『半熟英雄』。それは、記念すべき第1作目が1988年にFC向けに作られ、以降SFCやPS2など、様々なプラットフォームに登場。
本シリーズの主軸はシミュレーションながらも、複雑さは極力排除し、誰でも楽しみやすく間口の広いシステムを採用。その一方で、戦局がリアルタイムに変化するなど、RTSの要素をいち早く取り入れた点も関心を集めました。
そしてなにより注目を集めたのが、全編に渡って広がる明るくコメディタッチな世界観と演出。主人公からして、パワフルながらもどこか抜けており、まさに“半熟な英雄”として、ギャグテイストたっぷりに描かれます。その傾向が特に増したのは、SFC版『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』で、この作品で本シリーズに初めて触れた方も続出しました。
ですが本シリーズの展開は、バーチャルコンソール化を除くと、ここ数年新たな動きはありませんでした。どこか憎めない、愛嬌に満ちた主人公や登場人物、そしてバトルを大いにサポートし、またユニークな名称やフォルムでも印象深い「エッグモンスター」たちの活躍は、少し遠い日々となっていました。
しかし、「不朽の“迷”作、堂々復活!」との一文を掲げ、iOS/Androidアプリ『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』を発表。SFC版をベースに、操作方法をスマホ向けに最適化。さらに新要素なども加えて登場する、懐かしさと新しさを織り込んだ『半熟英雄』が2017年10月19日に落としきり方式でリリースされます。
本作の登場を待ち遠しいばかりですが、リリースに先駆ける形で、その魅力や新要素についてプロデューサーの時田貴司氏にインタビューを実施しました。
◆懐の広い『半熟英雄』は、スマホで更に快適に
──本日は、お忙しいところありがとうございます。iOS/Androidアプリ『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』についてお訊きしたいことは山のようにありますが、まずは、なぜ今『半熟英雄』だったのでしょうか?
時田氏:僕はこれまで色んなゲームを作ってきているんですけども、(その中でも)『半熟英雄』は割となんでもできちゃうタイトルなんですよね。
──確かに、受け皿の大きさというか、懐の深さがありますよね。
時田氏:今って、どんなエンターテイメントでも、規制や自粛が厳しいじゃないですか。そういった「モノ作りの閉塞感」を破りたかったんです。
──そこで『半熟英雄』シリーズに白羽の矢が立ったわけですね。ちなみに、スマホ向け第一弾としてSFC版をチョイスされた理由はなんでしょうか?
時田氏:もちろん新しい『半熟英雄』も作りたいんですが、新しいシリーズ作はしばらく出していなかったので、まずは一番人気のあったSFC版を、多くの方々が手にしているスマホ向けのアプリとして遊べるようにし、これをリブートの第一弾にしようと決めました。これが、動き出したきっかけですね。
──すると、反響次第では第二弾、第三弾なども?
時田氏:そうですね。新作を作るために会社の信頼を得るには、実績作りから始めないといけませんから(笑)。しかし、いきなりフリー・トゥ・プレイの『半熟英雄』を見せられても、オールドユーザーからしてみれば反感を買う部分もあると思います。
その後で、続編をコンシューマーで出すのか、あるいはフリー・トゥ・プレイ型にするのか、とにかく色んな人と“とんでもコラボ”をやりまくるのか(笑)、それはまだ分かりませんが、まずはSFC版を移植して、皆さんに楽しんでいただくのを第一目標としてやっています。
──本シリーズには、深い思い入れや様々な思い出があることと思いますが、特に印象深い点をを教えていただいてもよろしいでしょうか?
