リスト・ハンガリー文化センターでは9月10日(水)より、展覧会「ハンガリーへの想い~日本から紡いだ40年の軌跡~」が開催される。40年以上にわたってハンガリー刺繍の研究に取り組む伊東京子氏をはじめ、「繍の和」メンバー14名による約50点の作品を展示。

中欧の文化的アイデンティティを体現する芸術作品群が公開される。

ハンガリー刺繍が語る中欧文化の深層|歴史を針と糸で表現する伝...の画像はこちら >>

地方別技法が物語る、ハンガリーの文化的多様性

本展の核となるのは、ハンガリー各地で発達した独自の刺繍技法だ。南部カロチャ地方の「カロチャ刺繍」は、色鮮やかな花模様と繊細なかがりステッチのコントラストが魅力。

北部マチョー地方の「マチョー刺繍」は、ユネスコ無形文化遺産に登録された伝統技法。厚みのある糸による立体的な表現が印象的で、花の重なりが目を引く。

地方ごとに異なる刺繍技法が、文化的な多様性を感じさせる。

ハンガリー刺繍が語る中欧文化の深層|歴史を針と糸で表現する伝統工芸展が麻布十番で開催

針と糸が描く、ハンガリーの風土と記憶

同刺繍展では、ハンガリーの風景を題材とした作品も多く見られる。世界遺産ホッロークー村の中世的景観や、首都ブダペストのドナウ川沿いの歴史的建造物群が、精密な刺繍技法で再現された。

観光客にも人気の首都ブダペストをはじめ、ブダの丘から望む絶景やハンガリー各地ののどかな風景など、思わず深呼吸したくなるような情景は、まるでハンガリーを旅しているかのようだ。針と糸で紡がれた風景の中に、その地を愛した作り手の眼差しと個性、記憶が息づく。

伝統工芸が、現代に新たな価値を提案する

同展示会では、芸術作品としての刺繍に加え、クッションやバッグなどのインテリアアイテムも展示される。

ハンガリー刺繍が持つ温かみや華やかさは、ファッションだけでなく、インテリアの中でも自然に溶け込む。暮らしに彩りを添える手仕事の作品は、室内の空気を優しくする。“暮らしに息づく刺繍の魅力”が感じられるのも、同展示の魅力だ。

ハンガリー刺繍が語る中欧文化の深層|歴史を針と糸で表現する伝統工芸展が麻布十番で開催

東欧文化研究の先駆者による学術的取り組みも公開

本展の中心人物である伊東京子氏は、1983年以来40年以上にわたってハンガリー刺繍の研究と普及に従事。

日本における東欧文化研究の草分け的存在として、その活動は学術的にも高く評価されている。

会期中には実技ワークショップも開催予定。カロチャ刺繍とマチョー刺繍の技法指導に加え、10月29日(水)には伊東氏とハンガリー文化センター所長による対談イベントも実施される。

現代の国際的教養は、西欧中心主義を超えて中欧・東欧の文化的多様性を理解することにある。本展は、ハンガリー文化の奥深さを体系的に学べる絶好の機会だ。針と糸が織りなす中欧の文化史を、ぜひ体感してほしい。

旅する刺繍展「ハンガリーへの想い 日本から紡いだ40年の軌跡」
会期:9月10日(水)~11月28日(金)11:00-17:00
休館日:土日祝
会場:ハンガリー大使館文化部リスト・ハンガリー文化センター
所在地:東京都港区麻布十番3-8-1 日比谷麻布十番ビル1階
イベント詳細ページ:ハンガリー文化センター東京

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000132785.html

(春緒)

編集部おすすめ