スーパーマリオブラザーズワンダー』には、敵に当たってもダメージを受けないプレイアブルキャラクター、「トッテン」と「ヨッシー」が登場します。初めて「マリオ」に触れる人でも遊びやすくするための配慮であり、近年の任天堂作品にはよく搭載されている、いわゆる「救済措置」の要素になっています。


2Dマリオではじめての「無敵キャラ」は、Wii U『Newスーパールイージ U』で実装された「トッテン」。腕前に差がある人同士でローカルマルチプレイをする場合でも、どちらかが足を引っ張るということなく楽しめるようになりました。今回新たに追加された「ヨッシー」は、無敵の性能はそのままに、ヨッシーらしく敵を食べたり、ふんばりジャンプをしたりといった性能も持っています。

アクションゲームに慣れている人からすれば、「ゲームは苦戦して、試行錯誤をした先に待つ成功こそ楽しい」のではないかと思ってしまうところ。「無敵キャラ」というのはゲームの楽しみを減らしてしまう要因になるのではないかとも考えてしまいます。

なぜ、『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』には「無敵キャラ」が必要だったのでしょうか?本稿では、より幅広い層にゲームを楽しんでもらうために『マリオ』が行ってきた「救済措置の試行錯誤」を考えます。


◆そもそも、マリオは結構難しい
『スーパーマリオブラザーズ』シリーズにあまり馴染みのないひとからすれば、「マリオって救済措置がいるほど難しいの?」と思うかもしれませんが、実際のところは結構難しいです。

そもそも、『スーパーマリオブラザーズ』シリーズは、パワーアップをしていないチビマリオの状態では1撃でミスになる仕様であり、パワーアップをしても最大2回までしか攻撃を耐えることはできません。そのため、HP制のアクションゲームなどと比較して、咄嗟のことでミスになる場面は多いです。落下死やマグマなど、パワーアップをしていても一撃でミスになる要因も相応に存在しています。

もちろん、そのぶん残機を増やす手段やパワーアップを取得できる場面は多く用意されていますし、理不尽な初見殺しなどもほとんどありません。それでも、アクションゲームに慣れていないユーザーが投げ出したくなるくらいミスしまくるステージというのは相応に用意されています。
また、本筋から逸れた場所やクリア後にいけるようになるステージなどは、マリオシリーズに慣れている人でも苦戦するような非常にチャレンジングなものが用意されるのが通例になっています。

何度もミスして覚えて、上達していく楽しみはアクションゲームの醍醐味であり、マリオもまたそうやってプレイヤーを満足させる体験を提供してきました。しかし、ニンテンドーDSからWiiにかけて、任天堂が「ゲーム人口の拡大」を掲げる中で、久々の2Dマリオ完全新作として開発された『Newスーパーマリオブラザーズ』は、「誰でもクリアできるマリオ」を目指す必要がありました。ここから、マリオは幅広い層に楽しんでもらうための様々な工夫を導入していくことになります。

◆歴代のマリオの救済措置をおさらい
DS『Newスーパーマリオブラザーズ』には明確な救済措置が用意されているわけではありませんが、久々の2Dマリオとして誰でもクリアできるデザインを目指しており、難易度はだいぶ控えめになっています。さらに、『New』シリーズはここから、「ダッシュボタンを使わなくてもクリアできるレベルデザイン」を基本とするようになります。


当時の『NewスーパーマリオブラザーズWii』の社長が訊くでは、宮本茂氏がDS向け『Newスーパーマリオブラザーズ』の反省として「強いて言えば、難易度がちょっと・・・。(簡単すぎる)」というように発言しています。「誰でも遊べる」と「従来からのプレイヤーを満足させる」を両立することは難しく、どちらか一方に絞る必要がどうしてもでてくるとのこと。

これに対する解決策として『NewスーパーマリオブラザーズWii』では、同じコースで8回ミスになると出現する「ヒントブロック」を叩くと見られる「おてほんプレイ」というシステムが導入されました。そのおてほんを見て自分でクリアを目指すというだけでなく、おてほんの途中からプレイヤーに切り替えたり、どうしてもクリアできない場合はステージを保留にして先に進めるようにしたりといったシステムが用意されています。

この救済措置のため、『NewスーパーマリオブラザーズWii』は全体的にかなり高難度な作品になっています。
クリアまでに一度もヒントブロックを表示させないことでもらえる勲章も用意されており、はじめてローカルマルチプレイが実装された「皆で楽しめるマリオ」である反面、やりこみプレイヤーも満足させる作品になっています。

3DS『スーパーマリオ 3Dランド』では、同じコースで5回ミスになると「アシストブロック」がスタート地点に出現。叩くと無敵の「しろタヌキマリオ」にパワーアップします。しろタヌキマリオは「パワースター」+「タヌキマリオ」のようなもので、敵を全て触れるだけで倒すことができる上に、滑空などができるタヌキマリオの性能も持ち合わせています。それでも落下死などは当然防げません。そのため、10回ミスをするとさらにゴールまで一気に移動できる「パタパタのはね」というアイテムも出現するようになっています。


