世界的にヒットを遂げた本作は、拡張コンテンツ「凍てついた大地」のリリースやPC版などの展開も話題となり、その人気を確固たるものとしましたが、この名作の直接的な続編『Horizon Forbidden West』が、いよいよ今月の18日に発売を迎えます。
このたび幸運にも、発売日に先駆けて『Horizon Forbidden West』をプレイする機会に恵まれたので、その体験を元にしたプレイレポートをお届けし、プレイ感や進化したポイントなどをお届けします。発売を楽しみにしているユーザーや、購入するかまだ迷っている方は、本記事を参考にしてください。なお、今回はPS5版でのプレイとなります。
■世界の命運を握るアーロイの物語は、更なる勢力と遭遇! 孤独な戦いに、希望はあるのか……
『Horizon Forbidden West』は、前作にあった幅広い要素を受け継ぎ、更なるパワーアップを遂げているため、その全てについて言及するのは難しく、またネタバレにも繋がります。そのため、今回は序盤のプレイ体験に基づき、「物語」「戦闘」「探索」の3点に絞って綴ります。また、物語面のネタバレは極力抑えてあるので、どうかご安心ください。
そしてネタバレにも繋がる話なのですが、まず本作の物語について、大きな注意点があります。それは、前作『Horizon Zero Dawn』と密接に関連しているという点です。
続編なのだから当然だろう、という意見はごもっともですが、一般的な続編作品よりも繋がりが色濃く、前作の物語を前提としてストーリーが展開するので、人によっては心構えが必要かもしれません。前作経験者向けに表現するなら、『Horizon Zero Dawn』のエンディングにあったラストシーンが、『Horizon Forbidden West』の物語に直接繋がる──と言えば分かりやすいでしょうか。
かといって、前作未経験の方が置き去りになるかといえば、その心配も杞憂に終わるでしょう。
またゲーム中にいつでも、物語の主要人物について書かれたノートをチェックすることができ、前作における各キャラクターが果たした役割などを確認可能。加えて、主人公の「アーロイ」自身が前作の物語や展開の一端を時折口にするので、置き去りにされることはまずありません。
そのため、本作を楽しむ上での問題点は特にありませんが、前作のネタバレが作中に多発するのも事実なので、「まず『Horizon Forbidden West』をプレイし、面白かったら前作を遊ぼう」と考えている方がいたら、先に前作をプレイした方がいいかもしれません。説明が十分あるなら気にしない新規の方や、前作経験者は何の迷いもなく『Horizon Forbidden West』をお楽しみください。
ネタバレを回避しつつの説明なので、具体的な展開には触れませんが、『Horizon Forbidden West』で描かれる物語もまた、前作のように世界の大きな命運に関わります。壮大な大自然の中で槍と弓で狩りに挑むといった姿を描く一方で、かつて存在した文明との関わりを持つSF要素が紐付く物語展開は、本作でも健在です。
しかも今回は、前作にはなかった新たな勢力が強敵として立ちはだかります。その存在もまさにSFならではで、『Horizon』シリーズの広がりを感じさせてくれました。原始的な生活に身を置きながら、世界や宇宙とも関わるストーリーを展開させていくので、壮大な物語を存分に味わいたい方にはうってつけの作品です。
また、滅びに抗う規模の大きな物語だけでなく、この世界に住む人々の悩み事に寄り添いながら解決に走る中で、彼らとの繋がりを感じさせるサブクエストやサブストーリーもたっぷり用意されています。
ゲームクリアだけを目指すなら、メインクエストだけ攻略すれば済みますが、こうした脇道が存分に楽しめるのもオープンワールドならではの醍醐味です。前作も豊富な寄り道でプレイヤーを虜にしましたが、洞窟に取り残された職人の救助、危険な機械獣の駆除、食材の入手、不当に権利を主張する住人への対処など、今回の脇道も多種多彩。また、それぞれが戦闘や探索にも結びついており、各要素を相乗効果で盛り上げてくれます。
そして個人的な視点になりますが、アーロイ自身についても気になる描写がありました。続編なので前作に登場した主要人物が折に触れて登場しますが、彼らに対してアーロイは一貫して、少し距離を感じさせる姿勢を貫きます。
それは、アーロイなりの他者を気遣う姿勢でもありますが、プレイヤーからすれば孤立、孤独を感じさせ、気がつけば「彼女が報われますように」と願う気持ちが芽生えていることに気付きました。
この点について、最終的に何らかの答えが明示されるのかどうかは、プレイ途中(中盤に入った程度)なのでまだ分かりません。孤高の者として最後まで描かれるのか、その背中を誰かに預けられるようになるのか。世界の命運と同じく、アーロイが迎える結末も気になり、プレイ意欲を高めてくれます。
