声優番組『ちょうみりょうぱーてぃー』にて、そんなクラウドファンディング企画が始動したのが2021年5月。目標金額を150万円に設定していた同プロジェクトは、最終的にはその金額を優に超え、2倍以上となる350万円近くの支持を集めました。
そうしてマンガ家「むっく」さんを中心に、開発が始まったオリジナルファミコンゲーム。こちらには“元祖アキバ系女王”の「桃井はるこ」さんほか、ゲーム音楽家「なぞなぞ鈴木」さんが30年ぶりにファミコンサウンドに関わるなど、そもそもの主旨のみならず、クリエイター陣もゲームファンにとって大変注目なプロジェクトとなっています。
「どうやってファミコンカセットを自作したのか?」「ファミコン音楽の意外な難しさとは?」「30年前のファミコンゲーム開発現場の実態とは?」……そんなファミコン開発の裏話から、8bit音源にまつわるゲーム音楽トークまで。先述の3名に加わり、シンガーソングライターで番組出演者の「永野希」さんの4名へ実施したインタビューの様子をお届けします。
【インタビュー参加者 ※敬称略】
むっく……マンガ家。『ちょうみりょうぱーてぃー』ではツイッター掲載用の4コママンガを担当。ファミコン化企画では、ゲーム開発、カセット製作などすべての作業をこなす。
なぞなぞ鈴木……コナミとトレジャーで活躍したゲーム音楽家で、現在は桃井はるこ、永野希が所属する株式会社ライト・ゲージの社長を務める。
桃井はるこ……声優、シンガーソングライター、マルチクリエイター。「ちょうみりょうぱーてぃー」ではゲストキャラクター「シナモン」を担当。
永野希……シンガーソングライター・女優・マルチクリエイター。「ちょうみりょうぱーてぃー」のレギュラーキャラクター「しょうゆ」を担当。
【『ちょうみりょうぱーてぃー』とは】
「調味料を擬人化する」というコンセプトのもと、声優・吉成由貴が発案した3人の擬人化キャラクター「マヨネーズ(CV:吉成由貴)」「ケチャップ(CV:藤川茜)」「しょうゆ(CV:永野希)」が活躍するプロジェクト。番組ではトークあり、対決企画ありのバラエティ豊かなコーナーを繰り広げる。2018年より楽天TVと響ラジオステーションにて配信中。
▲『ちょうみりょうぱーてぃー』番組収録風景。左より藤川茜さん、吉成由貴さん、永野希さん。番組内では実際にメンバーがゲームをプレイした。
◆まずは実際にファミコンカセットを自作したことについて、製作秘話やファミコンカセットの意外な秘密に迫る!
――「令和の時代にファミコンゲームをカセットごと自作する」というインパクトのある企画ですが、どのような経緯でスタートしたのですか?
むっくもともと同人活動の一環としてオリジナルのファミコンカセット『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』を自作していたんです。それで『ちょうみりょうぱーてぃー(以下、ちょみぱ)』の公式4コママンガの担当を打診された時に、雑談の中で「ちょみぱのファミコンゲームを作ったら面白いですね」と提案しました。
永野『ちょみぱ』のメンバーがこの企画について知ったのは、2019年9月に秋葉原で開催した公開収録イベント の時でした。サプライズ発表だったので、私もなりちゃん(吉成由貴)も茜ちゃん(藤川茜)も本当に驚きましたね。令和の時代にまさかのファミコンカセットですよ! イベントではモモーイ(桃井はるこ)が楽曲制作として参加することも発表されたのですが、モモーイと鈴木さん(なぞなぞ鈴木)には先に話が行っていたみたいですね。
▲ゲーム『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』。「とらのあな」にて販売中。
▲『ちょうみりょうぱーてぃー』のファミコンカセット。上段がパッケージ、下段左が通常カセット、右が金メッキバージョン。
――イベントでは、多少、形になったものが公開されていましたよね。そもそもむっく先生はなぜファミコンカセットの自作をはじめたのですか?
