今年の2月に行われた配信番組「Nintendo Direct 2022.2.10」にて、無骨な人型兵器が戦場を駆け抜けるシミュレーションRPGが発表され、話題となりました。
その名は、『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』。
四半世紀を超える年月は、人を様々な形に変えかねません。違う趣味に移ったり、好みが変化してもなんら不思議ではないでしょう。しかし、27年の月日を経て蘇る作品に対し、当時惚れ込んだユーザーたちの多くが、今も変わらぬ歓喜の声を上げたのです。
もちろんそれは、当時発売された『フロントミッション』がゲームとして魅力的だったのが大前提ですが、多くのユーザーが本作に惚れ込む理由がありました。
27年前に発売されたオリジナル版『フロントミッション』は、どのように登場し、ユーザーを魅了したのか。『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』の発売を記念し、当時の背景を振り返ります。
【UPDATE】2007年に発売された商品をDS版に修正いたしました。
■オリジナル版が発売された1995年、SFCは次世代機と渡り合っていた!?
太平洋にあるハフマン島を舞台に、戦闘兵器「ヴァンツァー」を駆使する地域紛争を描いた『フロントミッション』。その設定を生かすリアルテイストでデザインされたヴァンツァーは、その多くが人型を模しており、鉄と硝煙の匂いを漂わせる硬派なSRPGとして注目を集めました。
スーパーファミコン(以下、SFC)向けに発売されたオリジナル版『フロントミッション』が登場した1995年当時、すでに初代プレイステーションやセガサターンの販売が始まっており、翌年にはNINTENDO64の発売も控えていました。
次世代機の台頭が始まっているSFC後期に参戦した『フロントミッション』は、むしろ苦戦を強いられたのでは……と思われるかもしれませんが、1995年時点のSFCはまだ勢いを譲らず、この年だけで300本を超えるゲームソフトを展開させています。
有名どころだけでも、『クロノ・トリガー』『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』『クロックタワー』『聖剣伝説3』『タクティクスオウガ』『不思議のダンジョン2 風来のシレン』『ドラゴンクエストVI 幻の大地』『テイルズ オブ ファンタジア』などが続々と出たハードを、衰退期とは到底呼べないでしょう。
根強い人気を誇るSFCに登場した『フロントミッション』もまた、多くのユーザーに支持され、人気を博しました。その証左と言えるのが、派生作の多さ。まず、ワンダースワンカラー版が2002年に発売され、翌年には最初のリメイクである『フロントミッション ザ・ファースト』が初代PS向けに登場。さらに2007年にはDS版が、2008年以降はゲームアーカイブス化を迎えるなど、その広がりは多岐に及びます。
これだけの広がりは、ユーザーからの厚い支持なしには考えられません。また、1997年に続編の『フロントミッション2』が初代PSに登場し、シリーズとしての展開が平行して進んだのも、『フロントミッション』が成功したためでしょう。
次ページ:リアル志向のオリジナルロボットものは当時かなり珍しい部類だった?
