4月28日未明、サバイバルFPS『Rust』を用いたストリーマーイベント「VCR RUST」(スト鯖RUST)が無事に閉幕しました。

ゲームコミュニティ「VAULTROOM」が中心となって開催された今回の企画。
第一回目は昨年2022年に実施され、VTuberやストリーマー界隈を中心に大きな話題を呼びました。

さらに今回で言えば、参加者はVTuberやストリーマーに留まりません。本田翼さん、えなこさん、ダイアン・津田さんといったテレビタレント~コスプレイヤー……いわゆる「配信者やストリーマーらと親和性のあるタレント」も続々と参加。とあるタイミングでは参加プレーヤー数が100人を越えたと発表され、豪華な面々がその魅力を発揮した一大イベントとなったと言えます。

昨年から数えて3度目となった今回のストリーマーイベント「VCR RUST」。100人以上の参加者が織りなしたストーリーの全てを封じ込めることはできませんが、見どころとなったシーンや注目を集めた理由をまとめてみたいと思います。


◆「VCR RUST」 それは体力と睡魔の戦い
改めて書くまででもないですが、ゲームをすることは楽しく、喜怒哀楽さまざまな感情のなかに「楽しさ」がなければゲームを長くプレイすることは難しいはずです。

特に「職業」「職能」としてゲームを生業にしているストリーマーにとって、「楽しさ」を忘れてしまい、まるで押し付けられるかのようにゲームをさせられる…「義務」のようなゲームプレイはあまりしたくないところ。もちろん「VCR RUST」ではそんな窮屈さとは無縁のムードがありましたが、リスナーである僕らが体調を案じてしまうほどの長時間配信をするストリーマーもいました。

4月17日の夜7時にサーバーが解放されると、だるまいずごっどさん、関優太さん、k4senさんなど人気ストリーマーらが次々にプレイしはじめていきました。

日本随一のストリーマーとして知られているSHAKAさん、ヘンディーさんは初日から24時間以上に渡ってプレイしつづけ、DeToNatorでマネージャーを務めるGo_Tsukishimaさんはなんと初日から約48時間に渡ってプレイ(配信)しつづけるなど、初日から信じられないほどの入れ込みようを見せつけました。

「配信途中で用事があるので席を外しています」とアナウンスし、ゲームはプレイせずとも配信は続けているというパターンもありましたが、その後も10時間はおろか20時間近くに渡ってゲームプレイしつづけるストリーマーもチラホラと見受けられるなど、参加者がこのイベントにどれほど気合を入れているのかがハッキリと伝わってきます。


とはいえ、毎日10時間以上にわたってゲームに集中しきっていると、「ちゃんと寝れているか?」と不安になるリスナーもチラホラと出てきますし、何より配信を追いかけているリスナーさんの体力も徐々に削られていきます。

イベント終了後、TwitterではVAULTROOMから釈迦さんに向けて「我々の勝ちです」という言葉とともに、どうやらサーバーへの参加時間と思われる表を公開。釈迦さんを始め、漫画家のしろまんたさんなどを含めた10人ほどが載っていますが、軒並み7日以上に渡っていることが分かります。

その内容は、約12日間の日程で7日以上に渡ってゲームプレイしていた、なんとも末恐ろしいものでした。

実際、このイベントの影響で不眠ぎみになったストリーマーやVTuberのファンも多くいるのではないでしょうか?。参加するストリーマーらだけではなく、楽しんでいるリスナーやファンも体力・睡魔との闘いだったイベントでした。


過去の清算 生まれたドラマと涙
昨年から今年にかけてのストリーマーサーバーにおいて、視聴者視点からの変わった点や運営からアナウンスされた変更点があります。

・使用されたマップは今回のために制作されたオリジナルマップ
・以前までのNPCキャラ・ボスキャラよりも大分強化されている
・参加者は完全招待制。サーバー開放後も招待をもらって参加したストリーマーやVTuberらが何名かいた。
・スクラップを安全に預けられる銀行システムが導入
・一定時間になると卵が湧き、アイテムがゲットできる
・PvP(プレイヤーが他プレイヤーを殺す行為)やレイド(敵の拠点を襲撃する行為)などを自重するムードがあった
特にレイドは起こることはなく、PvP行為も「一種のお笑いネタ」として受け取られる範囲でとどまっており、リスナーや参加ストリーマーらが眉をひそめるような炎上はほとんど起こりませんでした。

