2020年4月10日、『ファイナルファンタジーVII リメイク』(スクウェア・エニックス)が、ついに発売となります。社会現象となった伝説の名作のリメイクだけに楽しみにしている人も多いことでしょう。


そこで今回はオリジナル版『ファイナルファンタジーVII』が、初代プレイステーションで発売された1997年に注目。この年に登場した名作ゲームの数々を紹介していきます。まずは97年のおもな出来事を見ていきましょう。

◆神戸連続児童殺傷事件が起きる
兵庫県神戸市で小学生5人が相次いで襲われ、2人が死亡する事件が発生。「酒鬼薔薇聖斗」を名乗る犯人が14歳の少年であったことが判明し、社会に衝撃が走りました。

◆金融機関の破綻相次ぐ
大手証券会社の山一証券が総会屋への利益供与などが発覚したことから経営破綻に陥り、自主廃業を発表しました。この年は北海道拓殖銀行、三洋証券なども相次いで破綻。日本経済に暗い影を落としました。

◆サッカー日本代表が初のW杯本大会出場権を獲得
フランスW杯出場をかけたアジア最終予選のプレーオフで日本代表が岡野雅行の延長Vゴールでイランに勝利。悲願のW杯本大会初出場を決めました。余りに劇的な決着であったことから、この勝利は「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれました。

◆「ポケモンショック」が起きる
アニメ『ポケットモンスター』を鑑賞中に体調不良を訴えたり、ひきつけを起こしたりする子供が続出。
入院する子供も出るなどの騒ぎとなりました。画面を激しく点滅させるシーンが原因とみられたことから、これを機に放送ガイドラインが改定。「テレビを見るときは部屋を明るくしてテレビから離れて見てください」といったテロップが入れられるようになりました。

◆1997年のおもな流行
ヒット曲:『CAN YOU CELEBRATE?』(安室奈美恵)、『硝子の少年』(KinKi Kids)、『ひだまりの詩』(Le Couple)
映画:『もののけ姫』、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』、『インデペンデンス・デイ』(公開は96年12月)
アニメ:『ポケットモンスター』、『勇者王ガオガイガー』、『少女革命ウテナ』
マンガ:『からくりサーカス』(藤田和日郎)、『I’’s』(桂正和)、『HELLSING』(平野耕太)

1997年はこのような年でした。それではこの年に発売された名作・話題作を紹介していきましょう。

ファイナルファンタジーVII
発売日:1997年1月31日
機種:プレイステーション
発売元:スクウェア(現スクウェア・エニックス)

『ファイナルファンタジーVII』のグラフィックが当時のゲームファンに与えたインパクトは絶大でした。ポリゴンで描かれたキャラクター、随所に盛り込まれたCGムービー、驚くほど精緻に描かれた背景の映像。どれも見応え満点で発売前から話題沸騰となりました。

映画『ブレードランナー』を彷彿とさせるサイバーパンクな世界観も見どころのひとつです。RPGといえば中世ファンタジー風世界というイメージがまだまだ一般的だっただけに、科学文明が栄えた近未来的世界を舞台にした本作は非常に新鮮でした。意外性に満ちた映画的なストーリーも秀逸で、主人公クラウドの過去やヒロインのエアリスを襲う運命に多くの人が驚かされました。植松伸夫氏のサウンドも聞き応えたっぷりで、ゆえに日本だけでなく海外でも人気となったのでしょう。
国内累計出荷本数410万本、世界累計990万本(※)という記録的ヒットとなりました。

今、プレイするとキャラクターの造形などがチープに感じてしまうかもしれません。しかし、ストーリーや登場人物たちは今見ても魅力たっぷりで、誰もが引き込まれてしまうことでしょう。その後発売されたインターナショナル版(海外版の要素などを追加したもの)に、さまざまな機能を追加したバージョンが各種ハード向けに配信中ですので、この機に体験してみてはいかがでしょう。

※数字はいずれも一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会発行の『2019 CESAゲーム白書』より

グランツーリスモ
発売日:1997年12月23日
機種:プレイステーション
発売元:SCE(現SIE)

ご存知「リアルドライビングシミュレーター」と銘打たれた人気レースゲームのシリーズ第1作目です。トヨタ、ニッサン、ホンダなど実在のメーカーの車種を多数収録。細部まで描き込まれたマシンのモデリングや光沢のあるボディ、物理シミュレーターを用いた実車さながらの挙動などリアリティへのこだわりは圧巻のひとことで、ゲームファンのみならず多くのカーマニアがハマりました。

