現代の視覚表現が進化を遂げるなか、写真家・外山リョウスケ氏は、光と時間の本質に向き合う新たな技法「Tempusgraph(テンプスグラフ)」を発見した。東京・麹町の東條會館写真研究所で開催される同氏の個展「Tempusgraph_拡張する写真の地平」では、写真という表現の始まりと未来が交差する。
技術と知性の融合を求める大人の鑑賞者にふさわしい、刺激的な空間が広がっている。
時を描くという発想。「Tempusgraph」の誕生
外山リョウスケ氏が考案したTempusgraphは、写真を単なる瞬間の記録から“時間の可視化”へと拡張する。フィルム面を90度回転させることで、光の進行方向と時間軸を一致させ、像の中に流れる時間そのものを映し出すという大胆な発想だ。
展示は、東條會館写真研究所の最上階から始まる。来場者はまず、Tempusgraph誕生の契機となった観察現象を再現したカメラオブスキュラ内に入り、像が流れる様を目撃する。これは写真というより、もはや“視覚哲学”とも言える体験だ。
さらに、ピンホールとレンズの登場による映像表現の進化、古代の哲学者アリストテレスと墨子の光学的発見など、人類が「光」に出会い、「像」に心を奪われてきた歴史をたどる。知の深みに引き込まれる、知的興奮を伴う旅路が待っている。
空間に溶け込む記憶。2会場での立体的体験
同展示は東條會館写真研究所とGalerie GEEK/ARTの2会場で合同開催される。麹町の本会場では、写真史と光学の発見を体験的に追体験できる構成が展開。
2会場を巡ることで、写真というメディアがいかに時間とともに変化し、同時に普遍性を帯び続けてきたかを、立体的に理解できる。アートの感性と、科学の知性。その両方に触れる、バランスの取れた贅沢な時間が過ごせるだろう。
時代を超えるまなざし。今こそ写真の起源に立ち返る
古代の哲学者たちが光の現象に心を奪われたように、現代を生きる私たちもまた、視覚と時間の関係に新たな問いを持つ時に来ている。Tempusgraphは、その問いへの応答だ。8月には暗室体験、9月には星空観察といった参加型のイベントも予定されており、単なる鑑賞にとどまらず、自らの手で“時を写す”体験が可能だ。
外山氏の視線は、かつて光が神秘だった時代と、今なおその本質に挑む現代をつないでいる。「Tempusgraph」が示すのは、過去の技術を現代に活かす力であり、見過ごされてきた美の再発見でもある。感性に投資することの価値を知る大人にこそ、ふさわしい体験がここにある。
「Tempusgraph_拡張する写真の地平」
会期:7月11日(金)~9月15日(月・祝)
会場:東條會館写真研究所
所在地:東京都千代田区麹町1-6-12
時間:13:00~19:00
開館日:金・土・日・祝
入場料:無料
公式サイト:https://photo-lab.tojo.co.jp/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000115847.html
(Fumiya Maki)
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