夜空メルさんといえば、そのふわふわとしたキャラクター性とキュートなボイスが特徴的な、一見清楚なお姉さんといった印象のVTuberです。

その一方、体当たりでチャレンジする姿や、闘争心をむき出しにして勝負を挑む姿も見せてくれ、外見のイメージとは異なる漢気あふれる一面に「ギャップ萌え」を感じることも少なくありません。
筆者もドヤ顔で鼻息を荒くするメルさんが大好きでした。

そんなメルさんと2024年1月16日に突然お別れすることになってしまい、多くのホロライブファンやホロライブメンバーが戸惑ったはず。仕方のない事情があったとは言え、学校に登校したら突然空席ができていた……という状況には寂しさしかありませんでした。

そこで本稿ではメルさんの過去の配信を中心に振り返りつつ、楽しかった思い出をできるだけ残したいと思います。

◆皆さんの一番の思い出はなんですか?
メルさんの思い出で筆者が真っ先に思い浮かべたのは、2022年9月に博衣こよりさんが企画した『RUST』のチーム戦でした。

『RUST』とはオープンワールドを舞台にしたサバイバルゲームで、素材集め・建築・略奪をしながら拠点を大きくしたりギャンブルに明け暮れたりできる自由度の高いゲームです。
ホロライブでは専用サーバーを立ててシーズン3まで実施しました。

シーズン3では博衣こよりさん主催の「第2回チーム戦」が開催されたのですが、そこに『RUST』をはじめたばかりの夜空メルさんも参加することに。

しかし配信スタート直後から何やら怪しい雰囲気が立ち込めます。

まずはチームで集合しなければいけないのに、メルさんだけなぜかひとりだけ遠くの地点からスタート。チームメイトのさくらみこさん、癒月ちょこさん、雪花ラミィさんに現在位置を聞かれると「Qの21にいる」と答えますが、チームメイトは「Qの……21??」と声を合わせて大困惑です。博衣こよりさんからも「めっちゃ遠!(笑)」とツッコミが入りました。


さすがに遠いからと車で迎えに行くことになりますが、やっと合流したメルさんはなぜかお気に入りのギターをかき鳴らしながら登場という不思議な状況に。これにはさくらみこさんも「ギターで来たんだけど、この子!」と大爆笑です。

しかも合流したと思ったら、今度は手榴弾を誤爆させてしまい再び遠くの地点でリスポーンすることに。本人はギターだけでなく、ちゃんと手榴弾も持ってきたことをアピールするつもりでしたが、うっかりピンを引き抜いてしまうあたりさすが「天才」です。その際、チームメイトを巻き込むまいと慌てて距離をとるところにメルさんらしい優しい性格も見て取れました。

メルさんの肩書きは「魔界の天才ヴァンパイア」ですが、本人の意図はともかくその「持っている」状況はまさに「天才」としか言いようがありません。
その後もハプニングだらけでリスナーを困惑と爆笑の渦に巻き込み、気づくとチーム戦をはじめる前に撮れ高を山のように築いていました。まさに「プロ」のしわざです。

本人はいたってまじめにやっているだけに、純粋なメルさんらしさがすべて詰まったような配信でした。

さて「天才」エピソードといえば2020年のホロライブ大運動会も忘れられません。

ホロライブ大運動会とは毎年秋ごろに開催されていた企画で、ホロライブ専用の『マインクラフト』サーバーを舞台に、国内メンバー、ID(インドネシア)メンバー、EN(イングリッシュ)メンバー、そして2023年開催の最後の大運動会には新人のReGLOSSメンバーも参加した大型企画です。

その第1回目となる2020年に赤組Aチームで出場したメルさん。


問題の名場面は第3競技の「鳥人間ダーツ」でのこと。この競技は各チーム選抜選手が滑空して狙ったところに着地するというもので、決められたルートをいかにクリアして円の中心に着地するか、キャラクターコントロールの腕が試される難易度の高い競技となっていました。

その選抜選手を相手チームは弓で攻撃し、妨害することができるのですが、動き回っている相手を射抜くのは至難の業。ところがなんとメルさんは、見事にライバルチームのアキロゼ(アキ・ローゼンタール)さんを射抜くことに大成功! 出場全選手の中でただひとり快挙をなし遂げました。

