ冒険の始まり、シークの入り口に立つ。シークとは、高さ40mはある岸壁に囲まれた細い道の事。
頭の中にはインディージョーンズのテーマソングが流れ、歩くたびにワクワク感が増えていく。
岸壁の美しい模様と入り組んだ道を冒険家気取りで歩くこと約1時間。どこまでも続くかと思われるシークの先に突然、あの景色が現れた。
待ちに待った、エル・カズネである。

このシークから突如現わすエル・カズネの景色がとにかく感動的。どこまでも続くかと思われるシークの先に、ぼんやり見えるエル・カズネ。私が訪れたのは真夏だったため、灼熱のなか半ば朦朧とした頭で辿り着いたこの景色は今でも脳裏に焼き付いている。

シークを抜けると、そこにはエル・カズネが。
目の前に立ちはだかる岸壁からくり抜かれたその巨大な建築物は、神がかった美しさがある。建物は想像以上に大きく、あまりの美しさに言葉も出ない。長い道のりを自分の足で歩いてきたため、感動もひとしおである。

時間と共に変わる日の光によって映し出されるエル・カズネの姿もまた美しく、何時間見ていても飽きない美しさがここにあった。
数ある遺跡の中でも、これほどまでに美しく、壮大なロマンが詰まっている場所は無いように思う。どこか旅に行きたいと考えている人がいれば、私はペトラ遺跡をお勧めする。
非日常的な異空間が与えてくれる感動は、間違いなく人生の宝となるだろう。
(ゆめたび)