様々なゲームタイトルを展開し続けているフリューは、シリーズ作も手がけている一方で、完全新作タイトルも意欲的にリリースしています。

ここ最近は、名作を手がけたクリエイター陣による作品作りも積極的に行っており、『女神異聞録ペルソナ』などのシナリオを担当した里見直氏が携わる『Caligula -カリギュラ-』、『幻想水滸伝』シリーズのシナリオでも知られている村山吉隆氏が物語を描く『アライアンス・アライブ』、それぞれが数多くの代表作を持つスタッフ陣が集結した『WORK×WORK』などを発売。
いずれも、個性的な要素が好評を博したり、長く愛される作品になったりと、多くの反響を受けています。

そんなフリューが2018年10月18日に発売したPS4ソフト『CRYSTAR -クライスタ-』も、名作を生み出したスタッフが関わった一作としてゲームファンが注目。本作のシナリオは、かつてのADVブームを支えたライターのひとりである、久弥直樹氏が担当しています。しかも、本作のジャンルはアクションRPG。久弥氏が描く物語が、アクションRPGでどのように紡がれるのか。その点も大いに興味深かったため、実際にゲームを遊んで体験してみました。


今回はそのプレイレポをお届けしますが、久弥氏を知らない方に向けた紹介も交えつつ、『CRYSTAR -クライスタ-』の体験に触れたいと思います。なお、本作の序盤の展開についても触れているため、その部分に関するネタバレが含まれているのでご注意ください(プレイ開始から数時間くらいの範囲です)。

◆『ONE ~輝く季節へ~』や『Kanon』で、ADVブームの一端を担った久弥直樹氏
画像は、PS版『輝く季節へ』です
ファミコンレベルの表示能力もないような時代に、テキストのみで楽しむADVが既に存在していたほど、ADVゲームの歴史はかなりの長さを誇っています。今も、インディー含めて多彩なタイトルがリリースされていますが、ADVが更に大きな盛り上がりを見せた時代は、これまでに何度もありました。

そんな、ADVが隆盛していた時代のひとつが、1990年以降の成人向けPC市場でした。まずは、1992年に『同級生』が登場。
魅力的なヒロインとの濃密な関係を描き、当時のユーザーに新たな刺激を与えました。続編となる『同級生2』(1995年)も好評を博し、他のメーカーもADVに注力する流れが生まれます。

メッセージウィンドウなどを排して物語への没入度を高めた『雫』や『痕』(共に1996年)が口コミで評判となり、スタイルのみ受け継いで方向性を大きく転換した『To Heart』(1997年)が、こちらも大ヒットを記録。後に展開したプレステ版も高い評価を得て、TVアニメや続編などに繋がりました。

そして、PC市場でADVが盛り上がる1997年に、Tacticsから『MOON.』という作品が発売されます。成人向けのタイトルなので内容については触れませんが、少年少女の感情や葛藤を描く物語がプレイヤーに衝撃を与え、一部のユーザーにとって忘れられない作品となりました。
そして、この『MOON.』のシナリオを麻枝准氏と共に担当したのが、久弥氏です。

『MOON.』は衝撃的でしたが、人を選ぶ面があるのも否めません。ですが、引き続き麻枝氏と久弥氏が手がけた『ONE ~輝く季節へ~』(1998年)で、ユーザーからの関心と注目を一気に集めます。その巧みなシナリオ展開で涙を流すプレイヤーも多く、本作を「泣きゲー」と称する方が続出しました。

画像は、PSP版『Kanon』です
さらに、『MOON.』『ONE ~輝く季節へ~』の中核スタッフが集まり、ゲームブランド・Keyの初作品となった『Kanon』(1999年)も、ファンの期待を上回る出来映えで大ヒット。こちらも涙を誘う物語が数多く描かれており、ADVと「泣きゲー」の両面を力強く支える代表格のひとつに数えられています。


この時期には様々な名作ADVが生まれましたが、先陣を切った『同級生』、ノベル形式で手軽さと没入度を両立させた『To Heart』、そして感情を揺さぶる『ONE ~輝く季節へ~』と『Kanon』が、特に語られる機会が多いタイトルです。

