『ヴァルキリーアナトミア -ジ・オリジン-』では、スマートデバイスに向けて基本プレイ無料というプレイスタイルを提案するなど、新たな刺激を求め続けるスタイルに変わりはなく、9月29日に発売されたばかりの『ヴァルキリーエリュシオン』も、アクションRPGという新境地に踏み込んだ姿を見せました。
安定は時にマンネリに繋がりますが、しかし挑戦がいつも成功に結び付くとは限りません。過去作たちも素晴らしい魅力を備える反面、特定の部分について改善を望む声が上がることもあります。
最新作『ヴァルキリーエリュシオン』についても不安や懸念の声はあり、特に発売前に配信された体験版のプレイを通して、不満を覚えた方もいました。
実際、筆者も冒頭(体験版の範囲)をプレイしている最中、気になるポイントがいくつもありました。しかし、その範囲を超えて遊び続けると、抱えていた不満が解消されたり、プレイ感の変化を味わったことから、「体験版だけで判断するのは早急だ」という結論に辿り着きました。
ゲームが面白いかどうかは、好みや相性が左右するため、あらゆる人が“面白い”と感じる作品は存在しません。ですが本作については、最初の手触りだけでは見えてこない面があるのも事実です。
そこで今回、『ヴァルキリーエリュシオン』のプレイを続けた筆者の経験から、体験版だけでは分からないプレイ感や、序盤をうまく乗り切るポイントなどをお届けします。購入の判断の目安にするもよし、先に進む足がかりにするもよし、この記事をどうぞお役立てください。
■体験版で直面する、戦いにくさから湧き上がる不安感
体験版で気になりやすい点のひとつは、バトルのアクション面……特に快適性に関わる部分かと思います。筆者も、最序盤はこのポイントが非常に気になりました。
『ヴァルキリーエリュシオン』は、シリーズ初の3DアクションRPGです。
一般的なアクションRPGに見られる要素は一通り揃っており、操作感そのものもまずまず。遠くの敵へ一気に近づける「ソウルチェイン」と呼ばれる独自要素のおかげで、戦闘中に3Dフィールドを行き来する手間はかなり少なく、この点はかなり爽快です。
ただし、攻撃後の隙が若干長めでモーションの大きい攻撃もあるため、連続攻撃の終盤などで別の敵に割り込まれることも多々。もちろん、少ない手数で一度距離を取り、仕切り直せば安全に戦えます。しかし、雑魚であっても2~3撃では倒せないので、ついつい手数を増やしてしまいがち。その結果、別の敵から攻撃を食らってストレスが溜まる、という悪循環に陥りやすいのです。
このバランスが爽快感を欠き、体験版でプレイ意欲を挫かれた方が少なくないと思います。ですが、これには理由があり、またプレイ感も後々大きく変わっていきます。
■体験版の1歩先に待つエインフェリアが、ヴァルキリーの戦いを大きく変える!
最序盤の戦いが厳しく、阻害されて爽快感を欠く大きな理由は、主人公であるヴァルキリーしか戦場にいないためです。体験版の主なプレイ範囲となるチャプター1は、彼女だけで挑まなければなりませんが、その先に待っているチャプター2の終わり際に、仲間に加わるエインフェリアが戦闘に参加。そして、以降はプレイヤーの任意でエインフェリアを戦闘中に呼び出せるようになります。
エインフェリアを召喚すると、制限時間(任意で変更可能)こそありますが、その間はずっと一緒に戦ってくれます。メンバーが増えると2人まで呼び出せますが、ひとりいるだけでも戦いやすさは大違いです。
彼らは、召喚すればあとは操作いらずで自動的に戦ってくれます。また、ダメージソースの点でも頼りがいがあり、特に属性的に有利な敵なら、こちらが気づかぬうちに倒していることもしばしば。
エインフェリアがひとりいるだけでも、敵の攻撃が分散されるので、割り込まれる確率は単純計算でも半分に。2人いれば1/3となり、攻撃を受ける負担はこれだけで激減します。
本作のバトルは、エインフェリアとの共闘が基本になっているので、ヴァルキリーだけだと戦闘が厳しいのはむしろ当然の話。「ならば、チャプター1はもっと敵の数を減らせばよかったのでは?」と思われるかもしれませんが、ここで厳しいバトルを経るからこそ、エインフェリアのありがたみや本作独自の戦略性が実感できるのだと思われます。
ちなみに、「じゃあ体験版でチャプター2まで遊べた方が良かったのでは?」とのご意見については、筆者も強く同意するほかありません。エインフェリアとの共闘こそ本作の核なのに、体験版で存分に味わえないなんてもったいない……!
■「評価」はやり直せる! エインフェリアは召喚するほど強くなる! プレイのコツを掴み、序盤を乗り切ろう
本作では、チャプターやサブクエストをクリアすると、それぞれ評価が下されます。道中で負ったダメージの量やアイテムの使用、経過時間などでスコアが減り、攻撃し続けたコンボ数やテクニカルなプレイ、倒した敵の数などで加算。そのトータルで、「S」や「A」といった評価が記録されます。
シリーズファンからすると、評価は気になるポイントのひとつでしょう。ちなみに、一度クリアしたチャプターもやり直すことができ、よりよい評価を残すことが可能。そのため、最初の評価が下るチャプター1を何度もやり直す、というプレイヤーがいるかもしれません。
ですが、評価の上書きを慌てて行う必要はありません。特にチャプター1クリア後は、エインフェリアがまだいない状態です。そのためコンボボーナスが稼ぎにくく、またダメージも受けやすいので、一種の縛りプレイのようなもの。敢えてそのプレイを楽しむ方以外は、戦力を整えてからの再戦がおすすめです。
物語を先に進めれば、ヴァルキリーの育成も進みますし、武器も強化できます。また、各チャプターの初回プレイは、探索して宝箱を開けたり、人間たちが残したメッセージを回収するため、クリア時間も抑えにくい面があります。
そのため、むしろ初回は評価を気にせず、物語と探索を気ままに楽しむ。そして、評価の更新は戦力が揃ってからと割り切ると、ストレスなく楽しめるかと思います。
ちなみにエインフェリアは、召喚すればするほど強くなっていくので、隙あらば召喚するのがベター。
繰り返しになりますが、ゲームを面白いと感じられるかどうかは、相性次第なところもあります。特に物語面はその傾向が顕著ですし、本作はエインフェリアとの関係が近い一方で、人数はかなり少なめ。そうした点をどう評価するかも分かれるため、『ヴァルキリーエリュシオン』の製品版は絶対に面白い! といった断言はできませんし、口にしたところで説得力にも欠けるでしょう。
ですが、体験版で遊びにくいと感じた手触りのいくつかは、その先までプレイすることで変化したり、改善されていきます。エインフェリアとリアルタイムで共闘し、互いの攻撃を重ねる爽快感は、シリーズ初の手応え。チュートリアルの中でいくらか触れられるものの、この要素を存分には味わえない体験版だけで評価せざるを得ないユーザーの立場は、少々不遇とも言えます。
製品版は決して安い買い物ではないので、購入するかどうかは常に悩ましい問題です。「誰でも例外なく絶対楽しめる」とは言い切れないので、強いおすすめもできませんが、体験版だけの情報で縁がなかったと決めるのはもったいなく思います。
慌てて購入する必要はないので、製品版をプレイしたほかのユーザーの評判などもチェックしつつ、じっくり見極めるのもひとつの手です。ただしネタバレを踏まないよう、その点だけはご注意を!
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