1990年に登場したファミコンソフト『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』から始まった本シリーズは、現時点で27年もの歩みを続けており、今なお様々な展開を遂げています。

しかも歴史の長さのみならず、時期によっては毎年、間隔が開くことがあっても3年ほどで、新たなシリーズ作がリリースされ続けており、定期的に新たな戦いが提供されてきた定番シリーズとも言えます。


本シリーズの魅力は語れども尽きませんが、「倒れたユニットは復活しない」という基本的なシステムが、戦闘の緊張感とキャラへの愛着を生み、自分だけのプレイ体験を味わうことができる点でしょう。

プレイヤーの戦術ミスで仲間が死亡してしまうこともあれば、思わぬ増援に背筋を凍らせるものの、奇跡的な回避率で生き残るような場面もあり、彼らの生と死を左右する「成功」と「失敗」の数々が、様々なドラマを生み出してきました。特に大きな失敗をした時ほど記憶に残り、それはやがて思い出となってプレイヤー同士の語らいの場を彩ります。

シリーズ作はすでに17作品におよんでおり、コラボレーション作品として2015年には『幻影異聞録#FE』が、そして先月は『ファイアーエムブレム無双』が登場。また来年は、本シリーズの完全新作が予定されており、更なる飛躍に胸が高まりばかりです。

一ファンとして、『ファイアーエムブレム』シリーズの盛り上がりに心を躍らせながらこれまでのプレイ体験を振り返ると、必ず出てくるのが失敗談。当時は悔しかった出来事の数々も、今ではかけがえのない思い出です。今回は、筆者と『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』が出会ったきっかけや忘れられない失敗を振り返りたいと思います。

◆『暗黒竜と光の剣』を購入したのは、ある小説がきっかけ
村が盗賊に襲われるほど無知だった初回プレイ
当時の筆者はまだ子供で、そのため自由になるお金もあまりありませんでした。そのため、ゲームを発売日に買うという行為は不可能に近く、中古ソフトを買いあさる日々を送っていました。

そのため、『暗黒竜と光の剣』との出会いも、発売日からそれなりに経過してから。しかもソフトを実際に見るまで、周囲のゲーム友達から『暗黒竜と光の剣』に関する話を聞いたこともなく、文字通りの初見です。
少なくとも自分の周りでは、誰も『暗黒竜と光の剣』を遊んでいませんでした。

なのにどうして購入したのかといえば、先見の明があったから……ではなく、当時「アルスラーン戦記」というファンタジー小説に熱中していたのがきっかけです。ある事情から国を追われた王子が、信頼できる仲間たちと共に兵をあげて立ち上がる物語を描いていた「アルスラーン戦記」。この世界にハマっていた筆者は、小説のイメージを(勝手に)『暗黒竜と光の剣』と重ね、そのままレジへと持っていきました。

もちろん、「アルスラーン戦記」と『暗黒竜と光の剣』が似ているかといえば、そんなことはありません。物語の内容やキャラクターが持つそれぞれの魅力など、まったく異なっています。ただひとつ、筆者的に近かった点としては、『暗黒竜と光の剣』もどっぷりハマるくらい面白かったということだけです。

そんなきっかけを経て出会った『暗黒竜と光の剣』。当時はインターネットなどなく、頼りになる情報はゲーム雑誌か攻略本、あとは友達の口コミくらいです。雑誌や本はやはりお金がかかるため初プレイのお供にはできず、また友達ネットワークも『暗黒竜と光の剣』には通用せず。なので、説明書だけを頼りに『暗黒竜と光の剣』をプレイする日々が始まります。

ゲームを進めていくと、お気に入りのキャラなども出てきました。
一見すると少女ながらも、実は神竜王の末娘というチキは、「こんな可愛い子が滅茶苦茶強い!?」というギャップを初めて受けたキャラで印象に残っています。また、板挟みな立場に追い込まれて苦悩するドラゴンナイト・ミネルバや、大司祭の娘ながらも奴隷商人に捕まってしまう魔道士・リンダなど、いずれも記憶に残るキャラクターばかりでした。あれ、女キャラばかり…?

もちろん、お気に入りの男性キャラもいます。戦場で、しかも敵であろうと躊躇なく声をかけるシーダに対して「あんた だいじょうぶかい」とマトモな反応を返すロジャーや、安定した強さを見せるカインとアベル、使ってみると意外と楽しいシューターのジェイクやベック、そして敵キャラながらカミュやミシェイルなども忘れられません。

妙に数字の並びがいい具合に育っていた時のナバール
その中でも特に気に入っているが、傭兵のナバールです。盗賊の用心棒的なポジションで登場しますが、シーダの勧誘で寝返り。一瞬前まで仲間だった盗賊に攻撃するや、「ひっさつ」を繰り出して大ダメージ。もちろん盗賊は瞬殺です。傭兵にキルソードを持たせた恐ろしさを、ゲーム開始早々の3MAP目で痛感しました。

そんな一撃の鋭さと腰の軽さ(?)が魅力的なナバールですが、本作でも1、2を争うほどの筆者お気に入りキャラに格上げされた出来事が、最終面に待ち受けていました。

予想もしていなかった“まさかの失敗”は、次ページにて!