むっく一時期、昭和レトロ玩具を自作できないか考えて、まずビックリマンシールから着手しました。それからファミコンカセットまで至ったのは、マンガ家のRIKI先生が『キラキラスターナイトDX』を自作していたり、海外でNES(ファミコンの海外名称)の自作文化があったりした影響ですね。2018年頃のことです。
桃井 同人ゲームの界隈はアツいですよね。つい先日もフランスのお子さんが作った『KUBO3(キュボ3)』という同人ゲームが話題になっていました。秋葉原には「BEEP」や「家電のケンちゃん」というお店があって同人ゲームならそこで手に入るんですよ。
――そのような方々は一般的に、どうやって作っているのでしょうか?
むっく僕の場合は、まずプログラムをオープンソースの開発ソフトで作ります。
桃井 私、むっく先生の『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』を持ってますよ。音楽もよくできていましたよね。
むっく独学で音楽をやっている身としては、本業で、しかも昔から憧れの桃井さんに褒めていただけるのは大変嬉しいですね。
▲『ちょうみりょうぱーてぃー』のカセットの大まかな内部構造。
――開発を進める上で、”ファミコンらしさ“は意識されましたか?
むっくそれが、ファミコンのスペックに合わせて作ると、意識しなくても”ファミコンらしさ“にしかできないんです(笑)。一応、意識して作ろうとは考えていましたが、その必要すらなかったですね。
――『ちょみぱ』メンバーの3名は、”敵キャラ“の案出しと”楽曲制作”にも一部関わっていましたね。実際に形になったものを見ていかがでしたか?
永野はじめはカプセルトイで売っているような、操作もグラフィックもシンプルなものを想像していました。
桃井 80年代のファミコンゲームは操作性の不便さとか、説明不足で何をしたらいいか分からず戸惑うことが結構あったんです。でも『ちょみぱ』のゲームは洗練されていて、その意味ではちゃんと令和のファミコンゲームになっていました。その一方でスペックとかサウンドの趣は私たちが懐かしいと感じる、いわゆる美化された80年代になっているので、ファミコン世代はもちろん、世代じゃない人がプレイしても面白いと思います。
むっくでも容量の少なさにはとにかく悩まされましたよ。特にグラフィック。まず色数が少ない、一度に使える色の量も少ない、一度に表示できるキャラクターの数にも制限がある。例えばひとりのキャラに3色しか使えないので工夫しないと成立しません。
▲ゲームのスタート画面。確かに限定された色使いだ。
むっく楽曲を作るにあたっては当時の音色やテクニックを研究しました。ファミコン音源は制限が厳しいと思われがちですが、矩形波×2、三角波、ノイズ、DPCMと全部で5ch使えるので、表現力が高く面白いのです。特にDPCM(サンプリング音源)が使えるのがありがたく、作曲の自由度を高くしてくれています。
――音楽と言えば、やはり注目なのは「なぞなぞ鈴木さん」が参加されていることですよね。
鈴木ファミコンに関わるのは30年ぶりくらいですよ。自分でもどの音が鳴るのか分からなくなってて、「3つだったかな、2つだったかな?」という状況からだんだんと思い出していきました。番組のイメージソングが現在2曲あり、そのどちらものんちゃん(永野希)が書いて僕もディレクションしましたから、その流れもあってオファーをいただいたのかなと思います。
――実際のところ、どういった作業をされたのですか? 桃井さんは昨年、ランティスさんの企画で制作された楽曲「転売ヤーをぶっとばせ!」がベースになっているとお聞きしました。
桃井 どの作曲作業でも最初にmidiデータを作るので、そこからファミコン用に音数を減らして提出しました。ベースとコードと主メロ(リズム)を残し、あとはすべて削った感じですね。
むっくそれを元に、僕がファミコン用のデータとしてプログラミングし直しました。
桃井 最初はファミコンカセット用の音楽制作ソフトをむっく先生が送ってくださったんです。でもかなり操作が難しくて思うようにいかず、それならと元となる音楽データをお渡しして、アレンジと打ち込みをお任せする形にしたんです。以前、むっく先生にお会いした時に、音楽もご自身で作られていたと伺っていたので心配はありませんでした。
――普段の作曲とファミコン音源ではやはり感覚が違ってくるものなのですか?
