高火力なダメージを生み出すスキルや強力な宝具が魅力なアタッカー型のセイバー「宮本武蔵」。彼女は2017年年始に実装された「宮本武蔵体験クエスト」で初登場後、「英霊剣豪七番勝負」ではストーリーの中核を担うなど、実力と人気を兼ねそろえた『FGO』の看板キャラの一人です。


武蔵はホビー分野での需要も高く、10月より3ヶ月連続で開催されている「1/8スケールフィギュア」を景品に設けた『Fate』の一番くじでは、ラストの12月を飾る「 Fate/Grand Order 剣轟一閃‐宮本武蔵、ここに推参!」の目玉商品として展開されることに。その戦闘中のシーンを切り取ったような凛々しいポーズの武蔵に心奪われたのは、きっと私だけではないはず!

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そこで今回は、“『FGO』の武蔵の、美しくも豪快なキャラ像”を本物の宮本武蔵の記録を振り返りつつ掘り下げていきたいと思います。

性別の垣根を越え、鮮やかに描かれた風来坊

『FGO』の武蔵を語るにあたり最初にふれておく必要があるのは、武蔵の性別が女性であったことについてでしょう。

ゲームやアニメにおいて実際の人物の性別を変えることは珍しいことではありません。しかし、こと『FGO』に関しては実際の性別のまま描かれることのほうが多かったと思います。武蔵最大のライバルとして有名な佐々木小次郎も本作の中においてはしっかり男性キャラとして描かれておりますね。ここで「メインは女性キャラのほうが際立つから」と言うと一言で終わってしまうので(笑)、もう少しお付き合いいただくべく、まずは『FGO』の武蔵の誕生の謎についてをもう少し掘り下げたいなと。

まず1個目の仮定として、ストーリーの中には男性としての(本物の)武蔵とは別人格と思わせる記述があったものの、やはり作中内の武蔵と本物の武蔵がやっぱり同じなのではと考えてみました。

以前にインサイドでも掲載された『FGO』今だから語れる「英霊剣豪七番勝負」、そして今後はどうなる?一切熱弁座談会でも、「英霊剣豪七番勝負」の導入部の老人、つまりは本物の武蔵に着目しておりまして。ここでは、武蔵が自身の命が風前の灯火の中で見た夢の中の彼自身、それが若い女性の姿となり、「武蔵ちゃん」として主人公らと遭遇するに至ったのではないかという意見がありました。

「実は同一人物だったよ」としても矛盾は生まれないと思うんです。戦うことそのものに価値を見出す本物の武蔵の豪快さはもちろん、「え? こっちの世界だと武蔵って男なの? しかも凄い有名なんて、びっくり!」と、自身の過去について記憶が残っていないことにも、夢だからと理由をつけられることができますしね。


また、実際に残っている記録も読み返してみると、本物の武蔵が父を嫌い母を慕っていたという説があります。

豪快な武蔵の生き様から考えれば意外な一面かもしれませんね。ちょっと飛躍になってしまいますが、心のうちでは嫌っていた父と同じ男性ではなく、女性としての自身のかたちを思い描き、それが知らずのうちに夢の中で実現してしまったのではないか、と『FGO』の武蔵と重ねることができたわけです。

もちろん、私の中の考えでしかありませんが。

さて、では次に作中の武蔵が実際の宮本武蔵とは関係のない、オリジナルのキャラという本来の考え方はどうでしょうか。

自由度の高さを考慮し、また様々な世界を彷徨っているという設定からも、可能性として高いのはこちらでしょう。

美少年に弱いという俗っぽさもありながら、剣を交えた相手からは「━━鮮やかな天元の花。その剣、無空の高見に届く」と評される、瑞々しくて高い力量を持った女性剣士。そんな「FGO」の中だけで存在する唯一無二の「宮本武蔵」が作中で活躍しているのだと思います。

過去の人物の性別だけを変えて歴史になぞって創られたというわけではないぶん、自由度も効きますし、よりゲームの内のキャラとしての存在感や魅力が増していますね。

この二つの考えのいづれが該当すると思っているのですが、どちらにせよ宮本武蔵が本作の中でとてもフューチャーされていることに変わりはありません。そこで、次は本物の宮本武蔵に、よりスポットを当てていこうと思います。


武蔵の出生と「あの戦い」から窺える人物像とは

二刀流の創設者と謳われるほど、我流で剣豪に上り詰めたイメージの強い武蔵。しかし、実は彼は由緒ある武家の生まれだったのではという有力な説があります。特に彼の父親の武仁は、将軍に招かれて行った武芸の名門との試合に勝つほどの実力者だったとのこと。

