『スーパーマリオ 3Dコレクション』で『スーパーマリオ64』を遊んでいたら、「なんかこれやたらと難しくない?」と感じました。しかも難易度が高いというよりは、不親切であったり意図しない行動でうまくプレイできないケースが多いのです。


そもそも『スーパーマリオ64』はニンテンドウ64と同時発売された1996年の作品です。いまのマリオと比べると拙い部分があるのも当然で、『スーパーマリオ オデッセイ』のように遊びやすくはなっていないのでしょう。では、ふたつの作品においてどのような「遊びやすさ」の違いがあるのか検証してみましょう。

◆そもそも3Dアクションゲームはむずかしい
はじめに確認しておきたいのが「3Dアクションゲームはむずかしい」ということです。『スーパーマリオブラザーズ』のような2Dアクションと比較すれば3Dアクションは奥行きという概念が追加されるうえ、操作もより複雑になります。ゆえに難しくなりやすくて当然なのです。

たとえば2Dアクションの場合は左右移動が基本ですが、3Dの場合はまさしくスティックで360度の方向を決めなければなりません。しかも3Dであれば奥行きは抽象的な感覚で掴まねばならず「ジャンプして足場まで届くか」という判断をするのもより難しくなります(車の運転において、通常の駐車よりも縦列駐車のほうが難しいようなイメージです)。

任天堂も3Dマリオを作るうえでこの点はとても理解していたようで、シリーズが進むたびに遊びやすくなるようさまざまな仕掛けを施しているわけですね。ゆえに『スーパーマリオ64』と『スーパーマリオ オデッセイ』の間には驚くべき差ができているのです。

◆カメラワークの融通
いま『スーパーマリオ64』を遊んで最も気になるのがカメラワークではないでしょうか。本作ではジュゲムが操作するカメラをある程度は動かせますし、オートでそれなりの位置に動いてくれますが、満足するような画面にはなかなかなりません。
狭い場所などは特に見づらいです。

ましてやニンテンドウ64のコントローラーでカメラを操作する場合、「Cボタン」というボタンを使うため、このようなカクカクとしたカメラワークになってしまうのでしょう。

『スーパーマリオ オデッセイ』のころになると右スティックでカメラ操作は当たり前になっていますし、そもそもオートで動くのがかなり優秀です。場合によっては見づらくなるケースもありますが、『スーパーマリオ64』のあとにプレイするとまるで天国といえます。

◆方向転換で移動しない
『スーパーマリオ64』では、静止した状態から後ろに移動しようとすると「Uターンするように動く」ことになります。つまり、マリオが斜め前方向に動きつつ後ろを向くわけですね。

これはリアルな動きではあるのですが、狭い場所で方向転換をするときに思わぬ落下を招きます。ましては『スーパーマリオ64』の足場は全般的に狭いのでミスが起こりがち(ただし本作でもスティック入力がごく一瞬、あるいはとても浅いと瞬時に方向転換します)。

『スーパーマリオ オデッセイ』の場合、静止状態で方向転換してもその場で急に転回してくれます。もちろんスティック入力が深くてもこの動作になっています。細かいところですが、こういう「プレイヤーの操作イメージに近いマリオの挙動」が本当にありがたいですね。

◆壁すべりが追加
『スーパーマリオ64』の壁キックはタイミングがなかなかシビアですが、その後のシリーズで「壁に触れるとすべってゆっくり落ちる」動作が追加。
ゆえに壁キックの猶予もかなり増えて非常に扱いやすくなりました。これがないとかなりの数の初心者が脱落するのでは。

◆残機の存在が消滅
『スーパーマリオ64』などではコースでやられると残りのマリオ、いわゆる残機が1減る作りになっています。しかも1UPキノコが逃げ回るので増やしづらいですし、コース外に落下するだけでも1つ減るのでゲームオーバーになりやすいのです。

『スーパーマリオ オデッセイ』では残機がなく、やられるとコインが少し減るだけです。そもそも残機はレトロなアーケードゲームで使われていた要素で、いまでも残っているほうが珍しいのかも。同じくレトロなアーケードゲームに存在したスコアの概念はいま採用していないゲームが多いですし、必要のないシステムがなくなったり変わるのは当然のことですよね。

そして残機がなくなってどうなったのか? ゲームオーバーにならないので遠くに戻される面倒なことがなくなりましたし、よりアクションに挑戦しやすくなりました。そもそも残機という概念はレトロなタイプのゲームでもないと合わないのかも。

