ゲーム業界では、これまで数多くのコラボレーション企画が行われてきました。ゲーム内イベントや現実世界で実施されたものなど、その方向性は多岐にわたっています。
しかし数多あるコラボ企画の中でも、ひときわユニークさが光る、かつてない試みが実現しました。

セガゲームスが贈る『蒼き革命のヴァルキュリア』(1月19日発売)と、コーエーテクモゲームスが放つ『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』(3月30日発売予定)は、いずれも2017年のゲーム業界をいち早く彩るタイトルとして注目を集めています。そしてこのたび、両タイトルのコラボ企画として、それぞれのキャラクターデザイナーによる対談が、「横浜みなとみらい 万葉倶楽部」にて催されました。

ご存知の方もいるかと思いますが、「横浜みなとみらい 万葉倶楽部」はいわゆる入浴施設。そのため、温泉や足湯に浸かりながら、お互いが携わったゲームに関する話や絵の魅力などを語る形に。筆者自身の取材経験のみならず、他のライターさんが取材した企画などを見渡してみても、湯船に浸かりながらキャラデザイナーが語らうという企画は初耳です。

そんな、いつもとは違う意味で「刺激的な」対談の模様を、こちらで紹介させていただきます。なお、今回対談に臨んだ『BLUE REFLECTION』キャラクターデザイン・監修の岸田メル氏と、『蒼き革命のヴァルキュリア』キャラクターデザインの清原紘氏は、それぞれ独特なタッチで男女を問わず魅力している方々ですが、いずれも男性。“嬉し恥ずかし”なハプニングはないのでご注意を!

◆“ひと肌脱いだ”大胆対談! 文字通り赤裸々なふたりに迫る

まずは、貸し切りで入浴できる「家族風呂」に浸かっているお二人に、各メディアを交えての対談を実施。両名ともタオルのみ腰に巻いた入浴スタイルで、取材陣に向き合いました。清原氏は狐面を被っているものの、ほぼ全裸で行う対談は、お二人にとっても初めての体験だったことでしょう。無論、そんな姿の方々に取材を行うのは、筆者も初体験でした。


──本日はよろしくお願いします。

岸田メル氏:イラストレーターの岸田メルです。コーエーテクモゲームス ガストブランドの『BLUE REFLECTION』で、キャラクターデザインと監修としております。よろしくお願いします。

清原紘氏:漫画家・イラストレーターの清原紘と申します。今回セガさんから出た『蒼き革命のヴァルキュリア』のキャラクターデザインを担当させていただきました。よろしくお願いします。

──まずは、お互いが携わったタイトルの印象をお聞かせください。

岸田氏:キヨさんが(新作の)『ヴァルキュリア』のキャラクターデザインをやるんだと知った時は結構驚きましたね。あ、僕らは昔から面識があり、付き合いも長いんですよ。なので、友達として「いいな」と思いましたね。

──その「いいな」は、「うらやましいな」ではなく、「おめでとう」という意味ですね?

岸田氏:はい、そうです。


清原氏:僕は常に(岸田さんを)「うらやましい」と思ってますけどね(笑)。

──清原さんの方は「うらやましい」んですね(笑)。では、そのお話は後でじっくりと。

岸田氏:それで……友人としても、1ファンとしても、どんなキャラクターが出来上がってくるのか楽しみだなと思ってたんです。そして出来上がったキャラクターのデザインはやっぱり、キヨさんのいいところが出ているなと感じました。キヨさんのいいところって、描線の細かさと綺麗さ、あと耽美なんですよね。ヒロインのデザインも魅力的ですし、特にアムレート(主人公)のデザインがいいなと思って。

キヨさんのこれまでの作品で、ここまで男性キャラが強く出ているのってあまりないと思うんですよね。描かれている漫画も、どちらかと言えば女の子が色濃いですし。そういう意味で、新鮮でありつつ凄く恰好良いなと。耽美なキャラが好きなので、個人的にも魅力的なキャラクターだなと感じてます。

当時、多分デザインしている時だと思うんですけど、「ファンタジーの絵を描いていて、ちょっと悩んでるんだ」みたいな話をしていたこともありましたね。
キヨさんは、もともと細かい感じの絵が得意だから、「そんなに気負わず、好きな感じで描けばいいと思いますよ」みたいに答えましたし、実際出来上がったものはファンタジー然としてて、すごく良かったです。流石だなと思いました。