◆筆者が招いた『暗黒竜と光の剣』最大の失敗

ほぼ事前情報がなかったものの、本作の戦闘はその結果を推察しやすく、事前準備と適切な戦略を疎かにしなければ勝ち進んでいくのは難しくありません。足の早いソシアルナイトや、地形を無視できるペガサスナイトにドラゴンナイトなどで戦場を縦横無尽に駆け回り、壁役のアーマーナイトや迎撃役の傭兵を駆使して難所を次々と突破していきます。
予想外の増援やうっかりミスで手痛い目に合うこともありましたが、そこはリセットで再戦することもしばしば。

本作の最終局面で待ち受けているのは、地竜王メディウス。ラスボスだけあって、一筋縄では勝てなさそうな雰囲気がシナリオを通して伝わってきます。ですが、もちろん希望も残されており、メディウスには神剣「ファルシオン」が有効とのこと。ならば、手に入れるしかありません。

このファルシオンを所持しているのは、悪の司祭・ガーネフ。しかし、ただ立ち向かえばいいわけではありません。恐るべき魔法「マフー」を使いこなすガーネフを唯一倒せるのは、魔法「スターライト」のみ。そして、この「スターライト」を手に入れるには、「星のオーブ」と「光のオーブ」が必要不可欠なのです。

敵の攻撃を延々と受けて成長したレナ、守備力は3…。
いくつもの条件が並んでいるので少々ややこしいのですが、つまりメディウスに有効な武器を手に入れるには、「星のオーブ」と「光のオーブ」が必須ということ。『暗黒竜と光の剣』のゲーム進行はMAP踏破型の一方通行なので、必要なアイテムを取り逃したらやり直しが利かず、慎重に成らざるを得ません。


できるだけ注意を払い、宝箱を見逃さないようにしてアイテム集めを着実に進行。初見ということもあり、完璧なプレイとはほど遠いものの、苦労の甲斐あってふたつのオーブを入手! 喜び勇んで、「ファルシオン」を授けてくれる司祭・ガトーのもとに足を運びました。しかし──ガトーは「オーブが揃ってない」と言いだします。何故!?

首を傾げつつ、アイテム欄を確認してみると、そこには「星のオーブ」と「大地のオーブ」が。……「大地のオーブ」って!? しかし何度見直しても、そこに「光のオーブ」はありません。後日分かったことですが、本作にはオーブが3つあり、「大地のオーブ」はファルシオンの入手条件とはまったく関係のない便利アイテム。オーブを2つ手に入れた当時の筆者は、「これで揃った!」と単純に思い込んでしまっていたのです。

この間違いに気付いた時点で、既に22章でした。前述の通り後戻りは出来ず、そして最終章である25章はもう目前。やり直すのもかなり長い道のりなので、ファルシオンを欠いたまま先に進む道を選びました。道中は、苦労もありましたがキャラも育っていたため、(スターライトがなくて)倒せないガーネフだけスルーして次々と敵を突破。さほど問題なく、そして最大の問題が待ち受ける最終章「選ばれし者たち」に到着しました。


SFC版の画像ですが、これがメディウス。恐るべき相手です。
周囲の雑魚(とはいえ、かなり手強かったのですが)を倒し、あとはメディウスだけという状態に。しかしメディウスの防御力は異常に高く、また特別な効果もあるため、自軍の攻撃はほとんど無効化されてしまします。ここまで来たのに、クリアを断念するしかないのか……そんな思考に引きずられつつも、諦め悪く各キャラの戦闘力やアイテム覧を必死にチェック。

すると、「ナバールにデビルソードを持たせる」という組み合わせならば、1回の攻撃につき2ダメージくらい与えられることが判明! ちなみにメディウスのHPは40超え。こちらが攻撃すれば相手も攻撃しますし、しかもデビルソードはその不吉な名前の通り、たまに使用者がダメージを受けるという困った武器です。その分攻撃力が高いので、そこに希望が生まれたわけですけども!

メディウスの攻撃とデビルソードの自傷にビクビクしながら、2ダメージずつ与えるナバール。幸い、生き残りさえすれば仲間からの回復が間に合うので、戦闘中に死なないことだけを祈りつつ戦闘を続行します。何ターンも戦いを重ね、わずかなダメージを蓄積させ、メディウスの手痛い一撃を急いで回復……この繰り返しを経て、なんとかメディウスの撃破に成功! こうして、マルスではなくナバールが救世主となり、ファルシオンではなくデビルソードが伝説の武器として、アカネイア大陸にて語り継がれていくことでしょう。(筆者の中では)

プレイ内容とまとめるなら、「有利な武器を手に入れ損ねて、無闇に苦労しただけ」という失敗談に過ぎません。ですが、この後も本作を何度もクリアしましたが、最も印象深かったのは、この初回のプレイでした。
育成や攻略、アイテム集め、いずれも失敗したくない重要な要素ですが、その一方で「失敗が忘れられない思い出になる」という点も、『ファイアーエムブレム』シリーズが持つ魅力のひとつなのかもしれません。

成功は楽しい。失敗は面白い。そんな『ファイアーエムブレム』シリーズを、今後もきっとプレイし続けていくことでしょう。まだ本シリーズを遊んだことがない方は、2018年にリリースされる最新作が出る前に、過去作を遊んでみてはいかがでしょうか。そこにはきっと、「未来の思い出」が詰まっていますよ。
編集部おすすめ