『SO2R』は、1998年に発売された初代プレイステーション用ソフト『スターオーシャン セカンドストーリー』をベースに、現代のプレイ感に合わせた改善や刷新などを行ったリメイク作品です。
原点から数えると四半世紀もの時を超えて蘇るため、若いユーザーからすれば「リメイクとはいえ、そんな古いゲームを今遊んでも楽しめるの?」と不安を抱くかもしれません。
またオリジナル版を遊んだ経験を持っていると、当時のプレイ体験を重視し、いわゆる「思い出補正」をかけがちです。そのため、リメイクされても思い出を超えることができず、残念な思いをする場合も少なからずあります。
果たして『SO2R』は、令和に登場するRPG作品としてどのように仕上がったのか。そして、オリジナル版を遊んだファンに、どのようなアプローチで迫るのか――まだ発売されたばかりの本作を、それぞれの視点で遊んでみたプレイフィールをお届けします。
なお、これから『SO2R』を遊ぶ方が多いため、物語面に関するネタバレは極力避けています。また、プレイしたのはPS5版です。
■リアルな背景とデフォルメキャラの組み合わせには驚くが、馴染むのも早い
オリジナルにあたる『スターオーシャン セカンドストーリー』や本シリーズを全く知らないプレイヤーが『SO2R』のゲーム画面を見ると、まずはそのグラフィックに驚くことでしょう。
本作は、フィールドやダンジョンなどの背景を全てフル3D化。風景全体に臨場感があり、この世界全体が美しく表現されています。
町中やダンジョンでのカメラ角度は固定されており、プレイヤーが任意で画角を調整することができませんが、操作キャラの動きに合わせてカメラの角度が演出として動く場合があり、それぞれのシーンで没入感を高めてくれます。このあたりの見せ方は、3D化の恩恵と言えるでしょう。
またフィールド上では、カメラの角度を360度自由に動かすことができ、野外を移動する際に“この世界の広さ”を視覚的に実感できます。
森林などの描写は比較的簡素ですが、地形全般の描き込みはなかなかで、質感も感じられそうなほど。特に、水のきらめきや光と影のコントラストは、見る者に鮮烈な印象を与えてくれます。
ですが、新規のユーザーが見た目に驚く最大の点は、こうした背景とキャラクター描写のギャップでしょう。臨場感に溢れた背景の描き方とはまるで異なり、主人公を始めとするキャラクター陣は全てドット絵で表現されており、3Dではなく複数のカットでカメラの回り込みに対応しています。
またキャラクターたちは、高い等身で描かれる立ち絵を除き、デフォルメされた姿で表現されています。デフォルメなドットキャラと、美麗な3D背景の組み合わせが、この『SO2R』が持つ特徴であり、新規ユーザーが驚く点でもあります。
この「リアル」+「デフォルメ」の組み合わせに違和感を抱く方もいるかもしれません。そうした印象を受けるのも無理のない話ですが、実際にプレイしてみると、意外なほどギャップを感じなくなります。
キャラと背景は、技術的にも表現的にも全く違う手法で描かれていますが、街中のスケール感(例えば、扉の高さなど)はある程度デフォルメキャラのサイズに合せてありますし、それぞれの色味に親和性もあるので、キャラが世界から浮いている印象は受けません。
画像や映像を見る限りだと、手法の違いは違和感に繋がるかもしれませんが、プレイ中にその点がマイナスに感じる機会はほぼナシ。個人差もあるかと思いますが、筆者自身は「リアル」+「デフォルメ」の組み合わせにすぐ馴染み、すんなり楽しめました。
■懐かしいRPG……だけども、遊びやすく手応えも十分
『SO2R』はバトルにおいてアクション要素もありますが、ベースとなるジャンルはRPGです。オリジナル版はかなり昔のRPGなので、「もっさり感があるのでは」と警戒する人もいるでしょうが、その点に関してもご安心ください。
「もっさり感」を一番左右するであろう要素は、キャラクターの移動速度でしょう。ですが『SO2R』の場合、キャラクターたちは常にダッシュで移動しており、その速度も上々。ボタン入力による反応も機敏なので「もっさり感」はなく、現在のRPGとして遜色のないプレイフィールといえます。
しかも、イベント時はR2ボタンで早送りが可能なので、快適度への配慮はオリジナル版を優に超えます。“タイムパフォーマンス”を問われることも多い昨今、こうした配慮は時代的に見ても嬉しいところです。
