この夏も色々なゲームを体験し、楽しんでいることと思います。大作に挑むのもお勧めですが、普段とは違う刺激を味わえるレトロゲームに触れてみるのも一興です。


例えば、Nintendo Switch Onlineで提供している「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」はいかがでしょうか。サービスに加入している方だけでなく、現在配信中の「14日間無料体験チケット」を活用すれば、ニンテンドースイッチをオンラインに繋ぐだけで、出費せずにクラシカルなゲームを楽しむことができます。

また一部のソフトは、「スペシャルバージョン」版も配信されており、通常とは異なるプレイを味わえます。「スペシャルバージョン」の内容は様々ですが、例えば終盤直前の場面から始まり、そのままラスボス戦に挑戦できるといったものも。もちろん勝利すれば、そのままエンディングが見られます。

そんな「スペシャルバージョン」の中には、単に強いだけでなく、そのデータ自体が非常に興味深い場合があります。
特に筆者が気になったのは、ファミコンソフト『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』(以下、初代FE)。この作品を遊んだことがある人ほど、「スペシャルバージョン」のデータに驚かされます。

果たしてどんなデータが用意されているのか。その内容と驚きへと迫ります。

■もちろん「マルス」は育成済み、「チキ」や「シーダ」は限界まで成長!?
ちなみに『初代FE』の「スペシャルバージョン」は2種類ありますが、今回注目するのは、仲間キャラクターがかなり育成された「クライマックスバージョン」。まず負けないほどの戦力が整った状態で、最終章から始められます。


どれだけ強いデータなのか、まずは主人公の「マルス」を見てみましょう。HPは最高値の52。また各ステータスも、武器レベルを除いて全て最大の20まで成長しています。ただし移動力は12、魔法防御は7が最大値ですが、そちらもやはり限界まで成長済みです。

また、特に極まっている者のひとりが、マムクートの「チキ」。マルスですら武器レベルのみ10止まりでしたが、チキは全てのステータスが余すところなく最大値です。
人間状態なのにこのステータス、「クライマックスバージョン」の名に偽りはありません。

チキのほかにも、「カチュア」や「エスト」、「シーダ」に「オグマ」、「ロレンス」なども限界まで成長済み。また、移動力や武器レベルなどがわずかに下回っているものの、ほぼ最大値というキャラクターがさらに控えており、メディウス軍は恐るるに足りずといった状態です。

■「シーダ」は下級職のまま!
しかし単なる強さだけなら、さほど驚くには値しません。まず注目したいのが「シーダ」です。前述の通り、シーダのステータスは全て最大値。
しかし、彼女のクラスは下級職の「ペガサスナイト」のままでした。

ペガサスナイトは上級職にクラスチェンジできますが、『初代FE』だと「ドラゴンナイト」になります。馬に翼が生えた天馬と、強靭な飛竜。名前はもちろん、その見た目もまったく異なります。

シーダはヒロイン的な立場でもあり、ビジュアル的にもペガサスナイトのイメージが強いキャラ。それがクラスチェンジで飛竜に乗り換えた時は、プレイしていた方の多くが驚いたはず。
中には、印象を変えないよう、下級職のまま使い続ける猛者もいました。

しかし、それも全て昔の話。よほど『初代FE』が好きだった人以外は、「シーダをペガサスナイトのままにしておく」というプレイスタイルの存在は、忘れてしまうか気づくことすらなかったか、そのどちらかでしょう。

一部ファンにとっては重要な、しかし一般的なプレイとしてはささやかな、ペガサスナイトのままでいるシーダ。こうした細かいネタも拾い上げる姿勢に、思わず唸らされてしまいました。

しかも、もうひとつ驚かされたのが、シーダの所持欄です。
そこには、クラスチェンジアイテムの「ひりゅうのむち」があり、これを使えばいつでもドラゴンナイトになれます。“シーダはペガサスナイト派”への配慮だけでなく、“シーダをドラゴンナイトにしたい派”もフォローする完璧な対応。そのこだわりぶりに、頭が下がります。

■そう、「ジェイク」は強い! シューターに光を当ててくれた「クライマックスバージョン」
この「スペシャルバージョン」では、全キャラを仲間に加えた上で、生き残ったまま最終章を始められます。ですが、先ほど述べたように徹底した強さになっているキャラもいれば、ほとんど成長していない仲間も何人かいます。

成長している仲間の多くは、主要メンバーであったり、人気の高いキャラが多め。ですが強く育ったキャラの中に、「シューター」の「ジェイク」が含まれていました。

『初代FE』はスーパーファミコン向けにリメイクされましたが、その際に何人かのキャラがリストラされており、「リフ」や「ロジャー」などが姿を消しました。ジェイク(とベック)もリストラ組で、しかもクラスのシューター自体が味方側から消滅。敵専用の存在になってしまいます。

シューターは、移動力こそ低いものの攻撃力や防御力が高めで、前線に出しても倒れにくい移動要塞として侮れない活躍を見せてくれます。特に、弓系に弱いペガサスナイトやドラゴンナイト相手には猛威を振るい、確実に撃墜していく強さが頼もしいばかりでした。

しかし移動力が4で、全キャラクター中で最も遅い弱点を持ち、味方の進軍においていかれることもしばしば。そうした点がネックになったのか、一部の通なプレイヤーが愛用したものの、人気の面では決して高いとは言えませんでした。

