世界的メゾンから注目を集め、大阪・関西万博迎賓館のタペストリーも手がけたアーティスト・川人綾(かわとあや)氏が、米国初の個展を開催する。
舞台はニューヨーク・チェルシーのギャラリー「GOCA by Garde」。
制御とズレを描く独自の表現世界
川人綾氏は、グリッド構造をベースに「制御とズレ」というテーマを探求し続けるアーティストだ。京都で染織を学んだ経験と、神経科学者の父の影響を受け、視覚と認知の関係を作品に取り込む。
その制作過程は緻密であるがゆえに必然的に“ズレ”が生じ、それが逆に独自のリズムや美しさとなって画面に現れる。
作品は幾重にも塗り重ねられた色彩と錯視効果によって、鑑賞者に穏やかなめまいをもたらす。温かみを帯びた幾何学的抽象の中に人間的な揺らぎを宿す表現は、工芸・科学・芸術を横断するアプローチとして高く評価されている。
シャネルによるコレクションやロンシャンの店舗空間を飾る壁面作品など、国際的に活躍の場を広げてきた背景には、このユニークな造形感覚がある。
大阪・関西万博に続く新しい挑戦
同氏は近年、大阪・関西万博の迎賓館に設置された大規模タペストリーのデザインディレクターを務め、大きな注目を集めた。伝統的な織物技術と現代的な美意識を融合させ、国内外で高い評価を獲得している。同展では、そのタペストリーの試作品も特別に公開される予定だ。
今回の個展で展示されるのは、約20点。新作ペインティングを中心に、グリッドを起点に視覚と認知の関係を探る作品群が並ぶ。鑑賞者は、抽象表現を通じて「見る」という行為の不確かさと豊かさに向き合うことになるだろう。
日本の伝統、神経科学的な思考、そして国際的な芸術文脈を接続する場として、この展覧会は特別な意義を持つ。
チェルシーで発信するアジアの才能
会場となる「GOCA by Garde」は、GARDE社がニューヨーク・チェルシーに開設した初の海外アートギャラリー。日本およびアジアの現代アートを世界に紹介する拠点として、これまでにも多彩な作品を発信してきた。
約200のギャラリーが集まるチェルシー地区は、世界屈指のアートシーンの中心地。その舞台に立つこと自体が、同氏の国際的評価を裏付けるものといえる。
同ギャラリーは、空間デザインの知見とアーティストとのネットワークを活かし、文化交流と対話の場を生み出している。そこで開かれる同氏の個展は、アジアの新しい表現を世界に示す象徴的な試みだ。
伝統と現代を行き来する同氏の作品は、ニューヨークの人々にも鮮烈な体験を提供するはずだ。
同氏の個展「Grids of Perception」に並ぶ、伝統と科学を背景に築き上げた独自の表現は、ニューヨークのアートシーンに新たな刺激を与えるだろう。能動的に「見る」ことの意味を問いかける同展は、国境を越えて響く現代アートの可能性を示していくかもしれない。
Grids of Perception
会期:開催中~10月25日(土)
会場:GOCA by Garde
所在地:GOCA by Garde 515 W 23rd St, New York, NY 10011
入場料:無料
公式サイト:https://www.goca.gallery/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000099560.html
(kyoko.)
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