台湾は日本人観光客が多く訪れる地。九フンや夜市など定番の観光スポットだけでなく、各国のゲーム会社にとって新タイトル発表の大事な展示会「台北国際ゲームショウ」、“台湾版コミケ”「FANCYFRONTIER 開拓動漫祭(通称・台湾FF)」などを目当てに行く人も増えています。


Momoさん。和柄ロリータ・ファッション
アニメやゲームなどのいわゆるオタクイベントは台北に集中。イベントといえば、会場を盛り上げるコスプレイヤーは欠かせません。本稿では台湾を代表するコスプレイヤーのMomoさんと、彼女が経営する台北のコスプレスタジオ「MOMO +Photo Studio」を紹介します。2018年8月にオープンしたばかりで、「台湾FF」が毎回開催される会場からも近いです。

10代前半からコスプレを始めてから10年が経つMomoさんによれば、台湾ではコスプレスタジオが少ないそうです。そこには台湾ならではのコスプレ事情が介在していました。彼女のスタジオで撮り下ろした厳選写真と合わせてご覧ください。

眩しい画像を一気見する(全54枚)

■Momoさんが設計した理想のコスプレスタジオ
Momoさんはコスプレイヤーに留まらず、カメラを専門的に学んでいるので撮影も得意としています。モデルとカメラマン双方の視点から設計した理想のスタジオで、何人もコスプレイヤーを撮影しています。

自然光が入る白ホリゾント
スタジオは1階にあり、自然光がふんだんに入ることが特徴。Momoさんが言うには「台北で1階にあって自然光が入るスタジオは少ない」そうです。
彼女自身が自然光の撮影が大好きということもあり、1階の屋根を取り払ってスケルトン屋根にしました。そのため、太陽の光が差し込む真夏でも、自然光を浴びながら冷房の効いた部屋で撮影できるわけです。

自然光が入る欧風部屋
白ホリゾント、欧風、和風、黒ホリゾント(自然光入らない)の4部屋あり、各部屋ともに貸切利用になっています。

特に日本風の部屋はMomoさんのこだわりがひときわ詰まっています。台湾の一般的なスタジオには和風の部屋が少なく、あっても満足するスタジオが見つけられなかったからこそ、自分で納得いく部屋にしたとのこと。実際に日本の京都を訪れて参考にした室内と庭があり、掛け軸などの小物も日本で買ったそうです。

自然光が入る庭付きの和風部屋
また、Momoさん自身が大好きなロリータ・ファッションの撮影にも向いています。ロリータが大流行中の中国と比べると、台湾での周知度は低いものの、台湾ブランドもあります。

「スタジオ内にはたくさんのロリータ服があって、貸し出しています。台湾ではロリータ・ファッションをコスプレと一括りにされがちなのですが、私はお姫様のようになれるロリータ文化を広めたいんです」。

■コスプレスタジオの需要
台湾はカメラマンの技術の高さとスタジオの良さが有名で、利用する日本観光客も多くいます。しかし、コスプレスタジオはまだ多いとは言えません。
台湾では日本と違って、基本的には申請せずとも外でコスプレ撮影ができるからです。

「もちろん、一般の人から見たらコスプレは奇抜な格好だから、道路や街中での撮影はしないようにするのがコスプレ界隈での暗黙のルールとしてはあります。けれど山や川など、ロケーションの良い場所が豊富にあるので、天気が良ければお金がかからない外での撮影をする人が多いです」。

しかし、そう語るMomoさんは、コスプレイヤーには専用のコスプレスタジオが必要だと考えています。

その理由は2つ。まず、一般的なスタジオは商業利用で使われるため、利用料が高めであること。コスプレイヤーの年齢層は低く、学生が多いため、とても払えないという問題があります。

もう1つは一般的なスタジオでは、アニメやゲームの2次元キャラクターに合った内装が少ないということ。もちろん、作品によって合う内装はあるのですが、なかなかしっくり来るスタジオが見つからなかったと、Momoさんは言います。