時田氏:一番最初のFC版の時は、初代『FF』の後、『FFII』と同時進行で作っていたんです、タイミング的に。SFC版の頃は、『FFIV』を作った後に取りかかりました。
──いずれも、『FF』シリーズの直後に着手されていたんですね。
時田氏:そのせいか、『FF』で出来ないことが『半熟英雄』で出来る、という印象がすごく強いんです。スタッフも含めて、自由度がより高くて。『FF』自体も、『ドラクエ』に対抗して、あれをやろうこれをやろうと盛り上がってきたシリーズですが、『半熟英雄』は(自由度に関して)更に上回っているイメージです。
ジャンルもRTSだし、世界観もなんでもアリだし。さらに横幅を拡げた感じですよね。『聖剣』や『サガ』シリーズなどもありますが、そこともジャンルや世界観が違う。いつの時代になっても、どんなネタでも入れ込める懐がある。
──『半熟英雄』の何でもあり感、懐の深さは格別です。FCやSFCの時代には、「この切り口、大丈夫なのか?」と思う大胆なゲームも多数ありましたが、最近はなかなかありませんよね。
時田氏:最近ちょっと、みんな気にしすぎてると思うんですよね。自粛し過ぎちゃってる。
──その点『半熟英雄』は、当時も突っ走っていましたし、今出る作品として考えてもかなり個性的で全然イケる作品ですよね。
時田氏:今出せるかは、ウチの法務などにちゃんと確認しました。一時期厳しかった時はあるんですが、基本的に「ちゃんとした意図があるかどうか」「誰かを貶めていないか」をクリアできていればOKなんです。
いたずらに自粛や規制をしない方が、コンテンツは面白いものが作れると思いますよ。僕らも漫画やアニメで育ってきて、そういう自由度でゲームを作ってきたので。もう一度日本が勢いのあるコンテンツを作るには、もう少し冒険や自由度があった方がいいと感じています。(このままでは)もの作りが堅苦しくなっていっちゃうかな、と。
──これは個人的な考えですが、多くの方に「冒険」や「自由」を後押しするものとして、『半熟英雄』のような「明るいコンテンツ」はとても大事だと思うんです。
時田氏:今は割と、鬱系と言うか、シビアなものの方が受け入れられやすいですよね。だからこそバカバカしい感じとか、「くだらねぇな」って言いながら笑えるようなものの方が、作ってても楽しい。(こういうもので)息抜きをしてもらえたらいいなと思っています。
──明るく楽しいノリ、というのは当時も話題になりましたが、リアルタイムシミュレーションというゲーム性も大きな魅力のひとつでした。今回のアプリ版で、ゲームとしての面白さも広まって欲しいと願うばかりです。
時田氏:スマホのUIだと、同時に複数のユニットを操作する快適さなどを直感でできると思います。
──指示するためにユニットにカーソルを合わせる、という手間が直感的なタッチで済むわけですね。
時田氏:はい。ズームイン・アウトもピンチで行えるので、非常に快適になっているかと。
──操作の最適化に加え、スマホ版は新要素も入っていると伺いましたが、詳しく教えていただけるでしょうか。
時田氏:追加でハードなモードを搭載しています。
更に「エクストラマップ」という、三つの新規マップで更なるやりこみマップもあります。初級・中級・上級という三マップになっており、こちらもクリアすることでアイテムなどが手に入ります。
また、快適に遊ぶための追加アイテムも用意されており、将軍を指名買いできたり、経験値が倍の速度で上がったり、誰でも装備できる「いっぱつエッグ」など、すごく自由にやりこむために買っていただけるようなチョイスで用意しました。
本作は落とし切りですが、基本無料ゲームにあるような有料アイテムとのハイブリッドなスタイルに挑戦しています。もちろん追加アイテムは強制ではないので、落とし切りでオリジナルのノーマルとハードが遊べた上で、更にやりこみたい方はこちらをお願いします、という形です。続編を希望される方は、ぜひ余すところなく楽しんでいただければ、その確率が上がります(笑)。
──『半熟英雄』といえばエッグモンスターの存在が欠かせませんが、本作では新たなエッグモンスターも登場するんですよね。
時田氏:はい。公募したエッグモンスターから8体、採用させていただきました。
──生放送で発表された8体ですね。いずれも、『半熟英雄』の世界観にぴったりなネーミングセンスやデザインばかりでした。
時田氏:「いたいよう」は僕も一押しです(笑)。たくさんの応募作品を見続けていると、何が面白いのかよく分からなくなってくるんですが、そんな時にああいった作品が出てくると「おっ、これだよな!」って。シンプルな力強さがあります。
──他にも、「カベドン」などもいいですよね。口に出す時、「壁ドン」の発音になりそうで緊張しますが(笑)。
時田氏:公式で正しい発音は決めていないので、どちらでも大丈夫ですよ(笑)。
──「カベドン」のフォルムは確かに怪獣なのですが、目だけ見るとかなりイケメンですし(笑)。
時田氏:髪型もイケメンだし(笑)。応募してくれたみんなが、ちゃんとネタをやってくれてるのがいいですね。ネットの反応も、「どれも『半熟英雄』らしくてクオリティが高い」みたいな声が多くて、『半熟英雄』のノリを分かってくれていて嬉しいですね。