そんな『ONE ~輝く季節へ~』や『Kanon』のシナリオに携わった久弥氏。後に、テレビアニメや小説など活躍の場を拡げていきますが、今回『CRYSTAR -クライスタ-』で再びゲームシナリオに着手。しかも本作は、「涙」が鍵になります。プレイヤーを泣かせ続けた「泣きゲー」の手腕を、涙をモチーフとする物語でどのように発揮するのか。注目したいところです。


ちなみに、PC市場におけるADVはその後も盛り上がりを見せ続け、2004年には『Fate/stay night』が発売されます。後に、アクションやRPGなど幅広い展開を見せる『Fate』シリーズの原点もPC向けADV市場から登場しており、当時のブームが現在のゲーム史に与えた影響も少なくありません。

『CRYSTAR -クライスタ-』のゲームシステムやバトル面について迫る

◆基本的な要素は揃っているものの、バトル面には物足りなさも

ストーリーも気になりますが、まずはゲームシステム面について。本作は、異形の敵である「幽者」(ゆうじゃ)や「幽鬼」(ゆうき)と戦うアクションパートと、戦力を整える拠点(部屋)の往復でゲームが進行します。

アクションパートでのキャラクター操作は、標準的なアクションRPGの要素が一通り揃っており、左スティックで移動、右スティックでカメラ操作。□ボタンで弱攻撃、△ボタンで強攻撃となり、攻撃している最中に弱から強に繋ぐことも可能です。
また、×ボタンでジャンプし、ジャンプ中も攻撃できます。

2秒以上移動していると、移動速度が上昇。R2を押すと一定距離をダッシュで駆け抜け、その間は敵の攻撃を完全に回避します。ですが、ダッシュ後に多少の硬直があるので、通常の移動とダッシュは状況によって使い分けるのが最適です。

またR1ボタンと□、△、○、×の各ボタンとの組み合わせで、様々な効果を持つスキルの発動が可能。全方位攻撃や、溜めた後に強力な一撃を放つもの、打ち上げ効果があるもの、遠距離での攻撃など、それぞれ特徴が異なっており、使い分けることで戦闘を有利に展開できます。ちなみに、使用するにはSPが必要ですが、このSPは戦闘を通じて自然に溜まるので、ガンガン使ってテンポよく進むのが良さそうです。

このほかにも、L1ボタンで「守護者」の力を発現し、追加攻撃を行ったり、強力な必殺技を出すことも。こちらの発動には、「涙ゲージ」を満杯まで溜める必要があります。このゲージも戦闘中に溜まっていきますが、SPを消費して溜めることも可能。

ちなみに、SPを消費して涙ゲージを上げる時には、各キャラごとに胸の内を明かしつつ涙を流すという演出も。SPという形で表現される精神が、涙を通して意志に変わり、力となるのかもしれない・・・みたいに考える人は、本作との相性がかなり良好だと思います。

序盤は、主人公の「幡田 零」だけしか操作できませんが、物語が進むと仲間が増え、戦闘中に切り替えられます。攻撃範囲やスキルなど、それぞれ特徴が異なるので、状況に分けて使いこなすもよし、お気に入りのキャラをメインにするもよし。HPは個別なので、ダメージを受けたら切り替えていくというのもひとつの戦法です。

各キャラクターは、バトルを通じてLVアップするだけでなく、武具に当たる「思装」を獲得・装備することで戦力が強化されます。この「思装」は、幽鬼を倒した時に文字通りまとわりつく「断末魔の思念」を、零の涙で浄化した時に生み出されます。

この「断末魔の思念」は、「アイして」「もうしないから」「ひとりは嫌だ」など、その声を発したシチュエーションを想像するだけで胸に刺さりそうなものばかり。中には、「くうふくだ」「母さんのごはんを」など、想像したくないような思念も。そんな苦しい想いに押しつぶされそうな零は、常に涙を流してその想いを受け止めます。

ちなみに、思念を浄化しないと、拠点である部屋にいる間もずっと断末魔が漂うことに。直接的なデメリットはありませんが、こんな部屋で心が休まる気がしません。ため込める思念には上限があるので、早めの浄化がお勧めです。が・・・ゲームを遊ぶこちらはドライに割り切れますが、作中の零にとっては簡単な問題ではないのかもしれません。