清原氏:そんなに褒めてもらえるなんて……。

岸田氏:しかも裸でね(笑)。

清原氏:褒められるシチュエーションがこれっていう(笑)。

──では続いて、清原さんお願いします。

清原氏:メルさんが、『BLUE REFLECTION』でキャラクターデザインだけでなく、ゲームの深い部分まで彼が監修すると聞いて、僕も1ファンとして楽しみにしていたんです。そして出来てきたものを見ると、すごくビックリしました。というのも、今までのメルさんの絵とは少し違うな、という印象を受けたんです。

メルさんとは長い付き合いで、もう10年以上になるんです。なので、昔からメルさんの絵を見てきているんですが、「(今回)また進化したな」と感じました。変な言い方になるんですが、ちょっとエッチと言うか、女の子のセクシーな部分が描かれていて。


それが下品な感じにはならず、メルさんの繊細で上品なタッチで描く「可愛さ」にプラスアルファされており、このバランスが絶妙だと思いました。同じものを描くことに留まらず、新しい変化を取り入れようとする姿勢のようなものが伺えたので、素晴らしいなと率直に感心しました。

──そんなお二人が、今回のユニークなコラボレーションを行うに至ったきっかけを教えてください。

清原氏:以前、メルさんがツイキャスに出ていたんですよ。で、その時に『ブルリフ(BLUE REFLECTION)』の販促というか、色んな人に買ってもらいたくて……みたいな話をしていて。そこで僕がコメントで「『蒼ヴァル』(蒼き革命のヴァルキュリア)ともコラボしてよ」と発言したら、「しようしよう! ちょっとメール送るわ」みたいな感じになりまして。そんな感じで始まって、行き着いた先がこれ(温泉)ってのも凄いですよね(笑)。

岸田氏:そのツイキャスの件、僕は完全に忘れちゃってるんだけどね(笑)。

──(笑)

岸田氏:『ブルリフ』でガストブランドの長野の開発部に参加させてもらっているんですが、その開発部内でも『蒼ヴァル』はすごく話題に上ってましたね。そこで、イラストレーター繋がりでなんか出来たらいいよねって話にはなっていたので、「じゃあ(清原さんに)話してみます」という感じで。

──ちなみに、温泉施設で対談という企画になった経緯というのは?

お互いの会社がどちらも、結構理解があるというか、「好きな感じでやってくれていいよ」みたいに言われたので、じゃあどうしよかなと。普通にコラボイラストやりましたとか、ありふれてますし、仲が良くなくても出来るじゃないですか。


お互い気心が知れてるんだから、「普通だったらないだろ」みたいなことをやらないと良くない、みたいな話をしたんですよ。その結果、「温泉みたいな場所でふたりで対談したら、ページビューも伸びるんじゃないか」って(笑)。

清原氏:最初は、全部お任せしていたんですよ。「面白いことしようよ」という話を聞いた上で、プロデューサー経由で進行してまして。そしてある日、確認が来たんです。「こういう感じの企画になっていますが、本当に大丈夫ですか?」って(笑)。

──企画内容が要確認だったと(笑)。

岸田氏:(温泉の話は)前から言ってたよ? ギャグだと思ってたかもしれないけど(笑)。

清原氏:こんな“どうかしている企画”が、まさか本当になるなんてね(笑)。

岸田氏:僕も軽く言って実現したけど、思ってたよりも現実は重たいなって感じてるよ(笑)。この空間の圧力に耐えられない……!

──実際に入ってみて、今の気持ちはいかがですか?

岸田氏:……不思議な気持ちです(笑)。

──ちなみに、今回の企画を記念するコラボイラストを後日描かれると伺いましたが、どのような内容になりそうですか?

清原氏:それぞれの作品のヒロインを描こうという話にはなっていて、温泉企画なのでそういうシチュエーションにしようかと。


岸田氏:(今浸かっている家族風呂を指して)これに入ってる絵を描けばいいんじゃないかな。帰り際、写真を撮らせてもらってさ。

──コラボイラストの完成、お待ちしております。

◆ふたりのモチベーションはちょっと意外な理由? 更なる内面に直撃

続いては、場所を足湯に移し、お二人に独占インタビューを実施……する予定でしたが、足湯は展望エリアに設置されていたため、悪天候が直撃。雪まじりの雨がちらつく中、足湯を敢行するものの、このまま取材をしては色んな意味で一大事になると判断。写真だけ納めた後、インタビューは室内で行わせていただきました。

なお、悪天候の中でもお二人は楽しそうな表情を浮かべ(清原氏は狐面ですが)、寒さに負けない笑顔とポーズで、足湯の心地よさを伝えてくれました。その模様は、画像で直接お確かめください。

──それでは、引き続きよろしくお願いします。さきほど長いつき合いと伺いましたが、知り合った最初のきっかけを教えてください。

岸田氏:キヨさんが自分のホームページをやられていて、ウチにリンクを貼ってくれてたんですよ。そこでキヨさんのことを知りまして。当時のホームページの名前って、なんだったっけ?

