この映画は1986年公開のアメリカ映画『トップガン』の続編である。
(『トップガン』のポスターから引用 イラストby龍女)
この作品が大ヒットしたことで、トム・クルーズ(1962年7月3日生れ)は、大スターの道を歩み始めた。
監督はトニー・スコット(1944~2012)である。

(トニー・スコット。 イラストby龍女)
兄のリドリー・スコット(1937年11月30日生れ)と共にCMディレクターからキャリアを始めた映像制作者だ。
他の代表作には『ビバリーヒルズ・コップ2 』(1987年)
『トップガン』と同じくプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーと主演トム・クルーズのコンビの
『デイズ・オブ・サンダー』(1990年)
クエンティン・タランティーノが脚本を手がけた『トゥルー・ロマンス』(1993年)がある。
『トップガン』は音楽と映像がマッチしたキャッチーな作品で、アメリカ海軍の志望者が増えるなど、CM効果もあった大ヒット作である。
監督のトニー・スコットの経歴にふさわしい出来であった。
トム・クルーズは続編の権利を買って、実は作らせないようにしていたらしい。
しかし満を持しての続編が制作されることになった。
撮影は2019年に終わっていたらしいが、コロナ禍の影響で公開が2年延びてしまった。
実は筆者も待ちわびていた作品であった。
公開5日目の5月31日にTOHOシネマズ立飛のIMAXが備えてあるスクリーン1で観た。
席はほぼ満席で皆食い入るようにIMAXでの迫力ある映像を魅入っていた。
前半、やや便が近いような感じがしていたが、それをすっかり忘れるほど後半が面白かった。
さて、何故こんなにヒットしているか?
簡潔に言うと映画らしい映画だからなのだが、具体的にどういう意味なのか?
映画が出来た時に何を観たいと思ったのか?
それから映画の歴史が始まったのと関係しているので、次にそれをひもといていこう。
映画の歴史の始まりは、
トーマス・エジソン(1847~1931)の部下ウィリアム・K・L・ディクソン(1860~1935)が1891年に発明したキネトスコープ。
これは大きな箱の中のフィルムに映した画面を覗き穴から観る。
オーギュスト(1862~1954)とルイ(1864~1948)のリュミエール兄弟が、それを大勢の人に観られるように1895年に改良したシネマトグラフである。
1896年の1月に上映された最も評判を呼んだ作品が
ラ・シオタ駅への列車の到着である。
50秒ほどの短い作品ではある。
みんなが観たかったのが
大きな乗り物が向こうから手前に動いていく姿だったのと言うのが興味深い。
覗き穴の頃は、人間が何か体を動かしている動画が作られていたが、大画面になると大きなモノが動いている姿が観たくなる。
フィルムが技術開発で段々長い上演時間で公開されるようになると、芝居付きの作品が好まれるようになった。
こうして大きな乗り物、人間が体を動かしている様子、芝居という映画の初期からの単純な要素が映画史の初期の頃は、大列車強盗や西部劇に求められていたが、やがては戦争映画やスポーツ映画も好まれてみられるようになった。
大きな乗り物に乗って人間同士が競い合っている映画はとにかく面白いのである。
それでは『トップガン』はどういう要素で面白いのか?
具体的に探っていこう。
『トップガン』の面白い要素とは何なのか?
具体的に幾つか挙げてみよう。
①海軍の戦闘機の迫力が凄い
トム・クルーズ演じる海軍の戦闘機のパイロットのピート・ミッチェルはコールサインをマーヴェリックという。
これが続編の副題にもなっている。

(『トップガン マーヴェリック』の1シーンから引用 イラストby龍女)
トップガンとはアメリカ海軍戦闘機兵器学校の通称で、かつてはカリフォルニア州ミラマー海軍航空基地にあった戦闘機搭乗員養成機関であった。
前作はそこで教育を受けた若き候補生の訓練の様子を描いた内容であった。
マーヴェリックは今回はトップガンを卒業した若いパイロットたちの教官として登場している。
Fー14トムキャットが大活躍する。
続編の今回のメイン機は、F/A-18スーパーホーネットだが、1993年に退役したはずのトムキャットも再び登場してくる。
戦闘機が急激に高度を上げる時に高いGがかかる。
その時の圧迫感が俳優の表情とエンジン音と息遣いで伝わってくる。
②ライバルと競い合う。
マーヴェリックのライバルのパイロットとして
アイスマンことトム・カザンスキー海軍大尉(ヴァル・キルマー)が出ていた。
今回は海軍大将に出世して、マーヴェリックを教官として招聘する上官として登場していた。

(『トップガン』の1シーンから引用 イラストby龍女)
もう一人の主役と言っても過言ではないのが、前作で戦闘中に戦死してしまった相棒ニック・“グース”・ブラッドショウ 海軍中尉の息子、
ブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ海軍大尉を演じるマイルズ・テラー(1987年2月20日)である。

(『トップガン マーヴェリック』の1シーンから引用 イラストby龍女)
そのライバルは、ジェイク・“ハングマン”・セレシン海軍大尉(グレン・パウエル)。

(『トップガン マーヴェリック』の1シーンから引用 イラストby龍女)
某国のウラン製造施設を破壊するためにわずか2~3週間の訓練を重ねていく。
その任務をどっちが命ぜられるか競い合うのである。
③恋愛要素がある。
海軍の軍人が常連のバーの店長として、登場するのが、マーヴェリックの元恋人の
ジェニファー・コネリー(1970年12月12日生れ)演じる
ペニー・ベンジャミンである。

(『トップガン マーヴェリック』の1シーンから引用 イラストby龍女)
この登場人物は前作には登場してこなかったが、台詞では言及されていた。
まだくっついたり、離れたりしていたんかい!
とツッコミたくなるようなクスッと笑える要素でもある。
続編の企画が上がったときは、2010年でまだトニー・スコットが存命であったそうだ。
2012年に橋から飛び降りて亡くなった。
後の監督に決まったジョセフ・コシンスキー(1974年5月3日生れ)はプレッシャーだったろう。
『オブリビオン』(2013)でトム・クルーズと組んで、決まったそうだ。

(ジョセフ・コシンスキー。 イラストby龍女)
出演者たちが実際に戦闘機に乗って体を張った映像は大画面の映画館でこそ観てわくわくするモノである。
改めて映画の醍醐味を味わった。
大きい乗り物は、誰もが乗れるわけでは無く、憧れる対象だ。
それに乗った気になる体験は映画の本質が何かを如実に教えてくれるのである。
※最新記事の公開は筆者のFacebookとTwitterにてお知らせします。
(「いいね!」か「フォロー」いただくと通知が届きます)