しかし当時は、「美少女さえ出せばいい」といったゲームも少なからず存在し、中には目玉であるはずの「美少女」についてすら不十分だったものも。かつて“セクシー”な売り文句に惹かれて手に取り、しかし期待に応えてもらえず悔しい思いをした方も多いのでは。
ですが、“美少女”や“セクシー”を魅力のひとつに掲げながらも、しっかりとしたゲーム性を備えるゲームも増えてきました。中には、厚い支持を得てシリーズ展開に発展するタイトルもあるほど。その中の代表作のひとつとして、『閃乱カグラ』シリーズもよく知られています。
3DS向けにデビューを果たした1作目は、立体視を活用して「美少女の胸が飛び出して見える!」という衝撃を提供。一種、バカゲーにも通じる突き抜けたその姿勢に、多くのユーザーが驚き、注目を寄せました。
しかし実際にプレイしてみると、決して「美少女“だけ”」のゲームではなく、爽快感が手軽に楽しめ、テンポの良さが光るベルトスクロールアクションとしても心地よい一作でした。こうして「美少女」と「ゲーム性」を両立させた『閃乱カグラ』はシリーズ化するほどの人気を博し、後に3Dアクションへとゲーム性を変化。今日に至るまで多数の作品をリリースし続けてきました。
そんな『閃乱カグラ』のデビュー作を含んだ2作目『閃乱カグラ Burst -紅蓮の少女達-』が、PS4向けに登場。『閃乱カグラ Burst Re Newal』と名を変えた本作は、ゲームシステムを3Dアクションへと進化させ、グラフィックも大幅強化。
HDリニューアルの恩恵で、もちろん“セクシー”な演出も魅力が増しており、男子ならばついそこに惹かれてしまうのも無理のない話。ですが、『閃乱カグラ』は「美少女“だけ”」のゲームではありません。そこで今回は、“セクシー”な部分からは敢えて目を背け、『閃乱カグラ Burst Re Newal』のゲーム部分のみに集中したプレイレポをお届けしたいと思います。べ、別に、無理なんかしてませんよっ!
◆実は説明書も嬉しい『閃乱カグラ』
ゲーム性に迫る前にまず触れておきたいのが、説明書について。昨今は説明書の電子化が進んでおり、ダウンロード版はもちろん、パッケージ版に説明書がついていないこともしばしば。簡単な操作説明の紙が入っていたり、もしくはチラシやアンケートの案内のみというケースもあります。
ですが『閃乱カグラ』シリーズは紙の説明書をしっかり封入しており、『閃乱カグラ Burst Re Newal』にも、表紙や裏表紙も含め全32ページのプレイングマニュアルが用意されています。本作は多彩なアクションが可能なので、手元で気軽にチェックできるのは実に嬉しいところです。もちろん電子化された説明書が悪いわけではありませんが、画面を切り替えることなく操作説明を調べられるのは利点と言っていいでしょう。
また、今時の風潮とは合わない感覚と言われてしまえばそれまでですが、ゲームをプレイする前にまず説明書を読むワクワク感も見逃せないポイントのひとつ。例えるならば、メインディッシュをいただく前のオードブルと言えるでしょうか。
「どんな物語が楽しめるのかな」「こんな操作もできるのか」「これを覚えておくと役に立ちそうだ!」と、読み進めるだけでプレイ意欲が上がり、ゲームプレイをより美味しくいただけるようになります。ダウンロード販売もなく通販も整っていない時代に、隣町のゲーム屋から帰る途中の電車で、よく説明書を読みました。プレステの説明書は、パッケージの表紙にもなっていた優れものです。
人によってメリットか否かは意見が分かれるところかと思いますが、今の時代にしっかりとした紙媒体の説明書を同梱してくれるのは、やはり大きな特徴です。特にメリットと感じない人にとっても、読まなければいいだけでデメリットはありません。そして、嬉しい人がいるのもまた事実。筆者も嬉しい人のひとりなので、出来れば今後も続けて欲しいばかりです。
意外(?)と色気が控えめなオープニングアニメ、バトル演出が熱い!