清原氏:「サンフラワー」だったかな? 今は「シュガーレス」でやってます。

岸田氏:すごく女性的なタッチなのが印象的でした。女性なのか男性なのか、どっちなのか分からなくて。むしろ女の子だったいいのに、って思ってました(笑)。

清原氏:当時、僕も(岸田さんに)同じことを感じてました(笑)。彼のホームページで「20歳になりました。成人式しました。坊主にしました」って書いてあった時、そんなバカなと衝撃を受けたんですが、「きっと“オシャレボウズ”なんだ」と思い込もうとしたこともありまして(笑)。

岸田氏:ファッションに違いない、って?(笑)

清原氏:実際に会ったら男の人だったので、「男か……」と舌打ちしたんですけども(笑)。

──それは何年前くらいのお話ですか?

岸田氏:12年とか、それくらい前の話ですね。

清原氏:当時の自分に言っても絶対信じないでしょうね。メルさんが後々、剣を持って輝くんだぞ、って(笑)。ちなみに、仮面被って剣を持ってバズった時、事前に相談を受けてたんですよね。IRCで。

岸田氏:仲のいいメンツが集まるチャットルームでね。

清原氏:「こういうことしようと思うんだけど、どう思う?」って。あと、「どの仮面がいいかな?」とか。

岸田氏:うんうん、やったわ、それ(笑)。

清原氏:「これだとちょっと派手過ぎない?」「ちょっと高いけど、これの方がいいよね」「これ大きすぎない?」「でもこっちはデザインが……」みたいな。何人かの友達とディスカッションして、ある意味プロデュースしたものだったんですよ(笑)。

岸田氏:買ったんだけど、実際に付けてみたら意外とショボかったりしたんだよね。

清原氏:あ、言ってたよね。

岸田氏:それで却下したりとかね。

──こだわり抜いた末での到達点だったんですね。

岸田氏:パッと見のインパクトがあった方がいいかなと(笑)。

──今回の企画にも通ずるところがありますね(笑)。ちなみに、さきほどの対談の際に、清原さんから「うらやましい」との発言がありましたが、その辺りのことをもう少し詳しく教えていただけますか?

岸田氏:(清原さんは)自分以外の全員が羨ましいもんね、嫉妬の塊(笑)

清原氏:すごく語弊がある言い方(笑)。……えっと、僕はネガティブなんですよ。メルさんとは付き合いが長いので、彼が人気者になっていくところを間近で見ていたわけです。仕事面でも、アニメやゲームのキャラクターデザインを手がけるなど、華のある仕事をして実績がどんどん積み重なっていく。それを目の前で見ながら、歯ぎしりはしてました(笑)。

──歯ぎしりを(笑)。

清原氏:その時僕は、漫画家としてデビューして、ずっと漫画を描いていました。イラストをやり始めたのは、5年くらい前のことですね。そして近年はイラストメインでやってましたが、一番身近にいたイラストレーターが彼だったので、細かく相談に乗ってもらったこともありました。

その時に、イラストレーターは内向的な方が多くて、自分からイベントに出たりする人がいないから、「じゃあ俺が」という気持ちで前に出ているという話を聞いて……さすがに剣を持ったり金粉を塗りたくる勇気はないんですが(笑)、「なるほど」と思うところがあったので、海外のイベントや専門学校の講師などに呼ばれた時は極力出るようにしています。彼の影響が強いところですね。

岸田氏:ふたりでステージに立って歌ったこともあったしね(笑)。

清原氏:そんなこともあったね(笑)。

──身近にいる相手だからこそ、影響が強かったり、栄光もより輝かしく見えたわけですね。

岸田氏:キヨさんはよく「羨ましい羨ましい」と言うんですが、漫画家としてのキャリアも順調に積んでいて、イラストレーターとしての実績も評価されているので、何を羨ましがる必要があるのかよく分からないんですけどね(笑)。