ゲームシステム面の主だった部分は以上となりますが、実際にプレイしてみた個人的な感想としては、バトルは非常にシンプルな作りと感じました。立ち回りやタイミングの見極めなどはあるものの、シビアな操作が要求されることもありませんし、敵の攻撃も対処しやすく、アクションゲームに慣れたユーザーならば回復アイテムなど使わずに進めることができそうです。

実にオーソドックスなアクション性なので、操作しやすいとも言えますが、本作ならではの手応えが薄いのもまた事実。緻密ではないものの、キャライメージや雰囲気を上手く再現している3Dモデルや、独特の雰囲気を醸し出すステージの作りや演出、各シチュエーションを盛り上げる音楽などに意気込みを感じるものの、肝心のバトル自体はやや平凡な印象を受けました。

大きな難点などはありませんが、これといった長所も見つけにくいのが正直なところ。しかし、これはアクションだけを切り出して注目した場合の感触です。ここに物語が加わることでどのような変化が生まれるのか、その点についても迫ります。

本作の物語とアクションRPGの関係について推測

◆伏線に怯え、物語に没入し、主人公とプレイヤーが罪を重ねる─アクションRPGだからこその繋がりがここに

主人公である幡田 零が、見知らぬ空間で意識を取り戻すところから、本作の物語が幕を開けます。後に分かることですが、ここは「辺獄」と呼ばれる死後の世界。死者の魂は、この世界の最下層にある「再生の歯車」で記憶をリセットさせられ、輪廻転生を迎えます。

しかし零自身は死者ではなく、妹の幡田 みらいと共に、この世界に引きずり込まれた生者。元の世界に戻るため、2人で辺獄を彷徨います。

2人でいるとはいえ、見知らぬ世界では不安も募るもの。みらいは、「なにかあっても、わたしの手を離さないでね」と姉に願い、零も約束すると答えます。しかし、この約束を守ることができず、みらいと離ればなれになってしまう零。この危険な世界で戦う力を身に付け、みらいを助けに向かいます。

幸い、みらいを見つけることに成功しますが、そこには幽鬼のひとり「アナムネシス」の姿が。元々この世界に2人が引きずり込まれたのは、このアナムネシスがみらいを狙ったためでした。

みらいを助けるため、アナムネシスに立ち向かう零。しかしその力は暴走してしまい、自らの手でみらいの命を奪ってしまいます。自らの過ちに苦悩し、零は自我を失いかけますが、そこに悪魔を自称する「メフィス」と「フェレス」が現れ、自分たちと契約するならみらいの“ヨミガエリ“が可能だと提案します。

この申し出を断れるはずもない零は彼女たちと契約する「代行者」となり、この辺獄で幽者たちと戦う日々が幕を開けます──と、ここまでは本作のオープニング。みらいとの約束からの離別、そして死別と、展開がやや急ぎ足ですが、ストーリー展開に時間を割きすぎると「アクションRPGなのにいつバトルが始まるんだ」という不満にも繋がるので、ジャンルを考えれば納得です。

そしてここまでの下りだけでも、物語に対する緊張感が、筆者の心に芽生えました。もちろん、直接描かれた物語の展開自体もそうですが、伏線を張り、それが着実に回収されるという、基本にして重要な構造がしっかりと確立していたためです。

どれだけ意外な出来事でも、ただ起こるだけではドラマにはなりにくいもの。その出来事が起きた原因や、それによって広がる影響、対応するために動く人々の行動や感情の発露があり、そして結末や新たな展開に辿り着くことで心が動かされます。こう書くとややこしい話になりますが、一言でいえば「伏線と展開の連結」です。

物語を盛り上げる要素となる「伏線」は、本作でも序盤からバシバシ貼られています。前述の「約束」などは、非常に分かりやすい伏線でしたので、飛び出した段階で嫌な予感を覚えました。そして、きっちり回収され、プレイヤーの心に直球が投げ込まれます。

