ですが、徐々にCGや3Dモデルを用いたゲームが増え始め、そちらが全盛期を迎えると、ドット絵は「レトロな表現」との印象が強まり、時代遅れだと感じる人が出始めます。
ですが、さらに時代を経るに従い、今度はドット絵の良さが見直されます。ハードの性能ゆえの選択ではなく、表現できる幅が広がった後も、能動的にドット絵を採用するゲームが途絶えることはありませんでした。優れたデフォルメ表現や、想像力を刺激する手段としてドット絵は再評価され、今日の地位を築くに至ります。
そんなドット絵の魅力を引き出しつつ、更なる進化を加えた手法「HD-2D」で描かれたRPG『オクトパストラベラー』が2018年7月に発売され、大きな注目を集めました。
『オクトパストラベラー』は、優れたゲーム性や引き込まれる物語なども評価されましたが、まず目を引いたのはそのビジュアル。ドット絵と3DCGによる演出やエフェクトを組み合わせ、空気感まで感じられるようなグラフィックを描き、ゲームファンからの関心を獲得。新規IPながら好調な売れ行きを見せ、「HD-2D」の素晴らしさを世に広めます。
新たな名作RPGが生まれてから4年半が経ち、「HD-2D」で表現された作品がいくつも生まれました。そして、シリーズ最新作であり、初のナンバリングタイトル『オクトパストラベラー2』が、2023年2月24日に登場します。(Steam版のみ2023年2月25日)
「HD-2D」を切り開いた作品の直接的な完全新作は、前作の魅力をどこまで受け継いでいるのか。また、どんな新要素を備えているのか。今回、発売に先駆けて『オクトパストラベラー2』に触れる機会に恵まれたので、本作のプレビューをいち早くお届けします。
なお、今回はプレビューなので、範囲は序盤(一部キャラの第1章~第2章程度)に限ったものとなります。また、プレイしたハードはPS4です。
■見た目よし、音楽よし、バトルよし! 前作の魅力を損なうことなく受け継いだ『オクトパストラベラー2』
最初に述べた通り、「HD-2D」作品の第1作目『オクトパストラベラー』は、ドット絵に新たな演出を加えてゲームファンを驚かせました。懐かしさもあるドット絵の表現を洗練させ、これまでにない魅力として輝かせることに成功。その特徴は、『オクトパストラベラー2』にも見事に受け継がれています。
デフォルメされて描かれる主人公や登場人物たちは、豊かなアクションで生き生きと動き回り、町や村の風景は生活感が感じられるほどきめ細かく描写されています。また、旅先には多彩な景色が待っており、時に牧歌的な風景が、時に厳しい極寒の地が美しく表現されています。
その実感をシンプルに表現すると、いい意味で「前作通り」。1作目で感じた懐かしく、しかし新たなビジュアルから受けた衝撃は、今回も変わることなくたっぷりと堪能できます。デフォルメながら様々なアクションポーズで、その行動や感情を豊かに表現している点も同様ですし、見る側の感情を大きく揺さぶってくれる雄弁なBGMの数々に今回も引き込まれます。
また本作はターン制RPGですが、戦いにおける戦略性を高める「ブレイク」と「ブースト」も健在。相手の弱点を突く「ブレイク」を活用すれば、相手を一時無力化できるうえに、与ダメージも上がるため、パーティが一丸となる実感も味わえます。
そして「ブースト」は、ターンごとに溜まるストックを消費することで、自分の行動を強化できる要素。「ブレイク」を早めるために手数を増やすもよし、ブレイク後の与ダメージ増加に使って畳みかけるもまたよしです。
「ブースト」使用後はストックが貯まらないので、こまめに使うとその分だけ溜まるペースが遅くなります。しかし溜める数には制限があるので、使いどころを見極めないと溜めきれずに溢れてしまう場合も。いかに無駄なく効果的に使い続けるか。その判断を要する戦闘は常に思考を刺激されるため、マンネリや飽きを招きにくいものになっています。
また、本作からの新要素「底力」は、いわゆる切り札のような存在です。相手をブレイクする度にゲージが増え、それが最大まで溜まると「底力」を任意のタイミングで発動できます。
「底力」の効果は主人公ごとに異なります。1ターンに2回行動したり、全体攻撃魔法を単体に集約させて威力を上げたり、弱点以外の攻撃でも「ブレイク」を狙えたりと、いずれも強力なものばかり。「底力」を活かす戦いをどのように組み立てるのか、それを考えるのも本作ならではの楽しさです。
まだ序盤の範囲ですが、ゲームバランスもかなり絶妙で、「ブレイク」と「ブースト」を駆使すると、窮地に追い込まれても打破できる道があり、手ごわいボスも初見でクリアできました。
「ブレイク」と「ブースト」、そして「底力」の活用は、戦況を見極める視点や判断力などを求められますが、その分だけ戦闘を有利に進められます。苦労した分だけ楽になる──これもまた、RPGが持つ醍醐味のひとつであり、その楽しさを『オクトパストラベラー2』はしっかりと携えています。
■プレイヤーに託された自由度が、「あなただけの冒険」を与えてくれる
本作には8人の旅人がおり、この中から主人公となる人物を選び、冒険に旅立ちます。また、この時に選ばなかった仲間は、後々出会うことで、パーティに加えることが可能です。
今回のプレイで主人公に選んだのは、街の裏側から暗躍するならず者集団「黒蛇盗賊団」に属する盗賊の「ソローネ・アングイス」。ただし、彼女を含めた構成員のほとんどは「首輪」をつけられ、指示に従うよう強制させられている模様です。
2人の権力者、「ファーザー」と「マザー」に絡めとられ、ささやかな未来さえ思い描けないソローネ。そんな支配から抜け出し、「自由」を得るための戦いに踏み出すことが、彼女の旅の幕開けでした。
