渋谷ハルさん主催のVTuberによる『Apex Legends』の大型大会「VTuber最協決定戦 SEASON5 Ver APEX LEGENDS」(以下、V最協)が2023年4月15日に開催され、「めーぷるなっつばにーだよ」(胡桃のあ、樋口楓、兎咲ミミ)が優勝を果たしました。

最終結果
1位:めーぷるなっつばにーだよ
2位:脱☆カスタム番長~約束の楽園 (えでん)~
3位:デカに9
4位:SADAME GAMING
5位:TSN
6位:エピセンだ道を開けろ
7位:三清傑
8位:(株)ゴリラ運輸
9位:☆Starry Sky Magic☆
10位:NJ Destroy
11位:ピンクブレイン
12位:英吸不滅
13位:INUTOLION
14位:ぴんくあらもーど
15位:まゆみ堂しろあんせっと
16位:花鳥牛月
17位:Team Snake Bite
18位:StarReiDogs
19位:関西元気保安協会
20位:Jewel Box
今回で5度目となる本大会は、1か月以上前から出場チームらが自前でカスタムマッチを開催するようになったことが影響し、これまでになく大きな盛り上がりと注目を集め、過去大会と見比べても頭ひとつ抜けて高レベルな大会となりました。


この記事では、そんな本大会内での注目/盛り上がりシーンをまとめてみようと思います。本配信では確認することのできない「出場者個人視点」での盛り上がりシーンも取り上げているので、気になる人はぜひ読んでください。

◆鍛え抜かれたのは強心臓…インタビュー中でまさかの完全詠唱!?
本大会には順位に応じて賞品が準備されており、優勝トロフィーやゲーミングチェアなど多彩なプレゼントが発表されていました。賞品の中でも印象的だったのが、16位に贈られる「VTuber最協決定戦グッズ」。今大会からの初めて販売される大会オフィシャルグッズで、ファンにとっては見逃せないラインナップとなっています。

そして、そんな記念すべき大会初グッズを手にしたのは橘ひなのさん、卯月コウさん、渡会雲雀さんからなる「花鳥牛月」チーム。約1か月間、さまざまな「V最協」関連の配信が行われ、いくつものチームが面白シーンを生み出してきましたが、卯月コウさんの「リヴァイ」は記憶に新しいでしょう。

そんな話題も多かった「花鳥牛月」は、卯月さん・渡会さんの小気味よい雑談に橘さんが引っかかりを覚えてツッコむという流れが「出来上がって」おり、人気を集めていくことになりました。雑談を挟みつつラフなムードで戦いに向かっていくスタンスは、なんと大会内でも同じ。大事な初戦では、卯月さんはアーマーを脱いだ状態で周囲を歩いてアイテムを漁りはじめるほどのマイペースぶりです。

約1か月間もの時間を割いて始まった本大会、緊張感あるバトルをプレイしている最中でもマイペースで雑談する卯月コウさんと渡会雲雀さんの2人。大会ごととなると緊張しがちな橘ひなのさんも肩の荷が下りたのか、ノビノビとプレイできていたように見えました。


結果的には16位となって特別賞をもらうわけですが、見ものだったのは3人のインタビューです。

卯月コウ:見ている人も「なんで花鳥風月じゃないの?」って思われた方はたくさんいると思うんですけど、僕がラブライブのライブを見に行ったときのことを思い出したんですよ。すっごい大雪が降ってて、電車で行ってたんですけど自分の家の近くで止まっちゃって、足がしもやけになりそうなところ家の近くまで帰ってきて、そこで食べた牛丼が人生で一番おいしかったんですよ。いまはその時と同じくらい、楽しい!嬉しい!感動しています!
卯月コウさんが定番ネタである「ラブライブ!のライブイベントへ行った帰りに雪が降っててその時食べた牛丼がとても美味かった」(ラ帰雪牛)トークを思いっきりねじ込みつつ大会の総括をバチっと言い切ると、いつものネタなのに新鮮な響きとなって視聴者も笑いが起きました。

ちなみに「ラ帰雪牛」トークをねじこもう!と提案したのはひなのさんであり、卯月さんは「流石に止めよう」と返事しますが、ひなのさんと雲雀さんの強い薦めもあって無理にねじ込んだのです。

結果「ラ帰雪牛」がTwitterのトレンドランキングに入りこむだけでなく、卯月さんと「ラブライブ!」との公式案件が発表されたタイミングにもピッタリ合うなど、「持ってる」としか思えないレベルの出来事となりました。

