コンソール機の進化に伴って描画能力が向上し、アニメさながらの3Dモデルが自在に動いたり、実写と見まごうリアルな世界を描くことが可能になりました。その反面、開発費用や制作期間の増大を招き、挑戦的な新規IPよりも人気シリーズの続編を重視するような流れを生みました。


ですが、続編ならば常に賞賛されるわけではなく、ファンの期待に応えなければ、むしろ落胆と失望を与えてしまいます。人気があるからこそ、続編は超える壁も高くなり、この点に足掻き苦しむシリーズ作がこれまで多数ありました。

スーパーファミコンのRPG黄金期に登場し、数多あるライバルがひしめく中、ほかのRPG作品には少なかったSF的な要素を取り入れ、1作目から確かな人気を獲得した『スターオーシャン』シリーズも、続編展開に関して長く模索を続けています。

中盤までは堅調な成長と勢いを見せるものの、徐々にファンの間でも賛否が分かれる面が出始め、2016年に発売された『スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-』では、ゲームバランスの一部が崩れている点や、SF要素との関わりの少なさなどから、不満を持つファンも少なからずいました。

ファンからの期待という、高くそびえる壁と戦い続けてきた『スターオーシャン』ですが、その最新作にあたる『スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE』(以下、スターオーシャン6)が10月27日に発売されました。

本作がファンからの期待を背負うのは当然ですが、新規ユーザーも取り込まなければシリーズは先細りになります。多くのシリーズが試行錯誤に頭を悩ませる中、『スターオーシャン6』はどのようなゲーム性と内容で、新たな1歩を踏み出したのか。発売に先駆け、本作をプレイする機会に恵まれた筆者が、その特徴や魅力をいち早くお届けしたいと思います。

なお今回は、PS5版を20時間ほどプレイした序盤~中盤にかけてのプレイレポートとなります。

■『スターオーシャン6』は、アクションのテンポ感でRPGを表現
本シリーズはもともと、ターン制RPGから離れ、リアルタイム性のあるバトルが売りの一つでした。その方向性は本作でさらに強化され、プレイのテンポはアクションRPGと比べても遜色がないほどスピーディです。

任意で変更できる使用キャラを動かし、コンボを決め、相手の攻撃に合わせて回避やガードを繰り出し、敵を殲滅する。
フィールドがそのままバトルに直結し、しかもシチュエーションによっては街中で戦うこともあるなど、地続きの冒険と戦闘による没入感が本作でたっぷりと楽しめます。

ですが、この『スターオーシャン6』がアクションRPGと大きく異なる点は、「AP」の管理にあります。本作にはいわゆる「通常攻撃」はなく、全ての攻撃や補助、回復は、APを消費して発動する「バトルスキル」で行います。

この「AP」は数秒で回復するので、AP待ちの時間でテンポが削がれる、という心配は無用。延々と攻撃し続けることはできず、攻撃と攻撃の合間に仕切り直しや立ち回りが挟まることで、ターン制RPGをリアルタイムに落とし込んだようなユニークなプレイ感を味わえます。

またバトルに関しては、「ヴァンガード・アサルト」(以下、VA)を用いた「VAアタック」も、本作のゲーム性に関わる重要な要素のひとつです。VAをシンプルに説明すると、空中を飛んで移動する短距離ダッシュのこと。短距離といってもステップ程度ではなく、距離の離れた敵にも1~2秒で近づくことができ、敵が散らばりやすい3Dフィールドでは絶好の移動手段になります。

しかも敵をロックオンした状態で使えば「VAアタック」になり、移動から攻撃へと直結。ここからバトルスキルに繋げてダメージを与えるのが、本作の基本的な戦い方になります。

「VAアタック」は真正面からの突撃だけでなく、滑空中の方向転換も可能。敵が注目している状態から視覚外に移動すると、敵はこちらを見失い、「ブラインドサイド」と呼ばれる状態になります。
この時、敵は無防備になるので、こちらが与えるダメージは大きく増加。また、APの最大値が一時的に増えるという嬉しい効果も得られます。