──『半熟英雄』は、狙ったところにど真ん中、直球ストレートな感じが似合いますね。
時田氏:ヒネりすぎない、もしくは2回ヒネって戻ってくる、みたいな(笑)。
──1周2周も全然OKと(笑)。
時田氏:はい(笑)。そういう意味では、時代を経ても変わらないコンテンツですね。今の若い子たちは、意外とベタなノリも好きだと思うので。
──あと今の若い人たちにとって、新鮮さもありますよね。『半熟英雄』は。
時田氏:確かに。RTSというゲーム性も、オンライン系ではよくありますが、オフラインのシングルプレイというのは最近あまり見かけませんし。昔は、『半熟英雄』はもちろん、『伝説のオウガバトル』などもありましたね。
ちなみに、ファミコンの頃のゲームって、難易度が異様に高いのも多いんですよね(笑)。だから、難しい印象がより強いのかもしれません。その点、スーファミの『半熟英雄』はその点のバランスもよく考えられており、徐々にRTSに慣れていけます。そのため、本作も快適に楽しめるようになっているので、「RTSは初めて」という方にも遊んでいただけたらと思います。
──入門用としても最適、と。
時田氏:今回のタイミングに合わせてコミカライズも行っているので、そこで世界観を知ってもらってからゲームに触れる、というのもお勧めです。
コミックのストーリーベースはスーファミ版なのですが、主人公以外のキャラクターは当時あまり描写されていませんでした。このコミカライズ版では、著者の沖野真歩先生がこだわってくださり、非常に魅力的かつバカなキャラクターたちが多数活躍しています。愛すべきキャラばかりなので、是非ご覧いただければと思います。
──本作のリリースに先駆けて予習したい方にもお勧め、と。
時田氏:はい。『マンガUP!』というアプリで、隔週連載中です。あと、単行本の第一巻が10月21日に出ますし、本作のリリースもその近辺で考えています。一緒に楽しんでもらえたら嬉しいですね。
──本作と単行本、いずれも楽しみにさせていただきます!
◆セガコラボとの経緯から『半熟英雄』のこれからまで─コンシューマ新作の可能性も!?
──続いては、セガさんとのコラボレーションについてお聞かせください。セガさんとスクウェア・エニックスさんによるコラボというのは、非常に珍しいように感じました。
時田氏:『チェインクロニクル』と『聖剣伝説』といったコラボレーションはありましたが、コンシューマーのIP同士というのは、前例がないかもしれませんね。
──そのため非常に衝撃的でしたし、「こういう未来もあるんだ」と当時の自分に教えてあげたいですね(笑)。
時田氏:僕も、駄目元でお願いしたんですよ。そしたら「いいよ」みたいな感じで(笑)。「マジっすか!」って驚きました。
当時だったらまず無理だったと思うんですが、最近はソーシャルゲーム含めて色んなコンテンツ同士がコラボを前提にしていたりするので、そういう時代になったからこそ出来たのかもしれません。それにしても、こんなにトントン拍子に行くとは思いませんでした。
──コラボの相手として発表されたセガさんのタイトル、いずれも『半熟英雄』と相性が良さそうな点もいいですね。
時田氏:ちょっと無理矢理感もあるんですけどね(笑)。
──『ソニック』シリーズの「Dr.エッグマン」なんて、「エッグマンvsエッグマン」じゃないですか! あしらえたようにピッタリですよ(笑)。
時田氏:あれは僕も昔からやりたかったんですよ。当時は、コラボなんてなかなか出来なかったので。それと、『ぷよぷよ』の総合プロデューサーをされている細山田水紀さんとは懇意にさせていただいており、そこからセガさんに「(コラボ)大丈夫ですかね?」と打診したらOKをいただきました。
──なるほど。当時からずっと希望していた「Dr.エッグマン」に加え、時田さんと細山田さんの繋がりから「カーバンクル」のコラボが実現したわけですね。
時田氏:はい。そしてOKをいただいた時に「ついでにレンタヒーローもいいですかね? ヒーロー繋がりで」と更にお願いして(笑)。そうしたら全部ご快諾いただけたので、実現しました。
──残念ながら大ヒットには至らなかったものの、遊んだ方からは熱烈な支持を受けていましたよね、『レンタヒーロー』は。
時田氏:僕もそのひとりです。所帯じみた感じや、ギャグなんだけども意外と熱いところとか魅力的で、いいゲームでした。
──今回の『半熟英雄』のように、『レンタヒーロー』も復活して欲しいですね。
時田氏:舞台化されると聞いた時は、「マジか!」と思いましたよ(笑)。
■『レンタヒーロー』が2018年に舞台化! 個性派ヒーローの新たな活躍を見逃すな
URL:https://www.inside-games.jp/article/2017/09/05/109541.html
──舞台化も楽しみですし、ここから更なる展開に繋がって欲しいですね。
時田氏:いいですねー。
──『半熟英雄』で行われるコラボですが、今回だけでなく、第二弾、第三弾などもあるのでしょうか?