◆目的地が明確に
『スーパーマリオ64』では城内を探索してコースを見つけるのも楽しみのひとつです。要するに、フィールド移動における自由さがあったわけですね。

しかしこれは「プレイヤーが迷う」とか「次の目的地が見つけられない」などの欠点も内包します。
どちらが良いかは一概には言えませんが、ただでさえ3Dアクションは難しいのですから、『スーパーマリオ オデッセイ』のように目的が明確であるほうが遊びやすいのは間違いないでしょう。

◆落下のリスク
『スーパーマリオ64』でプレイヤーが苦しめられるのは「落下」ではないでしょうか。落ちやすい理由は足場が狭い、前述の操作の問題などさまざま。しかもコースから落下するといちいち絵から追い出されます。これがかなりプレイヤーの心を折りにきます。

『スーパーマリオ オデッセイ』ではそもそも通常のステージでは落下するような場所が少ないです。もちろん狭い足場はありますが、意図せぬところでは落ちにくいような作りになっています。

◆キャッピーが驚くほど優秀
『スーパーマリオ オデッセイ』で特に素晴らしいのが相棒の「キャッピー」。彼は3Dアクションの問題点を解決するような存在といえるかもしれません。

まず、キャッピーを投げるとマリオのジャンプ着地点が予想できます。移動速度や高低差によって変化はありますが、投げた場所からジャンプするとおおむねキャッピーの位置に着地するのです。

前述のように3Dアクションは奥行きの理解が難しいのですが、キャッピーを投げてから飛べばジャンプが届くか否か非常にわかりやすい。
しかも、キャッピーに乗るとさらに飛んで飛距離が伸びるわけで、プレイヤーにとってメリットばかりなわけですね。

キャッピーは飛び道具としても優秀です。『スーパーマリオ64』の場合はパンチやキックで敵を倒さなければならないのですが、攻撃範囲が狭いため近寄らねばならず、しかし奥行きがわかりづらいがゆえにうっかり当たってしまうケースも。

キャッピーはある程度なら飛んでいってくれますので、敵との距離を正確に掴まなくてもOK。しかもコインなど細かいアイテムまで自動で取ってきてくれるわけで、彼がいるだけで本当に冒険が楽&快適なものになるのでしょう。

◆マップの存在意義
『スーパーマリオ64』では各コースのマップは存在していませんが、移植作品である『スーパーマリオ64DS』では下画面にマップがつきました。『スーパーマリオ オデッセイ』でも各国のマップが存在しますね。

3D空間は把握するのがたいへんなので、平面的に描かれたマップがあれば全体像を理解しやすくなります。これは現実世界でもまったく同じで、そもそも地図もなしに見知らぬ場所に行くのは難しいですよね。

◆ペナルティの少なさ
『スーパーマリオ64』ではちょっと角度がついている崖などに掴まれないケースがあります。これで落下したりするとペナルティも大きく、ダメージ+行動不能時間があるなど全般的にかなり厳しめです。

落下ダメージは作品を追うごとに少なくなり、『スーパーマリオ オデッセイ』では高層ビルから落ちても足がしびれる程度で済みました。
崖捕まりで苦労する印象もほとんどなく、こういった細かいところのケアもしっかりしているのでしょう。

◆部分的に2Dアクションにしてしまう
『スーパーマリオ オデッセイ』では2Dアクションパートが挟まれているうえ、その数もかなり多いです。個人的にはかなり嬉しいですし、箸休めとしてもいいとは思うのですが、「3Dアクションなのにけっこう2Dになっていていいのかな?」と思うところもありました。

とはいえ、プレイヤーが難しい場所で何度もやられてしまうとモチベーションが落ちてしまうので、あえて簡単な(あるいは割とクリアできそうな)要素を選択肢として用意しておくのは重要でしょう。それが2Dアクションパートに該当するのかも。

◆見えづらい「ゲームの進歩」
『スーパーマリオ64』は1996年で、『スーパーマリオ オデッセイ』は2017年発売。21年もの期間があり、その間にもさまざまな3Dマリオが出続けました。その間にたくさんの「3Dアクションが遊びやすくなる作り」が盛り込まれ、ここまで大きな差になったのでしょう。

おそらく、当時『スーパーマリオ64』を遊んだ人のなかには私のように「3Dアクションは苦手」という意識を持っている人もいるかもしれません。しかし、『スーパーマリオ オデッセイ』は本当にいろいろな部分が進歩しており、あのころから考えるととてつもなく遊びやすくなりました。

「遊びやすさ」はすぐに理解できないし、なかなか評価されにくいポイントですが、あるのとないのでは大違い。いま『スーパーマリオ64』を遊ぶことでむしろ「3Dマリオはここまで進歩したのか!」と歴史の重みと開発者たちの努力を噛みしめることができたのでした。


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