印象的だったのは、FENNEL所属のストリーマー・mittiiiさんや個人VTuberとして活動している赤見かるびさんが参加し、それぞれ友人らと共に面白い配信を届けてくれたことです。ここでは詳細を省きますが、2人は以前のストリーマーサーバーで炎上してしまい、謝罪のコメントをツイートしたり、他ストリーマーから公開説教されることもありました。


特に今回、赤見かるびさんは参加する前に運営から「厳重注意」をうけていたらしく(本人談)、前回よりも慎ましく、楽しく参加しようと努めていきます。

以前から友人だったスタンミさんと共に活動し、昨年の炎上時にひと悶着あったにじさんじ所属のアルス・アルマルにも早々に謝罪。「今回はしっかりと楽しみたい」と意気込み、かるびさんはスタンミさんと共に、昨年以上にさまざまな参加者と楽しい夜を生み出していきました。

約10日ほど行動をともにしたスタンミさんにむけて、かるびさんは感謝の言葉をボイスメッセージで伝えます。

「スタンミがわたしを拾ってくれなかったら、こんなに長くスト鯖を楽しむことはできなかった」

「わたしたちはスト鯖で一番弱いかもしれないけど、一番楽しんだ自信があるよ!」
そのメッセージとかるびさんからの言葉に、スタンミさんはそのまま号泣。そのワンシーンはTwitch JAPANにもしっかりと捕捉され、公式Twitterからツイートされるほどでした。


かるびさんの声掛けにうまく返事ができないほどに涙を流すスタンミさん、その横には笑顔の中に涙を含ませるかるびさん。以前からの友達だった2人ですが、今まで以上の固い友情とリスペクトが育まれたのはいうまでもないでしょう。

専用サーバーのイベントだからこそ? イラストとボイスが席巻!
本来「Rust」といえば、「素材やアイテム収集」「住居などの建築・クラフト」「体力・喉の乾き・空腹などのサバイバル要素」「プレイヤーキルのための様々な武器」などがさまざまな要素を鑑みつつ、オンライン上で多数のプレイヤーと一緒に行動していくマルチプレイヤーゲームです。

見ず知らずの他プレイヤーと資源を奪い合い、長く生き抜いていく過酷なサバイバルゲームであり、ルールや規則も当然ほとんどありません。そういったゲーム性を持っていることもあり、昨年開催された際にはある程度の友好的なコミュニティもありつつ、互いのチームで交渉し合ったうえでのレイド戦が行なわれていました。

今回はプレイヤー同士の争いよりも、NPCのレベルが尋常じゃなく上がっていることに目をつけ、「ボス攻略」「アイテム収集」に力を入れる参加者が多かったのが印象的。
以前のイベントであればすぐに倒せていた拠点ボスも、数時間かけて攻略するのがやっとという難易度であり、しかも日を追うごとにギミックが増えるボスもいたりするなど、明らかにやり込み度を意識したかのように調整されていました。

これに加え、ストリーマーだけではなく、VTuberや他の漫画家といった面々が参加していたことが、今回大きな作用を見せました。

なんと、イラストとボイスが大流行したのです。

イラストに関しては、「RUST」「ARK」などで開催された以前のストリーマーサーバーに参加していた漫画家のしろまんたさんや赤坂アカさんらのオリジナルイラストを手掛けていましたが、今回のイベントではは自身の画力や演技力、声の良さでスクラップ(「RUST」内における通貨)を荒稼ぎする参加者が増えました。

口火を切ったのは、にじさんじ・魔界ノりりむさんが始めた「ラブレタービジネス」です。女性参加者に男性向けのラブレターを作ってもらい、それを販売機を通して販売するというビジネスをスタートさせます。

そこから商材が「ボイス」へと移り、ホロライブのラプラス・ダークネスさんとNeo-Porteの緋月ゆいさんによる百合シチュエーションボイスが販売されると、さまざまなシチュエーションを模したボイス販売が続き、多くの参加者・リスナーを魅了することになりました。

時を合わせるように流行ったのがイラスト販売。特にここで活躍したのは、ホロスターズに所属する緋崎ガンマさんやイラストレーターのカグラナナさんでした。

2人は持ち前の画力を活かし、さまざまな参加者にイラストを提供しました。漫画家として参加したしろまんたさんもこれに続くように次々とイラストを制作したことで、これまでに無くイラストがイベントを盛り上げたといえるでしょう

最終日にはMOTHER3を中心にした劇が公演され、演目中は声を出さぬようにミュート設定したうえで鑑賞するなど、「RUST」とは思えぬ規律の良さがそこにはありました。

本来の「RUST」にあった残虐性は影を潜めましたが、ストリーマーだからこそ生みだせる面白みが今回のイベントの主役だったのです。

合言葉は「社長を1位に!」
以前のイベントから盛り上がっていたギャンブルだけでなく、イラストやボイスといった新しい遊び方・楽しみ方が生まれた今回のイベント。

以前まで注目を集めていたレイド戦やPvPといった部分に、なぜフォーカスが当たらなかったのでしょうか?