ゴール後に流れるリプレイ映像のクオリティも衝撃的でした。地面スレスレのローアングルで見せたり、思い切り引きの映像になったりと、多彩なアングルの映像は秀逸で誰もが魅了されました。テーマソングの『Moon Over The Castle』をはじめとするサウンドも非常にカッコよく、理想的な走りができたときは何度も繰り返し見てしまったものです。

マシンを購入してライセンスを取得し、さまざまなレースにチャレンジする、おなじみの「グランツーリスモ」モードも収録。新車、中古車の売買やマシンのセットアップといった細かなディティールにもとことんこだわっており、そうした部分にもプレイヤーたちは惹きつけられました。
レースゲームの概念を大きく変えた一作にして、ゲーム史にその名を残す名作です。

この年はプレイステーションが絶好調で、人気ゴルフゲームのシリーズ第1弾『みんなのGOLF』(SCE)、競馬ゲームの定番シリーズ『ダービースタリオン』(アスキー)が累計出荷本数200万本超えを達成。名作『タクティクスオウガ』のシステムと『FF』の世界観が融合した傑作『ファイナルファンタジータクティクス』(スクウェア)、巨大なキューブが迫りくる斬新なパズルゲーム『I.Q インテリジェントキューブ』(SCE)、人気RPG『サガ』シリーズの最新作『サガ フロンティア』(スクウェア)などもミリオンヒットとなりました。

そのほか『テイルズ』シリーズの2作目となる『テイルズ オブ ディスティニー』(ナムコ:現バンダイナムコエンターテインメント)、音楽CDなどでモンスターを生み出す育成ゲーム『モンスターファーム』(テクモ:現コーエーテクモゲームス)などがスマッシュヒット。ロボットアクションゲーム『アーマード・コア』(フロム・ソフトウェア)、かわいい人工知能ロボットを育てていく『がんばれ森川君2号』(SCE)、悪の首領となって秘密基地を作っていく『AZITO-アジト-』(アスティックトゥーワン)といった個性的なゲームも多数登場し、プレイステーションが名実ともにナンバーワンハードとなりました。

トゥームレイダース(トゥームレイダー)
発売日:1997年2月14日(サターン版は1月24日、PC版は3月7日)
機種:プレイステーション、セガサターン、PC
発売元:ビクターインタラクティブソフトウェア (現マーベラス)

女冒険家ララ・クロフトが世界の遺跡を舞台に冒険を繰り広げるシリーズ第1作目です。当時はまだ珍しかった3人称視点のフル3Dアクションゲームで、TPSというジャンルの先駆的作品となりました。ちなみに原題は『Tomb Raider(トゥームレイダー)』ですが、日本では『トゥームレイダース』、ララの名前は「レイラ」となっていました。

驚くべきは立体感を生み出す演出の数々です。遠くのものはぼんやりとしていて小さく、近くのものは大きくてハッキリ見えるなど遠近感を利用した表現。頭上を見上げたり、足下を見下ろしたりすることができる立体的な視点操作。ララ(レイラ)から少し遅れて追いかけていくカメラワーク。
いずれも現在では当たり前の手法ですが、当時は非常に斬新で同時期に登場した『スーパーマリオ64』(任天堂)とともに、のちのゲームに多大な影響を与えました。

クールな大人の女性が主人公という点も画期的だったと言えます。日本での受けは今ひとつでしたが海外でのララ人気はすさまじく、一般紙のグラビアになるなど絶大な支持を獲得。のちにアンジェリーナ・ジョリー主演で映画化もされ、ララはゲームを代表するキャラクターのひとりとなりました。2013年に設定を一新したリブート作品が登場するなど、現在も世界中で高い人気を誇っています。

ディアブロ
発売日:1996年12月31日
機種:PC
発売元:ブリザード・エンターテイメント

ハックアンドスラッシュゲームの伝説的名作にして、マルチオンライン(MO)RPGの先駆けとなった作品です。当時はまだネットゲーム黎明期で、本作のオンライン要素は世界中のゲーマーの注目を集めました。

ランダムに生成される全16階層からなるダンジョンを、ひたすらモンスターを倒しながら潜っていき、入手したアイテムでキャラクターを強化していきます。いわゆるローグライクなゲームで非常に中毒性が高く、シングルでも十分楽しめるのですが、ネットを介した最大4人での協力プレイはさらに楽しく、互いに助け合いながらのダンジョン攻略に多くの人たちがハマりました。今、世界のどこかにいる人たちとプレイしている――そう思うと、なんだか不思議な感じがしたのを個人的にも覚えています。