時田氏:ほかにもまだ用意しているものがあるので、そちらは今後改めて発表させていただきます。
──お待ちしております! ちなみに、ショップ機能を介してのエクストラマップやアイテム販売などがありますが、好評だった暁には更なるDLCなどの可能性はありますか?
時田氏:今の時代だったら、続編のシナリオを配信するといったこともできますからね。プログラム環境やデータを使いながら新シナリオを追加する、みたいな。今回のアプリ自体を『半熟英雄』のポータルサイトにすることも出来るので、お客さんの評判などをいただいた上で考えていきたいなと思います。
──最初から大盛り過ぎると逆に手を出しにくいと感じる方もいるので、そういう人は落としきりのみで楽しんでもらい、もっともっと遊びたいというユーザーに向けてDLCが配信される……という展開になる可能性もあるわけですね。
時田氏:そういうこともアリですし、そこから「じゃあ、コンシューマー向けに新作を作ろう」まで行ければベストですね。
──コンシューマーの新作! 夢が膨らみますね。到達されることを願ってます。
時田氏:そこまで行ければ、本当のリブートになると思うんですけどね(笑)。でもまずは、皆さんに楽しんでいただけることですね。そうしたら、会社にも自信を持ってアピールできますしね。なので皆さん、応援をよろしくお願いします!
──あくまで仮定の話ですが、『半熟英雄』をコンシューマーにリリースするとしたら、どんな構想をお持ちですか?
時田氏:スイッチで『半熟英雄』とか、相性が良さそうですよね。
──携帯モードであれば、スマホのようにタッチパネルでの操作も可能ですしね。
時田氏:それもありますし、複数で対戦とかできたら楽しいなと考えています。RTSは、対戦やオンラインとの相性がいいですし。ただ、オンラインだと本格的になりすぎてしまうので、スイッチやスマホ同士のマルチプレイだと気軽に遊べるのかなと思いまして。可能性があれば、模索したいですね。
──将来の可能性も伺えて、更に期待が高まりますが、まず『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』ですよね。それでは最後となりますが、本作を待ち望むユーザーに向けてメッセージをお願いします。
時田氏:知っている方は、お待たせしました。久しぶりの復活で、一番人気のあるSFC版を、今だからこそ出来るベストな形でリメイク+αを作ったので、是非応援していただければと思います。
『半熟英雄』を知らない若い方々には、「スクウェア・エニックスは、王道RPG以外にもこんなタイトルがあるんだ」と知っていただけたら嬉しいですね。“楽しい”が核になっているゲームなので、めんどくさそうと思わず一度触っていただければ、シンプルながらも沢山のユニットを操作する楽しさを味わってもらえると思います。是非、遊んでみてください。
──本日はありがとうございました!