■『フロントミッション』は、“飢えていた”ユーザーを的確に狙い撃ち
『フロントミッション』が成功した鍵のひとつは、当時のゲーム事情にありました。実は、リアル志向のオリジナルロボットものというカテゴリー自体、当時かなり珍しい部類だったのです。
ロボットもの自体はいくつもありましたが、その多くは人気アニメシリーズを原作としたもので、『機動戦士ガンダム』『装甲騎兵ボトムズ』『超時空要塞マクロス』などのゲーム化作品がほとんど。
『スーパーロボット大戦』シリーズは当時から人気を博していましたが、こちらは多数の作品とのクロスオーバーも魅力のひとつなので、系統としては向きが少々異なっています。
リアル傾向のオリジナルロボットゲームは、皆無でこそなかったものの、乏しい状況だったのは間違いありません。一方で、リアルロボット系アニメなどの作品は一定以上の支持を集めており、そんなゲームを遊びたいという潜在的なニーズは確かに存在していました。
求めるユーザーはおり、しかしゲーム市場の数字としてはまだ明確ではなく、需要がどれほど広く、また深いのかも分からない時代。そんな未知の海に堂々と漕ぎだしたのが、『フロントミッション』だったのです。
先駆者として『重装機兵レイノス』や『重装機兵ヴァルケン』もありますが、こちらはアクションゲーム。また難易度も割合高めなので、ゲームの腕前という点で人を選ぶ向きもあります。『フロントミッション』はジャンルの相性こそありますが、ターン制なので焦る必要はなく、反射神経も必要なし。思考するゲーム性が嫌いでなければ、多くのロボット好きにとって間口の広い作品とも言えるでしょう。
アニメや『重装機兵ヴァルケン』などの反響から、リアルロボット系ゲームを求めるユーザーはおり、そして当時まだ珍しかった「リアルロボット+SRPG」という新たなフロンティアに挑んだ『フロントミッション』。その挑戦は、実際にこうしたゲームを求めていたユーザーに刺さり、前述の通り大きな成功を収めました。
もちろん、ニーズにただ応えただけではありません。「ヴァンツァー」をパーツ単位で組み合わせ、編成やパイロットの特性を踏まえた武装を選ぶセットアップは、リアルロボット好きにはたまらない要素です。
また戦闘中のエフェクトや演出も、重火器の迫力や被弾した衝撃、火線に晒されながら肉薄する接近戦など、リアルロボット系だからこその泥臭い臨場感もたまりません。「ヴァンツァー」はパーツ単位で壊れ、例えば左腕が破壊されると、左手に装備した武器と肩にマウントした兵器が使用できなくなります。
ゲーム的には単なる被害で、デメリットを負う状態です。しかし、「あちこちのパーツが破損しつつも戦い続け、敵を屠る」という状況を想像すると、これほど沸き立つシチュエーションもなかなかありません。
カスタマイズや戦略性、演出まで含めたゲームシステム全般がしっかりと作られており、それだけでも十分リアルロボット好きを震え立たせます。そこに、想像力を刺激する上質な戦況展開が加われば、多くのユーザーが酔いしれるのも納得の一言です。
加えて、戦争の重みと愚かさ、それに翻弄されてしまう人々のドラマに真正面から向き合ったシナリオも高く評価されました。ゲームバランスの一部に甘さはあるものの、大きな問題点や不満はなく、ニーズを的確に射抜いた『フロントミッション』。リアルロボット系ゲームを求めていたユーザーの“渇き”を満たした、見事な作品でした。
次ページ:攻略情報検索の際はネタバレに気をつけて!
■今回初プレイの方は、「検索」にご注意を!
あの時に衝撃と刺激を味わったユーザーは、四半世紀を経ても当時の興奮が刻まれており、その原点の復活に歓喜の声を上げました。
また、当時の作品には触れておらず、この『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』で初めて遊び始めた、もしくはこれから遊ぶという新規の方も少なくないはず。ひとりのファンとして、本作をとことん楽しんで欲しい──と思いつつ、ひとつだけ強く伝えたいことがあります。
例えば、攻略に詰まったり、どう遊ぶとスムーズか調べたい時があるかもしれません。その際は、出来る限り情報を絞り込むべく、タイトル名と複数の関連ワードで検索することをお勧めします。
というのも、すでに四半世紀も前の作品なので、本作に関する重大なネタバレが色んなサイトに転がっています。概要を伝えるだけでもかなり危険なので、「ネタバレ」という言い回しに留めさせていただきますが、それを事前に知ってしまうのは勿体ない限り。
なので、クリアするまでは「フロントミッション」での検索は慎重に慎重を重ね、可能な限り複数のワードを絡めて情報を絞り込みましょう。特に、タイトル名だけ打ち込んだ後に検索候補から選ぶと、予期せぬサイトに出くわす可能性もあるので要注意です。
本作に限った話ではありませんが、ゲームは刺激と驚きに満ちているもの。であれば、まっさらなまま出会うことが、より良い体験へと繋がるでしょう。「初めて」は、誰にとっても一度きり。
※本記事の画像は、全て『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』のものです。
(C) 1995, 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Developed by Forever Entertainment S.A.