こうした、“主人公の在り方と行く末”“人々と関わるサブストーリー”“SF要素も盛り込まれた壮大なメインストーリー”が折り重なった『Horizon Forbidden West』の物語は、前作と同様に、またそれ以上の魅力を備え、プレイを力強く導いてくれました。
■狩りの手応えは健在! パーツを剥がすのが楽しい! 選択肢の増えた戦闘についつい没頭
機械獣が跋扈するこの大地は、非常に危険です。雑魚であっても油断すれば大ダメージを受けますし、数匹に囲まれると危険度は更に跳ね上がり、逃げ出すのが最良の策になることもしばしば。
一方で、身を隠して近づけば、雑魚レベルなら一撃で倒すことも可能ですし、弱点や属性を把握すれば圧倒的な勝利を掴むこともできます。機械獣への対峙は「戦い」であると同時に、あらゆる手段を駆使する「狩り」でもあり、この醍醐味はもちろん本作にも継承されています。
アーロイの動きは、造形に見合ったリアリティを感じさせる重さがあると共に、機敏な動作で爽快感を失っておらず、軽快な立ち回りが可能。ボタンやレバーのレスポンスもよく、そのアクションに違和感やもたつきは感じません。
何よりも、機械獣の弱点に攻撃を食らわせると、その手応えが実感として伝わるほどエフェクトや振動などの演出が優れており、プレイを大いに盛り上げてくれます。的確に攻撃を加えるとパーツ単位で剥がれていき、これも爽快感を倍増。パーツ剥がしは、相手の攻撃手段の封じ込めや資材確保といったメリットもありますが、「気持ちいい!」という単純かつ絶対的な欲求を満たしてくれるので、止められずついつい狙ってしまいます。
「属性とか弱点とか、覚えるの面倒……」と警戒する方もいるかと思いますが、敵をフォーカス(R3ボタンを長押し)すると、そうした情報が一目で可視化され、しかも各部位を視覚的に光らせることも可能。後は光っている部分を狙えばいいだけなので、難しいことは何もありません。
また、本作の戦闘はTPSに近く、遠距離武器はエイムの必要があります。ですが、時間の流れが遅くなる「精神集中」を活用すれば、格段に狙いがつけやすくなるので、エイムが苦手な方もご安心を。
ちなみに、こちらも経験者向けの情報になりますが、不意をついてダメージを与える「サイレントストライク」や、倒れた敵を追撃する「クリティカルヒット」、頭上から強襲する「真上からの一撃」、隊長格の人間に不意打ちできる「リーダーストライク」など、前作にあったスキルの一部は、すでに標準の能力としてアーロイは体得済み。
また、本作で獲得できるスキルの単純な数も前作を凌駕し、派生ツリーもより豊かに。各武器の新たな攻撃を獲得できたり、近接や隠密方面を強化したりと、好みのプレイに合わせた成長ができるので、より広いユーザーの希望を叶えてくれます。
ちなみに、『Horizon Forbidden West』開始時点では、武具などの装備は最低限のものしか所持していません。前作の冒険を通して強力な武具を多数手に入れたはずですが、アーロイ曰く「ここに来る途中、色々あって装備をなくした」とのこと。続編モノの定番展開とはいえ、やや残念な気持ちも拭えません。
──が、本作でアーロイが手に入れる武器や防具(衣装)は、結構な種類がある模様。様々な集落に訪れるたびに新たな武具と出会うことが多く、また冒険の最中に入手するものもあり、取捨選択に悩まされる場面もあるほど。購入にはお金や素材が必要ですが、欲しい武具のため狩りに勤しむのも、『Horizon』らしいひとときです。
しかも本作の武具には、それぞれ有用なスキル効果が付与されているのも見逃せないポイントです。さらに、前作同様に追加効果が得られる「コイル」を空きスロットにはめられますし、アーロイ自身が覚えるスキル(ポイントを消費して任意で取得)との組み合わせを考えると、戦略性は更に広がります。
あくまで一例ですが、今回のプレイで「精神集中」に偏ったスキル・装備構成にしたところ、効果時間が40秒を超えました。
総じて戦闘面における感想としては、攻撃が当たった手応えは健在で、倒した時の爽快感も満点。パーツ単位の情報も見やすく、可視化されるので戦闘中に迷わず戦えます。また、戦闘に関わる武具やスキルは豊富で、どの方向に伸ばすか取捨選択も楽しく、戦略の幅広さを実感しました。
装備品に合わせて戦い方を変えるのも一興なので、前作の装備がなくなった寂しさは、あっという間に忘却の彼方。現金なプレイヤーですみません。ですが、新たな装備をあれこれと組み合わせるのが楽しいのも、間違いなく事実です。
■広大な世界を探索する醍醐味は、便利機能で快適さもアップ! 気がつけば時間が溶けていく……
『Horizon Zero Dawn』と直接的に繋がっており、当然世界観も共有していますが、舞台となるフィールドは完全に一新。まだ見ぬ大地を探索する楽しさを、また一から味わえます。
