日本時間で6月9日に行われた海外のゲームイベント「Summer Game Fest 2023」で、バンダイナムコエンターテインメントによるアクションRPG『SAND LAND』が発表されました。同作を先行プレイする機会に恵まれましたので、南 敬洙プロデューサーへのインタビューと併せてお届けします。


本作は『ドラゴンボール』で知られる鳥山 明氏が2000年に週刊少年ジャンプで短期集中連載した同名漫画をゲーム化した作品です。その性質上、本レポートには序盤の展開の一部ネタバレが含まれますので、ご注意ください。

◆「ゲジ竜」に追い回される迫力のシーンを満喫!
『SAND LAND』の舞台は、人間たちのたび重なる戦争で砂漠が広がるばかりとなった世界。そのせいで、人々は常に水不足にあえいでいます。

そんな砂漠の一角で、"ワル"だけど"悪"とまではいえない悪魔の王子ベルゼブブと、盗みを得意とする魔物のシーフ、そして人間の保安官ラオが、砂漠のどこかにあるという幻の泉を探す旅に出るロードムービー風の物語が描かれます。

今回の試遊は、原作同様に車両で移動するベルゼブブたち3人が砂漠に生息する巨大なモンスター「ゲジ竜」に追い回されるアクションシーンからスタート。全速力で走りつつ、車体を左右に振ることで魚のように砂を泳ぐゲジ竜の攻撃をかわすひと幕は、まさに原作そのままの迫力でした。

ちなみに、今回試遊したのが“ここから始まるバージョン”であっただけで、製品版は原作通りの始まり方をするとのことです。

やっとのことで振り切ってたどり着いたのは、とある村の跡地。そこは休息地として一時的に滞在する行商人など少数の人がいるのみでしたが、彼らには集落から人がいなくなった理由を聞くことができ、商人からは回復アイテムなどの購入も行えました。

◆異なる長所を持つベルゼブブとメカの使い分けが楽しい!
村を出て少し進むと、原作コミックでもおなじみのデザインをした戦車と野党たちに遭遇。戦車を奪うことができるとのことで、早速挑戦してみました。
こちらに向かってくる野党たちを倒すなり振り切るなりして、戦車に乗り込んでしまえば強奪は完了です。

試遊で搭乗できたメカは「ジープ」と「戦車」に分類でき、ベルゼブブを直接操作した場合との違いは以下のようになります。

ベルゼブブ
・弱攻撃と強攻撃などを組み合わせたコンボで攻撃できる

・敵に気づかれにくくなるスニーク移動や、その状態で接近してからの不意打ちができる

・さまざまな効果を持つスキルを使うことができる。

・いわゆるスタミナはなくダッシュし放題。ダッシュの速度は戦車より速い

ジープ
・移動に特化しており、最高速は走るベルゼブブよりも上となる

・攻撃手段がないので、敵に攻撃したい時は一時的に降りる必要がある

・スピードが十分に出ていればドリフト走行ができる

・オートランができる

戦車
・砲撃の攻撃力は随一

・各種砲弾には弾数の概念があるが、時間経過、もしくはリロードボタンを押せば換装できる(弾をアイテムとして取得して補充する…などの必要はない)

・移動時は短時間のみブーストをかけて加速できるが、総合的にはダッシュするベルゼブブより遅い

・オートランができる

個性や特徴が綺麗に分かれているのでどのスタイルで遊ぶか悩みますが、筆者は戦車をメインにプレイしたいと感じました。主観視点の照準モードで砲撃する楽しさ、倒した敵が落としたアイテムの上を通過すれば、戦車から降りることなく(&ボタンを押すことなく)回収できる手間のなさ、そして試遊の範囲でも「戦車の砲撃で開通できるショートカットの存在」を確認できた…というのがその理由です。

さらにゲームを進めると、盗賊たちに襲われる原作さながらのシーンが登場。ここはベルゼブブの爽快感あるアクションで、悪漢たちを楽しく蹴散らせました。第1弾トレーラーではベルゼブブが豪快にジャイアントスイングをキメるシーンも見られますので、ゲームの進行とともに増えるであろうアクションも楽しみです。

約30分の試遊はあっという間に終了。フィールドを移動しているとシームレスにベルゼブブやラオたちの短いかけ合い(会話)が発生することもあり「もっとこの世界を冒険したい」と感じられました。

プレイヤーが操作するのはベルゼブブのみですが、常に同行しているラオやシーフは何らかのサポートをしてくれるのか?今後の情報にも期待したいです。


最後に、バンダイナムコエンターテインメントの南 敬洙プロデューサーへのインタビューをお届けします。

◆「鳥山作品らしさ」とアクションの爽快感を徹底追及!
――まずは本作のプロデューサーになった時の気持ちを教えてください。

南 敬洙氏(以下、南)鳥山 明先生の原作はすでに読ませていただいており、好きな作品のひとつです。鳥山先生の作品ならではの魅力を世界中のお客さまにしっかり届けていくプロジェクトということで、いっそう気を引き締めましたね。

具体的にいつから開発しているかをお話することはできませんが、十分な準備期間をいただいたうえで制作に臨んでいます。

――南氏が感じる『SAND LAND』の魅力とは?

南広大な砂漠を舞台として、悪魔の王子ベルゼブブが人間であるラオと冒険する物語は、とても引き込まれる魅力があると思います。お気に入りのキャラは、やっぱりベルゼブブですね。

――ゲーム化するうえで特に重視していることは?

