今回のテーマは、6月24日公開の映画『ザ・ロストシティ』である。

筆者は予告編を繰り返し観て
「これは久々のバカ映画で楽しみだぞ」
と思った。


小説家ロレッタ・セージを演じるサンドラ・ブロック(1964年7月26日生れ)は一応考古学者崩れの知性派の役だが

もしかしてパクり?サンドラ・ブロック、チャニング・テイタム、...の画像はこちら >>

(サンドラ・ブロック イラストby龍女)

小説のカバーモデル、アダム・キャプリズンを演じるチャニング・テイタム(1980年4月26日生れ)は、俳優になる前にしていた男性ストリッパーを演じた『マジック・マイク』(2012年)や

もしかしてパクり?サンドラ・ブロック、チャニング・テイタム、ブラッド・ピットが共演の『ザ・ロストシティ』には元ネタがあった!

(『マジック・マイク』のチャニング・テイタム イラストby龍女)

『フォックスキャッチャー』(2014年)ではレスリングのロサンゼルスオリンピック金メダリストのマーク・シュルツを演じてきた。
肉体派の俳優である。

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(『フォックスキャッチャー』のチャニング・テイタム イラストby龍女)

中米のジャングルで、ジャンプスーツの女と、スウェットのパーカーとカーゴパンツの男が大自然に似つかわしくない格好で脱出しようとしている姿はそのギャップだけでおかしい。
川を渡ると、アダムの背中にヒルが吸い付いて服を脱ぐ。
ロレッタはヒルをとる羽目になる。

他にも悪役の大富豪フェアファックス役には『ハリー・ポッター』シリーズの主役を務めたダニエル・ラドクリフ(1989年7月23日生れ)、

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(『ザ・ロストシティ』の大富豪フェアファックスを演じるダニエル・ラドクリフ イラストby龍女)

助けに来る元軍人でヨガのインストラクター兼冒険家ジャック・トレーナーに
ブラッド・ピット(1963年12月18日生れ)が出る。

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(『ザ・ロストシティ』のブラッド・ピット イラストby龍女)

女性の小説家の主人公のアドヴェンチャー・コメディ…
中高年の映画ファンなら、あの作品を思い出すだろう。
あの作品を簡単に紹介する。
女性の小説家が主人公の冒険活劇モノと言えば、

『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984年)である。

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(マイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナー。『ロマンシング・ストーン』の1シーンから引用 イラストby龍女)

ロバート・ゼメキス監督が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の前に撮った作品。
主演はキャスリーン・ターナー(1954年6月19日生れ)とマイケル・ダグラス(1944年9月25日生れ)である。

マイケル・ダグラスは制作を兼ねている。

マイケル・ダグラスは俳優と共にプロデューサーとしても有能な人物だ。
精神病院を舞台にした『カッコーの巣の上で』(1975年)はアカデミー賞作品賞を含む5部門を受賞。
原発を題材にした『チャイナ・シンドローム』を制作・出演するなど、政治的な一面を示している。

一方で、キャスリーン・ターナーとダニー・デヴィート(1944年11月17日生れ)のトリオでは、娯楽作を手がけている。
1985年の続編『ナイルの宝石』がある。
制作では無いが、マイケル・ダグラスが主演の離婚騒動を題材にしたブラックコメディ『ローズ家の戦争』(1989年)はダニー・デヴィートの監督出演作品である。

『ザ・ロストシティ』には、元ネタと思われる作品がもう一つある。
監督のアーロン・ニーとアダム・ニーの兄弟は、Eテレで放送されている『太田光のつぶやき英語』でのインタビューで
「『レイダース』や『ロマンシング・ストーン』のような作品を作りたかった」
と2作品、過去の80年代の冒険活劇モノを挙げた。
したがって、ハリソン・フォードがインディー・ジョーンズを演じたシリーズ第1作『レイダーズ』(1981年)も元ネタと言いたいところだが、
インディー・ジョーンズという考古学者で冒険家のキャラクターには、モデルがいるのだ。

この映画のタイトル『ザ・ロストシティ』の由来になっている実在の物語を映画化したある作品を次に紹介したい。
『ザ・ロストシティ』の元々の題名は『ザ・ロストシティ・オブ・D』であった。

映画本編の中では、小説家のロレッタ・セージ(サンドラ・ブロック)が書いたとされる冒険恋愛小説の題名である。
大富豪のフェアファックス(ダニエル・ラドクリフ)がここに描かれたお宝が実際にあると思って、ロレッタを拉致してプライヴェート・ジェットで小説に書かれた島へ運んでいく。

