視覚の揺らぎと時間の層をテーマに、写真と絵画の融合を試みる作家・城田圭介氏が、静物画に焦点を当てた展示「視差と時差」を鎌倉のギャラリー「Quadrivium Ostium(クアドリヴィウム・オスティウム)」で開催する。

開催期間は5月8日(木)から5月20日(火)までで、5月10日(土)には、トークショーも行われる予定だ。

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写真と絵画の交差点で。「視差」と「時差」をめぐる旅

「視差と時差」と題された今回の展覧会では、城田氏が一貫して取り組んできた視覚表現の本質が、より純度の高い形で結晶化されている。作品はすべて静物画。そこに広がるのは単なる「物」ではなく、眼差しの重層構造そのものだ。

鎌倉の地で、静物画を通して自らの眼差しを知る。城田圭介「視差と時差」展

城田氏の制作手法は、まず、対象を写真に撮り、その後に同じアングルから絵を描く。重要なのは、この二つの行為が時間的にも視覚的にも分断されていること。描く時に写真は参照しない。完成した写真と絵は切り取られ、破られ、再構成され、同一平面上で共存する。

こうして生まれた作品は、観る者に「自分が何を、どのように見ているか」という深い自己への問いを突きつけてくる。異なる視点、時間、記憶が折り重なることで、日常では気づかない視覚のズレ=視差、時間のズレ=時差が浮かび上がる。

鎌倉の地で、静物画を通して自らの眼差しを知る。城田圭介「視差と時差」展

古美術や禅の思想。時を重ねるモチーフたち

今展のモチーフには、ギャラリーが所蔵する古美術品や自然物も取り入れられている。

たとえば、長い時間を経た陶器や禅思想を象徴する「まる・さんかく・しかく」の石。その石には「石はこれ石」という禅語に通じる思索性が宿る。素材としての石は変わらずとも、それを見つめる心象は移ろう。

鎌倉の地で、静物画を通して自らの眼差しを知る。城田圭介「視差と時差」展

城田氏の筆致は極めて繊細だ。写真と絵画の境界線を縁取るラインは、対象を断ち切るのではなく、共存させる役割を担う。そこには完全な一致もなければ断絶もない。むしろ曖昧さを受け入れることで、異なるものが並び立つ美しさが生まれている。

今回の展示で特筆すべきは、古物と現代的な素材が同一画面に共存していること。時間も意味も異なるものに、あえて混在する場を与えることで、目に見えるものの背後にある本質へと静かに誘う。

鎌倉の地で引き継がれていく美術体験

会場となるギャラリー「Quadrivium Ostium」は、鎌倉の閑静な地に佇む。ヨーロッパのアンティーク家具と日本の民藝家具が常時展示されており、作品と対話するための「場」として静かに機能している。都市の喧騒を離れ、思考を深めるのに相応しいロケーションだ。

鎌倉の地で、静物画を通して自らの眼差しを知る。城田圭介「視差と時差」展

会期中の5月10日(土)には、作家本人によるトークショーと作品鑑賞会、さらにレセプションパーティーも開催される。作品を前に言葉を交わし、作家と時間を共有する機会は、美術体験の質をさらに高める。アートが人生の密度を豊かにする。そんな実感を、鎌倉の地で味わってみてほしい。

城田圭介「視差と時差」
開催期間:2025年5月8日(木)~5月20日(火)※休み:5月14日(水)
営業時間:11:00~17:00
予約:不要
入館料:無料
会場:Quadrivium Ostium(クアドリヴィウム・オスティウム)
所在地:神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
ギャラリー公式サイト:https://quadriviumostium.com/

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000127951.html

(Fumiya Maki)

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