桃井 ファミコンの音の要素は主に音楽と効果音の2つがあるのですが、効果音で音楽が消えてしまうことを計算して作らないといけないんです。そうなると最後はむっく先生に音を整えてもらわないといけなくなるので、元のデータからアレンジしてもらおうと思ったんです。
永野私も普段の楽曲制作と同じようにデモ音源を作ってMP3で提出しました。むっく先生からは「この面ならこういうアレンジはどうですか?」とアイデアをいただき、すごくいい形でコラボレーションできたと思います。
――吉成さんと藤川さんも楽曲制作に参加されていますよね。
永野私はしょうゆちゃんのステージを担当、なりちゃん(吉成由貴)はマヨネーズちゃん、茜ちゃん(藤川茜)はケチャップちゃん……という形で、それぞれ担当キャラクターに沿った音楽を作りました。なりちゃんは鼻歌のイメージ、茜ちゃんは「『悪魔城ドラキュラ』みたいな曲」といったように曲のイメージだけむっく先生にお伝えする形です。
桃井 私ものんちゃん(永野希)の曲を聞いたけどすごかった。『桃太郎伝説』的な感じというか、祭囃子っぽい楽曲だったよね。
永野作業をしていた頃は世の中が「お祭りを自粛します」というムードで、ライブやイベントも思うようにできない時期だったので、この楽曲を聞いて皆さんに元気になってもらえればいいなと思いました。やっぱり楽しいことといえばお祭りですよね。ですから、お囃子でメロディーを作り、和太鼓の音も打ち込みました。ちなみにタイトルは「しょうゆは何でできている」で、実は歌詞も考えてあります(笑)。
――鈴木さんは30年ぶりに作業されていかがでしたか?
鈴木この時代にファミコンゲームをカセットで製作する……、当初はネタ企画だと思って軽く考えていたんですよ。ところが話が進むうちに、クリエイターとしてはなかなかに大変なボス面を担当することになり、だんだん困惑していきましたね。
桃井 ボス面はどう大変なんですか?
鈴木プレイヤーがもっとも攻略に手間取る、滞在時間が長くなるステージです。どちらかと言えば不吉な音も使うので、滞在が長くても苦痛にならないような構成が必要だと考えます。例えばボスだからと言って派手にし過ぎると……、プレイ以前に音楽で疲弊してしまうケースも生じます(笑)。
桃井 そのお話、めちゃめちゃおもしろいですね。
鈴木それを回避するには、メロディーラインの構成上で、「これメロディーなの?」という部分も作ります。戦っている間に鬱陶しくならない秘訣と言うか……。むしろ雰囲気だけで戦える方が飽きないかなと。「あれ!? どんな曲だったっけ!?」でもいいと思うのです。私はそういう感じでプレイするのが好みです(笑)。あと今回は、途中にオーケストレーションを入れて、戦っている間に少し休めるような構成にしてみました。
むっく鈴木さんとのやり取りでは、細かいところで色々な要望やアドバイスをいただきました。例えば少ない音数で表現する構成の仕方が大変参考になりましたし、音色や音量バランスなどかなり細かいところまで教えていただいて勉強になりました。ファミコンの作曲をされていた方からご教授いただける機会は滅多にありませんし、非常にありがたく貴重な体験でしたね。
鈴木ファミコンは聴こえやすい音域とか各パートのバランスもあって、曲によってそれぞれ工夫が必要なんです。今回は音楽プログラムの打ち込みもむっく先生なので「すみません、あと半音上げて確かめてもらえますか?」とかグリスのお願いやビブラートのお願いだったり……。細かすぎますよね、恐縮です。
桃井 ほんの少しのバランスで成立しなくなってしまうということですよね。
鈴木そうなんです。例えばアンサンブルを組むとして、キーを変えてちゃんとベースの音が聴こえるようにしないと、曲によってはアンサンブルが成立しません。DTM上ではなく、実機とのすり合わせなので環境が整っていないと難しいです。今回はそのジレンマで……。
むっく先生には申し訳ないし、かと言ってもっと詰めないと、自分も納得出来ないしで……。やっぱり普通に曲を作ってそのままお渡しして、むっく先生にファミコンアレンジをお任せすれば良かったなと反省しています(笑)。桃井の楽曲、むっく先生のファミコンアレンジは凄く良い感じです!
永野私も、なりちゃんや茜ちゃんの曲がすごく素敵に仕上がっていたので、「もっとふんわりしたものを提出していれば、むっく先生がもっと素敵にしてくれたかも」と、ちょっと思いました(笑)。コラボでできた曲はもちろんいいものではありますけど、隣の芝生はやはり青かったです。
――完成形が見えてしまっているだけに、ついこだわりたくなるんですよね。難しいです。
鈴木伝え方もそうですが、むっく先生が持っているドライバの能力もわかりませんでしたし。
永野ドライバで違ってくるんですか?