その名は、『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』。
タイトルにもある通り、本作はリメイク作品です。しかも、その原点となるオリジナル版『フロントミッション』が発売されたのは、1995年2月24日のこと。27年も前にリリースされたゲームの新たな復活を告げるものでした。
四半世紀を超える年月は、人を様々な形に変えかねません。違う趣味に移ったり、好みが変化してもなんら不思議ではないでしょう。しかし、27年の月日を経て蘇る作品に対し、当時惚れ込んだユーザーたちの多くが、今も変わらぬ歓喜の声を上げたのです。
もちろんそれは、当時発売された『フロントミッション』がゲームとして魅力的だったのが大前提ですが、多くのユーザーが本作に惚れ込む理由がありました。
27年前に発売されたオリジナル版『フロントミッション』は、どのように登場し、ユーザーを魅了したのか。『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』の発売を記念し、当時の背景を振り返ります。
【UPDATE】2007年に発売された商品をDS版に修正いたしました。
■オリジナル版が発売された1995年、SFCは次世代機と渡り合っていた!?
太平洋にあるハフマン島を舞台に、戦闘兵器「ヴァンツァー」を駆使する地域紛争を描いた『フロントミッション』。その設定を生かすリアルテイストでデザインされたヴァンツァーは、その多くが人型を模しており、鉄と硝煙の匂いを漂わせる硬派なSRPGとして注目を集めました。
スーパーファミコン(以下、SFC)向けに発売されたオリジナル版『フロントミッション』が登場した1995年当時、すでに初代プレイステーションやセガサターンの販売が始まっており、翌年にはNINTENDO64の発売も控えていました。
次世代機の台頭が始まっているSFC後期に参戦した『フロントミッション』は、むしろ苦戦を強いられたのでは……と思われるかもしれませんが、1995年時点のSFCはまだ勢いを譲らず、この年だけで300本を超えるゲームソフトを展開させています。
有名どころだけでも、『クロノ・トリガー』『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』『クロックタワー』『聖剣伝説3』『タクティクスオウガ』『不思議のダンジョン2 風来のシレン』『ドラゴンクエストVI 幻の大地』『テイルズ オブ ファンタジア』などが続々と出たハードを、衰退期とは到底呼べないでしょう。
根強い人気を誇るSFCに登場した『フロントミッション』もまた、多くのユーザーに支持され、人気を博しました。その証左と言えるのが、派生作の多さ。まず、ワンダースワンカラー版が2002年に発売され、翌年には最初のリメイクである『フロントミッション ザ・ファースト』が初代PS向けに登場。さらに2007年にはDS版が、2008年以降はゲームアーカイブス化を迎えるなど、その広がりは多岐に及びます。
これだけの広がりは、ユーザーからの厚い支持なしには考えられません。また、1997年に続編の『フロントミッション2』が初代PSに登場し、シリーズとしての展開が平行して進んだのも、『フロントミッション』が成功したためでしょう。
次ページ:リアル志向のオリジナルロボットものは当時かなり珍しい部類だった?
■『フロントミッション』は、“飢えていた”ユーザーを的確に狙い撃ち
『フロントミッション』が成功した鍵のひとつは、当時のゲーム事情にありました。実は、リアル志向のオリジナルロボットものというカテゴリー自体、当時かなり珍しい部類だったのです。
ロボットもの自体はいくつもありましたが、その多くは人気アニメシリーズを原作としたもので、『機動戦士ガンダム』『装甲騎兵ボトムズ』『超時空要塞マクロス』などのゲーム化作品がほとんど。
オリジナルロボット作品の代表的な存在である『アーマード・コア』の登場も、1997年まで待たなければなりません。
『スーパーロボット大戦』シリーズは当時から人気を博していましたが、こちらは多数の作品とのクロスオーバーも魅力のひとつなので、系統としては向きが少々異なっています。
リアル傾向のオリジナルロボットゲームは、皆無でこそなかったものの、乏しい状況だったのは間違いありません。一方で、リアルロボット系アニメなどの作品は一定以上の支持を集めており、そんなゲームを遊びたいという潜在的なニーズは確かに存在していました。