また、特にひと昔前のRPGだとゲーム進行がガチガチで、行ける町や村の順番が厳密に決まっている場合も少なくありません。ですが『SO2R』は、体験版の範囲で出会える「セリーヌ」が仲間になる辺りで、行ける場所が大きく広がります。
メインシナリオが進行するルート自体は決まっていますが、村や港町などに寄り道もでき、その先で新たなミッションを受けたり、『SO2R』の新キャラ「リール」とも早い段階で会えたりと、未開惑星を気ままに探索する楽しさを堪能できます。
シナリオ進行の目的地やサブイベント発生場所などは、アイコンとしてマップに表示されるので、見落としや迷子の心配もなし。また、ファストトラベルも搭載されているので、各地を気軽に冒険し、それが終わったら即座にメインシナリオに戻ったりと、至れり尽くせりです。
戦闘も「もっさり感」はなく、軽快な操作によるアクションバトルに仕上がっています。味方も敵もデフォルメされているので、見た目は可愛らしいのですが、バトルの手ごたえは王道RPGらしい難易度。適当にボタンを押しているだけでは、全滅の危険性すらあります。
とはいえ、高難度というほどではなく、敵が攻撃する予兆に合わせてしっかり回避し、必殺技や紋章術(いわゆる魔法)を適度に使いこなし、しっかりとHPを回復すれば、よほどレベル差がない限り問題なく戦えます。アクションが苦手だったり、逆にもっと歯ごたえが欲しい時は、オプション画面から難易度変更も可能です。
万が一戦いに敗れても、その戦闘からやり直せるリトライ機能があるので、致命的な失敗は起こりにくい作りになっています。もちろんこまめなセーブは大事ですが、システム面の配慮が広く行き届いているのも『SO2R』の特徴でしょう。
RPGといえば、こちらも外せないのが物語面の魅力です。ここは特に好き嫌いが分かれやすい部分なので、誰でも楽しめるとは(どんな名作であっても)一概に決めつけられませんが、本作のようなSFとファンタジーの両面を盛り込む構成は、RPG全般から見るとかなり珍しい部類。プレイヤーの興味をかき立てやすい点は、昔も今も変わりません。
また、本作は「ダブルヒーローシステム」を採用しており、発展した文明の中で生きてきた「クロード」と、未開惑星の住人「レナ」のいずれかを選べます。これは、単に主人公を選ぶというだけでなく、軸となるキャラが2人いることで価値観の違いが浮き彫りになるなど、物語を描く上でも意味のあるシステムになっています。
ちなみにこの2人は、どちらも「親」の存在が自身のアイデンティティに深く関わっています。それでいて方向性は全く異なるので、本作を実際にプレイすれば「ダブルヒーローシステム」としてふたりが並び立つ意味をより強く実感できることでしょう。
キャラの内面やその背景を垣間見せる「プライベートアクション」というシステムもあるので、王道のメインストーリーと細やかなキャラ描写が折り重なる『SO2R』は、深掘りを好むプレイヤーには特に強く響くゲームと言えるかもしれません。
今回『SO2R』をプレイした限りでは、古臭さやレトロな印象はなく、懐かしくも新しい作品として確立しているように感じました。シリーズやオリジナル版を知らない方なら、むしろ囚われることなく、まっさらな気持ちで本作を楽しめると思います。
<cms-pagelink data-page="2" data-class="center">オリジナル版経験者の心をくすぐる、その嬉しい要素とは?</cms-pagelink>
■経験者の「思い出」を大事にしながら、新たな刺激も提案する『SO2R』
ここまでは、『スターオーシャン セカンドストーリー』を全く知らない人から見て気になる点や、不安になりそうな要素に迫ってきました。そしてここからは、オリジナル版や後に出た『スターオーシャン2 Second Evolution』をプレイ済みの経験者が改めて『SO2R』を遊んでも楽しめるのか、といった点から見た体験をお届けします。
まずは、こちらもグラフィック関連に触れたいと思います。経験者ならば、キャラ描写のデフォルメはお馴染みなので、さほど問題はないでしょう。むしろ、立ち絵が一新され、現代風になった点が気になるかもしれません。