「花鳥牛月」は本大会が終了したあともコーチを務めたMondoさんを含めて4人で『ゴッドフィールド』を楽しんでおり、じつはこのチームが最後の最後まで大会配信を引っ張っていたといえるのではないでしょうか。この1か月ほどの練習期間を通して、もっともマイペースかつ強気に振る舞ったチームかもしれません。

◆「特急呪物」本領発揮
大会内で注目を集めていた選手は何人かいますが、ちょっと違った意味で注目を集めていたのはアステル・レダさんでしょう。アステルさんは男性バーチャルYouTuberグループ「ホロスターズ」の第2期生であり、いわゆるバーチャルアイドルとして活動を続けています。

『Apex Legends』内ではあまり使用されないマッドマギーをメインに使い、スキルを使いこなして相手を攻撃する様は、「害悪」「1人ずつ友達を失っている」とまで言われるほどでもあり、自チームの勝利に貢献してきました。

また、女性VTuber相手だと自身のアイドルらしさを全面に押し出し(?)、ナイスボイスで囁きだしたり、照れを見せながら愛情を表現したりと、あの手この手で巧みにコラボ相手の女性VTuberを誘うようなトークを展開します。


こういったプレイングやキャラが今大会では多くの人に知られると、以前からまことしやかに囁かれていた「特級呪物」というワードがひと際に輝き始め、異色の輝きを見せるようになります。空澄セナさん、アルス・アルマルさんとの女性2人と組んだ「☆Starry Sky Magic☆」チームでは、空澄さんからはうまくいなされ、アルスさんからは徹底的に避けされるという、全く別の形で盛り上がっていたチームでした。

そんなアステルさんが本領を発揮したのは第3戦目。空澄さんとアルスさんがキルされてしまい、ソロで動いていたアステルさんが行きついたのはとあるバス(のような乗り物)。うまく張り付いて順位をあげつつ、バス中にいるチームに対してライオットドリルを突きさしていきます。

この時にバスのなかにいたのは、大会優勝チーム「めーぷるなっつばにーだよ」。練習期間中にアステルさんは樋口さんと兎咲さんと同じチームで練習していたこともあり、「ほんとゴメンなさい!ほんとゴメンなさい!」と言いながらドリルを打ち込むアステルさん。空澄さんとアルスさんにとっては胡桃さん・樋口さんは先輩なので、気が気じゃない状況に。

本配信でもしっかりこのシーンが映し出されており、絶妙な間と関係性で笑いが生まれていたワンシーンでした。

◆運命やギターの音色に揺れながらーマイペースに楽しむことも大切
バグの話題が度々あがる『Apex Legends』ですが、本大会において、最もバグに振り回されたのは、イブラヒムさん、一ノ瀬うるはさん、小森めとさんの「sadame gaming」チームでしょう。

彼らが降りるスカイフック西には「試練」といわれ、襲ってくる敵性生物をすべて撃退すると、報酬として高ランクなアイテムが入手できる場所があります。これらのアイテムがマップにのめり込むバグが発生し、拾うことができないという状況が続いていました。


練習期間の間には修正される気配がなく、公式大会である「Apex Legends Global Series(ALGS)」では、この不具合を含めた現況を不安視して、試合日程を思い切って変更したほどです。

本来入手できるアイテムがゲットできず、「直るか?」と思われていたゲームパッチでも修正される気配が無く、装備面での不安が残っていました。しかし、「V最協」前日となる4月14日に突如バグが修正され、本来通りにアイテムが入手できるようになると、その日の公式カスタムでは高順位を得ました。

そのなかで迎えた大会の5戦目には見事にチャンピオンをゲットし、苦悩し続けた「sadame gaming」は総合順位4位で大会を終えました。

バグの修正に振り回され、他チームからも狙われたりなど「運命」に振り回されたこのチーム。そんな3人を癒したゲームがあります。それが『ゴッドフィールド』です。20年以上に渡ってプレイされつづけているカードゲームですが、試合が始まる前、試合途中で負けた時、ちょっとした休憩時間などのタイミングでプレイしていました。

本大会の4戦目に早々にリタイヤしてしまった際には、「ゴッフィーやるかぁ、見てても仕方ないし」の一言でいつものように(?)『ゴッドフィールド』を始めました。

まさに「運命」を受け入れるかのように、気負い過ぎることなくリラックスしようと『ゴッドフィールド』に興じる3人。1か月で続けてきた習慣をこなすことで、一度リセットし、リラックスして5戦目を迎えられたのかもしれません。