距離を一気に詰め、不意打ちも狙える「VAアタック」と、攻撃の緩急や駆け引きを短い時間で繰り返す「AP」の管理をベースに、アクションRPG並みのテンポを取り入れたのが『スターオーシャン6』におけるバトルとなります。

AP管理のシステム面だけ見ると、高難易度系の3Dアクションによく見られる「スタミナゲージ」に近しい存在です。しかし高難易度系のゲームは、敵の一撃が致命的に重くて回避やパリィの重要度が高く、その分成功すれば逆にチャンスが生まれる等、ハイリスクハイリターンなバランス傾向が多めです。

しかし本作は、ハイスピードで展開する爽快系アクション寄りで、そこに絶妙な時間的駆け引きによるAP管理を盛り込んだことで、一定のターン(AP消費と回復)を自分で管理しつつ、立ち回りで攻撃のリズムを作るといった独特なプレイ感を構築。モーションの派手さやVAアタックの爽快感も手伝い、独自性と手応えの両立に成功していると感じました。

次ページ:広大なフィールドをVAによる快適な移動で旅する

■多彩かつ立体的なフィールドに冒険心をくすぐられ、VAによる移動でストレスフリー
アクション性がありながら、根本にRPGらしさを感じさせるバトルを用意した『スターオーシャン6』。ですが、本作のRPG的な魅力は、戦いだけに限りません。

まず、3D空間で描かれたフィールドですが、エリアごとに区切られた形になっています。横方向の広がりを主軸とするデザインではないものの、奥行や上下も取り入れた空間的な広さを提供しており、一定区域ごとのエリア別でも手狭な印象は受けません。

VAは移動時でも使え、ボタンを押すだけで相当な距離を進んでくれるので、VAでの移動がメインになりがち。
ですが、この高速移動を駆使しても世界を狭く感じたことはなく、高低差もあるダイナミックな地形は移動し甲斐のある構造になっています。

また、区切られたフィールドを逆手に取り、標高の高い山間や雪山など、エリアによって景観がガラッと変わることも多々。こうした千差万別のフィールドに出迎えられるたび、壮大な世界を冒険している実感が積み重なっていきます。

しかもフィールド上には、宝箱や素材、VAのアクションを強化するアイテムなどが点在しており、これらを見つけ出す“探索の楽しみ”も用意。さらに探索とVAの相性が非常に良く、高所に移動してアイテムを見つけようと思えば、VAで一気に駆け上がれますし、視界を遮る巨木の向こうにもアッという間に移動できます。

探索に伴いやすいストレスを極力軽減してくれるVAのおかげで、見つける楽しさだけに専念できるのは、本作ならではの魅力のひとつ。また、フィールド上にいる敵とエンカウントしてもVAで一気に逃げ出せるので、戦闘したくない時に戦いを強いられるストレスとも無縁です。

なだらかな草原、荒涼な岩肌に囲まれた大地、見上げるような樹木が並び立つ森林、海を臨む崖……広大な世界の片鱗を演出するロケーションと、立体的な地形に潜む探索要素の相乗効果で、心地よく冒険心をくすぐってくれます。

■スピーディなアクション、だけどやっぱり「RPG」だった『スターオーシャン6』
こうしたバトルとフィールドに支えられた本作のプレイ感は、メリハリの効いたテンポのおかげで、つい遊び続けてしまう心地よさがあります。

物語はまだ冒頭から続く問題を追いかけている段階なので総評とはいきませんが、未開惑星に不時着したレイモンドと、この惑星に住むレティシア王女、それぞれの立場や文化の違いから来る会話のやり取りはSFならではの醍醐味。『スターオーシャン』だからこそ描けるであろうこの先の展開に、期待するばかりです。