(C)1992,2002,2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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1作目は、3DSやWii U向けのバーチャルコンソールソフトとしてもリリースされており、今なお愛され続けているシリーズです。
本シリーズの主軸はシミュレーションながらも、複雑さは極力排除し、誰でも楽しみやすく間口の広いシステムを採用。その一方で、戦局がリアルタイムに変化するなど、RTSの要素をいち早く取り入れた点も関心を集めました。
そしてなにより注目を集めたのが、全編に渡って広がる明るくコメディタッチな世界観と演出。主人公からして、パワフルながらもどこか抜けており、まさに“半熟な英雄”として、ギャグテイストたっぷりに描かれます。その傾向が特に増したのは、SFC版『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』で、この作品で本シリーズに初めて触れた方も続出しました。
ですが本シリーズの展開は、バーチャルコンソール化を除くと、ここ数年新たな動きはありませんでした。どこか憎めない、愛嬌に満ちた主人公や登場人物、そしてバトルを大いにサポートし、またユニークな名称やフォルムでも印象深い「エッグモンスター」たちの活躍は、少し遠い日々となっていました。
しかし、「不朽の“迷”作、堂々復活!」との一文を掲げ、iOS/Androidアプリ『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』を発表。SFC版をベースに、操作方法をスマホ向けに最適化。さらに新要素なども加えて登場する、懐かしさと新しさを織り込んだ『半熟英雄』が2017年10月19日に落としきり方式でリリースされます。
本作の登場を待ち遠しいばかりですが、リリースに先駆ける形で、その魅力や新要素についてプロデューサーの時田貴司氏にインタビューを実施しました。
今、『半熟英雄』が動き出した経緯などにも触れているので、どうぞお見逃しなく。
◆懐の広い『半熟英雄』は、スマホで更に快適に
──本日は、お忙しいところありがとうございます。iOS/Androidアプリ『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』についてお訊きしたいことは山のようにありますが、まずは、なぜ今『半熟英雄』だったのでしょうか?
時田氏:僕はこれまで色んなゲームを作ってきているんですけども、(その中でも)『半熟英雄』は割となんでもできちゃうタイトルなんですよね。
──確かに、受け皿の大きさというか、懐の深さがありますよね。
時田氏:今って、どんなエンターテイメントでも、規制や自粛が厳しいじゃないですか。そういった「モノ作りの閉塞感」を破りたかったんです。
──そこで『半熟英雄』シリーズに白羽の矢が立ったわけですね。ちなみに、スマホ向け第一弾としてSFC版をチョイスされた理由はなんでしょうか?
時田氏:もちろん新しい『半熟英雄』も作りたいんですが、新しいシリーズ作はしばらく出していなかったので、まずは一番人気のあったSFC版を、多くの方々が手にしているスマホ向けのアプリとして遊べるようにし、これをリブートの第一弾にしようと決めました。これが、動き出したきっかけですね。
──すると、反響次第では第二弾、第三弾なども?
時田氏:そうですね。新作を作るために会社の信頼を得るには、実績作りから始めないといけませんから(笑)。しかし、いきなりフリー・トゥ・プレイの『半熟英雄』を見せられても、オールドユーザーからしてみれば反感を買う部分もあると思います。
なので、一番人気のあるものを、今の時代にあった形で、UIや操作感などを確認したものを、まずはきちんとやるべきかなと。
その後で、続編をコンシューマーで出すのか、あるいはフリー・トゥ・プレイ型にするのか、とにかく色んな人と“とんでもコラボ”をやりまくるのか(笑)、それはまだ分かりませんが、まずはSFC版を移植して、皆さんに楽しんでいただくのを第一目標としてやっています。
──本シリーズには、深い思い入れや様々な思い出があることと思いますが、特に印象深い点をを教えていただいてもよろしいでしょうか?