ただ、本作は他のプレイヤーへの攻撃が可能になっており、協力すると見せかけて背後から突然襲ってくる極悪プレイヤーもいたりしました。当時はいわゆる「PK」という概念がまだ一般的ではなく、ショックを覚えたという人もけっこういたようです。
ただ、そうしたシビアさも魅力のひとつになっていた気がします。

ちなみに本作は現在、PCゲーム配信プラットフォームの「GOG.com」にて配信中です。英語版のみですが、高解像度に対応しているなどオリジナル版より遊びやすくなっているので興味がある人はぜひプレイしてみてください。

ウルティマオンライン
発売日:1997年7月24日
機種:PC
発売元:エレクトロニック・アーツ

多数のプレイヤーが同時参加できるRPG、いわゆるMMORPGの先駆けとなった名作です。オンラインサーバー上に構築された世界で、プレイヤーたちが思い思いのロールプレイを楽しむというもので、『ディアブロ』とともにオンラインゲームの面白さを世のゲーマーたちに知らしめることとなりました。

最大の魅力は「自由度の高さ」につきます。剣や魔法などのスキルを伸ばして戦闘を楽しんでもいいし、鍛冶や大工に精を出してもいいし、それこそ釣り三昧の日々を送ってもいいのです。どんなキャラクターにするかはすべてプレイヤー次第で、それぞれが自分だけのプレイを楽しめる自由な空間がそこにはありました。もちろん今ではよくあるシステムですが、当時のプレイヤーたちにとっては非常に新鮮で驚きに満ちたものでした。

もっとも初心者にはかなり敷居が高く、最初は何をすればいいのかわからず、途方に暮れてしまったという人もいたようです。PKや盗みなどの悪徳プレイも認められており、かなり玄人向けのゲームでしたが、それだけにハマると底なしで多くのネット廃人を生み出しました。今もサービスは続けられており、以前は月額課金制でしたが現在は基本無料でのプレイが可能になっています。


そのほかの話題作の紹介です。ニンテンドー64では映画『007』シリーズを題材にした3Dガンシューティング『ゴールデンアイ007』(任天堂)が話題となりました。銃器を駆使しての一人称視点での撃ち合いはスリリングのひとこと。とくに最大4人での対戦プレイは抜群に楽しく、本作でFPS対戦の面白さを知ったという人もけっこういるのではないでしょうか。

『実況パワフルプロ野球4』(コナミ)の存在も見逃せません。3Dスティックでの操作が新たな投打の駆け引きや緊張感を生み出し、野球ゲームの面白さがさらに広がりました。また、おなじみのフォックスが活躍する3Dシューティング『スターフォックス64』(任天堂)、ジェットスキーでの波乗りが楽しい『ウェーブレース64』(任天堂)なども人気となりました。

セガサターンの話題作は人気アニメ『エヴァ』を題材にしたアドベンチャーゲーム『新世紀エヴァンゲリオン 2nd impression』(セガ:現セガゲームス)、カードを駆使しての駆け引きが楽しいボードゲーム『カルドセプト』(セガ)、傑作RPGとして名高い『グランディア』(ゲームアーツ)など。パソコンではリアルタイムストラテジー人気の火付け役となった『エイジ オブ エンパイア』(マイクロソフト)が、この年に発売されています。

アーケードでは実際の電車の運行を再現した鉄道シミュレーター『電車でGO!』(タイトー)が大ヒット。プレイステーション版も専用コントローラーともども人気となりました。DJ気分を味わえるリズムアクションゲーム『beatmania(ビートマニア)』(コナミ)も、この年より稼働開始。ターンテーブル型のコントローラーや軽快なヒップホップのビートなどが受け、スマッシュヒットとなりました。

最後にゲーム業界の出来事を見ておきましょう。1月14日にエニックス(当時)が『ドラゴンクエスト』のプレイステーションでの発売を発表。これにより次世代ゲーム機戦争における、プレイステーション陣営の勝利が完全に決定づけられました。

セガとバンダイの合併騒動も、この年の出来事です。1月23日にセガとバンダイが合併し、名称を「セガバンダイ」とすることが発表されました。プラットフォーマーであるセガと玩具メーカーの大手であるバンダイの合併のインパクトは大きく、一般紙や経済紙などでも大々的に報じられました。

しかし、発表からわずか4か月後の5月27日、両者は企業文化の違いが埋まらなかったことなどを理由に合併合意を解消しました。その後、セガはハード事業から撤退し、2004年にサミーと経営統合。バンダイも2005年にナムコと合併したのはご存知のとおりです。このときセガバンダイが誕生していたら、ゲーム業界はその後どうなっていたのでしょうか。
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