物語自体も、謎の襲撃から始まったレイモンド側の問題と、隣国との緊張感が高まる中での王女としての行動、それぞれの事情につかず離れずで関わっていくため、展開にもメリハリが効いており、飽きさせない構造になっています。


また、3Dモデルのデザインや戦闘中のモーションなども良好で、バトルの迫力に華を添えてくれます。会話時のモーションはややオーバーリアクションで、舞台の芝居を見ているようにも感じましたが、3Dモデルでは豊かな表情変化が難しいので、その点を補うための演出なのかもしれません。

戦闘面の特徴や魅力は既にお伝えした通りですが、個人的には戦闘中のエフェクトが少々気になりました。派手なので心地よさは当然ありますが、その分視認性が下がっており、複数の敵味方が一か所に集まると状況の把握は困難でした。

こうした気になる点がいくつかあったもののプレイ感は良く、また本作ならではという味わいも多かったため、トータルで見れば好印象です。進行に応じて増えていく仲間も、ただ頭数が増えるだけでなく、戦い方がかなり変化に富んでおり、新たな立ち回りをアレコレと考える楽しさがあったのも嬉しいポイントでした。

例えば、4人目の仲間となったニーナは、理術によるHP回復などを得意とするサポート系のキャラクター。ほかのメンバーとどれくらい異なるかといえば、彼女のVAアタックは敵をロックオンできず、その代わり味方に向かって突撃。その突撃が成功すると、味方のHPが回復するという特殊仕様です。

さらに、APを消費して一定範囲の味方を回復したり、一時的に攻撃力や防御力を増加させるバフを与えるといった立ち回りも可能。一応攻撃もできますが、近接戦闘型のレイモンドやレティシアの立ち回りとは全く違います。

このほかにも、近距離と中距離を使い分けたり、発動すれば強力なものの詠唱が必要なので、その間をどうやって凌ぐかが鍵になる攻撃型理術を使うキャラなどがおり、誰かが仲間になるたびに「このキャラクターはどんな戦い方ができるんだろう」といった喜びが湧き上がります。


こうした仲間を引き連れて挑む戦闘は、雑魚相手ならそれほど警戒する必要はありません。ただし、フィールドにいる大型の敵や、シナリオ進行で遭遇するボスとのバトルは要注意。相手を侮ったり、攻撃偏重で闇雲に突進ばかりすると、あっさりとやられてしまいます。

操作していないパーティキャラはAIに任せる形になりますが、攻撃を食らうことも多く、ボス相手だとフォローしないと自分以外全滅、という展開も珍しくありません。

手痛いボスの攻撃で、徐々に減っていく仲間のHP。それを見過ごせばパーティは半壊し、戦力的な意味でも窮地に立たされます。それはさながら、回復せずに全員で「攻撃」コマンドを選んだ時のターン制RPGのよう。

この窮地を乗り越えるため、操作キャラをニーナに切り替えて回復に奔走。壊滅の危機を脱した後は、アタッカーへ切替え、再度攻撃に励む。3Dアクションのテンポ感で進行しつつも、本作の根っこにあるのはやはり「RPG」なのだと、個人的に強く感じた瞬間でした。

スピーディーでテンポもいいリアルタイム性を軸としながらも、公式サイトの記載は「ジャンル:RPG」を掲げる『スターオーシャン6』。RPG黄金期に感じた“あの頃のワクワク感”を思い出す20時間を、たっぷりと味わわせていただきました。


同じように感じる方がいるかは分かりませんが、見るべき長所や魅力があるのは確かなので、手を出すか迷っている方は、まず体験版のプレイをお勧めします。ただし体験版は、ニーナが加入する以前の序盤のみのプレイなので、その点ご注意ください。ニーナ加入から一気にバトルの楽しさが広がるので、なんとも口惜しい……!

『スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE』はPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox one向けは発売中、PC(Steam)向けには10月28日に発売予定です。

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