このように、試合途中でリタイヤしてしまったりちょっとした休憩時間が挟まると、配信としてもダレてしまいがちになります。
とくに悪いムードが漂っていると気落ちしてしまいそうになります。そんななかでハユンさん、ナリさん、水無瀬さんの「ぴんくあらもーど」は第3戦目と第4戦目のあいだにある15分ほどの休憩時間中、ギターを持ち出してセッションをしはじめます。

チームに途中から加入した水無瀬さんやコーチを含めた4人全員がギターを持っているという意外な共通点があったこのチーム。練習期間中もたまに誰かがギターを弾きはじめて歌うというシーンを多く見せていました。

この日もあいみょん「マリーゴールド」を歌い始め、「Fコード難しい!」と言いながら練習し始めるナリさんと水無瀬さん。トイレから戻ってきたハユンさんやコーチも混ざって4人でギターセッションが始め、楽しく休憩時間を過ごしていました。

韓国在住のハユンさんとナリさん、日本在住で途中加入した水無瀬さん。3人の距離を詰めたのが音楽だったというのはとても微笑ましいシーンでした。

◆運命を左右したのは「超反応爆殺シーラ」だった?
最後に紹介するのは、優勝チーム「めーぷるなっつばにーだよ」。

マッドマギーと同じようにピック率の高くないランパートをメインにプレイする樋口楓さん、いくつものカジュアル大会に出場して好成績を収めてきた胡桃のあさん、この第5回大会が「V最協」初参加となった兎咲ミミさん。

真面目かつ人見知り気味な3人ということもあり、練習期間には接敵した時にコールが足りないことや、エースである胡桃さんをいかにサポートするか?などさまざまな問題と向き合うようになりました。一連の練習が終わったあとも、コーチを務めたみこだよさんと共にメンバーの悩み・本音と向き合ったり、練習場内で実際にプレイしてみせてアドバイスをしつづけてきました。


そんななかで迎えた本大会で、3人は大爆発。第1戦、第2戦と連続でチャンピオンをゲットすると、早々にリタイヤすることがないようにしぶとく生き残り続ける戦法で高順位をキープしていきます。

10ポイント以上の差で迎えた最終戦。胡桃さんと兎咲さんが前方に展開したところ、脇の岩上からラトナ・プティさんが2人を狙う動きを見せます。後方から見ていた樋口さんは、とっさにシーラを構えて超反応。ランパートのアルティメットスキルであるミニガトリング銃の威力は超絶で、瞬く間にラトナさんを落とし、そのままチームで2キルをゲットしました。

試合後、兎咲さんとコーチが口を揃えて「あの岩上を抑えたのはほんとにナイスプレイだった!」と激賞しています。

実はこの2キルは、大会中に「めーぷるなっつばにーだよ」としてゲットしたチーム内キルでした。総合順位を見てみると2位とはちょうど2ポイント差であり、もし樋口さんのランパートがシーラで撃ち落としていなければ、順位に大きな変動があったのかもしれません。まさにチームを勝利に導いたワンシーンです。

注目を集めていたのは本大会の配信や出場プレイヤーのプレイングだけでなく、本大会を見守るミラー配信も同様でした。

『Apex Legends』公式大会でアナウンサーなどを務める海外人気ストリーマーのNiceWiggさんが、rprさん、Nocturnalさんといった「V最協」でコーチを務めた2人らとともに観戦。


第2戦目での神成きゅぴさんのクラッチシーンには席を立ちあがって大盛り上がりし、配信中には神成きゅぴさんにかなり入れ込んだ様子で、「彼女のことは知らなかったけどファンになったよ!」「行け行けきゅぴ!!」と叫ぶほど。

rprさんが「推し」について語った際には、「間違いなくきゅぴを選ぶ。悩むまでもない、簡単だよ」「彼女のIGLは素晴らしい。言葉が伝わらなくても何をしたいかが分かるよ」とまでコメントしています。

神成きゅぴさん本人は大会終了後の雑談でrprさんとメッセージを送りあっていたことを明かしつつ、「NiceWiggはあたしがイチオシみたい!」と喜んでいます。

先述した第2戦目の自身のクラッチシーンで盛り上がるNiceWiggさんの姿もバッチリと確認すると、そのはしゃぎっぷりに神成さんも嬉しさを滲ませます。神成さんは以前から海外ストリーマーやプロ選手を見ることが多いので、喜びもひとしおでしょう。

もしかすれば今後NiceWiggさんがVTuberコミュニティに入ってくる布石になるかもしれません。

本大会だけでもこれだけの見どころ・面白いシーンが生まれたわけですが、練習期間となった1か月間でも多くの面白いシーンが生まれています。次回大会の開催はまだ分かりませんが、その間を埋めるには十分なほどに、魅力にあふれた大会になったといえるでしょう。
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