先にも挙げたように、ボスやNPCのレベルがグっとあがったり、ボス戦のギミックが日によって上がっていくという「やり込み要素」があったこと。また、スクラップを安全に預けられる銀行システムが加えられ、「スクラップを貯めておけば景品がゲットできる」という情報が参加メンバーに伝えられていたことがあげられます。

「どのようなレベルかは不明だが景品がもらえる」とアナウンスされれば「スクラップを貯めよう」とする意識が少なからず強くなるうえに、銀行システムのおかげで自拠点以外にスクラップを保管できるようになったことで、他プレイヤーへのレイド行為がもたらすはずだったうま味・重要度がガクっと下がります。

これにより、ボスを倒し続けてスクラップを貯金していく参加者が数多く発生。先にあげたようなイラスト・ボイスなどが高額な値段になっても飛ぶように売れていったのは、それぞれのコンテンツとしての面白みがあっただけでなく、ゲーム設定や状況としてそもそも貯蓄しやすい環境にあったことが伺えます。

最終日が近づくにつれて、「スクラップを貯めておけば景品がゲットできる」という話題が注目され、スクラップ稼ぎに勤しむチームが増えていき、特に難易度の高いボスに挑むチームが続きました。

そんななかで注目を集めたのは、にじさんじ・桜凛月さんのチームです。

桜さんはイベント開始早々にヘンディーさんに声をかけてチームを組んだあと、ヘンディーさんが釈迦さんに声をかけて3人チームに。その後、ストリーマーとして活躍するボドカさん、Zerostさん、Kamitoさん、猫麦とろろさんと続々に加入し、7人チームとなって活動していきました。

釈迦さんとヘンディーさんは連日に及ぶ長時間配信で、ボドカさん、Kamitoさんはボイスやラブレター関係で話題を振りまき、多くの見どころを生み出し続けました。

チームの発起人となった桜さんは、物腰柔らかい態度や声色を周囲にふりまき、釈迦さん達だけでなく視聴しているリスナーからも「社長」と呼ばれるなど、温和でフレンドリーなムードをもたらしていました。

そんななか、最終日前日にマップ内でも最難関と言われるボスをクリアした直後、桜さんは釈迦さんとヘンディーさんに連れられ、ATMへと足を運びます。2人は先ほどボス攻略した際にゲットしたスクラップだけでなく、これまでに稼いできたスクラップも一気に桜さんに渡します。

「チームが結成されるキッカケとなった社長を優勝させたい」
そんな合言葉を胸にして秘密裏に進んでいた計画を知ると、桜さんは号泣。泣きすぎて目がかすんで数字をうまく打てない…そんな姿を見せてしまうほどでした。

最終日にも釈迦さんを中心にしてチームメンバーがスクラップを回収しつづけ、桜さんにスクラップを提供。参加プレイヤーが一同に介した閉会式のなかで貯蓄金額ランキングが発表されると、桜さんが100万を越える貯蓄額でみごとに1位をゲットしました。

以前からの付き合いで仲良し同士でチームを組むだけでなく、これまで繋がりの薄かった者同士が繋がり合い、徐々に友好を深めていく。多人数参加型のマルチゲームを使った企画では、そういったドキュメンタリー/リアリティーショー的な側面が大きな魅力となります。桜さんや釈迦さんが組んだこのチームは、その魅力を存分に放ったチームだったと言えるでしょう。

この他にも、K4senさんが手がけた高レベルなダンジョンマップと制作、関優太さんと仲間たちを軸にした様々なビジネス展開などな、ど紹介しきれなかった様々なストーリーやドラマが生まれています。

興味の湧いた参加者のアーカイブなどを見返すなどして、「あの時はあんなことがあった」「実はこういう事情があった」と長く楽しめるのも魅力といえるでしょう。100以上ものさまざまな視点を楽しみながら、次回開催まで待っていたいところです。