まあでも、それがキヨさんのモチベーションやエネルギーに繋がってますしね。人への妬み嫉みで(笑)。

清原氏:そうそう、嫉妬でね(笑)。

岸田氏:でも本当に、僕なんかと違って真面目で、締め切りとかも守る人で(笑)。そういった意味でも尊敬してます。本当に、宿題やってないと言いながらやってるタイプなんですよ。お互い「やってないよー」と言いながら、提出出来ないのは僕だけっていうね(笑)。

清原氏:何度か危ないことはあったし、今も危ないんですけど(笑)、最終的になんとか間に合うようなラインは必死で守ってます。

──よろしければ、続いて岸田さんのモチベーションもお聞かせください。

岸田氏:あれこれ言いましたけども、根っこのところは近いんですよ。当時、学生生活とかにうまくコミットできなかったので(笑)。そういった気持ちを、表現で昇華するといった面がありますね。

ゲームのキャラクターデザインなどは、自分の憧れでもあるし楽しかったんですが……実際にやってしまうと、ひとつ目標が達成されてしまったような感じになって、しばらくモチベーションが湧きづらかったこともあるんです。

──そんな時期があったんですね。どのような形で抜け出せたんですか?

岸田氏:人間って、慣れるじゃないですか。幸せだったことも、時間が経つと幸せと感じられなくなったりして。だからこそ、逆に「いけるな」と。結局、不満って生まれてくるんだな、って実感しました(笑)。

日々の不満やうまく行かない気持ちはどうしてもあるので、綺麗なものを描くことで自分自身も癒やされたいんだと思います。それが一番のモチベーションかもしれません。

あとは、最近すごくアイドルが好きなんですが、ステージ上で輝いてる姿を見てると、「誰かに憧れられるものを作りたい」という気持ちも強く湧いてきて、それもモチベーションのひとつになってますね。

──ちなみに今回の温泉対談に関してですが、『BLUE REFLECTION』ではお風呂場のシーンもありますよね。そういったシーンがあったことも、関係しているんですか?

岸田氏:それは……残念ながら、まったく関係ないですね(笑)。

──無意識だったと(笑)。

岸田氏:そうですね(笑)。

──あとこれは「もしも話」なんですか、もし仮におふたりでゲームを作るとしたら、どんなものにしてみたいですか?

岸田氏:趣味を爆発させたいよね。人の目とか関係ないような(笑)。

清原氏:そうだよね(笑)。

岸田氏:キヨさん、暗いのがいい?

清原氏:暗いの好きだね。

岸田氏:じゃあ、暗いの作ろうか(笑)。

清原氏:メルさんは、暗いのってどうなの?

岸田氏:暗いのも好きだし、明るいのも好き。暗いなら極端に暗い方がいい。CEROだと通らないくらいの(笑)。

──ぜひ見てみたいので、もしもの実現を期待しています(笑)。それでは最後となりますが、今後の活動に関して、目指す方向性や指針などがありましたら教えてください。

岸田氏:今回『BLUE REFLECTION』では、監修というちょっと特殊な立場で関わらせていただきました。ゲーム開発でもチームの一員として参加させていただいて、「こういう形じゃないと作れないものを作れた」と感じましたし、やり甲斐もありました。なのでこれっきりではなく、近いことをこれからもやれたら素晴らしいなと思いますし、それでしか作れないものをやりたいです。またイラストレーターとして、これからも新しいことにチャレンジしていきたいなと思っています。

清原氏:僕は、今は漫画の方で手一杯なんですが、一時期は漫画から離れてイラストをずっとやっていました。なので、イラスト1本でやっていた時に得たものを、今漫画の方に活かしていきたいなと考えているところがあります。

そして今回、『蒼き革命のヴァルキュリア』のキャラクターデザインを通して得たものもすごく大きかったので、ジャンルごとに学べるもの、拾えるものは色々あるんだなと改めて実感しました。ただ絵を描いているだけでは正直つまらないので、イラストや漫画に限らず、他業種の方とのコラボとか、携われる機会があれば新しい仕事を積極的に引き受けていきたいなと思っています。

──では、今後またゲームの話などが来たら、清原さんのデザインで遊べるんですね。

清原氏:そういう話があれば、是非やりたいですね。

──おふたりの更なる活躍、楽しみにしています。本日はありがとうございました!

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コラボレーションイラストの発表は後日改めて行われますが、今回の対談インタビューを祝し、記念イラストを描き下ろし。岸田氏は狐面に隠されていた素顔(!?)を、そして清原氏は温泉対談だからこそ明らかとなった事実(!!)を描かれました。どうぞ、ご覧ください。

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