これが刺さるかどうか、物語に魅了されるかは相性も大きいので、万人にお勧めできるかは分かりませんが──そもそも万人にお勧めできる物語が、実際に存在するのかどうか──『CRYSTAR -クライスタ-』が気になるアンテナをお持ちの方なら、向いている可能性は充分にあります。

例えば、第1章「契約の代償」では、代行者・零が倒してきた幽者・幽鬼の正体が、ヨミガエリを望み辺獄のルールに従わない人間の魂だった、という事実がここで判明します。ルールを破っているとはいえ、生き返りたいのは誰でも願う気持ちですし、なにより零自身が、みらいのヨミガエリのために戦っています。

幽鬼は、自分のヨミガエリのために死者の魂を食らい、零はみらいのヨミガエリを願って幽鬼を狩る。動機も、そして行っていることも、まったくの同等なのです。それぞれの願い、言い換えるならばエゴのために、他者を踏みにじる。そんな行為を自覚させられ、しかしみらいを助けるためには抗うこともできず、誰かを押しのける──しかもそれは、命令や強制ではなく、自らの意志で選んだことだと突きつけられます。

この幽者・幽鬼の正体を明かすタイミングや、その事実を知った零が揺れることでみらいのヨミガエリが叶わなくなる可能性を示唆する動きなど、事前に張った伏線が見事に展開していき、「やっぱりこうなるのか!」「ああ、そうくるのかー」と、プレイしながらつい口に出てしまいました。

展開する物語につい没入してしまうのは、状況作りや展開の流れの上手さもあると思いますが、アクションRPGというジャンルも助けになっているかもしれません。というのも、幽者を狩るという行為そのものは、プレイヤーの操作によるもの。幽者を倒し続ける零を操作しているのは、紛れもなくプレイヤー自身なのです。

ADVならば、展開する物語を「読む」立場ですが、アクションRPGならばプレイヤーの意志が直反映されます。極論ですが、零の意志を拒むのであれば、コントローラを置くだけですみます。だからこそ、敵を倒し続ける操作を行うのは、プレイヤーが零と同じ目的に向かう行為であり、罪を共有する立場を選択したとも言えます。

ゲームシステムだけ切り取れば、バトルはシンプル故に物足りなさも感じますが、その行為に物語を重ねると、意味や選択、そして責任が生まれます。この重さが、様々な伏線と絡み合うことで、心がより動かされる──のかもしれません。

ジャンルと物語との関係は、あくまで筆者が感じた印象と推測に過ぎませんが、そんな考えが自然と浮かび上がる点こそが、本作が持つ魅力と捉えることもできます。しっかりとした伏線があることでその先を想像したくなってしまうのは、久弥氏が『CRYSTAR -クライスタ-』に与えた力のひとつでしょう。

◆『CRYSTAR -クライスタ-』を遊び、零の共犯者になってみるのも一興

『CRYSTAR -クライスタ-』がお勧めできるゲームかどうかの結論は、非常に悩ましいところです。先が知りたくなる物語は、伏線と回収のサイクルがしっかり行われており、気になった点が展開したり予想を超える出来事に繋がったりするのは、やはり見応えがあります。また、音楽やビジュアル、演出なども没入感を支えており、本作ならではの個性を感じさせてくれました。

そして、アクション面でパンチが足りないのもまた事実。しかしアクションRPGだからこそ、プレイヤーの行為が零との結びつきをより強固にするため、不要な要素では決してありません。万人にお勧めしにくい作品ではありますが、色々と想像や推察をしながら物語を楽しむタイプの方ならば、本作の特徴と嗜好がマッチしやすいかと思います。

全ての面で優れているというのは何事に置いても理想ではありますが、非常に難しいのも確かです。その上で、「全てが平均以上だけども凡庸」ではなく、「アンバランスだけども特筆する個性がある」を選んだ姿勢は、決して悪いものだとは感じません。お勧めできるかどうかはユーザーとの相性次第でもありますが、「泣きゲー」でプレイヤーの心を揺さぶった久弥氏が、涙を流すその先に如何なる物語を描くのか。その点が気になる方は、零の罪を共有してみてはいかがでしょうか。

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