時田氏:一番最初のFC版の時は、初代『FF』の後、『FFII』と同時進行で作っていたんです、タイミング的に。SFC版の頃は、『FFIV』を作った後に取りかかりました。
──いずれも、『FF』シリーズの直後に着手されていたんですね。
時田氏:そのせいか、『FF』で出来ないことが『半熟英雄』で出来る、という印象がすごく強いんです。スタッフも含めて、自由度がより高くて。『FF』自体も、『ドラクエ』に対抗して、あれをやろうこれをやろうと盛り上がってきたシリーズですが、『半熟英雄』は(自由度に関して)更に上回っているイメージです。
ジャンルもRTSだし、世界観もなんでもアリだし。さらに横幅を拡げた感じですよね。『聖剣』や『サガ』シリーズなどもありますが、そこともジャンルや世界観が違う。いつの時代になっても、どんなネタでも入れ込める懐がある。
そこがやはり印象的ですよね。
──『半熟英雄』の何でもあり感、懐の深さは格別です。FCやSFCの時代には、「この切り口、大丈夫なのか?」と思う大胆なゲームも多数ありましたが、最近はなかなかありませんよね。
時田氏:最近ちょっと、みんな気にしすぎてると思うんですよね。自粛し過ぎちゃってる。
──その点『半熟英雄』は、当時も突っ走っていましたし、今出る作品として考えてもかなり個性的で全然イケる作品ですよね。
時田氏:今出せるかは、ウチの法務などにちゃんと確認しました。一時期厳しかった時はあるんですが、基本的に「ちゃんとした意図があるかどうか」「誰かを貶めていないか」をクリアできていればOKなんです。
いたずらに自粛や規制をしない方が、コンテンツは面白いものが作れると思いますよ。僕らも漫画やアニメで育ってきて、そういう自由度でゲームを作ってきたので。もう一度日本が勢いのあるコンテンツを作るには、もう少し冒険や自由度があった方がいいと感じています。(このままでは)もの作りが堅苦しくなっていっちゃうかな、と。
──これは個人的な考えですが、多くの方に「冒険」や「自由」を後押しするものとして、『半熟英雄』のような「明るいコンテンツ」はとても大事だと思うんです。
時田氏:今は割と、鬱系と言うか、シビアなものの方が受け入れられやすいですよね。だからこそバカバカしい感じとか、「くだらねぇな」って言いながら笑えるようなものの方が、作ってても楽しい。(こういうもので)息抜きをしてもらえたらいいなと思っています。
──明るく楽しいノリ、というのは当時も話題になりましたが、リアルタイムシミュレーションというゲーム性も大きな魅力のひとつでした。今回のアプリ版で、ゲームとしての面白さも広まって欲しいと願うばかりです。
時田氏:スマホのUIだと、同時に複数のユニットを操作する快適さなどを直感でできると思います。
──指示するためにユニットにカーソルを合わせる、という手間が直感的なタッチで済むわけですね。
時田氏:はい。ズームイン・アウトもピンチで行えるので、非常に快適になっているかと。
──操作の最適化に加え、スマホ版は新要素も入っていると伺いましたが、詳しく教えていただけるでしょうか。
時田氏:追加でハードなモードを搭載しています。
同じストーリーモードなんですが、よりハードなバランスでやりこめる内容になっており、クリアすると特典として、将軍やエッグモンスターが強化されたり、アイテムなどがもらえます。
更に「エクストラマップ」という、三つの新規マップで更なるやりこみマップもあります。初級・中級・上級という三マップになっており、こちらもクリアすることでアイテムなどが手に入ります。
また、快適に遊ぶための追加アイテムも用意されており、将軍を指名買いできたり、経験値が倍の速度で上がったり、誰でも装備できる「いっぱつエッグ」など、すごく自由にやりこむために買っていただけるようなチョイスで用意しました。
本作は落とし切りですが、基本無料ゲームにあるような有料アイテムとのハイブリッドなスタイルに挑戦しています。もちろん追加アイテムは強制ではないので、落とし切りでオリジナルのノーマルとハードが遊べた上で、更にやりこみたい方はこちらをお願いします、という形です。続編を希望される方は、ぜひ余すところなく楽しんでいただければ、その確率が上がります(笑)。
──『半熟英雄』といえばエッグモンスターの存在が欠かせませんが、本作では新たなエッグモンスターも登場するんですよね。
時田氏:はい。公募したエッグモンスターから8体、採用させていただきました。
