CDアルバム「ときめきメモリアル SOUNDコレクション」「SOUNDコレクション3」ジャケット(Amazon.co.jpより)

さまざまなゲームに登場するヒロインたちの魅力をあらためて掘り下げていく連載企画「僕たちのゲームヒロイン録」。第4回は、1994年にPCエンジンSUPER CD-ROMで発売された『ときめきメモリアル』の藤崎詩織を紹介します。

「一緒に帰って、友達に噂とかされると、恥ずかしいし…」

幼なじみ同士がちょっと一緒に帰るだけで、そこまで気にすることなくない!? …『ときめきメモリアル』を遊んだ人の多くは、そんな感想を抱いたのではないかと思います。

1994年にPCエンジンSUPER CD-ROMで発売された本作は、恋愛シミュレーションゲーム(恋愛SLG)というジャンルを世に広めた草分けといえる作品です。藤崎詩織は主人公の幼なじみで、容姿端麗・才色兼備で誰にでも優しく、さらに趣味はクラシック音楽鑑賞という、非の打ちどころがないヒロインとして登場します。

特定の集団において男性たちの憧れの的となる女性を"マドンナ"と呼称することがありますが、マドンナという語は元をたどると聖母マリアを指し、そこから転じて貴族の女性や淑女を意味することもあったようで、"高嶺の花"とも言い換えられそうです。詩織もその枠から外れない、まさにクラスのマドンナ、誰もが憧れる高嶺の花という表現がぴったりなヒロインでした。

そして、SLGは"倒す(攻略する)のが難しい強敵"がいるとより楽しくなるジャンルです。その白羽の矢が立って振り向いてもらうのが一番難しいラスボスのようなポジションを兼任することになったのも、また詩織でした。その結果、彼女は好感度が低いと幼なじみと一緒に下校することすらやんわり拒否し、さらに異性への理想は高い…という、なんだか"お高くとまっている"感も持つことになってしまいました。

本作はラジオの冠番組内でラジオドラマが放送されたり、当時小島秀夫監督が在籍していたKCEJが『ポリスノーツ』のエンジンを流用して制作したアドベンチャーゲームスタイルの『ときめきメモリアル ドラマシリーズ』が発売されたりとさまざまな展開を見せましたが、恋愛SLG以外での詩織の描かれ方には、上記のような印象を受けることはありませんでした。

『ときめきメモリアル』はSLGとしての完成度も高く評価されましたが、SLGであったからこそ、詩織に付けるつもりのなかった印象までまとわりつかせることになってしまった…といえるのかもしれません。プレイヤーが彼女へ抱く印象は、本作のみを遊んだか、ラジオドラマを聴いたり、詩織がヒロインである『ときめきメモリアル ドラマシリーズ Vol.3 旅立ちの詩』を遊んだりしているかで、かなり変わりそうな気がします。

さて、本作の大ヒット後、90年代後半ごろにはメインヒロイン(もしくは幼なじみヒロイン)に求められる人物像が少しずつ変遷していきました。
LeafがPCで発売した97年の大ヒット作『ToHeart』、そしてコナミが99年に初代PlayStationで発売した本作の続編『ときめきメモリアル2』は、どちらもメインヒロインが幼なじみですが、高嶺の花というより親しみやすさを前面に押し出したキャラクターに。

ときメモ2』では主人公の昔なじみである教育実習生の麻生華澄が、『ときメモ3』では隠しヒロインの和泉穂多琉が詩織の一面でもあった"難攻不落のヒロイン"の座を引きつぎましたが、どちらもメインヒロインではありませんでした。

2000年を過ぎると今度はツンデレが一躍脚光をあびますが、トレンドがめぐればかつての流行も再び輝くとでもいうべきか、2009年発売の『ラブプラス』と『ときめきメモリアル4』では、それぞれ高嶺愛花と皐月優という"清楚で完璧なメインヒロイン"が再び生まれるのでした。(※『ときメモ4』は星川真希と皐月優のダブルヒロイン制であるという認識です)

『ときメモ4』は作中時間で1作目の15年後、同じきらめき市のきらめき高校を舞台とした恋愛SLGで、皐月優は詩織の親戚でもあります。ゲーム中では、憧れの女性として主人公に詩織のことを話すシーンも見られました。詩織に(いろんな意味で)ガツンとやられたことがある方には、『旅立ちの詩』ともどもぜひプレイしてみてほしい1作です。
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