筆者は『初代FE』を何度もクリアし、その中でジェイクに頼ったこともありました。しかし周囲で彼を使っていた人はおらず、彼の頼もしさを共有する機会が得られないまま時が過ぎてしまいます。

それなのに、まさか「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」の中で、逞しく育ったジェイクに出会えるとは! ジェイクの良さに気づき、使えるユニットとして用意してくれた誰かに、感謝したい気持ちでいっぱいです。

後のシリーズ作では、シューター的な役割で戦う場面こそありますが、クラスとしてのシューターを直接操作できるのは『初代FE』だけ。ぜひ一度、ジェイクの頼もしさを「クライマックスバージョン」で触れてみてください。

■スタッフロールを見て唖然! もしかして、このデータって……
様々なこだわりを見せてくれた『初代FE』の「クライマックスバージョン」ですが、一方でちょっとした疑問もありました。

例えば、シーダをペガサスナイトのまま強くするこだわりを見せる一方で、「パオラ」「カチュア」「エスト」は全員ドラゴンナイトにクラスチェンジ済み。この2人は“ペガサス三姉妹”とも呼ばれており、シーダと同じくペガサスナイトの印象が強いキャラたちでした。

また「リンダ」は、女性で唯一の「魔道士」。そのため戦闘時のグラフィックも、彼女専用の魔導士姿が用意されました。しかし上級職の「司祭」になると、汎用グラフィックに差し替えとなり、独自の見た目は失われてしまいます。

そのためシーダと同じく、リンダを下級職のまま使い続ける人もいたほどですが、「クライマックスバージョン」のデータでは司祭にクラスチェンジ済み。いくつものこだわりが見られる一方で、こだわらない面も少なからずあり、そのアンバランスさが少し気になりました。

ですがその疑問は、エンディングで流れるスタッフロールを見て解消されました。正確には、スタッフロール内にある“各章をクリアしたターン数”の記録を見た時に。

ここで筆者の認識を先に説明させていただきますが、「クライマックスバージョン」のデータはプログラム上で作成したものだろうと、なんとなく決めつけていました。その方が早いだろうし、手間も少ないだろうと思い込んでいたのです。

そんな視点だったので、各章のクリアターン数を目撃して驚きました。それぞれの章ごとに、クリアターンはバラバラ。大半は2桁ですが、1桁のところもあれば、最長で252ターンといった章も。また2桁と言っても、10~20ターンで収まる場合もあれば、57ターンや84ターンなど、かなり高い数字になっているケースもありました。

データを直接作るなら、ここまで極端な数字を設定する必要はないでしょう。また、普通にクリアするだけなら、3桁ものターン数は重ねません。しかし……「チキ」や「シーダ」など、最大値のステータスが並ぶキャラクターを増産するとなれば、この経過ターンも納得できます。

経験値と金が稼げる「闘技場」がある章と、「クライマックスバージョン」のクリアターンを照らし合わせてみると、「4章 252ターン」「8章 84ターン」「11章 28ターン」「16章 57ターン」「18章 53ターン」「20章 116ターン」と、闘技場のある章だとかなりクリアターン数が嵩んでいます。特に、4章の252ターンと20章の116ターンは、かなり偏った数字です。

レベルアップと買い物のために闘技場を長く利用したと考えれば、クリアターン数が嵩んだ理由も分かります。そして同時に、この「クライマックスバージョン」のデータが直接弄って用意されたものではなく、誰かが実際に『初代FE』を通してプレイし、そのセーブデータを元にした可能性が浮上しました。

あくまで憶測に過ぎませんが、しかしデータに直接手を加えたにしては、一部のクリアターン数が飛び抜けていますし、ターン数が多い章に偏りが見られます。闘技場がない章だと、「21章 78ターン」や「24章 143ターン」なども目立ちますが、終盤に向けて追い込み育成を行っていたのかもしれません。

所持欄をよく見ると、使いかけの武器も少なからずあり、ここまでの戦いを潜り抜けてきた気配をそこはかとなく感じます。そして、もし実際にプレイした結果であれば、「シーダ」の見た目にこだわり、リンダをクラスチェンジさせたのも、理由が思いつきます。

シーダと違ってリンダの場合、クラスチェンジすると回復系の「杖」も使用可能になるため、戦力の向上に繋がります。「クライマックスバージョン」で多くの人が遊ぶことを考え、利便性を上げる選択肢を選んだのでしょう。またペガサス三姉妹は、24章までを攻略する中で、戦力的な面からクラスチェンジに踏み切ったのかもしれません。

『初代FE』の最終章を手軽に楽しめる「クライマックスバージョン」。そこには、プレイした人の考えやこだわりが浮かび上がってきそうな、生きたデータがありました。

本当にプレイしたデータなのかどうかは分かりませんが、シリーズ経験者や『初代FE』ファンほど、興味深い内容が詰まっています。時間に余裕がある方は、「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」にある『初代FE』の「クライマックスバージョン」を立ち上げてみてください。

なお、「14日間無料体験チケット」の配布期間は8月20日まで。また、番号の有効期限は8月21日いっぱいまでなので、どうぞお忘れなく。