「ちょうどいい立地に1階で良い物件が見つかったんです。両親も私の夢を応援してくれたからこそ、夢を実現できた。私がコスプレの仕事でスタジオにいられない時は、両親が手伝ってくれることもあるんです」。


天候に左右されず撮影できるコスプレスタジオは貴重です。しかし、台北では近年新しいスタジオが増えつつありますが、閉店するスタジオも多いとMomoさんは語りました。

「台北でコスプレスタジオ経営は難しいです。良い空き物件がなかなか見つからないし、賃貸料も高い。コスプレスタジオは価格も低めに抑えられている。利用者も毎日あるわけじゃない。かといって内装は凝らないと意味がない。収益で考えると出資分を回収するまでに時間もかかる。収支と支出のバランスが難しい」。

Momoさんの場合は、自分の作品撮りでも頻繁にスタジオを利用するのが大きく、また、モデルなどコスプレのお仕事があることや、何より自身が広告塔になっていることから一定以上の利用者を得られています。

「これまでマレーシア、フィリピン、シンガポールなど、国外イベントに参加したことや、facebookでのつながりから、台湾旅行やイベントに参加した際に利用してくれる人も多くいます」。

■Momoさんが見る台湾コスプレ界
近年は台湾でもコスプレをする若い子がたくさん増えました。
しかし、写真集販売では有名になりたいゆえに、衣装のクオリティーやキャラクターに寄せるといったことを考えず、単に露出が高いコスプレをする人が増えたと感じています。

「風紀が乱れたと言うんでしょうか。人が増えた分、商業に走って昔の良さが失われた気はします」。

その現状を踏まえた上で、Momoさんはコスプレイヤーの新しい活動の場として、動画配信やゲーム実況に注力しています。

「もちろん、従来のコスプレ活動に割く時間のほうが多いけれど、新しい環境でのチャレンジにやりがいを感じています。台湾ではYouTuberによるゲーム実況が増えている背景もあります。動画配信は今まで考えたことがなかったけど、早めに試したいと思いました」。

それは近年のアジアを中心に進出している、中国ゲーム企業の勢いも見据えています。もしそういった企業が台湾で宣伝活動をする際は、現地でコスプレイヤーとゲーム実況者を探す必要があり、自身が活動を続けることで、選ばれるチャンスが多くなると考えているからです。

Momoさんが夏コミ(C96)に参加するぞ

■Momo、コミックマーケット96にサークル参加
これまで日本には5回ほど来ており、コミケには3回参加しているMomoさん。8月12日にはジャンル「コスプレ」で西4ホール・D21aに出展します。

「日本のコスプレイヤーと交流したいのですが、日本語ができなくてなかなか機会が得られないのが残念。
「台北ゲームショウ2019」では、『モンスターストライク』ブースで、えなこさんと共演できたのが思い出です。日本語を勉強中なので、今回はぜひ日本のコスプレイヤーと交流したいです」。

ちなみに、日本や中国のコスプレイヤー参加型イベントでは、ライトスタンドなどの機材を持ち込んで撮影するカメラマンが多くいます。しかし、台湾ではイベントはあくまでもお祭りの場であり、機材を持ち込んでガチ撮影するカメラマンは少ないそうです。

日本では機材制限を受けていても、イベントで作品撮りのように力を入れるカメラマンが多くいますから、コミケで撮影されるのを楽しみだとMomoさんは期待を寄せています。彼女に会える機会をお見逃しなく。

■スタジオの紹介

1部屋1時間からの予約制で、白ホリゾント、欧風、和風の自然光が差し込む3部屋から選べます(黒ホリは別途相談)。

平日価格:650/1hr、1200/2hr、1700/3hr(台湾ドル)
祝祭日価格:750/1hr、1400/2hr、2000/3hr(台湾ドル)

※7月25日執筆時点でのレートは、1台湾ドル=3.48日本円

日本語ができるスタッフがいるので、日本語メールでの予約にも対応できます。

公式サイト
予約状況

撮影:乃木章(@Osefly)
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