朱色が秘める力を、手に取るかのように味わう機会が訪れた。東京・パリ・ニューヨークを巡る「奇跡の根来塗り」展では、木曽の伝統工芸士・故小坂公一氏が生み出した漆器の傑作が展示販売される。
440年の時を超えて甦った中世の技法と、手作業の粋を極めた一点ものの美術工芸。珠玉の逸品に出会える場となるだろう。
瓶子 根来塗 小坂 公一 作
永遠を刻む朱色。根来塗の歴史と美学
朱は、火・血・太陽を象徴する色として、縄文時代から神聖視されてきた。その色を漆器に落とし込んだ「根来塗(ねごろぬり)」は、堅牢さと、時を経るごとに風合いを深める美しさをあわせ持つ。かつて和歌山・根来寺を中心に発展したが、戦乱により一度姿を消した。
2000年頃、再び命を吹き込んだのが、長野県木曽平沢出身の伝統工芸士・故 小坂公一氏である。生と死、破壊と再生というテーマを朱漆に重ね、すべてを手作業で仕上げた彼の作品は、使い込むほどに下地の黒がにじみ出てくるという不思議な魅力を持つ。数十年かけて完成する「育つ美」を体現した漆器だ。

「奇跡の根来塗り」展 3都市を巡る貴重な展示
今回の展示会では、小坂氏の遺作である貴重な根来塗の一点ものが並ぶ。東京・青山の「AREA Tokyo」を皮切りに、パリ、ニューヨークと巡回する国際的な企画だ。
展示作品は再制作不可能なすべて一点もの。気品と存在感を兼ね備えた品々は、アートとしての価値だけでなく、暮らしの中に静かに寄り添う道具としての機能も併せ持つ。
視覚的な美しさだけでなく、時間と共に変化する質感や表情も魅力のひとつ。手に取れば、作家の想いと伝統の重みが確かに伝わってくるだろう。

インテリアブランドAREAが発信する“本物”の価値
会場となる「AREA」は、家具と空間デザインを手掛ける日本発のインテリアブランド。東京、パリ、ニューヨークに拠点を持ち、日本の素材美と職人技にこだわった家具づくりを行っている。
無垢材や天然石、真鍮、ガラスといった素材を自在に扱い、家具産地の老舗工房で一点一点丁寧に製作。流行に左右されることのない、長く使える“本質”を見極めたデザインを追求している。

根来塗のような日本の伝統工芸と、現代的で洗練された空間との融合。それは単なる展示ではなく、「本物を日常に迎える」というライフスタイルそのものを提案している。時を超える伝統の朱に触れてみては。
小坂公一展「奇跡の根来塗り」
東京会場:AREA Tokyo 東京都港区北青山2-10-28 1F
東京会期:~8月17日(日)
パリ会場:AREA Paris 4 rue de l’Université 75007 Paris FRANCE
パリ会期:9月3日(水)~10月25日(土)
ニューヨーク会場:AREA New York 172 Madison Avenue, New York, NY 10016
ニューヨーク会期:11月14日(金)~2026年1月17日(土)
展示詳細:小坂公一展「奇跡の根来塗り」
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000107588.html
(Fumiya Maki)