鈴木違いますね。当時でも汎用のドライバと各社が独自開発していたドライバでは表現できる範囲も違いました。ギターの奏法(チョーキングやビブラート)も試行錯誤して、夢中で楽しんで打ち込みしていました。完成した時の満足感と言ったら(笑)。
桃井 NESの『Rollergames』ですよね。凄いんです、ゲーム音源なのにちゃんとハードロックっぽい感じの曲なんです。
鈴木この企画もはじめはネタ企画だと思って気楽に構えていたのに、そういう自負も思い出し、ファミコン時代の心意気と、技の全てを忘却している現実とのジレンマが大変でした(笑)。
次ページでは「ファミコンカセットの拡張性」と「80年代ゲーム製作現場」についてトーク
――自作されたファミコンカセットはすべて市販の部品で作ったとお聞きしましたが、当然、部品は違うわけですよね。
むっく違いますね。当時はロムを使っていたところを、今はフラッシュメモリを使っていたりします。
――ひとつ疑問なのは、同じ「自作カセット」でも『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』と『ちょうみりょうぱーてぃー』では部品の配置が異なるんですよ。てっきり「ファミコン用の回路」という共通の規格があるものだと思っていました。
▲自作ファミコンの裏側は、内部が見えるスケルトン仕様。上段が『ちょうみりょうぱーてぃー(通常版)』、下段左が『ちょうみりょうぱーてぃー(金メッキ版)』、下段右が『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』。
むっくそこはゲームによって違いますね。違うチップを搭載してメモリを増設することもありますし、今回は『ちょうみりょうぱーてぃー』に適した形で基板を設計しました。
鈴木コナミの『ラグランジュポイント』や『魍魎戦記MADARA』では、FM音源のチップを搭載して音のクオリティーを上げていましたね。
むっくファミコンのおもしろいところはまさにそこで、好きに拡張できるんですよ。ファミコン本体に高価なチップなどを搭載するとゲームソフト側の自由度が下がったり、本体自体のコストが上がったりしてしまうからだと思うんです。本体は必要最小限に、ソフトは拡張前提に、ですね。
――そういえば当時は、「これだけメモリが増えました!」という宣伝文句をよく見かけました。同じ「ファミコン」でもソフト単位で進化できたからおもしろかったんでしょうね。DVDやBlu-rayでは本体が進化しない限り、それ以上のスペックにはなり得ませんし。
むっくメモリの話で言えば、初期のファミコンカセットと後期のファミコンカセットでは驚くほど容量がアップしていますよ。そこがおもしろいですよね。
桃井 ソフトと言いつつ、一部ハードを兼ねてたってことですよね。
――パスワードでゲームが中断できた時も感動しましたが、バッテリーバックアップにはとんでもなく驚かされたものです。
むっくバッテリーバックアップは、基本的なメモリとは別に作業領域用のメモリを増設していて、電源を切ってもデータが消えないよう、内蔵電池で電源が入っている状態を保持していたんです。僕が持ってる『星のカービィ』は今でも現役ですよ(笑)。
桃井 子供の頃、ファミコンの何に惹かれたかと言うと、カセットの中にものすごくいいものが入っていた気がしたんです。例えばファミコン雑誌にウソの裏技が載っていたりして夢がありましたよね。ファミコンという世界には、自分の知らない“無限の世界”が入っていると思わせてくれるのが魅力でした。それに表現が少なく物語も描写が限られているので想像の余地があり、まるで小説を読んでいるような楽しさがあったんです。今でもファミコンのゲームが好きな人って、作る側も買う側もみなさんそういう思いなのでしょうね。
永野番組ではメンバー3人が実機プレイしているのですが、コーナー初回は実際にカセットを入れるところからはじめたんですよ。すると、本体がちょっと動いただけで「ピー」って鳴って画面が止まってしまったりして「あの時のまんまだ!」って(笑)。
――“ファミコンあるある“ですね(笑)。
鈴木ところでカセットが手に入ったとして、皆さん本体はどうされているんですか?