南まずは「原作のお話をメインストーリーとしてしっかり描く」ことを土台に据えました。冒険の目的は「幻の泉」を探すことです。そのうえで、アクションRPGとして本作の魅力をより膨らませるアプローチをしました。具体的には、ベルゼブブのアクションとメカのアクションに注力しています。

――本作は広大な砂漠のフィールドが舞台で、さまざまなサブクエストもあるようです。
オープンワールドのような作りなのでしょうか?

南どこまでも終わりのない砂漠が続く…といったオープンワールドではありませんが、フィールドはとても広く作っています。広大な砂漠には天然の洞くつやダンジョン、王国軍が駐留する拠点などが点在しており、サブクエストの目的になることもありますし、探求心や素材獲得目的で探索・潜入することもできます。

また、敵を倒したりサブクエストを達成したりすることでさまざまな素材を獲得でき、それをもとにメカの強化などを行えます。

――原作漫画よりも多種多様なメカが登場するようですが、デザインなどはどのように決められましたか?

南「本作の世界観に合うものであること」をコンセプトにデザインし、集英社さまにご監修していただいています。また、鳥山先生にも総監修という形でストーリーなどを見ていただいています。

◆PVに“鳥山先生らしさ”満点のメカが…!?
――公開されている第1弾トレーラーで気になったことがあるのでおうかがいします。鳥山先生らしさを感じる、どこかで見たことがあるようなメカが登場していましたよね?

南原作でラオが操縦するのは戦車のみですが、メカアクションに幅を持たせるため、本作の世界観に合うメカを参考にさせていただいております。

鳥山先生ファンの方であればより喜んでいただけそうで、かつ『SAND LAND』の世界に合いそうなデザインであるということを前提にデザインしています。

――もしかしたら、ゲームではほかの鳥山メカも…?

南それは、今後の情報に期待していてください!

◆鳥山作品の雰囲気を再現するためのアプローチ
――『SAND LAND』は人間が戦争を繰り返したせいで世界が一面の砂漠になってしまったという設定で、少し身構えてしまうテーマのように感じます。しかしその一方で、キャラクターや物語にはあまりそう感じさせない、ある種飄々とした雰囲気も見られます。絵作りの面では、どのようなところに気を付けていますか?

南悲壮感漂うような雰囲気にならないようにするというのは正にその通りで、鳥山先生ならではの「どこか明るく、ポジティブな雰囲気」の再現には特に気を付けています。そのひとつとして挙げられるのがベルゼブブたち魔物の描き方ですね。


彼らは「水がないなら盗めばいい」と思っていますし、作中の冒頭で実際にそうしているシーンもあります。その一方で、略奪を働く相手は私腹を肥やしている王国軍だったり、人の命を奪うことまではしなかったりと、善でなくとも悪と断罪するほどでもありません。

プレイヤーのみなさんにそんな彼らを好きになってもらうためには、本作を通してどのようにすればよいだろうか…というのは常に考えています。

――フィールドや集落などを探索・移動しているとシームレスにベルゼブブたちのかけ合いが発生することもあり、テキスト量がかなり多そうだと感じました。これもその一環というところでしょうか。

南そうですね。テキスト量は膨大になっています。プレイのテンポを阻害しないかけ合いなどを通じて、ベルゼブブたちの魅力をわかりやすく伝えられればと思います。

――『SAND LAND』は8月18日から劇場アニメの公開が予定されていますが、アニメ制作サイドとの連携などはされているのでしょうか。

南進捗やクリエイティブを共有し、作品の魅力をしっかり伝えられるものになっているかをお互いに確認し合っています。アニメサイドのみなさんが手がけたものを僕らが参考にさせていただくことがあれば、その逆もあり、よい協力関係を築けています。

◆100時間は遊べる広大なフィールドとやり込み要素
――『SAND LAND』はどこまでも砂漠が広がり、さらに飛行機の類が王国によって禁止されている世界のお話です。
ゲームを制作するという観点では制約にもなると思いますが、フィールドを作るうえでの苦労はありますか?

南そこは悩ましいところです(笑)。ゲームには時間経過の概念がありますので、昼夜で異なる表現・雰囲気を見せています。おっしゃる通り基本的には砂漠・荒野が広がる世界ですので、例えばフィールドは高低差を強く意識しています。

低所から高所へは高く跳び上がれるジャンプメカで上がれるようになっており、第1弾トレーラーにもあるように、高所から高所へはジップラインで渡れる場合もあります。

――探索しがいがありそうです。世界の広さやゲームのボリュームはどのくらいになりそうでしょうか。

南何キロ平方メートル…と具体的にお話することはできませんが、広大なフィールドを冒険してメインクエストを追うだけで20~30時間、探索やメカの強化などのやり込み要素も含めると100時間は遊べるくらいの規模感を考えています。

――期待しています。それでは最後にメッセージをお願いします。

南本作で初めて『SAND LAND』に触れていただく方もいらっしゃると思います。そういった方々には鳥山先生が描く作品の新作ゲームとして見てもらえるように作っていますし、原作を知っている方にとっては『SAND LAND』のさらなる拡がりを楽しんでほしいと思っています。

作品の魅力的な世界に浸っていただけるよう開発を進めていますので、今後の情報公開にもご注目ください!

(C)バード・スタジオ/集英社 (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
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