千葉・幕張メッセで9月20日から23日まで開催された国内最大級のゲームの祭典「東京ゲームショウ2018」。銀河ソフトウェアブースにて9月23日、日本将棋連盟所属の女流棋士・山口恵梨子女流二段による「ステルス将棋」トークショーが開催されました。


「今まで誰も作らなかった魅惑の将棋ゲーム」を掲げる同ゲームは、将棋ルールはそのままに、相手の陣地が見えない状態で勝負をするというもの。見える範囲は自分の駒とその周囲8マスのみで、駒を動かすことで索敵範囲を広げつつ、対戦相手の玉を追い詰めなければいけません。CPU対戦だけでなくオンライン対戦もでき、世界中のプレイヤーと戦うことができます。

■世界大会を実況するほどポケモンが大好きな山口恵梨子女流棋士

「将棋」とは全く異なるスキルが求められる同ゲームを実際にプレイしてもらうため、えりりんの愛称で知られる山口恵梨子女流棋士がゲストに呼ばれました。1991年10月12日鳥取県生まれで26歳の山口さんは、小学1年生の時に父親に将棋を習った数年後にはアマチュアの大会で優勝するまでの腕前になったそうです。山口さんは「大会の賞品が良くて宝石とかがもらえる」ことがモチベーションに繋がったと話しました。

その後、小学6年生で女流棋士を育成する機関・女流育成会に入会し、高校二年生で女流棋士としてプロデビューし、2016年に女流二段となって現在に至ります。棋風は中飛車を得意とする激しい攻め将棋で、「攻める大和撫子」の異名を持っています。

一方で、大のゲームズ好きで知られる山口さんは、東京ゲームショウ出展ブースを見て、「『うたの☆プリンスさまっ♪』や『ラブライブ!!』など、やったことあるのばかりでした。後で回ろうかなと思います」とテンションが上がった様子。ゲームが好きになったのは両親に小さい頃はゲーム禁止されていた反動だそうで、「お子さんにゲーム禁止しないほうがいいですよ(笑)」と観客に呼びかけていました。

また、とりわけ「ポケットモンスター」のガチプレイヤーとして知られており、好きが高じるあまり、8月にアメリカで開催された「ポケモンワールドチャンピオンシップス2018」をニコニコ生放送の番組で現地から実況したほどです。


■大ファンだという観客の一人と「ステルス将棋」対戦
将棋ゲームにもお仕事で関わることが多いそうで、別のゲームでは「お願いします」や「負けました」などボイスを担当したこともある山口さん。「ステルス将棋」への感想を求められて、「面白いですよね。遊び将棋みたい」と「小さい頃にめちゃくちゃ、やりましたね」と童心を思い出したようでした。

しかし、この日に初体験する「ステルス将棋」は敵陣が全く見えないと聞いて、「めちゃくちゃ恐くありませんか?対戦相手が動かす駒だけしか見えないし、一瞬で記憶しないといけないんですよね?」と本音を吐露。観客の中から1人とオンライン対戦するということになり、トークショー開始の約3時間前から待っていたという山口さんの大ファンだという男性が選ばれました(将棋歴40年)。

同ゲームは従来の将棋とは全く異なる戦略性が求められ、将棋が強い人と弱い人が逆転することもあるため、「始めに申しておきますと、私は将棋の女流棋士ではあるんですが、ステルス将棋の女流棋士ではないので、どういう展開になるか誰も分からないと思います(笑)」と山口さん自身も先が読めないようでした。

■暗闇の中で戦っているかのような展開に山口さんも悲鳴を上げる

それでも「全力で頑張りたいと思います!」と気合い十分な山口さん。お互いが相手の陣地を確認できない状況ながら、通常の将棋解説のように山口さんの駒の動きを司会の福山知沙さんが逐一読み上げていくと、「言ったらバレちゃう!」と山口さんがツッコみ、「そうでした!」と福山さんがハッとする場面が見られました。

自分の見ている盤面と相手が見ている盤面が全く違い、暗闇の中で戦っているかのような同ゲーム。山口さんも「どの駒が待っているかマジで分かりません。どうしよう?」と戸惑いが隠せない様子でした。

それでも持ち前の激しい攻めで「私、これ行ける気がします!」と、勘を頼りに敵陣に駒を突っ込ませるものの、「何でこの駒がここにいるんですか?」と予想外の駒の待ち伏せに合って駒が取られる(後から聞くと、最初の実況が聞こえていたので山口さんの手が分かっていたそうです)など、本来の将棋と違ってセオリーを無視した相手の指し方に悲鳴を上げていました。


「これは先に突っ込んじゃダメですね。相手も持ち駒良くなってから急に指さなくなった。長考を始めてますね。勝つ気ですよ」と、盤面が不利な状況に陥るものの、短い時間の中で戦い方を掴み始めた山口さんは「これ楽しいな!」と対局を立て直したところでタイムアップ。

山口さんは「相手が見えないと棒銀のように特攻してはだめなんですね。相手に攻めさせるような感じで序盤は持ち時間を使わずに進め、中盤以降に長考できる時間を取っておくといいのかも」と反省していました。それでも自分のスタイルを貫いたのはかっこいいの一言です。

プロも初心者も楽しめる意外性のある全く新しい将棋が楽しめる「ステルス将棋」は無料でダウンロードできますので、一度体験してみてはいかがでしょうか。
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