永野『ちょうみりょうぱーてぃー』のカセットについてはエミュレーターでは動かず互換機かオリジナルの本体です。
桃井 でもエミュレーターだと、特殊なことをしているので出力されるものが少し違うんですよ。それこそ鈴木さんが担当されたコナミのゲームは出ない音が多いです。それにどうせプレイするなら昔のブラウン管テレビでやりたいですよね。ドット絵って今のテレビではキレイに見えすぎてしまいますけど、ブラウン管の「色のにじみ」だといい感じになるんです。
――ファミコンの音って特別ですよね。桃井さんも参加された「ファミソン8BIT」の音楽アルバムシリーズでは、わざわざファミコン本体を持ってきてそれを直接鳴らしたという話を聞いたことがあります。
桃井 今はどんなゲームも録音されたものが流れますけど、ファミコンは本体自体がシンセサイザーのような役割になって直接音を鳴らしているんですよ。私がファミコンに魅力を感じる理由のひとつがそれで、ファミコン自体が演奏してくれるのがいいんです。
鈴木ファミコンの音はCD化した時にどんな音より強いんですよ。なぜ強いかというと、ノイズが乗っていてきれいじゃないからなんです。ノイズが乗っている分、倍音が多く音を太くするんです。反対に、きれいな音になればなるほど圧力は減ります。
桃井 そういえば鈴木さんにお聞きしたいんですけど、初期のゲーム開発現場って当時は少数精鋭だったんですか?
鈴木グラフィック担当が2人、音は作曲担当とSE担当、プログラムも2人くらいかな?間に合わない時はサポートが入ったりしますが、そういうチームが何個かあって、それぞれ別のゲームを作っていました。
――鈴木さんがコナミにいらっしゃった時はおそらくファミコン黄金期で、ファミコンだけでだいたい年間150タイトル、そこへPCエンジンやメガドライブといった他のハードも加わって、家庭用ゲーム機の戦国時代に突入したような時代でしたね。
鈴木黄金期でしたね。開発陣は名刺をまったく持てない時代でした。スカウト阻止もあったかと思います。本名を出せないので、みんな「なぞなぞ鈴木」とか……ヘンテコな名前を貰っていました(笑)。
桃井 鈴木さんは私にとって『エスパードリーム』の人というイメージでしたよ。
鈴木CMで歌ってましたからね。仮歌で歌ったら宣伝の人が「鈴木さんお願いします」って。
桃井 「エスパードリーム♪はじめまして、やってみようよエスパードリーム♪」って(笑)。
鈴木なんで歌詞覚えてるの!?
桃井 覚えてますよ(笑)。ファミコン時代は今ほど情報があるわけではないので、小さな子供がゲームの内容を知りたいと思っても、気軽にアクセスできるのがパッケージの絵、チラシ、あとCMしかなかったんです。そういったパーツを一個一個集めて世界観を感じるみたいなところがあった気がしますね。だからCMもよく覚えているんだと思います。
――ところで昔のゲーム業界は今みたいに専門学校があったりしなかったと思うのですが、鈴木さんはどういった経緯でコナミに入社したのですか?
鈴木もともとレコード会社の全国オーディションで2位になったバンドのメインボーカルとギターを担当していました。そこからステージや録音の仕事、CMの楽曲制作などをしてプラプラ生活していました(笑)。
天皇陛下(昭和)の病気療養から御崩御で日本中のエンタメ系が自粛をし、その時に仕事がなくなり……カタギになる決心をしました。つまりやっと大人になったのです(笑)。
でも……ファミコンから自分の音楽が流れたら素敵だなってことで。縁があったのがコナミでした。入社の時、アーケードとファミコンどちらがやりたいかを聞かれ、迷わず「ファミコン」と答えました(笑)。
――当時の現場はいかがでしたか?
鈴木「もっと良いメロディー書けるけど」みたいな多少の驕りがありましたね(笑)。でも担当の先輩に「普通の音楽を作るつもりなら違いますよ」と言われ、その意味を理解しないまま曲を作ってはNGにされ、また作ってはNGにされ……。同期の人間がひとり、あまりの辛さに音信不通になりましたよ。でもそれで鍛えられましたね。それからは自由に曲を作らせてもらえるようになり、作品に参加したり、プロデューサーを担当したりで自分なりの音作りを学びました。楽しかったですよ。
――コナミのサウンドチームで「コナミ矩形波倶楽部」というバンドを結成して活躍されていましたね。
鈴木コナミは神戸がスタートの会社ですからメンバーも全員関西人でした。東京のコナミの開発から矩形波倶楽部に絡んだのは初めてだったかと思います。僕はオマケみたいなものでした(笑)。でもCD制作にも携わったりで(NAZO2プロジェクト他)充実してました。何の不満も無かったのですが、色んな状況が重なりコナミを離れてトレジャーに参加しました。
――トレジャーでセガのゲームを作っていた頃はいかがでしたか?