◆“セクシー”を売りとしないオープニングアニメ
ゲーム開始直後、軽い戦闘を挟んだ後にオープニングアニメが流れます。今回、敢えて“セクシー”部分からは目を背けていますが、本作の魅力のひとつがそこにあるのもまた確か。攻撃による衣装破壊や、下着状態で戦いに臨む「命駆」などがその代表例です。
ならば、ゲームの顔とも言えるOPアニメに、そのセクシー要素をふんだんに盛り込んでいるかと言われれば、実はそうではありません。本作では「国立半蔵学院」と「秘立蛇女子学園」という2つの学校がそれぞれ主軸の舞台となりますが、まずOPアニメでは各校のキャラクターたちの日常風景を綴り、続いては切れ味溢れる対決シーンの数々を展開。
特にスピーディな、時にパワフルさを感じさせる演出が織りなすだけでなく、これだけ激しいアクションをしながらも、チラリと見えるセクシーさは一見ほとんど感じられません。衣装破壊も盛り込まれていますが、分かりやすい1シーン以外はかなり細かい描写で、一時停止をしてようやく分かるレベルのものも。
衣装破壊も本作における売りのひとつなので、もっと前面に押し出した演出でもおかしくないのに、あくまで色気ではなくアクションや演出で「魅せる」映像となっています。アクション面にも重きを置いている『閃乱カグラ』らしく、その特徴をよく表すOPアニメと言えるでしょう。
……いやその、忍転身(下着状態を経て別衣装に変身)のシーンはありますけども! しかしこれは、魔法少女アニメにおける変身シーンであり、セーラー戦士のメイクアップですから! ノーカウントということでひとつ!!
そんなOPアニメは絶賛公開中なので、興味が湧いた方はこちらからご覧ください。
YouTube 動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=vjpwo5_Y0ew
◆爽快かつ手軽な忍アクション!
一人前の忍を目指す少女たちを描く本作は、アクション面も「忍」に相応しく素早くテンポも良好。ですが操作は分かりやすく、決して難解ではありません。基本となる攻撃方法は、□ボタンの弱攻撃と、△の強攻撃のみ。この組み合わせでコンボが変化するので、状況によって使い分けます。
また、敵を吹き飛ばした時に○ボタンを押すと「飛翔乱舞」が発生し、相手に急接近。そこから更に追撃できるので、よりダメージが与えられるのはもちろんですが、この素早い機動自体が忍らしくて心地よい手応え。ちなみに、壁や屋根の上を走ったりもできます。
少し余談になりますが、最近「忍者」をモチーフとしたアクション性のあるゲームが少ないように感じます。かつては『天誅』や『忍道』、『NINJA GAIDEN』といったタイトルで忍者アクションを楽しめましたが、最近はあまり見かけなくなりました。それだけに、壁走りなどの「忍」らしいアクションを味わえるのは、ささやかなポイントですが見逃せません。
この他にも、必殺技(秘伝忍法)が使えるようになる「忍転身」や、攻撃を防ぐ「防御」、戦局を有利にできるジャストガード「弾き」、一発逆転も狙える「バーストモード」などがあり、戦略の幅を拡げてくれます。全てを使いこなした方がより強いのは間違いありませんが、序盤はそこまで厳しい戦いはないので、少しずつ覚えていく感じで十分です。
率直なバトルの実感や問題点にも言及
◆「忍」の戦いは、攻守入り乱れる激戦!
ゲーム映像だけを見ている方は、ともすれば「無防備に近い雑魚敵をひたすら倒すだけ」と思ってしまうかもしれません。ですがプレイしてみると、その認識と実際のゲーム体験が大きく異なることに気づくでしょう。3DS版をプレイ済みの筆者にとっても、本作でそのバトルは更なる緊張感が盛り込まれていると感じました。
3DS版は主に「攻め」が重要でしたが、本作では攻撃をコンボで与え続けている間でも敵の攻撃が挟まる場合があるため、「攻めと守り」のバランスが大事。敵の攻撃には予兆があり、視覚化された「殺気」に合わせてガードをすると「弾き」に。弾くと周囲の敵が気絶状態となるので、更なる攻撃を加えることができます。
テンポのいい攻撃を繰り出しつつ、相手の「殺気」に反応して防御に切り替え。
この充実感は、1vs1での戦いだとより映えるので、キャラクター同士の一騎打ちはシチュエーションも相まってテンションup。フィールドを縦横無尽に駆け抜けて飛翔する「忍バトル」を、心地よく堪能することができます。
忍らしく二段ジャンプやショートダッシュ、ロングダッシュなどもあるので、広い空間でも機動性を活かした戦いが楽しめるのも嬉しいところ。アクションの一部には硬直もありますが、例えば着地の硬直をショートダッシュでキャンセルする、といったテクニックもあるので、自分なりの戦い方を見つけるとより楽しくバトルを展開できるでしょう。ガードでもキャンセルできるので、ここでも「守り」は大事です。的確な防御を駆使することで、新たな攻撃に繋げる快感を味わえます。