この出来事に選手もリスナーも大喝采! 見事に撃ち落とした赤Aチームは大喜びですし、大会運営としてMCを担当していたさくらみこさんも「奇跡が起きました!」と大興奮です。

射抜いた直後は「てへぺろ」とチャットを送っていたメルさんは、マイクを向けられると「アキロゼのハート、撃ち抜いちゃったぜっ」と得意のドヤ顔に。
撃ち抜かれたアキロゼさんも「悪い気はしないね(笑)」とまんざらでもないようすでした。

ホロライブ大運動会は競技の外でもわちゃわちゃとじゃれあったり、準備配信で力を合わせて建築したり、事前練習に燃えたりと、つねに誰かと絡む姿が楽しく、メルさんもとても幸せそうにしていました。「鳥人間ダーツ」は切り抜き動画が作られるほど印象深い名シーンになりましたが、大会の準備期間も含め、その一瞬一瞬のすべてが輝いていたことを覚えています。まさに名場面の宝庫でした。

そして最後にあげたいのは2023年12月に配信したばかりの「マーダーミステリー狂気山脈~陰謀の分水嶺~」です。

『RUST』のチーム戦もホロライブ大運動会もホロライブメンバーの企画でメルさんは参加者のひとりでしたが、「マーダーミステリー狂気山脈~陰謀の分水嶺~」ではメルさんが主催となり企画を仕切りました。


もともとメルさんは脱出ゲームやマーダーミステリーが大好きで、以前よりメンバー間で「やりたいね」と話していたものをついに実現した形です。なお参加者は、星街すいせいさん、白上フブキさん、常闇トワさん、博衣こよりさん、そして作者のまだら牛さんの計6名。

企画で使用した「狂気山脈~陰謀の分水嶺~」は有名な作品で、作家のH・P・ラヴクラフトが生み出した「クトゥルフ神話」をベースにしたミステリーです。南極大陸のとある山脈を舞台に、そこで発見された不可解な死体をめぐる事件の真相を各プレイヤーが解き明かす内容となっています。

マーダーミステリーという作品の性質上、ネタバレ厳禁なので詳しくは語れませんが、怒涛のラストはマーダーミステリーらしい驚きの展開に! クトゥルフ神話の世界観をモチーフにしたストーリーや設定もさることながら、各プレイヤーの駆け引きから生まれる展開はリスナーもドキドキの連続で大いに盛り上がりました。

なおメルさん主催の企画ではありますが、原作のまだら牛さんがゲームマスターを担当したため、メルさんもプレイヤーとしてゲームに参加しています。

これまでメルさんの「天才」エピソードを中心にお届けしましたが、メルさんが大好きなマーダーミステリーをどのようにプレイしていたのか、いつもとは少し違った一面も見られる企画にもなっており、おもしろい配信でした。

特に登場キャラクターのうち、教授役を引き当てたメルさんが「~なのだ」「~なのだぞ」とあのキュートなボイスでなりきっている姿は、ギャップが大きくとても愛らしかったです。

メルさんの配信に加え、星街すいせいさん、白上フブキさん、常闇トワさん、博衣こよりさんの各視点も配信されていたので、それらとあわせて視聴することで楽しみが倍増する企画でした。

そのほか『マリオカート』のお正月カップに出場するたびに炎を背負って爆走したり、『Bus Simulator 18』というゲームでバスを暴走させたり、「すっさん」「よっさん」と呼び合う大空スバルさんに個性的なパワーポイントを送って「ダンガンロンパ」や「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」をオススメしたりするなど、多くのエピソードが思い出されます。

それらは語りつくせないほど多く、それだけ楽しく幸せな時間を過ごさせてもらったのだと実感します。とてもかけがえのない時間でした。

皆さんはどんな思い出がありますか?