そんな武蔵が家を出て己の道を歩み、二刀の刀を操る“二天一流”を身につけるに至ります。

その理由についても諸説ありますが、先ほどお伝えした父親との不仲が原因で家を飛び出た可能性が最も高いのかなっと。

やがて10代のうちに武士として名が知れ渡るようになり、生涯60戦以上戦ったにもかかわらず無敗を誇るまでに成長。そんな武蔵の戦いとして言い伝えられている一つが、かの有名な「巌流島の決戦」です。

もしかすると、武蔵本人の名前よりも知れ渡っているかもしれないほどの知名度を誇るこちらの戦い。宿命のライバル佐々木小次郎と争ったと言われていますが、実はこの「佐々木小次郎」という名やその時期に関しても決定的な文章が残っているわけではないそうです。

そんな巌流島の戦いの中で描かれているのは武蔵の豪快さ。そしてそれと同じくらい印象的なのが、彼の戦いに対する熱意とその用意周到さです。

平然と大遅刻を行ったことや長大刀の扱いに精通した小次郎の腕を警戒して大きな木刀を用意したことなどがそう考える主な理由ですが、ただの蛮族にはこんな知略を立てられるわけがありませんよね。
(この際の決闘シーンをモチーフに作られた銅像も有名ですね。二人が対峙した際、しびれを切らした小次郎が鞘を投げ捨てたことを見て、「小次郎、敗れたり。勝つ者が何ゆえに鞘を捨てるか」といったお馴染みのシーンは、私自身何度も見た記憶があります。)

普段は豪快な物言いが目立つも戦闘においては真剣な面持ちを崩さない冷静さは、「FGO」の武蔵においてもこれは共通していることだと思いますし、敵をしっかりと評価し、準備を決して怠らないしたたかさを持っていたからこそ、武蔵は勝利を積み重ねていけたのでしょう。

次のページでは武蔵の宝具にも注目してみました!

武蔵の宝具、その由来

最後に改めて『FGO』の武蔵というキャラ、とりわけ彼女の技にスポットを当ててみたいと思います。

彼女の宝具は、「六道五輪・倶利伽羅天象(りくどうごりん・くりからてんしょう)」。

この名は、武蔵が晩年になって書き上げたという「五輪書」に由来しています。「五輪書」は、「地」「水」「火」「風」「空」の5つに分けられている兵法を記した巻物で、概要は以下の通りです。

「地の巻」:まっすぐな道を地面に書くということになぞり、これまでの生涯、兵法のあらましが書かれている。「水の巻」:「二天一流の水を手本とする」剣さばき、体さばきを例えつつ、二天一流での心の持ち方、太刀の持ち方や構えなど、実際の剣術に関することが書かれている。「火の巻」:戦いのことを火の勢いに見立て、個人対個人、集団対集団の戦いも同じであるとし、戦いにおいての心構えなどが書かれている。「風の巻」:それぞれの家風などのことを「風」と例え、他の流派について書かれている。
「空の巻」:兵法の本質としての「空」について書かれている。
「地」~「風」までは、概要でなんとなくお伝えできるかなと思うのですが、「空の巻」については「何のことやら?」と私自身が首を傾げてしまいました。

こちらの「空の巻」は、武蔵が武士としてたどり着いた到達点と言われています。色々と文献を読み漁った上での私なりの解釈になってしまうのですが、兵法の道はもちろん、そのほかの武芸にもよく励まなくてはいけない、そうすることで得られる武士の行う道に少し暗がりさえない迷いの雲の晴れた状態を真実の空と言い、その「空(から)」の状態の素晴らしさを、「五輪書」の最後に謳っているように思います。

この「五輪書」は、世代を超えて多くの人に認められている考え方。

そして『FGO』で武蔵がこの宝具を発動させる際も、フィニッシュの「空」のところで天を分かつほどの真っ直ぐで白い一筋の剣筋が昇っているのが見えます。まさに、剣を極めたセイバーのサーヴァントにふさわしい必殺技と言えますね。

最後に━━

今回は本物の歴史上の人物になぞらえつつ、キャラの魅力に迫ってみたのですが、いかがでしたでしょうか。

宮本武蔵はセイバーでありながらバーサーカークラスのカード配分(クイック1:アーツ1:バスター3)を持っています。それでいてアーツは高性能で、ヒット数を二倍にできる強力スキル「第五勢」と組み合わせるとNPを稼ぎやすいキャラ。

それと同時に、アーツの配分が少ない分、先述のコンボを出せるタイミングが限られてしまうといった難易度の高い操作性を含んでいるのも事実です。でも私は、そんな扱いづらさも含めて武蔵が愛おしく感じてしまうのです。


武蔵のさらなる活躍……は、マスターの頑張り次第ですが、これほど魅力溢れるキャラに出会えたことに感謝しつつ、年末に始まる一回680円という一番くじを最大何回まで引ける余裕があるか、財布と相談しておきたいと思います。

長々とお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
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