2016年に『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』と言う映画が公開された。
名前は似ているが、シリーズ作品ではない。
ノンフィクション小説が原作で『ザ・ロストシティ・オブ・Z』が原題だ。
『ザ・ロストシティ』の劇中の冒険恋愛小説の題名は、このノンフィクション作品をもじった。
こちらの作品の方は、パーシー・フォーセット(1867~1925)という地図・考古学者で冒険家の人生を描いた。
彼は幻の黄金都市Zがあると思って、ブラジルの内陸部のマットグロッソ州で消息を絶つ。

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(『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』パーシー・フォーセットを演じるチャーリー・ハラム イラストby龍女)

この映画の制作会社が
ブラッド・ピットが代表のプランBエンターテインメントである。

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(『リバー・ランズ・スルー・イット』の時のブラッド・ピット イラストby龍女)

『ザ・ロストシティ』は、80年代の冒険活劇モノ、女性が主人公の『ロマンシング・ストーン』の要素にインディー・ジョーンズを足した。
インディー・ジョーンズのモデルとなった考古学者のノンフィクション小説の題名を借りて、作られた。
『ロマンシング・ストーン』の主人公は小説家ではあるが、『ザ・ロストシティ』では学者から転向した人物になっている。

ロレッタの夫は考古学者で、中米にある遺跡の古代文字を解読しようとしていた。
小説の中で、書かれている遺跡の宝の手がかりとなる象形文字が本編のお宝探しの手がかりとなる。
『ザ・ロストシティ』 は『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』の考古学者パーシー・フォーセットの要素を、主人公ロレッタの亡くなった夫のキャラクター設定に組み込んだと思われる。

もう一つ、『ザ・ロストシティ』の内容と関係ないが、ブラッド・ピットとサンドラ・ブロックの関係が分かる作品がこの秋に公開される。
日本の人気小説家・伊坂幸太郎の『マリア・ビートル』を元にした『ブレット・トレイン』である。
これは日本の新幹線で繰り広げられるクライムアクションだ。
ブラット・ピット扮する殺し屋レディ・バグ(テントウムシ)が、新幹線で他の4人の殺し屋とアタッシュケースに入ったブツをめぐって争奪戦をしていると、ギャング団との抗争に巻き込まれるアクションモノである。
サンドラ・ブロックは、レディ・バグに仕事の指示をするマリア役である。

サンドラ・ブロックの出世作のバスジャックモノの『スピード』(1994年)は、

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(『スピード』のサンドラ・ブロック イラストby龍女)

日本の映画ファンの一部では、元ネタは『新幹線大爆破』(1975)と言われている。
時速80キロ以下になると爆破する仕掛けの時限爆弾に翻弄されるプロットがまったく同じだからである。

今回は新幹線を題材としたアクションモノで、『新幹線大爆破』はハリウッドでも有名な作品なのでサンドラ・ブロックも出演を快諾したのだろう。
この作品には日本人キャストでは、『新幹線大爆破』に出演していた千葉真一の弟子である真田広之が出ている。


サンドラ・ブロックは、ジョージ・クルーニーと仲良しのハリウッド俳優(ブラッド・ピット、マット・デイモン、アンディ・ガルシア)が出演した犯罪映画『オーシャンズ11』シリーズの女性版
『オーシャンズ8』(2018年)で主役を務めるなど、ブラッド・ピットとは仲が良いようである。

ブラット・ピットは出演者名にはクレジットされているが、出番は少ない。
ただ自分がイケメンである事をネタにした役柄で、楽しんでいる様子がうかがえる。
このシーンでは、3人で拉致現場から逃亡するときに爆風から逃れる瞬間に
スローモーションで、ブラッド・ピットは
長い髪をファッサーと靡かせるところで笑ってしまった。

もしかしてパクり?サンドラ・ブロック、チャニング・テイタム、ブラッド・ピットが共演の『ザ・ロストシティ』には元ネタがあった!

(『ザ・ロストシティ』の1シーンから引用 イラストby龍女)

このような冒険活劇モノは元々はB級映画であった。
B級とは内容では無く、制作予算が低いことを指している。
70年代くらいまでの昔の映画は、二本立てが多く、メインの映画の方はA級としてそれなりの高い予算で2時間ほどの上映時間だが、併映の作品は1時間前後の中短編で低予算の映画が作られた。
ハリウッドの大手映画会社スタジオが機能していた頃は、新人監督が作るB級映画が同時上映されていたのである。
メインの作品も含めて興行成績がよいと、やがて監督はメインの作品の方もとらせてもらえるようになっていった。

『ザ・ロストシティ』は、久々に何も考えずに観られる娯楽映画の程をなしているが、冒険活劇映画にもそれなりの歴史が流れているのである。

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