──生放送で発表された8体ですね。いずれも、『半熟英雄』の世界観にぴったりなネーミングセンスやデザインばかりでした。
「いたいよう」など、秀逸ですよね。
時田氏:「いたいよう」は僕も一押しです(笑)。たくさんの応募作品を見続けていると、何が面白いのかよく分からなくなってくるんですが、そんな時にああいった作品が出てくると「おっ、これだよな!」って。シンプルな力強さがあります。
──他にも、「カベドン」などもいいですよね。口に出す時、「壁ドン」の発音になりそうで緊張しますが(笑)。
時田氏:公式で正しい発音は決めていないので、どちらでも大丈夫ですよ(笑)。
──「カベドン」のフォルムは確かに怪獣なのですが、目だけ見るとかなりイケメンですし(笑)。
時田氏:髪型もイケメンだし(笑)。応募してくれたみんなが、ちゃんとネタをやってくれてるのがいいですね。ネットの反応も、「どれも『半熟英雄』らしくてクオリティが高い」みたいな声が多くて、『半熟英雄』のノリを分かってくれていて嬉しいですね。
──『半熟英雄』は、狙ったところにど真ん中、直球ストレートな感じが似合いますね。
時田氏:ヒネりすぎない、もしくは2回ヒネって戻ってくる、みたいな(笑)。
──1周2周も全然OKと(笑)。
時田氏:はい(笑)。そういう意味では、時代を経ても変わらないコンテンツですね。今の若い子たちは、意外とベタなノリも好きだと思うので。
──あと今の若い人たちにとって、新鮮さもありますよね。『半熟英雄』は。
時田氏:確かに。RTSというゲーム性も、オンライン系ではよくありますが、オフラインのシングルプレイというのは最近あまり見かけませんし。昔は、『半熟英雄』はもちろん、『伝説のオウガバトル』などもありましたね。
ちなみに、ファミコンの頃のゲームって、難易度が異様に高いのも多いんですよね(笑)。だから、難しい印象がより強いのかもしれません。その点、スーファミの『半熟英雄』はその点のバランスもよく考えられており、徐々にRTSに慣れていけます。そのため、本作も快適に楽しめるようになっているので、「RTSは初めて」という方にも遊んでいただけたらと思います。
──入門用としても最適、と。
時田氏:今回のタイミングに合わせてコミカライズも行っているので、そこで世界観を知ってもらってからゲームに触れる、というのもお勧めです。
コミックのストーリーベースはスーファミ版なのですが、主人公以外のキャラクターは当時あまり描写されていませんでした。このコミカライズ版では、著者の沖野真歩先生がこだわってくださり、非常に魅力的かつバカなキャラクターたちが多数活躍しています。愛すべきキャラばかりなので、是非ご覧いただければと思います。
──本作のリリースに先駆けて予習したい方にもお勧め、と。
時田氏:はい。『マンガUP!』というアプリで、隔週連載中です。あと、単行本の第一巻が10月21日に出ますし、本作のリリースもその近辺で考えています。一緒に楽しんでもらえたら嬉しいですね。
──本作と単行本、いずれも楽しみにさせていただきます!
◆セガコラボとの経緯から『半熟英雄』のこれからまで─コンシューマ新作の可能性も!?
──続いては、セガさんとのコラボレーションについてお聞かせください。セガさんとスクウェア・エニックスさんによるコラボというのは、非常に珍しいように感じました。
時田氏:『チェインクロニクル』と『聖剣伝説』といったコラボレーションはありましたが、コンシューマーのIP同士というのは、前例がないかもしれませんね。
──そのため非常に衝撃的でしたし、「こういう未来もあるんだ」と当時の自分に教えてあげたいですね(笑)。
時田氏:僕も、駄目元でお願いしたんですよ。そしたら「いいよ」みたいな感じで(笑)。「マジっすか!」って驚きました。
当時だったらまず無理だったと思うんですが、最近はソーシャルゲーム含めて色んなコンテンツ同士がコラボを前提にしていたりするので、そういう時代になったからこそ出来たのかもしれません。それにしても、こんなにトントン拍子に行くとは思いませんでした。
──コラボの相手として発表されたセガさんのタイトル、いずれも『半熟英雄』と相性が良さそうな点もいいですね。
時田氏:ちょっと無理矢理感もあるんですけどね(笑)。
──『ソニック』シリーズの「Dr.エッグマン」なんて、「エッグマンvsエッグマン」じゃないですか! あしらえたようにピッタリですよ(笑)。