鈴木トレジャーが汎用ドライバを使っていたんです。でも他社とは差をつけたかったし、研ぎ澄まされた音をどうにか作りたくて、始発まで会社で汎用ドライバをいじっていました。当時、イギリスのロックバンド「スクリッティ・ポリッティ」が流行っていたので、メガドライブの音源でどこまで再現できるかチャレンジしましたね。あの頃は制約にチャレンジするのが楽しかったです。
――音楽面で一目置いていたメーカーはどこだったのですか?
鈴木エニックスさん(現スクウェア・エニックス)かな。エニックスといえば『ドラクエ』ですが、RPGという長時間プレイが前提のゲームなので、飽きない楽曲を作るのがうまいです。それに「ワンポートエコー」と呼ばれる、ひとつのトラック内でメロディーとエコーをかけられる技術をいち早く導入していました。我々も研究していましたよ。
――なるほど。
鈴木セガサターンの時代になるとCD音源がそのまま流せるようになり、スタジオで収録するスタイルに変わっていきました。音の表現としては自由度がかなり上がりましたけど、反対にクリエイターとしての興味が急速に失せてしまい、それで音楽ディレクターやプロデューサーとしてアーティストに関わったり、アニメ主題歌の作曲をしたりと、ゲーム会社就職以前のスタイルに戻りました。
――なぜ桃井さんの事務所の社長をされているか不思議に思っていたのですが、そのような経緯があったのですね。それでは最後に、『ちょみぱ』を代表して永野さんより読者へメッセージをお願いします。
永野なりちゃんや茜ちゃんも一緒にインタビューできたら良かったのですが、代表してお伝えします。この『ちょうみりょうぱーてぃー』という番組は、メンバー3人とスタッフ、そして今回はむっく先生、なぞなぞ鈴木さん、モモーイと関わって本当に色々な挑戦をさせてもらっている番組です。その中でファミコンを作ってもらえるのはすごいことではありますが、まだまだメンバー3人やりたいことが尽きません。皆さんの応援がありましたら次のゲーム化企画だったり、まったく別の展開だったり、そういった楽しいことが色々あると思いますので、これからも皆さん、応援よろしくお願いします!
<取材・執筆:気賀沢昌志/編集・撮影:矢尾新之介>
【桃井はるこ 最新情報】
■tokyo toricoレーベルより発売中の楽曲を各配信サイトにて配信中。
→アーティストページへは、ここをクリック
■FM NACK5にて「THE WORKS」出演中。
毎週日曜後 24:00から(姉妹番組「THE WORKSせず」も響ラジオステーションにて配信中)
→番組ページはここをクリック。
■新曲「転売ヤーをぶっとばせ!」公開中(『ちょみぱ』ボーナスステージ曲の原曲)。
その他、最新情報はライト・ゲージ公式ツイッターにて。
→公式ツイッターはここをクリック。
【永野希 最新情報】
■WALLOP放送局にて「のぞみ家の一族」出演中。
毎月第1土曜日15:30から(公開生放送)
→番組ページはここをクリック。
■『第17回ROBO太祭り~温故知新~』出演。
6月20日 会場:初台DOORS 13:00 開場/13:30 開演
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■新曲「Hello Days」公開中(Little Non./リトルノン)。
その他、最新情報はライト・ゲージ公式ツイッターにて。
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【なぞなぞ鈴木 CD情報】
■音楽アルバム『松・鈴・桃―初号盤―』
モモーイ×Nazo2 Unit(桃井はるこ、なぞなぞ鈴木、松武秀樹)
2400円/発売中/徳間ジャパンコミュニケーションズ
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(C)ちょみぱ
※本製品は声優番組『ちょうみりょうぱーてぃー』およびMOOK-TVの著作物です。任天堂のライセンス製品ではありません。