◆自身の足跡を記した渾身のバースデー3Dライブ
メルさんといえば、癒月ちょこさんとの「メルティーキッス(メルキス)」、桃鈴ねねさんとの「ねねメルねるね」、桃鈴ねねさんや「さくらみこ」さんとの「桃鈴家」など様々なユニットがありました。

メルキスでは料理を作ったり3Dライブをしたり……。

ねねメルねるねでは、まったりと『PowerWash Simulator』をプレイしましたし、オフコラボもしました。

もっとも記憶に新しい「桃鈴家」ではゲームバトルで火花を散らしてリスナーとともに大盛り上がり! いずれもかけがえのない思い出です。

2024年1月9日には、長いこと療養していた赤井はあとさんを迎え、待望の5人揃っての1期生オフコラボも実現しました。

1期生で集まることはこれまでたびたびあったそうですが、オフコラボの配信で5人が揃うのはなんと今回が初! 乾杯ではじまった新年会はお菓子をつまみながらの楽しい雑談となり、1期生ライブの思い出、これからやりたいこと、そして福袋の交換会で盛り上がりました。

まさにホロライブができた頃からの活動となるので、5人の絆は配信を通しても「戦友」だと分かるほどの仲の良さです。キャッキャとはしゃぐ姿は後輩の面倒も見る「お姉さん」とは思えないほど無防備で、普段からテンションが高い赤井はあとさんはもちろんのこと、皆さん大音量で大騒ぎしていました。

メルさんはあまり前に出ない性格なので、はしゃぐ赤井はあとさん、白上フブキさん、夏色まつりさんをアキロゼさんとともに見守るような雰囲気がありましたが、テンションの高低に違いはありつつも楽しそうにしているようすが印象的でした。

筆者がホロライブを視聴するようになったのは3期生の5人が入ったあたりの頃なので、1期生がどのような環境で配信をし、どれほどがんばってきたかは分かりません。ただ今の形のホロライブができるかどうかの時代、つねに模索し続けていたことは本人の発言や過去の映像などで垣間見ることはできます。そこには多くの悩みや覚悟があったに違いありません。

その一端を語る機会となったのが、2023年10月に配信されたメルさんの3Dバースデーライブでした。

周年ライブやバースデーライブは各メンバーそれぞれの感性で独特のステージができあがるものですが、2023年のメルさんのバースデーライブは彼女の足跡を辿るという何とも感動的な構成に。

もともとメルさんはどの1期生よりも早くスカウトされたとかで、当初は今で言う0期生の扱いになるのか、それとも1期生になるのか、設立間もないホロライブらしい立ち位置にいたそうです。まさに彼女の歴史はホロライブの歴史だと言えるでしょう。

そんなメルさんが歌うことに憧れ、スカウトされ、悩みながら活動を続けた、その赤裸々な部分をミュージカル調で構成したのが2023年のバースデーライブでした。ホロライブとしてはじめて開催した全体ライブの映像も初々しかったですね。

そして活動の最後となる1月14日に実施された配信。「ホロメン相関図を作る」という企画でしたが、ID・EN・ReGLOSSを含むすべてのホロライブメンバーの印象や思い出を語る内容となっており、ひとりひとりにコメントを打ち込んでいくという愛の深さがうかがえる内容となっていました。

「天才」キャラとして人気でしたが、それは説明不足で伝わらないことがあったり、一見唐突のようで実は確固たるロジックがあったりで、本当はしっかり者だったメルさん。

桃鈴ねねさんも自身の配信の中で「めっちゃ悲しいわ。超寂しい」と素直に打ち明けつつ、「メルメル先輩の、あのボケてるのか本当なのか分からないボケがめちゃめちゃ好きだった」と肩を落としながら語っていましたが、まさにそこがメルさんの魅力だったと筆者も思います。

もちろんねねさんだけでなく、言葉にする人・しない人、さまざまなホロライブメンバーが突然の別れを惜しんでいました。

自身の夢を叶えるのはもちろんのこと、何もないところからホロライブを育て、多くの人に夢と幸せを与えて笑顔にしてきた夜空メルさん。

そんなメルさんのことを、みんな大好きでした。

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※ UPDATE:赤井はあとさんの名前の表記に誤りがあったので修正いたしました。コメント欄でのご指摘ありがとうございました。