時田氏:あれは僕も昔からやりたかったんですよ。当時は、コラボなんてなかなか出来なかったので。それと、『ぷよぷよ』の総合プロデューサーをされている細山田水紀さんとは懇意にさせていただいており、そこからセガさんに「(コラボ)大丈夫ですかね?」と打診したらOKをいただきました。
──なるほど。当時からずっと希望していた「Dr.エッグマン」に加え、時田さんと細山田さんの繋がりから「カーバンクル」のコラボが実現したわけですね。
時田氏:はい。そしてOKをいただいた時に「ついでにレンタヒーローもいいですかね? ヒーロー繋がりで」と更にお願いして(笑)。そうしたら全部ご快諾いただけたので、実現しました。
──残念ながら大ヒットには至らなかったものの、遊んだ方からは熱烈な支持を受けていましたよね、『レンタヒーロー』は。
時田氏:僕もそのひとりです。所帯じみた感じや、ギャグなんだけども意外と熱いところとか魅力的で、いいゲームでした。
──今回の『半熟英雄』のように、『レンタヒーロー』も復活して欲しいですね。
時田氏:舞台化されると聞いた時は、「マジか!」と思いましたよ(笑)。
■『レンタヒーロー』が2018年に舞台化! 個性派ヒーローの新たな活躍を見逃すな
URL:https://www.inside-games.jp/article/2017/09/05/109541.html
──舞台化も楽しみですし、ここから更なる展開に繋がって欲しいですね。
時田氏:いいですねー。
──『半熟英雄』で行われるコラボですが、今回だけでなく、第二弾、第三弾などもあるのでしょうか?
時田氏:ほかにもまだ用意しているものがあるので、そちらは今後改めて発表させていただきます。
──お待ちしております! ちなみに、ショップ機能を介してのエクストラマップやアイテム販売などがありますが、好評だった暁には更なるDLCなどの可能性はありますか?
時田氏:今の時代だったら、続編のシナリオを配信するといったこともできますからね。プログラム環境やデータを使いながら新シナリオを追加する、みたいな。今回のアプリ自体を『半熟英雄』のポータルサイトにすることも出来るので、お客さんの評判などをいただいた上で考えていきたいなと思います。
──最初から大盛り過ぎると逆に手を出しにくいと感じる方もいるので、そういう人は落としきりのみで楽しんでもらい、もっともっと遊びたいというユーザーに向けてDLCが配信される……という展開になる可能性もあるわけですね。
時田氏:そういうこともアリですし、そこから「じゃあ、コンシューマー向けに新作を作ろう」まで行ければベストですね。
──コンシューマーの新作! 夢が膨らみますね。到達されることを願ってます。
時田氏:そこまで行ければ、本当のリブートになると思うんですけどね(笑)。でもまずは、皆さんに楽しんでいただけることですね。そうしたら、会社にも自信を持ってアピールできますしね。なので皆さん、応援をよろしくお願いします!
──あくまで仮定の話ですが、『半熟英雄』をコンシューマーにリリースするとしたら、どんな構想をお持ちですか?
時田氏:スイッチで『半熟英雄』とか、相性が良さそうですよね。
──携帯モードであれば、スマホのようにタッチパネルでの操作も可能ですしね。
時田氏:それもありますし、複数で対戦とかできたら楽しいなと考えています。RTSは、対戦やオンラインとの相性がいいですし。ただ、オンラインだと本格的になりすぎてしまうので、スイッチやスマホ同士のマルチプレイだと気軽に遊べるのかなと思いまして。可能性があれば、模索したいですね。
──将来の可能性も伺えて、更に期待が高まりますが、まず『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』ですよね。それでは最後となりますが、本作を待ち望むユーザーに向けてメッセージをお願いします。
時田氏:知っている方は、お待たせしました。久しぶりの復活で、一番人気のあるSFC版を、今だからこそ出来るベストな形でリメイク+αを作ったので、是非応援していただければと思います。
『半熟英雄』を知らない若い方々には、「スクウェア・エニックスは、王道RPG以外にもこんなタイトルがあるんだ」と知っていただけたら嬉しいですね。“楽しい”が核になっているゲームなので、めんどくさそうと思わず一度触っていただければ、シンプルながらも沢山のユニットを操作する楽しさを味わってもらえると思います。是非、遊んでみてください。
──本日はありがとうございました!
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