この「無敵パワーアップ」をさずけるアシストブロック機能は、その後も多少の違いはあれど、『Newスーパーマリオブラザーズ2』や『スーパーマリオ 3Dワールド』、『進め!キノピオ隊長』など長らくマリオシリーズで使われていました。

そこからさらに変化が起きたのは『スーパーマリオ オデッセイ』。本作にはモード選択があり、通常のモードの他に「おたすけモード」が用意されています。マリオのライフが3から6に増えるほか、一撃でミスになる溶岩などでもダメージを食らうだけで済むようになっています。また、『スーパーマリオ オデッセイ』は久々の箱庭型の3Dマリオになっているため、初心者でも迷わないよう、「おたすけモード」では、メインストーリーを進めるために行くべき道に矢印がつくという機能もついています。

本作はいわゆる「残機」がない代わりに、シビアなアクションが要求されるステージも多い作りなため、あえてシンプルに「イージーモード」に近いものが用意された形でしょう。


『スーパーマリオ』シリーズではないですが、『マリオカート8 デラックス』の「ハンドルアシスト」も注目すべき救済措置です。マリオカートは、特に小さな子供なども遊ぶゲームシリーズ、しかし、操作は相応に難しく、コースアウトや逆走をしてしまい、そもそも完走すらできないという子供も珍しくありません。「ハンドルアシスト」を有効にすれば、絶対にコースアウトをしないため、「アイテムをいかにぶつけるか」という部分に集中できます。

『マリオカート8 デラックス』がニンテンドースイッチで最も売れているタイトルである理由の一つには、こういった本当の意味で「誰でも楽しめる」ようにするための工夫があるのかもしれません。

ここまで『Newスーパーマリオブラザーズ Wii』から『スーパーマリオ オデッセイ』までのマリオの救済措置を見てきましたが、例えば『スーパーマリオワールド』の「マントマリオ」や『スーパーマリオブラザーズ3』の「しっぽマリオ」など、ある程度自由に空を飛べるパワーアップというのもまた、シビアな足場を渡るステージの多いマリオにとって救済措置とも呼べます。

◆なぜ『マリオ』に救済措置は必要なのか。過去作との違い
そして、最新作『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』に目を向けましょう。本作における救済措置は無敵キャラのトッテンやヨッシーのほか、装備することで様々な強化を施せる「バッジ」の機能、オンラインプレイでの助け合いなどが救済措置として機能しています。

一方で、『スーパーマリオ3Dランド』以降多かった「アシストブロック」といった機能や「イージーモード」は今回用意されていません。あくまで、プレイアブルキャラクター、バッジ、オンラインプレイといった「選択肢」によってプレイヤーが自由に難易度をコントロールできるという形になっています。

トッテン・ヨッシーはマリオたちと違い「パワーアップできない」という制約も持っています。そのため、パワーアップが前提の「10フラワーコイン」などは取得できない場面もあり、単純にマリオたちの上位互換、実質的なイージーモードというわけではありません。

トッテンやヨッシーは敵のダメージを食らわないだけで、落下や溶岩などではミスになってしまうというのも考慮すべき部分です。あくまで考えることが一つ減るだけ、というのが重要で、アクションゲームが上手いプレイヤーが「敵」も「落下」も考慮してプレイができるのに対して、まだ慣れていないプレイヤーにとっては「落下」だけでも十分に脅威となります。

本当に苦戦するようであれば、「トッテン」+「復帰ジャンプバッジ」をつけることもできますし、逆にゲームに慣れてきて「考えられること」が増えてきたら、バッジを外して、という風に遊ぶことが出来ます。その上で、本作のアイデアに富んだギミックの数々、「ワンダー」な現象の数々を、テーマパークに遊びに来たかのように楽しむことができるのです。

取り合いにならないよう、ヨッシーが4色も用意されていることから分かるとおり、本作は「誰とでも楽しめるゲームにする」という部分に余念がありません。ヨッシーには他のプレイヤーが乗り込むこともでき、プレイ中に「今乗らせて!」というようにコミュニケーションが発生したり、逆に腕前の高いプレイヤーがヨッシーを使ってエスコートをしたりと、友達と遊ぶ時に様々な選択肢が生まれます。

近年のゲームは、ある意味で、「当時子供だった大人」に向けたものが多くなってきている印象を受けます。実際に任天堂自身そこは大事にしているところで、『スーパーマリオオデッセイ』では、壁画マリオがファミコンの「スーパーマリオブラザーズ」のドット絵になったり、『スーパーマリオ64』風の衣装が用意されていたりと、ノスタルジーがウリの一つとして成立しているのは、ゲームの歴史が長くなってきた証拠でしょう。

けれど、依然として『マリオ』のターゲットの大きな柱の一つは「今の子供」です。そのほか、「久しぶりにマリオを触ってみようかな」と思ってくれた人や、普段ゲームに馴染みのないユーザーでも楽しく遊んでもらえる体験を提供できる、その使命を負っているのが『マリオ』なのでしょう。

今まで『マリオ』が様々な救済措置を考えてきた中で、今回の『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』では、多様な選択肢を提供するという形が選ばれたようです。