フロム・ソフトウェアがあるゲームを発表し、大きな注目を集めました。その名は、『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』(以下、アーマード・コア6)。


作の詳細についてはほとんど語られておらず、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam)に向けて来年発売予定といった情報以外は、アナウンスメントトレーラーと公式サイトに記載された概要程度しかありません。

しかし、情報量の少なさを全く感じさせないほど、本作の発表に歓喜する声がインターネット上で飛び交い、関連ワードが瞬く間にトレンド入りするほどの盛り上がりを見せました。発表から時間が経った今でも、その熱気をSNSなどで見ることができ、瞬間的な話題に留まっていないことも窺えます。

ここまで多くの方々が『アーマード・コア6』の発表を喜ぶのは、なぜなのか。その背景や事情について、今回分かりやすくお届けします。

■そもそも、「アーマード・コア」ってなに?
本作のタイトルについている「6」という数字は、ナンバリングタイトルの6作目を示すもの。つまり『アーマード・コア6』は、「アーマード・コア」シリーズの最新作に当たります。

シリーズと同名のプレイステーションソフトが1997年7月に発売され、ここから本シリーズの展開が幕を開けました。初代プレイステーションだけでも、このほかに『アーマード・コア プロジェクトファンタズマ』、『アーマード・コア マスターオブアリーナ』がリリースされ、黎明期の人気を確固たるものとします。

さらにPS2では、『アーマード・コア2』をはじめ8作品が登場(PSPとのマルチタイトルあり)。順調に作品を重ねていった本シリーズは、2013年9月に発売された『アーマード・コア ヴァーディクトデイ』まで、全15作品を積み上げたのです。16年間に15本、おおよそ1年に1本の割合で展開していました。


これだけのペースで作品が生まれるには、シリーズを支えるファンたちの存在が決して欠かせません。裏を返せば、それだけの方々を虜とする魅力を、この「アーマード・コア」シリーズが備えていた証左と言えます。

根強い支持を集めている「アーマード・コア」のジャンルは、3D空間で戦うバトルアクション。人型兵器(その総称が、タイトル名になった「アーマード・コア」)を操作し、様々なミッションに挑んで依頼の達成を目指します。一介の傭兵でありながら、世界情勢を変えるほどの激戦に身を投じていく流れが描かれ、物語面でもプレイヤーを魅了しました。

ですが魅力の中心は、人型兵器のカスタマイズ性と、愛機で潜り抜ける戦場の数々にあります。搭乗する人型兵器は、頭部・腕部・脚部・胴体(コア)に加え、両手や肩にマウントする武器、さらにはオプションなど、数百種類に及ぶ多彩なパーツを自由に組み合わせ、自分だけの機体を作り上げることが可能です。

手を入れれば入れるほど自分の機体に愛着が湧き、その愛機を駆使してミッションをクリアしていく達成感は実に刺激的。人型兵器同士で戦うこともあり、そのシチュエーションと手応えの相乗効果で興奮度は跳ね上がり、勝てた時の高揚感は一度味わうと病みつきになること間違いありません。

しかも本シリーズは対戦要素も用意されており、友達と遊ぶオフライン対戦はもちろん、オンラインを介した対戦、会場に集って戦うリアルイベントの大会など、様々な形でプレイヤー同士による戦いの場を提供し、歴戦の強者同士が腕を競い合いました。

SF要素をたっぷりと詰め込んだ重厚な物語、自分だけのこだわりを突き詰められるカスタマイズ性、手に汗握る戦いやプレイヤー同士の対戦と、数多くの魅力がそれぞれ光り輝いていた「アーマード・コア」。本シリーズの特徴や人気を支えた理由の一端は、こうしたポイントにありました。


■長く新作が出ず、ファンたちは闘争を求め始める
ここまでの内容から、「人気があったシリーズだから『アーマード・コア6』の発表が盛り上がったのか」と捉える方はいるでしょう。それも確かに盛り上がった要素のひとつではあります。しかし、単に新作が出るから、だけではないのです。