本作の舞台は“禁じられた西部”……ですが、開始直後はまずチュートリアル的なフィールドから始まります。ここで、戦闘やフォーカス、そして探索の基本的な操作や手順を学ぶことに。
ちなみに、チュートリアルと言っても侮ることなかれ。
この一区切りまでに筆者が費やしたプレイ時間は、余裕の3時間超え。細かいところまで探索したので、さっくり遊べばかなり短縮できると思いますが、寄り道も含めて飽きることなく熱中したのも確か。この部分だけ抜き出した体験版を出しても良さそうなほど、充実したチュートリアルでした。
そして、ここから本格的なオープンワールドが始まります。見渡す限りの大自然、その中で行き先を好きに選べる自由、新たな冒険の始まりに胸が高まるばかり……なのは間違いありませんが、ここもまだ“禁じられた西部”ではなく、その隣接地帯です。禁足地への立ち入りは、そう簡単にはいきません。
このように、『Horizon Forbidden West』で自由に行き来できる範囲は、物語の進行に合わせて段階ごとに広がっていきます。とはいえ、序盤の範囲が限られているからといって探索の醍醐味が薄いわけではなく、筆者はこの最初のエリアだけで8時間近い探索と冒険を楽しみました。
ちなみにこの8時間は、寄り道やサイドクエストだけでなく、戦闘が楽しくてひたすら機械獣を狩っていた時間も含むので、メインクエストに絞って進めればもっと短時間で次のエリアに進むことができます。プレイスタイルに合わせた懐の広さを見せつつ、寄り道派も満足なボリュームが序盤から用意されており、心憎いばかりです。
その後に足を踏み入れる“禁じられた西部”も含めると、冒険する大地は新緑あり荒野あり雪山ありと、気候・景観も様々。待ち受ける機械獣の種類や探索要素も一気に広がり、絶景の中を駆けめぐる圧倒的な没入感が、時を忘れるほどプレイに熱中させてくれます。
この「時を忘れる」は決して比喩ではなく、気がつけば数時間が経過することも度々ありました。やるべきことといえば、必須なのはメインクエストの進行くらいなので、意外とシンプルです。が、“やりたいこと”となると、軽く振り返るだけでも「サブクエスト・修練・探索・機械炉の攻略・素材集め・武具やポーチの強化」など、途端に跳ね上がります。時間がいくらあっても足りず、その“時間泥棒”ぶりに嬉しい悲鳴を幾度もこぼしました。
しかも探索そのものは、豊富なシステムがサポートしてくれるので、広大な世界にただ放り出される“暗中模索感”は皆無。フォーカスからパルスを飛ばす(R3ボタン押し)と、取得できる素材にマーカーがついたり、登坂できる場所がハイライト化されたりと、至れり尽くせり。
また、フォーカスすれば、草むらや壁向こうにいる敵や動物も察知できるので、標的を狙って狩りに励んだり、視界に入らず敵を避けることも容易。設定でUIを極力減らせば、没入感がいっそう増すこと受け合いです。そしてギミック的な攻略に行き詰まった時は、フォーカスを使えば大体突破口が見つかるので、プレイする際は頭の片隅に入れておきましょう。
瓦礫やハッチなどを取り除く「プルキャスター」、滑空により行動範囲が広がる「シールドウイング」、そして前述した潜水などの新要素も合わさり、探索の楽しさが更に進化した『Horizon Forbidden West』。かといって操作は複雑にならず、フォーカスによる視覚的なサポートも強化されるなど、遊びやすさへの気配りが行き届いています。今回の探索も、心地よく時間を奪ってくれそうです。
大ヒットの続編ゆえに、期待が集まるは至極当然の話。そしてハードルが高まると、この期待を超えてくれるのか一抹の不安も湧いてきます。果たして『Horizon Forbidden West』の評価がどのように定まるのか、まだ現時点では分かりません。
ですが、中盤まで遊んだひとりのユーザーとしては、『Horizon Zero Dawn』で楽しかった要素のほぼ全てが受け継がれていて満足し、戦闘における選択肢の多さに興奮を覚え、探索の醍醐味に没頭。その上で遊びやすい調整も施されるなど、理想に近い続編だと感じたことは間違いありません。
物語面に関しても、少なくとも今のところは、ほどよいSF要素がいいアクセントとなり、プレイのモチベーション向上に一役買っています。筆者が注目したアーロイの孤独感は、いつか癒やされるのでしょうか。関心が高まっていく物語の行く末は、今後もプレイし続けて見届けたいと思います。
プレイレポートという仕事を兼ねた上でも、その面白さが微塵も揺らがなかった『Horizon Forbidden West』。前作経験者にも、また未経験のユーザーにも、この体験をぜひ味わって欲しいと感じた1本です。……が、もし時間が許すなら、未経験の方は『Horizon Zero Dawn』から遊んでください! その方が、プレイ体験は更に豊かになりますので!!