また、今回のプレイで初めての仲間として出会った「オズバルド・V・ヴァンシュタイン」は、監獄を脱走してきた囚人。ソローネ以上に危険な立場ですが、それについてはいくつかの事情があります。
オズバルドが投獄された理由は、妻子殺し。
こうした、自身の身に関わる過酷な状況から旅を始めた者もいれば、「テメノス・ミストラル」のように、教皇殺害の犯人探しとその背景に迫るため、住み慣れた村を後にした人物もいます。
今回のプレイでは手が回りませんでしたが、希望を胸に旅を始める踊子もいれば、商売人として大成すべく活動する商人もおり、主人公たちの性格や立場、目的は千差万別。誰を主人公とし、誰を仲間に加えるかを、プレイヤーは自由に選択できます。
また、主人公になり得る8人の違いは、ゲーム性にも現れています。まず、非戦闘時に使える「フィールドコマンド」があり、ソローネなら「盗む」と「闇討ち」、オズバルドなら「探る」と「強奪」、テメノスなら「導く」と「暴く」と、それぞれの個性が見えるものばかり。
一見すると、同じような印象を受けるコマンドもあります。ですが、例えば「盗む」は確率で成否を判定しますが、「強奪」はバトルを仕掛け、勝敗によって結果が分かれます。「盗む」は、ソローネのレベルによっては成功率数%という場合も多々ありますが、運さえよければ強力なアイテムをさくっと手に入れられるお得な手段。また、ちょっとズルい手ですが、セーブ&ロードを繰り返すことで、根気さえあれば必ず入手できます。
一方「強奪」は、バトルが必須なので多少の時間がかかりますし、勝てないとアイテムを奪えません。しかし裏を返せば、十分な戦力さえあれば、運に任せることなく確実に手に入るというメリットがあります。
また、「探る」と「暴く」は、情報収集の手段として活用できる点で共通していますが、切り口はやや異なり、また手段も違います。「探る」は、オズバルドの観察眼を活かした洞察力のようなもので、その人物自身に迫り、また確率で成否を判定します。
ですが「暴く」は、異端審問官であるテメノスによる詰問で、バトルの形で表現されています。対象をブレイクすることで、その人物が知っている情報を引き出せます。「探る」はあくまでオズバルドの判断なので成否が揺らぎ、「暴く」はテメノスによる精神的な圧力(ゲーム的にはバトル)。過程の違いもさることながら、性格や振る舞いの差も「フィールドコマンド」に込められており、興味深いところです。
各キャラクターが持つ「フィールドコマンド」は、それぞれ昼夜で使い分けます。ソローネは昼間なら「盗む」が使え、夜になると「闇討ち」を行使します。昼と夜で住民たちが見せる顔を変え、それに応じてこちらのアクションもまた変化するのです。
ちなみに昼夜も、本作で初めて実装された新要素のひとつ。
昼と夜では、その場所にいる住民も変化するので、昼夜を切り替えての探索も重要なポイント。ゲーム進行に必要な情報収集だけでなく、その世界に生きる人々や物語の背景をより深く知る手段にもなっているので、覗けば覗くほど『オクトパストラベラー2』への理解が深まります。
全体の構成から見ると、まだ序盤に留まる程度のプレイですが、物語、バトル、グラフィック、音楽と、いずれも素晴らしい片鱗を見せてくれました。そして、ここまでのプレイを通して最も強く感じたのは、「冒険の自由度」です。
自由度といっても、例えば物語が大きく変化するといった意味ではありません。行動次第でエンディングが分岐するのか否かはまだ不明ですが、少なくとも序盤のプレイにおいて、選択肢などで物語が極端に変わるといった要素は見受けられません。
ですが、解決手段がひとつではなかったり、仲間たちの物語をどこから手とつけるかといった自由があります。また、過去(それぞれの1章)を見ないで仲間に加えたり、そもそも仲間も増やさずひとりきりで冒険を続けることすら可能です。
「探る」や「暴く」などを使えば、個人や関連する出来事の背景を深く知れますし、ひいてはこの世界全体の解像度が上がっていきます。この「世界を深く知る行為」も、ゲーム進行に必要な最低限を除けば、全てプレイヤーの采配次第。世界をどこまで知るのか、知らずにいるのか、そうした自由度の高さが“自分だけの冒険”として彩ってくれます。
限られた範囲でのプレイだったため、今回は序盤のみの取り扱いとなりましたが、ひたすら続きを遊んでいたいと思うほど、後ろ髪が引かれるひとときでした。本作にはまだ新要素があり、特に主人公同士の物語が交差する「クロスストーリー」が気になりますが、これは製品版での体験を楽しみにしたいと思います。
8人の旅人が紡ぐ物語。ターン制RPGに刺激をもたらすバトルシステム。懐かしいだけでなく、新しくも美しいグラフィック。誰の心を暴き、誰の持ち物を盗み、どこまでこの世界を識るのか。自分だけの冒険の幕開けが、今から待ち遠しいばかりです。
ニンテンドースイッチ/PS5/PS4/Steam向けRPG『オクトパストラベラー2』は、2023年2月24日発売予定(Steam版は2月25日)。価格は、パッケージ版・ダウンロード版ともに7,800円(税込)。e-STORE限定豪華版は、19,800円(税込)です。
© 2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
※記事中のゲーム内の画像は、開発中のため変更になる可能性があります。


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