そして、セクシー要素に敢えて目を背ける今回の趣旨的にも押さえておきたいのが、衣装破壊について。読んで字のごとく、ダメージを受けることで衣装が破壊され、下着姿になってしまうという要素ですが、この衣装破壊を「なし」にすることも可能。
「あくまでアクションがしたいんだ、セクシー要素は見たくない!」「キャラは好きだが下着姿は不要」という硬派な紳士にお勧めの設定です。「見て欲しいが、見たくない人には見せない」という開発側の意気込みと配慮が感じられます。
◆セクシーから目を背けても、難点からは目を背けない! 改善して欲しいポイントも
ここまでは本作のバトルにおける魅力的な部分について触れましたが、改善して欲しいポイントもいくつか見受けられます。まずは、機動性の高さからスピーディな展開になる本作において、キャラクターの視認性が十分とは言えません。演出も相まって、乱戦の際には各キャラの動きが判別つきにくい時もあり、また公園にある茂みなどのオブジェクトに紛れると、更に見づらくなる時も。
また、俊敏な動きに対してカメラワークが万全ではなく、壁際での攻防では状況が把握できなくなることもありました。視界が十分でないと次にどうするかの判断が決めかね、その間に攻撃を食らってしまうのはやはり嬉しくありません。
またカメラワークとも関連しますが、本作のロックオンもやや使い勝手に難点が。スピーディな動きで視界が飛びすぎないよう、ロックオンで相手を狙いやすくできるのは助かりますが、大量の雑魚と戦う時にはデメリットとなる場面もあります。状況によって注目したい相手は変わるので、逆にロックオンした敵に視界が引っ張られてしまうようなケースは少々困りものです。
ロックオンの対象は任意の操作で変更可能ですが、切り替え操作は十字キーで行うので、その間は操作キャラを移動させられません(親指でレバー、人差し指で十字キーといった操作なら不可能ではありませんが、ちょっと厳しいので…)。乱戦時には切り替える暇がなく、視界のハンデを背負いながら戦うことも何度かありました。
これらの理由により、雑魚戦は少々やりにくい印象です。致命的と言えるほどではありませんし、ある程度慣れで緩和することもできますが、これからのシリーズ作で改善されると嬉しいのも事実。今後に期待します!
『閃乱カグラ Burst Re Newal』で描かれる物語もポイント!
◆忍を目指す少女たちの「青春群像」
シリーズ未プレイの方からすると意外な点かと思いますが、『閃乱カグラ Burst Re Newal』は物語面での読み応えもあります。「忍務」と呼ばれるミッションの前後には会話劇が用意されており、状況が分かりやすく語られるほか、各キャラの掛け合いなども楽しめます。
さらに一部の「忍務」では、テキスト主体のノベルも展開。会話劇では台詞の応酬ですが、ノベルでは地の文も表示され、キャラの内面などがより深く描写されます。また、ノベルで語られるストーリーも千差万別で、主要キャラの一人・飛鳥が他校の男子生徒から突如告白されたり、なぜ「忍」を目指すのかその背景が明かされるといったものも。
「一人前の忍を目指す美少女たち」「衣装破壊アクション」「巨乳揃い(一部例外あり)」と、一見して分かる特徴だけから連想する物語とは大きく異なり、忍の道を邁進するという特殊な立場ながらも、少女の等身大な日々を綴っているのです。
ノベルの視点も、飛鳥だけでなく多くのキャラクターたちが掘り下げられるので、しっかりとした読み応えがあります。その一方で、ひとつひとつは長すぎずに終わるので、テンポが大きく損なわれることもありません。読み物が苦手な方はスキップ機能もあるのでご安心を。
アクションあり、セクシーありな『閃乱カグラ Burst Re Newal』は、同時に少女たちの青春と成長を描く群像劇も展開。日頃セクハラばかりする葛城も、振り返ると重い過去があったりと、意外な一面を伺うことも。一見して伝わる色気だけに注目が向きがちですが、様々な形で「少女たち」を描いている作品と捉えることもできます。
どんな名作であっても相性はあるので、どうしても合わない作品を無理に遊ぶ必要はありませんが、『閃乱カグラ Burst Re Newal』は「美少女“だけ”のゲームではない」と、冒頭の言葉をもう一度繰り返して、締めの言葉と致します。興味が湧いた方は、ぜひとも『閃乱カグラ』の道を舞い忍んでみてください。
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