2Dイラストは今回、梶本ユキヒロ氏が手がけており、元のイメージを受け継ぎつつも現代風にリファインしています。いずれも魅力的なデザインですが、過去作のプレイ経験があると、「昔の絵の方が……」と思う人もいるでしょう。
この点について『SO2R』はフォローが行き届いており、本作と過去作、どちらの立ち絵もステータス画面で表示可能。しかも『スターオーシャン セカンドストーリー』だけでなく、『スターオーシャン2 Second Evolution』の立ち絵もあり、メインキャラにそれぞれ3枚ずつの立ち絵が用意されています。
また音声は、『スターオーシャン セカンドストーリー』と『スターオーシャン2 Second Evolution』で担当声優が変更されましたが、本作は両方のバージョンを収録。キャラごとの切り替えが可能なので、思い出と同じ声にしたり、個別に設定して自分好みの組み合わせにしたりと、こちらも自由な形で楽しめます。
さらにBGMも、桜庭統氏がリアレンジし、今の時代にマッチした新音源と、懐かしいオリジナル版の両方を搭載。こちらも同様に、切り替えることができます。
ビジュアル、声、BGMと、経験者の胸に残っている思い出を極力崩さない配慮がきめ細かい『SO2R』。ですが、変わらないものばかりではなく、特に顕著な追加が見られるのはバトル要素です。
必殺技や紋章術を使い、複数のキャラが入り乱れるバトルという基本はそのままですが、そこに新システムを導入。敵キャラに「シールド値」が設定され、このゲージを0にすると相手は一時的に無力化します。
戦闘は最大4人の編成で挑みますが、バトルメンバー外の仲間も戦闘に参加できる「アサルトアクション」も新たに加わった要素のひとつ。バトルメンバーとは扱いが異なり、時間経過で増えていく「アサルトゲージ」が最大になると、その仲間を呼び出す形で攻撃できます。
オリジナル版におけるバトルメンバー外のキャラは、非戦闘時の回復役や特技の担当など、表立って活躍する場面が少な目でした。しかし「アサルトアクション」のおかげで、一時的とはいえ戦闘中でもその姿が見られるようになります。もちろん戦略的にも有効な手段なので、強敵に打ち勝つためにも重要な手段です。
もうひとつ、戦闘に新たな刺激をもたらしてくれるのが、「ボーナスゲージ」の存在です。敵を攻撃すると落とす「スフィア」を一定以上集めると、プレイヤー側に有利な効果が発動します。これは戦闘をまたいでも効果が続くので、敵と戦い続けるモチベーションにも繋がります。
しかし、操作キャラが戦闘不能になったり、バックアタックを受けると、このボーナスゲージはリセットされ、有利な効果も失います。この効果を失いたくないという思いから、雑魚との戦闘でも一定の緊張感が生まれ、プレイヤー側の中だるみを防ぐ効果もありました。
また、回避を絶好のタイミングで行うと「ジャストカウンター」が発生し、敵のシールド値を削りやすくなるなどの恩恵を得られますが、逆に回避が失敗すると、前述のボーナスゲージがリセットされ、やはり有利な効果を失います。しかも、一定時間行動ができなくなるオマケつきです。
「ボーナスゲージ」を稼いで有利な体制を整え、敵の「シールド値」を削り切って一気に攻める気持ちよさと、それを失わないよう務める緊張感。「アサルトアクション」で、バトルメンバー外の仲間も参加する共闘感。成功時の恩恵と失敗時のリスクを併せ持つ「ジャストカウンター」のスリル。こうした要素の数々が、過去作の経験者にも新たな刺激を与え、新鮮な気持ちで楽しませてくれます。
絵と音は、思い出を極力壊さないような形で着地。しかしゲーム体験は快適さが増し、様々な新要素を意欲的に導入しています。その結果、刺激的かつ手応えのあるゲーム性を提供する作品として仕上がったといえるでしょう。
あらゆるものを今風に変えたりはせず、しかし懐かしさだけに執着もしない――そうした姿勢が、過去作を経験した全員に受け入れらえるかどうかは分かりません。ですが、新たな刺激を求め、プレイヤーへの配慮があり、そしてオリジナル版に敬意を示した『SO2R』は、シリーズファンが改めて手を出す価値のある作品だと感じました。
新規ユーザーはまっさらな気持ちで、そして経験者は新たな要素を楽しみながら、『SO2R』に触れてみてください。そこには、2023年に相応しいRPGの姿があります。
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