求めるユーザーはおり、しかしゲーム市場の数字としてはまだ明確ではなく、需要がどれほど広く、また深いのかも分からない時代。そんな未知の海に堂々と漕ぎだしたのが、『フロントミッション』だったのです。
先駆者として『重装機兵レイノス』や『重装機兵ヴァルケン』もありますが、こちらはアクションゲーム。また難易度も割合高めなので、ゲームの腕前という点で人を選ぶ向きもあります。『フロントミッション』はジャンルの相性こそありますが、ターン制なので焦る必要はなく、反射神経も必要なし。思考するゲーム性が嫌いでなければ、多くのロボット好きにとって間口の広い作品とも言えるでしょう。
アニメや『重装機兵ヴァルケン』などの反響から、リアルロボット系ゲームを求めるユーザーはおり、そして当時まだ珍しかった「リアルロボット+SRPG」という新たなフロンティアに挑んだ『フロントミッション』。その挑戦は、実際にこうしたゲームを求めていたユーザーに刺さり、前述の通り大きな成功を収めました。
もちろん、ニーズにただ応えただけではありません。「ヴァンツァー」をパーツ単位で組み合わせ、編成やパイロットの特性を踏まえた武装を選ぶセットアップは、リアルロボット好きにはたまらない要素です。
また戦闘中のエフェクトや演出も、重火器の迫力や被弾した衝撃、火線に晒されながら肉薄する接近戦など、リアルロボット系だからこその泥臭い臨場感もたまりません。「ヴァンツァー」はパーツ単位で壊れ、例えば左腕が破壊されると、左手に装備した武器と肩にマウントした兵器が使用できなくなります。
ゲーム的には単なる被害で、デメリットを負う状態です。しかし、「あちこちのパーツが破損しつつも戦い続け、敵を屠る」という状況を想像すると、これほど沸き立つシチュエーションもなかなかありません。
カスタマイズや戦略性、演出まで含めたゲームシステム全般がしっかりと作られており、それだけでも十分リアルロボット好きを震え立たせます。そこに、想像力を刺激する上質な戦況展開が加われば、多くのユーザーが酔いしれるのも納得の一言です。
加えて、戦争の重みと愚かさ、それに翻弄されてしまう人々のドラマに真正面から向き合ったシナリオも高く評価されました。ゲームバランスの一部に甘さはあるものの、大きな問題点や不満はなく、ニーズを的確に射抜いた『フロントミッション』。リアルロボット系ゲームを求めていたユーザーの“渇き”を満たした、見事な作品でした。
次ページ:攻略情報検索の際はネタバレに気をつけて!
■今回初プレイの方は、「検索」にご注意を!
あの時に衝撃と刺激を味わったユーザーは、四半世紀を経ても当時の興奮が刻まれており、その原点の復活に歓喜の声を上げました。
そうした方々は、今回のリメイク版を早速遊んでいることでしょう。
また、当時の作品には触れておらず、この『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』で初めて遊び始めた、もしくはこれから遊ぶという新規の方も少なくないはず。ひとりのファンとして、本作をとことん楽しんで欲しい──と思いつつ、ひとつだけ強く伝えたいことがあります。
例えば、攻略に詰まったり、どう遊ぶとスムーズか調べたい時があるかもしれません。その際は、出来る限り情報を絞り込むべく、タイトル名と複数の関連ワードで検索することをお勧めします。
というのも、すでに四半世紀も前の作品なので、本作に関する重大なネタバレが色んなサイトに転がっています。概要を伝えるだけでもかなり危険なので、「ネタバレ」という言い回しに留めさせていただきますが、それを事前に知ってしまうのは勿体ない限り。
なので、クリアするまでは「フロントミッション」での検索は慎重に慎重を重ね、可能な限り複数のワードを絡めて情報を絞り込みましょう。特に、タイトル名だけ打ち込んだ後に検索候補から選ぶと、予期せぬサイトに出くわす可能性もあるので要注意です。
本作に限った話ではありませんが、ゲームは刺激と驚きに満ちているもの。であれば、まっさらなまま出会うことが、より良い体験へと繋がるでしょう。「初めて」は、誰にとっても一度きり。
リメイク版でその「初めて」に遭遇できるのならば、ぜひゲームの中で味わってください。あなたに、鉄と硝煙の祝福があらんことを!
※本記事の画像は、全て『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』のものです。
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