本シリーズの展開は、2013年発売のPS3ソフト『ARMORED CORE VERDICT DAY』からしばらく沈黙していたので、今回の発表は実に9年ぶり。発売年で考えると、10年ぶりに新作が登場する流れとなりました。これをファンの視点から見ると、「10年の空白期間があった」とも言えます。

10年あれば、中学1年生がスムーズに進学し、4年制大学を卒業するまでの期間に相当します。大人でも10年過ぎれば、立場や環境も一変しかねません。誰にとっても、決して短い時間ではないでしょう。

しかも、「10年後に新作が出る」とあらかじめ決まっていたわけではなく、ファンからすれば、「いつ出るのか」「もしかしたら、新作はもう出ないのか」といった不安を抱えたまま、出口のない迷路を延々と歩いていた状態です。

新作を待ち望みながら先の見えない日々を過ごす中で、「アーマード・コア」を求める気持ちをモチーフとしたミームが、ネット上に広がっていきました

そのミームは、『ポケモン GO』が流行ったことで癒される人が増え、しかし癒されたからこそ次は闘争を求め、その矛先として「アーマード・コア」を買い、シリーズが盛り上がってフロム・ソフトウェアが新作を作る──といった内容のコメントが発端に。これは、ことわざの「風が吹けば桶屋が儲かる」にも通じる言葉遊びの一種と考えると、分かりやすいかと思います。


全く関係ない事柄を前提に、そこから「身体は闘争を求める」と強引に転じ、「人々がアーマード・コアを求める」と繋げ、だから新作が出ると締めくくる一連のこの流れは、時代と共に様々なバリエーションが生まれていき、まるで大喜利さながらの様相を呈しました。

これ自体は小粋なジョークですが、「アーマード・コア」を待ち続けるファンがいながら長い間新作が出ず、さらに今後の見通しも分からない不確定な状況がその下地にあってこそ。ネタとして使っていた人もいる一方で、新作を持ち望む気持ちをこうした形で表現していた人も少なくなかったのです。

そしてこのネットミームが流行った結果、「アーマード・コア」を遊んだことがない人にも、そのシリーズ名が知られるほど広まりました。そうした草の根的な動きでシリーズの知名度が広がり、「アーマード・コア」シリーズに関わった一部スタッフによる『デモンエクスマキナ』が他社からリリースされたものの、「アーマード・コア」自体の新作は訪れないまま長い時が過ぎていたのです。

ちなみに、このネットミームの代表的な「身体は闘争を求める」という台詞ですが、「アーマード・コア」作品には存在しない文章です。いかにもな言い回しの秀逸さも、このネットミームが流行った理由の一端だったのでしょう。

■ミーム化するほどの熱意と、フロム・ソフトウェアの勢いで、期待固まる『アーマード・コア6』
一時代を築きながらも、その後は9年間沈黙を貫き、ネット上では独特なミームまで広まった「アーマード・コア」。多くの方が期待し、ですが予想していなかった最新作の発表が訪れます。

少し大げさな表現になりますが、ネットミームの定着化も手伝い、「アーマード・コア」は半ば都市伝説のような扱いでした。そんな状況に投下された『アーマード・コア6』の発表がもたらした衝撃の大きさは、ここまでの流れを踏まえてみれば想像に難くないことでしょう。

しかもフロム・ソフトウェアは、今年2月にリリースした『ELDEN RING』の販売本数が1,750万本を突破(9月時点)し、世界的な大ヒット作を出したばかり。
そのため、同社への期待は相乗効果で高まるばかりです。こうした勢いと、長らく待ち焦がれたファンの熱意が噛み合えば、今後シリーズ最大の盛り上がりを見せる可能性も十分あります。

かつて“傭兵”として戦い続けたファンだけでなく、ミームでしか知らなかった方々にとっても、『アーマード・コア6』の発表は驚愕の出来事でした。ここまで高まった期待を受け、シリーズ最新作はどのような刺激と驚きをユーザーに提供してくれるのか。まずは、新たな続報に胸を膨らませるばかりです。

(C)Bandai Namco Entertainment Inc. / (C)1997-2022 FromSoftware, Inc. All right reserved.
※記事に使用している画像は、全て『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』のものです。
編集部おすすめ